やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
ただ今回はサブタイの通り、前々から書きたかった日常回です、大洗学園でラーメン好きな子にピンと来たあなたはなかなかのガルパン通。
次話には本編を進めます。
ちなみに個人的にはつけ麺派、麺はもちろん、濃厚なつけ汁をご飯にかけて食べるのも最高でっせ。
「さて…と」
そろそろ日付も変わろうとする頃合いではあるが俺は出かける格好に着替えている。
唐突ではあるが腹が減った、一度空腹感を感じてしまうとそれが収まる事もなく、このままでは眠れもしない。
台所を探してみたがこんな時に限ってカップ麺等の食べられそうなものも無い、となれば外に出て何か食べに行くか。
余談だが学生の通う船である学園艦だがわりと遅くまでやってる店は多い、それは船という環境なので俺達普通科はそうでもないが他の科なんかは代わる代わる24時間常に誰かが学園艦の運航に携わっている。
他の科の生徒は学園艦の運航に加えて学生なので当然授業にも出なければならない、授業料は免除されているがそんな程度じゃ割に合わないブラックさだと思う、うん、普通科で良かった、だって働きたくないもん。
そんな訳で今も絶賛働いている社畜な他の科の方々の為に夜中遅くまで営業している店はいくつかある。
さて、何を食おうか、せっかくわざわざ夜外に出るのだ、コンビニで済ますのはどうにももったいない気がする。
選択肢としては24時間営業のチェーン店が多く上げられるが、そういう所は風紀委員のチェックが厳しいからな…、夜中の巡回に見つかると面倒だし。
そういう店はあくまでも他の科に向けて営業しているので普通科の俺が風紀委員に見つかったらまた説教をくらいそうだ。
となると…、サッと食べてサッと帰れるものが一番だな。
「…ラーメン」
と、長々と考えてはいたがじつは最初から決めていた、買い置きのカップ麺が無かったせいか無性にラーメンが食べたくなったのだ。
ラーメンは良い、スープ、麺、具、あの器一つに全ての味の要素が詰まっているといっても過言ではない。
考えるだけで更に腹が減ってくる、よし、ラーメンを食いに行こう。
廊下に出るとまだ小町の部屋に明かりがついてるのが見えた、受験を控えた小町は今日も遅くまで勉強中か。
決して部屋に引きこもってエッチなイラスト書いてるどこかの先生とは違って真面目に勉強中なのだ。
「小町、起きてるか?」
ドアをノックして声をかける、あまり根を詰めすぎるのもなんだし、気晴らしに一緒にラーメンでも食いに行くのもいいかもしれない。
「ん~…、お兄ちゃん、どうしたの?そんな格好して」
部屋のドアを開けて小町が顔を覗かせる、んー、だいぶ疲れてるな、もしくは勉強に憑かれているのか。
「今からラーメン食いに行くけど、小町も来るか?」
「え?誰と誰と!?もしかして戦車道の人達と?」
「一人に決まってるだろ…」
なんで急に明るくなるのよ、まぁ小町が元気になるのは嬉しいんだけど。
「うーん…、まぁ女の子を夜中にラーメン屋に誘うのもなんだし、今回はポイントの変動は無しでいいかな」
そりゃどーも、というかそのポイントって変動性なのね、そりゃいつまでたってもポイント貯まらない訳だ。
「んで、小町はどーする、一緒に来るか?」
「えー、こんな時間に食べたら太っちゃうし、小町パス」
妹にまでフラレちゃった…、あ、やべ、これは思ってた以上にショックだ。
「あ!でもせっかく外に出るなら何か甘い物でも買って来てくれたら嬉しいかも!プリンとかケーキとか!!」
「自分のさっきの断り文句も忘れたのかよ…」
なんか告白して今彼氏なんていらないから…ってフラレた女子に誰か男紹介してって言われてる気分だ、紹介できる男なんて居ないけど。
「ほら、甘い物は別腹だし、疲れた時は甘い物っていうじゃん、小町的にもポイント高いよ」
「あー、はいはい、なんか甘いもんな」
ラーメンの帰りにでも適当にコンビニに寄って買って来るか、疲れた時は甘い物ってのは同感だしな。
「あんまし根を詰めすぎんなよ、まだ受験まで日もあるしな」
「うん、わかってるけど、そろそろ模擬試験もあるし…」
模擬試験かぁ、あまり思い出したくないが懐かしいな、志望校の入学試験の過去問が出るんだっけ。
試験結果によっては小町の大洗入学の合否にも関わってくるだろう。
「安心しろ小町、俺にとっておきの秘策がある」
「え?何々?試験の問題予想できるとか?」
「戦車道履修者が好成績をおさめたら特典があるらしいからな、俺から会長に言って小町を入学させてやる」
なにしろ廃部になったバレー部が復活できるくらいなんだから、それくらいいいでしょ?
遅刻もそんなにしてないし食堂も人が多くてあまり利用しないから欲しいのは数学の単位くらいだったし。
「どうしよう…、お兄ちゃんが小町の事好き過ぎてちょっとキモい」
どうしよう…、小町にキモいとか言われたらお兄ちゃん、もう生きてけないんだけど。
「だから…まぁ、あんまし無理すんなって事だ」
「うん、ありがとう…、お土産はプリンがいい」
お兄ちゃんの気遣いよりプリンかよ、本当にちゃっかりしてるよな…。
仕事を終えて死んだように疲れて眠っている両親を起こさないように静かに玄関に向かう、本当、毎日お疲れ様です。朝早くから夜遅くまで働いているうちの両親には素直に尊敬する、尊敬してますんでこの調子でずっと俺を養って欲しい。
外に出る、まだ夏場なので月明かりもあって夜だが比較的明るい道を自転車で走る、ベルトにラジオは結んでないが雨は降らないらしい。
こういう夜の静かな雰囲気は好きだ、それもこの夜中にこっそりとラーメンを食べに行くというなんとも言えない背徳感はわりと俺のテンションを上げてくれる。
まるで世界に自分が一人だけになっているような気分になり、昼間の騒がしさもあって余計そう思えてくるのかもしれない。
今向かってるラーメン屋はあまり人が来ないが味はもちろん抜群の穴場なので俺のオススメである、オススメする相手居ないけど。
「らっせーっ!!」
よしついた、さて…今日は何を食おうか、夜中だしあまりがっつりいくと小町の言うように本当に太ってしまうが。
「あー!比企谷先輩だー!!」
「…あん?」
店内に入るといきなり誰かから声をかけられた、見るとテーブル席に一年、ウサギチームの阪口と丸山の二人が座っていた。
阪口がぶんぶんと元気良く手を振っている、あまり大声で名前呼ぶなよ、知り合いかと思っちゃうだろ。
穴場だと思ってたのに…こいつらもラーメン食いに来たのかよ、いいのかよ、華の女子高生が夜中にラーメンって。
まぁこの二人は一年連中でもとりわけ小さいからな…、下手すれば小学生にも見える、小学生が夜中にラーメン食いに来る方がアウトだが。
「お、おう…」
無視するのもさすがになんだし、軽く手を上げて答えるとそのままカウンター席に座る、メニューは頭に入ってるので見る必要はない。
「味噌ラーメン、ギタギタで」
「あいよ!!」
コップに水を注いで自転車に乗って疲れた喉を潤わせる、夜中だからあまりがっつりいかないとはなんだったのか?いや、やっぱり食いたくなるじゃん?
「ち、ちょっと待ったぁー!!」
「…なんだよ」
振り返るとテーブル席に座っていた阪口が何故かこっちに来ていた、普段から騒がしい奴だが店の中であんまし騒ぐなって。
「なんでカウンター席に座るんですか!」
「いや…ラーメン食いに来たからだけど?」
まさか一人でテーブル席に座る訳にもいかないし、何がおかしいというのか。
「だってせっかく偶然会ったんですよ!一緒に食べればいいじゃないですか、ねぇ、紗希ちゃんだってそう思うよね?」
「………」
阪口に言われて丸山が無言で頷く、相変わらず喋んないな、こいつは。
「いや、だからなんで?」
別に一緒に飯食いに来た訳じゃないんだから、わざわざ同じ席で食べる必要ないだろ…。
「むぅ…、店員さん!私達、こっち移動します!!」
「は?」
そういうと阪口と丸山は自分達のテーブルに置かれていたコップを持ってこっちにやってきた。
「…おい」
怨みの目線を向けてやるが二人は素知らぬ顔で、いや、丸山はだいたいいつも無表情だが、カウンター席に座る。
「はい、醤油と塩、おまち」
「わー!来た来た!ありがとうございます!!」
タイミングも悪く、ちょうど二人のラーメンが出された、阪口が醤油、丸山が塩か。
阪口はずるずると元気良く、丸山は静かに黙々とラーメンを食べる、本当にこいつらなんでカウンター席に来たのよ、俺移動しようかな…。
「やっぱりここのラーメンは美味しい!!」
「…ほう?」
やっぱり…という事はもう何度かここに来ているのか、この店の良さがわかるとは、なかなかやるじゃないか。
「…この店、よく来るのか?」
「あい!私ラーメン好きなんです!!」
女子高生でラーメン好きとは、ラーメン大好き小池さんか…気に入った、移動するのは後にしてやる。
「じゃあ丸山もか?」
「………」
返事が無い、ただの丸山のようだ、俺、この子に無視されてるよね。
「紗希ちゃんはそばが好きだって、今日は私に付き合ってくれたんだよ」
「いや…そうなの?」
丸山はさっきから一言も喋らないのになんでわかるの?カテゴリーFなの?
「比企谷先輩もラーメン、好きなんですか?」
「まぁな」
学園艦中のラーメン店はもうあらかた制覇したといってもいいかもしれない。
「じゃあ今度一緒にラーメン食べにいきましょーよ!!」
「いや、行かないけど…」
「えー!絶対楽しいですよ、ほら、紗希ちゃんも一緒に行きたいって言ってるよ」
「………」
いや、言ってないだろ…、もしかして俺にだけ聞こえない特殊な声なのそれ?
「前々から思ってたけど、お前らよく丸山の言いたい事わかるよな」
いや、丸山本人が喋ってる訳じゃないから本当に言いたい事なのかは知らんが。
「え?普通じゃないですか?ほら、表情とか、雰囲気とか仕草で」
「いや、俺にはさっぱりだが…」
そんなやり取りをしてると丸山がくいくいっと俺の服を引っ張った。
「………」
何かを伝えたいのか俺の事をじっと見ているが、残念ながら俺にはただじっと見つめられているだけにしか見えない、そんでちょっと恥ずかしい。
「え?なになに紗希ちゃん、どうしたの?」
よし、ここは阪口に通訳を頼むか、俺にはまだ彼女との意志疎通は難しいようだから。
「………」
「えー!紗希ちゃん、そんな事考えてたの!!」
「…なにがだよ?」
「………」
「おぉ!紗希ちゃんって意外と大胆!そっかー、うん、ちょっと厳しいかもしれないけど良いかも!!」
「いや、だからなにがだよ…」
端から見たら阪口が一人で盛り上がっているようにしか見えないんだけど、会話は弾んでるらしい、自分でも何言ってるのかよくわからんがこう言うしかない。
やっぱり移動しようかな…。
「あいよ、味噌ラーメン、ギタギタお待ち」
と思ってたらラーメンが来ちゃったかぁ…、もうさっさと食って帰るかな。
「あ!味噌ラーメンギタギタ!!いーな、私もやっぱりそっちにすれば良かった」
夜中だからか、少し遠慮して醤油の、しかも背油の量も控えめにしてたのか、阪口が羨ましそうに見てくる。
ふふ…ヘタだなぁ、阪口、欲望の解放のさせかたがへたっぴさ、好きな物を食べるのに遠慮してどうする?
そんなんじゃせっかく好きなラーメンを食べていても食べられなかったギタギタが頭にチラついて台無しだぜ。
「比企谷先輩!一口ちょーだい!!」
「いや、やらんけど…」
「えー、一口くらいいいじゃないですか!私の醤油ラーメンも少し食べていいですから!!」
「なんでそうなるんだよ…」
いや…君はそのラーメンさっきからずるずる食べてるでしょ、いくらパッと見で小学生くらいに見えてもそこら辺、少しは慎みなさいな。
「お兄ちゃんならくれるのに…、比企谷先輩はケチだ」
ぶーぶーと文句をたれる、あー…性格とか特撮趣味とかでなんとなく予想出来たけどこいつ、やっぱり兄貴が居るのか。
「お!なんか珍しい組み合わせじゃん」
そんな会話をしているとふと声をかけられた、店にまた客が来たようだが…、誰だ?
「おっす比企谷、それに一年生の二人」
「…誰だ?」
女子だ、大洗の制服を着てるので大洗学園の生徒には違いないが、うちのクラスにも戦車道メンバーにもこんな奴居たっけ?
「誰って…ツチヤだけど?」
ツチヤ?ツチヤってあの自動車部のツチヤか?
「普段作業着姿しか見てないからな…、誰だかわかんなかったぞ」
「あ!ひっどいなー、私だって華の女子高生なんだぜ?」
いや、華の女子高生は戦車とか自動車の整備はしないと思うんだけど。
「ツチヤ先輩!こんばんは!!」
「………」
阪口が俺にしたように元気良く手を振り、丸山もぺこりと頭を下げる。
「おー、こんばんは」
戦車の整備をしてもらっているので当然の事だが戦車道メンバーと自動車部にはそこそこ交流がある、自分達で出来そうな整備を自動車部から教わっているのだ。
なんでも西住曰く、試合中に戦車が壊れた時の為にもある程度の整備技術や修理技術は覚えた方が良い、との話だ。
なので本格的な整備はさすがに無理だが、全ての整備を自動車部に任せっきり、という事はさすがにないのである。
「んで、三人はどうしたの?デート?」
「んな訳ないだろ、たまたま一緒になっただけだ、お前こそどうしたんだよ」
「いやー、私もラーメン好きだからさ、学校の帰りに晩飯だよ」
…って事はこの時間まで学校に残ってたのね、相変わらずうちの自動車部はいろいろとおかしい。
「あれ?ツチヤ先輩前にドリンクバーが好きだって言ってませんでした?」
「ちっちっち、単なるドリンクバーじゃなくて金曜日のドリンクバーが一番なのさ、『ドリキン』の名は伊達じゃないよ」
ツチヤは金曜日のドリンクバーが好きだから『ドリキン』と呼ばれているらしい、ドリンクバーに曜日の違いがあってたまるかって話だが。
「おっちゃーん、味噌一つ、ギタギタでー!!」
「あいよ!!」
ツチヤはラーメンを注文するとそのまま俺の隣に座った、いや、だからなんでみんなこっちくるんだよ。
これで両隣の席が埋まっちゃったよ…。
「お!比企谷も味噌のギタギタか、わかってるね!」
「比企谷先輩一口もくれないんですよ!!」
「むしろなんで貰う事前提なんだよ…」
「………」
…穴場とはいったいなんだったのか、どうやら大洗学園に通うラーメン通の間ではこの店は結構有名らしい。
「じゃあ比企谷は別で、阪口ちゃんと丸山ちゃんの二人で来た訳?」
「今紗希ちゃん家で一緒にアニメ見てるんです、この後も帰ったら続き見ますよ!!」
「この後って、明日も朝練あるだろうが…」
「あ、そっか…」
考えてなかったのかよ、いや、俺も考えたくもなかったけど。
「でも今が一番面白い所だし…後少しくらいなら」
「それで寝坊したら俺が河嶋さんにどやされるんだぞ…、いいからさっさと寝ろ」
つーかそれ、完全に俺は関係無いよね?ただの八つ当たりなんだよなぁ…。
「寝坊といえば比企谷は冷泉さんを毎朝起こしてるんじゃなかったっけ?」
「えー!なんですかそれー!それなら私達も起こして下さいよぉ!!」
「断固として断る」
これ以上面倒事を増やしてたまるか。
「だいたい…あいつは一応、ちょっとは早起きできるように努力してるしな、アニメ見て夜更かししてるから起こしてってやる訳ないだろ」
効果は微塵も感じられないが、一応冷泉の寝室には大量の目覚まし時計がセットされている、あれでなんで起きないかねー、あいつ。
それに本人曰く、最近は早めに寝るようにしているとの事だ、一応努力はしているらしいし、そこは素直に応援してやるべきだと思う。
ガラリと店の扉が開いた、今日は客が結構来るなとチラリと見る。
「このお店ですか?」
「親父いつもの、…あ」
五十鈴と冷泉だった、…はい、ギルティ。
ーーー
ーー
ー
「痛い…」
「当たり前だ…つーかそれくらいさせろ」
とりあえず冷泉にはデコピンを一発ぶちかましてやった、うん、我ながら甘いと思う。
「なんならもう起こさないぞ、明日から自力で起きろ」
「それは…困る、待て、今日は私は悪くない」
「いや、現行犯だからな」
「比企谷さん、麻子さんは悪くありません、今日は私のわがままに付き合ってもらっただけなんです」
「五十鈴、お前も…、ん?つかこう言っちゃなんだがわりと珍しいな、武部は居ないのか」
五十鈴も冷泉も中学からの知り合いらしいが、だいたい武部も合わせて三人セットのイメージがある。
「はい、その…恥ずかしながら夜中に出歩いて夜食、というものに前々から少し憧れていたんです、なんだかアクティブですし」
「沙織が居るとうるさいからな、当然内緒だ」
あぁ、そういう事、確かにお嬢様な五十鈴がそういうのに憧れるのはわからんでもないが。
でもいいのかな?実家にバレたらまたあのお母さん体調崩しかねないよ、「オラの華さんが不良になっちまったべさ」とか。
「それで今日、麻子さんに頼んでみました」
「夜やってる店なら任せろ」
「冷泉先輩…なんだか格好いい!夜の帝王みたい!!」
「かっこよくねーよ…」
本当にこいつ夜更かしはもう止めたのだろうか、なんだよ、親父、いつものって、どう見ても手慣れてるだろ。
「ですから比企谷さん、どうぞ」
どうぞ…って、何が?と思っていたら五十鈴が俺の前に来て手で髪を上げるとおでこを出してきた。
「…いや、どうした?」
「麻子さんだけデコピンされるのは平等ではありませんし、私にもどうぞ」
そういって五十鈴はデコピンをしやすいように配慮したのか顎をクィッと上げると目を閉じる。
「…あまり痛くしないで下さいね」
え?なんだよこのシチュエーション、どう見てもデコピンする流れじゃないんだけど?
「ほほぅ?」
ツチヤが興味津々に見ているし阪口も丸山もじっと見ている、やだ…止めて、もう恥ずかしい。
「い、いや、まぁその…今回は俺の勘違いだったしな」
「えー!そこで止めちゃうんですか!!」
「比企谷ヘタレだなー」
「ですが…このままでは私の気持ちがおさまりません」
「私の気持ちもおさまらないぞ、なんで私だけ…」
「…いいからさっさと注文しろ、ほら、さっさと食わないと本当に明日に響くぞ」
…もう勘弁してくれないかな?
冷泉と五十鈴もカウンター席に座る、だからなんで全員カウンター席なんだよ、これもう店員さんへの嫌がらせみたいにならないかな?
「私はもう決めたから、五十鈴さん、頼むといい」
「はい、そうですね、もう夜も遅いですし、あまり食べ過ぎるのはよろしくないですよね」
五十鈴がメニューを開いて睨めっこしている、…本人もこう言ってるし多少はおさえるのかな?
「はい、味噌ラーメンギタギタお待ち!!」
そうこうしてるとツチヤの頼んだラーメンが出来上がったようだ、あれ?店員さん、もう1つなんか持ってるな。
「はい、プリンお待ち」
プリンは冷泉の前に置かれた。
「なんでラーメン屋まで来てプリンなんだよ…」
確かにこいつ、普段から見ててもあんまし飯食う方じゃないけど。
「ここのプリンは美味いぞ、店長の自家製だ」
そもそもメニューにのってないし…、これどう考えても裏メニューだよな、こいつ、本当に夜の帝王なんじゃないか?
「決めました、醤油ラーメンをお願いします」
五十鈴がメニューを閉じると店員さんに声をかける、ふむ、さすがにこの時間帯もあっておさえて来たか。
「トッピングにチャーシューと大盛りメンマ、あとはギョーザをお願いします」
そんな事は全然なかったぜ!冷泉と五十鈴の食べる落差がひどい。
「…ふぅ」
うまかった…。ラーメンも食べ終えたし、そろそろ帰るか、別にこいつらと一緒に食べに来た訳じゃないしな。
「五十鈴先輩、そんなに食べるんですか!?」
「はい、阪口さんもよろしければ少し食べますか?」
「いいんですか!やった!ありがとうございます!!」
「………」
「ふふっ、丸山さんもどうぞ」
「冷泉さん、戦車でドリフトって出来ないかな?」
「履帯切れないか?」
「そこは整備の調整と腕でカバーだよ」
…そういえば、小町にお土産を頼まれてたな、冷泉が言うにはここのプリンは美味いらしいし、お土産に持って帰れないか聞いてみるか。
店員さんも今は五十鈴の注文で忙しいみたいだし、まぁその…、少し落ち着いてから聞いてみるか、うん。
ーーー
ーー
ー
「お話に夢中になっていたら、すっかり遅い時間になりましたね」
「先輩達といろいろ話せて楽しかったです!!」
「私はまだ眠くないが」
「………」
プリンを待っていたから遅くなってしまったが、これでお土産のプリンも持ち帰る事が出来たし、小町も満足するだろう。
「みんな~、もう夜も遅いし、なんなら私が車で送っていこうか?」
ツチヤが車を店の前に止めてドアを開ける、こいつ車で来ていたのか、自動車部って車通学有りなの?
はいそこ、女子高生が車とか戦車乗ってるんだから細かい事は気にしない。
「え!いいんですか!?やったよ、紗希ちゃん」
「もちろん、さぁ、乗った乗った!!」
「ではお願いします」
「私も頼む、歩くのも疲れるからな」
阪口や丸山、五十鈴に冷泉がツチヤの車に乗り込んだ。
「あれ?比企谷は乗らないの?」
「いや、俺自転車だし」
そもそも五人も乗ってたら俺の乗るスペースも無いしね、それにツチヤの運転はアレだしな。
「それじゃ比企谷先輩、また明日!!」
「………」
「ふふっ…、明日というか、もう今日なんですよね、なんだか新鮮です」
「比企谷さん、朝にまた会おう」
…冷泉の奴、さりげなく朝起こせと言ってやがるな、まぁいい、なぜなら今から罰を受けるのだから。
「ツチヤ、気をつけろよ」
「大丈夫大丈夫、事故なんて起こさないって」
その心配はしていない、自動車部の運転の腕前は俺もよく知っているのだから。
その腕前をよく知っている俺だから、なおさらあの車に乗るのは遠慮したい所だ、乗り込んだみんなはラッキーだと思ってるかもしれんがそうじゃない。
「よーし、発車するよ!ドリフトドリフトォッ!!」
ツチヤの運転する車は発車するとその先の角をドリフトしながら曲がっていった、今頃車内では面白い事になっているだろう。
たぶんツチヤの事だからこの先も曲がり角の度にドリフトするだろうな…、乗り込んだ四人に心の中で合掌しながら俺も自転車に乗る、ドリフトは当然しないが。
腹も充分にふくれたので食後の軽い運動もかねて、自転車をこぐ。
しかし相変わらずあの店のラーメンは美味いな…、やっぱりラーメンって神だわ。
ーーー
ーー
ー
「小町、起きてるか?」
家に帰って小町の部屋にまだ明かりがついてるのを確認したのでドアをノックするが返事がない。
「…小町?」
心配になって少し部屋を見ると小町はすやすやと眠っていた、勉強中に寝てしまったのか机には参考書とノートが開いたままだ。
「………」
眠っている小町に布団をかけてやり、部屋の電気を消す、プリンは冷蔵庫にでも入れておくか…。
「…おやすみ」
そういえば小町も来年は大洗に入って戦車道をやりたいって言ってたな…。
とりあえずバレー部の連中の勧誘を追い払って、歴女チームの影響を受けないようにしてやって。
一年連中は…、まずあいつらが先輩になる姿があまり想像出来ないな、まだ小町のがしっかりしてるんじゃないか?
まぁその…、大洗には変な先輩が多いが、そう悪い所でもないと思うから。
だからまぁ…待ってるぞ、小町。
ちなみにツチヤですが最近のミニドラマでは一年なってましたが今までどの設定見ても二年生だったのでこの小説でもずっと二年生の設定で書いてたんで二年生にします。
ガルパン年齢不詳のキャラ多過ぎんよ…。