やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
しかしアンソロのカチューシャってもう完全に扱いが幼児ですよね、あの見た目なら仕方ないですが(笑)
「改めて紹介するわ、彼女がカチューシャ、プラウダ高校の隊長よ、最初に案内してくれたのは副隊長のノンナね」
…つまりはこのちっさい小学生みたいな人が地吹雪のカチューシャなのか、聞いてた通り名と見た目が全然一致しないな。
これで本当に高校三年生…らしい、もしかして遊園地で怪しげな黒ずくめの男達の取り引き現場でも目撃し、妙な薬でも飲まされてしまったのだろうか?
逆にブリザードのノンナ、と言われればノンナさんの方は納得だ、なんか雰囲気がまさにブリザード。
「…騙したんですね?」
「あら?私は一言もノンナの事をカチューシャと呼んでいないわよ」
つまり騙したんじゃないですかー、やだー。
「ダージリン!カチューシャを置いてきぼりで話を進めないで!だいたいこのゾンビは誰よ、聞いてないわよ」
そしてカチューシャ…さん?なんか違和感がハンパないが一応年上らしい、この人が声を上げる。
どうやら俺の扱いがゾンビで固定されてしまったようだ、あー、こういう扱いって久しぶりだわ、久しぶりすぎて心折れそう。
「私の客人よ、あなたが連れてこいと言ったのでしょう?」
…はい?このちっさい人がか?てっきりダージリンさんが無理やりねじ込んだのかと思ったが。
「はぁ?そんな事私が言う訳ないじゃない」
本人も速攻否定しているし…、俺、完全に招かれざる客じゃないか。
「…なんなら俺、どっか行ってますけど」
誘われてもいないのにお茶会に参加とか、一応形式的にだが誘われた姉住さん以上に空気の読めない奴じゃないか、よし、不参加で。
「大丈夫よ、それよりまずは主催者に挨拶するのがマナーよ 」
…ダメらしい、しかし挨拶っていっても、まぁ名前も言わないのはさすがに失礼だろう。
とりあえずカチューシャさんの所に行くが身長が小さいので自然と見下ろす感じになる、この感じ懐かしいな、昔の小町を思い出すようだ。
「あー…、その、比企谷 八幡です」
身体に染み付いた癖なのか、自然と少し屈んで目線を合わせた、まぁ見下ろしながら言うのもアレだし。
「…ノンナ!!」
だがカチューシャさんはそれが気にくわなかったのか、むっとした表情をするとノンナさんを呼ぶ、…何するつもりだ?
「はい」
するとノンナさんはごく自然にカチューシャさんをドッキング…もとい肩車するとスッと立ち上がった。
「ふん、まぁいいわ、特別に許したげる、カチューシャは心が広いのよ、もちろん身長もね」
いや、心が広い奴は身長で負けたからって肩車で勝ち誇ったりしないと思うんだけど…、身長だけじゃなくてやることも小学生染みてないかこの人。
「…あなたも大変ですね」
とりあえず上にいるカチューシャさんは無視して、こんなわがままに付き合うノンナさんが可哀想に思えて声をかける。
「いえ、慣れてますから」
慣れているのかよ…、というか全然苦じゃなさそうですね、むしろ声が若干嬉しそうだし。
「ちょっと!私を無視したわね!!」
上からカチューシャさんの怒鳴り声が聞こえてくる、先ほどからちょいちょい怒鳴り声を上げているが地吹雪のカチューシャってそういう意味なのかよ。
「あー…その、大きすぎて見えませんでした」
「あ、そう?ならしょうがないわね!!」
肩車されながら笑顔で身体を揺らす、危なそうだがノンナさんが慣れているおかげか安定感はあるようだ。
しかしチョロい…、チョロすぎるぞ地吹雪さん。
とはいえ…ついに始まるのか、お茶会が!!
ーーー
ーー
ー
と大々的に言ってはみたが、ようはただ単にお菓子を食べながらお茶を飲むだけなんだよね。
「準決勝は残念でしたね」
ノンナさんがお茶会の飲み物とお茶請けのお菓子を運びながらダージリンさんに声をかけた、その様子では準決勝の結果はもう知っているのだろう。
「去年カチューシャ達が勝った所に負けるなんて」
本人を前にしてよく堂々と言えるもんだ、しかも言い方が悪意たっぷりである、やっぱり小学生かよ。
「勝負は時の運、というでしょう?」
ダージリンさんの方はさすが、大人の対応というか涼しい顔でその挑発を流した、うーん…気まずい。
「どうぞ」
「ありがとう、ノンナ」
「比企谷さんもどうぞ」
「あ…えと、どうも」
ノンナさんが持ってきたのはロシア系のお菓子なのだろうか、それよりも気になったのは飲み物の方だが。
「…こ、これは」
マックスコーヒー…だと?プラウダ主催のお茶会で何も言わずとも出てくるとは…ノンナさんはエスパーなのか?
「ふふん、知らないの?これはマックスコーヒーというのよ」
俺が驚いているとカチューシャさんが勝ち誇ったようなドヤ顔を決めてくる、うん、知ってる。
「甘くて美味しいんだから、教えてあげるカチューシャの寛大さに感謝するといいわ」
うん、だから全部知ってる。
「あなたにマックスコーヒーを教えたのは私ですけどね」
「ダージリン!余計な事は言わなくていいのよ!!」
ほう、ダージリンさんが広めてくれたのか、黒森峰の時といい、さすがである。
将来俺がマックスコーヒー大使になった時、宣伝部長として存分にその手腕を発揮して欲しいものだ、これでマックスコーヒーによる全学園艦掌握の時も近い。
「ちなみに、私に教えてくれたのが彼ですのよ」
「なっ!聞いてないわよ!!」
こらこらダージリンさん、カチューシャさんも言ってたけど余計な事言わないで、せっかく本人、いい気分で勝ち誇っていたのに。
「あら、あなたが連れてこいと言ったのよ、マックスコーヒーを教えてくれた人を」
あぁ、そういう事、ようやく納得した。…いや、納得出来ねーよ、黙ってたって事はダージリンさんもノンナさんも俺とカチューシャさんをからかうつもり満々じゃねぇか。
「…ノンナ!!」
「はい」
カチューシャさんが声をかけるとノンナさんがすぐにやって来る、先ほどの肩車もそうだがこのやり取りだけで意志疎通ができるものなのか?
やって来たノンナさんは俺の前に置かれたマックスコーヒーを回収し、代わりにロシアンティーとジャムを置いた。
本当に意志疎通ばっちりじゃねぇか、ツーカーの仲というのか…、ちなみにツーカーの語源は諸説あるが中には話がストレートに通るので【通過】から来ているという説がある。
【通過】から来ている説があるのなら【通貨】から来ている説があっても不思議ではない、友情は金で買える、ただし、俺の場合値段が高いし無駄遣いしたくないので買わないけど。
しかし…せっかくのマックスコーヒーが回収されちゃったんだけど、どういう事なの?
「ロシアンティーよ、プラウダのロシアンティーはマックスコーヒーにだって負けないんだから」
変な所で対抗意識燃やしてるし、そもそもその対抗意識は俺じゃなくて製造元に向けて下さい。
とにかくロシアンティーを飲めとの事だ、あまりこういうのに詳しくないがジャムを置かれたという事はこれを使うのだろう。
えと…確かジャムを入れて飲むんだっけ?
「違うわ、ジャムは中に入れるんじゃないの、なめながら紅茶を飲むのよ」
スプーンでジャムを掬いカップの上に持っていこうとするとカチューシャさんに止められた。
見本のつもりか本人がやっているが口の周りがジャムだらけだ、なんか小町も前に朝飯の時そんな風になってた事あったな、その時あいつなんて言ってたっけ?
「ジャムってる」
「急に銃の話をされて、どうされました?」
…通じなかったか、いや、ある意味で通じてるノンナさんが恐ろしいんだけどこの人何者?
とりあえず郷に入っては郷に従え、と見よう見まねでロシアンティーを飲む、ジャムを口周りには付けないけどね。
ふむ…これはなかなか。
「どう?美味しいでしょ?」
「あぁ、まぁ…そうですね」
「ふふん、私の勝ちね」
…なんか知らんけど負けたらしい、というかカチューシャさんが勝負事が好きなのだろう。
「次は準決勝なのに余裕ですわね、練習はしなくていいの?」
あぁ、それは俺も気になっていた、トロリーバスでここまで来る途中に何両か戦車を見かけたが動いている様子はなかったし。
「燃料が勿体無いわ、相手は聞いた事も無い弱小校だもの」
…一応、その弱小校が頑張って準決勝までやって来たんですけどね。
そう告げるカチューシャさんの態度はどう見ても大洗を舐めている、眼中に無いと言った方が良いのか。
聖グロリアーナとの練習試合でも多少大洗は侮られていたがそこはダージリンさんだ、すぐにこちらの作戦を見抜いたり、大洗の町を把握していたり、準備は怠っていなかった。
一回戦、サンダースとの試合ではフェアプレイで正々堂々と戦う事を良しとするケイさん、そんなあの人が相手を侮って試合で手を抜くはずがない。アリサも何故か通信傍受機まで使って叩き潰す気満々だった。
そして二回戦 アンツィオ高校の安斉さんは大洗をしっかりと強敵と考え、新型戦車に欺瞞作戦まで用意して試合に望んでいた。
…ここまで相手に舐められているのは今回が初めてだろう。
少し安堵した、相手に舐められる、大洗の戦車道チームメンバーが今のカチューシャさんの言葉を聞いたら不満の声をあげそうだが、この展開は都合が良い。
油断はどこかで隙を生んでくれる、相手が油断して舐めプしてくれるなら大洗側にも勝機はあるかもしれない。
「準決勝が弱小校で良かったわ、決勝に向けて弾薬の節約にもなるもの」
どうやらカチューシャさんは決勝戦、黒森峰の事しか頭にないようだ、もう勝った気でいるのか。
慢心、ダメ絶対、ペガサス編の遊戯ボーイだってそうやって負けそうになったくらいデース。
「でも隊長は家元の娘よ、西住流の」
あっ、コラ、ダージリンさん、余計な事言わない、下手に警戒されたらどうするのよ。
「えっ!そんな大事な事を何故先に言わないの!!」
「何度も言ってます」
「聞いてないわよ!!」
たぶん聞き流されてたんだろうなぁ…、大洗はどんだけ舐められているのだろう。
「ただし、妹の方だけど」
「…なんだ、そっちね」
そりゃ姉住さんは黒森峰に居るんだし当然だろ、しかし…【そっち】ね。
「彼女には感謝しないとね、おかげで去年、私達は優勝できたもの」
あぁ、そういや去年のあの試合、西住の乗ってた黒森峰のフラッグ車を撃破したのはあなたなんでしたっけ?
「………」
…大洗が舐められるのは都合が良い、言いたい事は言わせておけばいい。
「今年もよろしくお願いしたいわ、どうせうちが勝つんだし、余計な手間が省けるもの」
それならいっそ、今から俺がもっと舐めプ出来るステージを用意してやる。
カチューシャさんとは出会ってまだ間もないが、身長の件といいマックスコーヒーの件といい、この人のプライドの高さは良くわかった。
そんなプライドの高いこの人だ、すぐに踏んではいけない地雷を見つける事ができた。
「なんだ、今年もまた動けないフラッグ車を狙い撃ちしたいんですか…去年みたいに」
ならば俺はあえてそれを踏み抜く、この人のプライドの高さを利用してやる。
「…何よ、あんた急に」
俺の突然の横やりにカチューシャさんがこちらを睨み付ける、…とりあえず釣れたな。
「カチューシャ、彼はその大洗の生徒よ」
それ、言っちゃいますかダージリンさん?まぁいいけど、こう言った手前、俺ももう引くつもりはないんだし。
「…えっ?い、いや、そんなのカチューシャにはどうだっていいわ!!」
一瞬気まずそうな表情をしたカチューシャさんだが、すぐにこちらを睨んで来たのでこちらも睨み返す。
「ひっ…絶対怒ってる、すごく怖いぞノンナ…」
…あれ?思ったよりずっと弱いぞこの人、そんなに俺の目が怖いのかなー。