やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
今作じゃあ戦車探索と戦車洗車を2日に分けてます。
「でも、私知らなかったなぁ」
「何が?」
「比企谷君がそんなに戦車道が好きだったなんて」
「…あ?」
「ひっ!?」
俺が今どんな顔をしているのかわからんがおいおい、人の顔を見て悲鳴を上げるとか失礼じゃないか。
「何でそうなる?」
「だ、だって、比企谷君、戦車道復活を手伝ってるし、今も男の人なのに戦車道の授業やってるし、戦車にも詳しいみたいだし…」
確かに、端から見ればそう思われても不思議じゃないか。
「生徒会からの罰で仕事押し付けられてんだよ、戦車は好きだが戦車道はむしろ嫌いだ」
本当に、なんで戦車道って女子の武芸なんだ?そりゃ女の子が戦車に乗る方が一般向け的に話題になって円盤の売り上げも伸びるだろうが、いや、俺何言ってんの?
「そっか…、じゃあ比企谷君も私と同じなんだ」
「ん?あぁ、そーかもな」
お互い、やりたくもないのに戦車道をやらされてる同志である、おのれ生徒会。
「比企谷君も楽しめるといいね、戦車道」
「それは無理だな」
「速攻で否定された!?」
いや、だって戦車道嫌いだし、というか笑顔でそんな事言われたら勘違いしそうになるから止めて。
「とりあえず打倒生徒会だな、このⅣ号が動くなら生徒会室に砲弾の一発でもぶちかましてやりたい」
「それはさすがにどうかと思うけど…」
「冗談だ、冗談」
「目があまり冗談に見えないような…」
まぁこの目は冗談を言うようには見えんだろうな、腐ってるんですね、わかります。
「まぁⅣ号が動くならそれに乗れば帰れるだろうしな」
「あっ、そっか、私達迷子だったんだ」
忘れてたのかよ、西住本人も言ってたけど結構抜けてんな。
「しかし、なんでこんな所に捨てたんだ?戦車道廃止するにしても売ればいいのにな」
「うーん、戦車道の演習中に壊れちゃったのかな」
「戦車道の演習中か…、なら、もしかしたら」
そうか、俺も西住も今までどうして気付かなかったんだろうか。
俺はⅣ号の搭乗口に昇ると蓋を開けようとする。
「…比企谷君、どうしたの?」
「戦車道の演習中に放棄されたんなら中にのろしか発煙筒か、何かしら位置を知らせるもんでも残ってそうだと思って、な!!」
と、息巻いて蓋を開けようとするが錆び付いてて中々開かない。
「あ、そうか…、なら私も」
西住も登って来て、蓋に手をかけてくる。
「は?いや、いいって…」
近い近い、あと鉄と油の臭いの中にふわりと良い匂いがするから逆に力出ないわ。
「大丈夫、前の学校でもたまにこういう力仕事してたから」
それは頼もしいけどそんな問題ではなくてですね…、あぁ、もういいか。
「せーっ!!」
「のっ!!」
西住と力を合わせて錆び付いた蓋を開ける、20年は放置されてただろうから中からもわっとした変な空気を感じた。
だが蓋を閉めてあったおかげか、まぁ入れない事はない。
「俺が中に入って探すから、西住はそこから指示してくれ」
「え?私も中に…」
「いいからいいから、これも仕事の一つだ」
中も結構嫌な臭いが充満してるし、あと狭いし、こんな狭い所で西住と二人きりとか、うん、無理。
「それより、早く指示を出してくれ、さすがに戦車の中はよくわからん」
「あ、うん…、多分そこかな」
西住の指示された所をあさってみると思ったより簡単にそれっぽいのが見つかった。
「と、西住、これ使えないか?」
「うん、それだと思う、使えるといいけど」
「駄目なら今度こそ警察だな、安心しろ、学園の敷地内で迷子になりましたって汚名がつくだけだ」
「それは…ちょっと嫌、かも」
ーーー
ーー
ー
「みぽり〜ん!!」
「西住さん!!」
「西住殿!!」
「沙織さん、華さん、優花里さん」
結果として見つかった狼煙のお陰で俺達の位置を知らせる事に成功した俺達を戦車道チームが迎えに来てくれた。
元々俺はともかく、西住が居なくなった事で武部達がみんなに連絡したのだろう、狼煙を上げてから思ったより早くみんなが来たし。
「無事か!比企谷っ!!」
「やー、比企谷ちゃん、災難だったね」
「本当にですよ…」
そう言いながらもちゃんと迎えに来てくれたあたり、生徒会もそこそこには心配してくれてたんだろう。
「…でも、どうして比企谷もここに居るの?」
「居ちゃ悪いか?」
まぁ武部や五十鈴からすれば俺は西住に無理矢理戦車道をやらせた悪者だろうし、そんな俺が西住と一緒に居るのは変だと思うだろう。
「比企谷君は…、えと、私が居なくなった事を聞いて助けに来てくれたの」
「…西住?」
いや、あれは全然そんなんじゃなくてむしろ俺も迷子になったんだが、口を挟もうとすると西住は更に言葉を続けた。
「この狼煙も比企谷君の提案だし、助かっちゃった、ね?」
そう言いながらチラリと西住は俺を見る、まぁいいか、俺としても迷子になった汚名は避けたい所だし、武部や五十鈴達と無駄に衝突しても仕方ない。
「へー、やるねぇ、比企谷ちゃん」
「あー、まぁ、はい」
「でも、それなら何で見つけた時、携帯で連絡しなかったの?わざわざ狼煙なんてあげちゃって」
「俺がお前らの番号知ってると思ってんのか?むしろ学園中誰の番号も知らんまである」
だから何でみんなそんな引いてんの?何でそんな可哀想な物を見る目で見てくるの?
「本当にありがとう、比企谷君」
「お、おぅ…」
特に何もしてないのにお礼を言われるのは、どこかむず痒いものがあるな。
「む〜…、比企谷!携帯!!」
「あ?」
突然、武部が自分の携帯をこっちに向けて出してくる。
「え?何?携帯からは別にビームとか出ないぞ」
「比企谷こそ何言ってんの…、番号、交換しようって言ってるの!!」
「…はぁ?」
「またこんな事があった時に連絡手段がなかったら困るじゃん、だから…その為!!」
まぁ戦車道の授業を受ける同士、そういった連絡手段は必要かもしれんが…。
「それに…みほがもう気にしてないっぽいのに、私ばっか怒ってても馬鹿みたいじゃん」
続けて彼女は恥ずかしそうにぼそぼそとした小声でそう付け加えた。
「…そうですね、私も番号、教えてもらっても宜しいでしょうか?」
武部のその様子に五十鈴も自分の携帯を取り出してくる。
「お、おぅ…、ほら」
こういう時、どうすればいいのかよくわからん、笑えばいいの?絶対引かれるだろ、それ。
「ほらって…、何?」
「いや、番号の交換とかやり方わかんねーし、適当にやっといてくれ」
「別にいいけど…、よく人に簡単に携帯渡せるね」
「見られて困るもんもないしな」
電話帳に登録してあるのなんて両親と妹とか、数えるぐらいだし。
「あ、じゃあ私も後で…、いい?比企谷君」
「好きにしてくれ…」
「あ、じゃあみほの携帯にもついでに比企谷の番号送っとくね」
「はい、お願いします、沙織さん」
携帯を渡した三人のそんな様子をぼーっと見てると、まぁ携帯取られてるから見てるしかないんだが。
「はじめましてです、比企谷殿」
残ってた一人に声をかけられた、そういえばコイツも西住を迎えに来たな、戦車倉庫の前で集まった時、熱心に西住を見てた奴だ。
「あぁ、えっと…」
「ご挨拶が遅れました、私、秋山 優花里と言います」
秋山 優花里ね、見た所俺と同学年っぽいがクラスが違うのだろう、つーか…殿?
俺が秋山を怪しむ目で見ていると彼女は彼女で俺の事をどこか不思議そうな目で見ている。
「…どーした?」
「いえ、ひょっとしたら私達、どこかで会ってたような気がして」
え?何?新手のナンパ?逆ナンなの?やだ…ときめいちゃう。
「気のせいだろ、何しろ俺はずっとぼっちだったからな、友達どころか知り合いすら居ないまである」
「あー…、私もです」
うん、何となく気付いてたんだけどこの娘もちょっと俺と同じぼっち臭してたわ、ちょっと前の西住といい、大洗学園のぼっち率って結構高いよな。
「いや〜、西住殿も、ついでに戦車も見つかってよかったです、これで5両全部揃いましたね」
「え?マジかよ、全部見つかっちゃったのかよ」
うちの戦車チーム有能過ぎない?
「はい、まずそこのⅣ号戦車、バレー部の皆さんが見つけた八九式中戦車、池の中から発見されたⅢ号突撃砲、ウサギ小屋にあったM3中戦車リー、そして倉庫にあった38(t)戦車、これで全部です」
マジで一日で全部揃ったのかよ、しかも池の中とかどうやって見つけたんだ?
「だが…話を聞くとどれもこれも旧式の戦車が目立つな」
そもそもどの戦車も20年前の代物だ、仕方ないといえば仕方ないが。
「でも、どの子もみんな個性があって素晴らしいです」
「お、おぅ…」
なんつーか、この秋山とかいう奴、さっきからスラスラと戦車の名前を語ってる所といい、漂うぼっち臭といい、いろいろとマニア臭いな。
まぁ戦車が好きなら俺も同じだしな、今度暇ができたら戦車倶楽部にでも行くか。
…ん?戦車倶楽部、そういえばコイツ、確かにどっかで見た気がしないでもないな。
「見つかった戦車は自動車部に運搬させる、明日もまた最初の戦車倉庫前に同じ時間に集まるように…、以上、解散!!」
河嶋さんの合図と共に本日の戦車道がようやく終了となる、明日も同じ時間とかまるで社畜かよ。
いや、それ以上に自動車部の皆さんが社畜の極み過ぎる…今からとか、後で差し入れでも持ってった方がいいのかしら。
「ちなみに明日は戦車を洗車するからね、皆さん、濡れてもいい格好で来てね、ね?」
それ、ダジャレですか?副会長。