やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
でも楽しいからまた別の機会でも他の高校のキャラも登場させてやりたいね!!
「おぉ、始まったぞ」
「この密会は薩長同盟を思わせるぜよ」
「いや、あの二人は元々仲が良いだろ」
…あいつら何やってんだ?
宴会場の一角でなにやらこそこそとやっている歴女グループの連中を見つけた。
あんこうチームのⅣ号が足止めをくらってる中、相手フラッグ車への決勝タイムリーを決めたのが彼女達だ、あの最後の狙撃も訓練の成果だろう。
それに【偽ラブレター作戦】も上手い事やってくれたしな…、ちょっとそこら辺の話くらいは聞いとくか。
「お前ら、何やってんだ?」
「む、ヘルマンか」
「シッ!静かに、我々は今、深く静かに潜航中だ」
こいつら戦争映画なら戦車以外にも知ってるのか、ちなみコックが主人公の某機動戦艦アニメのサブタイの事じゃないよ。
「あれを見るぜよ」
おりょうに言われて見るとカエサルとカルパッチョが二人でなにやら話ていた、あぁ、そういえばカエサルが居なかったな。
「あのⅢ突、たかちゃんだったんだ、あ~ぁ、最後はたかちゃんにやられちゃったな」
「ひなちゃんだって西住隊長が苦戦したって、やっぱりすごいよ」
カエサル…だよね?うん、カエサルのはずだ、普段とキャラが違うけど。
「いやぁ、あぁいうカエサルを見るのはなんだか新鮮だな」
「あぁ、家ではたまにローマの甲冑を着ているのにな…」
それを見てニマニマとする観察組三人、趣味が悪いとは思うが家でローマ甲冑着ているという事実が衝撃だわ、どんだけローマ好きなんだよ…、ロムルスさんか。
「あら?ふっふふ…」
「なんだよ?」
「お友達が心配してるみたいね」
カルパッチョが見つけた事であっさり隠れているのがバレた、歴女三人は笑って誤魔化している。
「へ、ヘルマン、お前だけ隠れてるなんてズルいぞ」
「なんでだよ…、そもそも俺関係無いし」
三人が先に出ていったおかげで俺は隠れたままでいられた、いや、本当に関係無いから巻き添えくらう必要も無いんだけど。
「皆さんも一緒にどうですか?大洗でのたかちゃんの話も聞きたいですし」
カルパッチョは微笑みながらエルヴィン達に声をかける、これが正妻の余裕ってやつかな?
「…たかちゃんじゃないよ」
「…え?」
「私はカエサルだ!!」
バサッとマフラーが翻し、格好良くカエサルが答える。
「そうね、じゃあ…私はカルパッチョで」
いったい何が【じゃあ…】なのかわからんが、カルパッチョは髪をファサッとかきあげる、一見真面目そうだがこのノリの良さはやっぱりアンツィオに通じてるのね。
「来年もまた戦おう、次は負けないからね」
「私達も負けないさ」
二人は握手をかわすとエルヴィン達三人も加わって談笑を始めた、うーん、俺の事は忘れられたのかな?
また行く宛もなくなり適当に歩いてるとコロコロとバレーボールが転がって来た。
「あっ!比企谷コーチ」
それを拾いあげると案の定、すぐにバレー部の連中がやってくる。
「なんだお前ら、姿が見えないと思ってたらまたバレーか」
宴会の場まで来てバレーとは…、やっぱり恐るべしスポ根連中である。
「もちろんだ!他校と試合できる貴重な機会だからな!!」
キャプテンの磯辺も嬉しそうだ、ん?試合?
「アンツィオの奴らと試合してたのか?」
「はい!イタリアといえばバレーですから」
「イタリアにはバレーのプロチームもありますから」
いや、アンツィオは日本の学校でイタリアじゃないんだけどね…、そもそも相手、戦車道のチームだし。
「よく相手集められたな…」
いくらノリと勢いのあるアンツィオの連中でもいきなり『磯野~バレーしようぜー』とか、そんな中島的ノリで集まるものだろうか?
「それはナオミさんにも手伝ってもらいました」
「ナオミ…?え?ナオミか」
「あぁ、私だ」
バレー部の奴らに混ざってナオミが居た、バレーボールを持つ姿が絵になるなぁ、こいつの場合スポーツ全般が似合いそうだが。
「意外だな、バレーとかやるのか」
「隊長がバレーに限らずスポーツが好きだからな、よく付き合ってる、アリサもね」
あぁ納得だわ、あの人アクティブだしな、しかしアリサからしたら完全に巻き添えだなそりゃ。
「ナオミさん、さっきのスパイクは見事でした!!」
「ありがとう、君達こそ人数不足で大会に出れないのが惜しいね」
「ではナオミさんが我々のメンバーに!!」
「いや、それは無理だが…」
ナオミさんマジレスである、いや、バレー部の連中は結構本気だったのかもしれんが。
「そうですか…残念です」
「近藤、くよくよするな!こうやってバレーの魅力を伝えていけばいずれきっと新しいメンバーも増える!!」
しかし磯辺はめげない奴だな…、ここで試合してもバレーの魅力が伝わるのは他校の生徒だけなのに。
「早速今から二回戦、どうですか?」
「いや、この後少し用事があるんだ」
「えー!ナオミ姐さん、行っちゃうんですか!!」
「ナオミ姐さんマジ格好良かったッスよ!うちらマジ惚れちゃいそうです!!」
「ありがとう、君達はこのまま楽しんでくれ」
…ナオミの奴、アンツィオ校生徒にもモテモテなんだけど、なんだこのイケメン。武部とはまた違ったモテモテ具合だな、どっちが彼氏取得に有利かは知らんが。
ナオミは高校生戦車道有数の砲手として有名らしいが、こっちの方も百発百中なのか…、全く、こうやって女子がモテるから世の中にモテない男子が増えるんだよ。
磯辺達バレー部連中はアンツィオ校の生徒を引き連れてそのまま次の試合をやるようだ、俺は当然行かないけど。
あれ?ナオミと二人きりになっちゃったぞ、こいつは気まずい、あまり喋った事もないし一回戦での【消しカス作戦】の事で負い目もあるんだが…。
「エイトボール」
「ん?あ、あぁ…」
そういや俺の事だった、つーかあんたもエイトボール呼びなのね。いや、そもそもナオミは俺の名前知らないのかもしれんが。
「Ⅳ号の砲手を紹介して欲しいんだが、頼めないか?」
「え?あぁ、別にいいけど…」
五十鈴に何か用でもあるのか、しかし今日はよく紹介を頼まれる日だな、なんでみんな俺に言うのよ、たぶんこの中で一番知り合い少ないの俺だよ?
ナオミを連れて五十鈴を探す、あいつの事だしまだ飯でも食ってるんじゃないかと思ったら予想通りだった。
「あら、比企谷さんとナオミさん」
「こんにちは」
五十鈴と、もう一人はアッサムさんだ、珍しい組み合わせ…でもないか、二人共お嬢様だし。
…五十鈴の前に置かれた大量の空の食器さえ見なければ。
「ハロー、あんたがⅣ号の砲手かい?」
「はい、五十鈴 華と申します」
「そういえば先ほどはきちんと自己紹介できませんでしたね、アッサムです」
「ナオミだ、二人共よろしく」
五十鈴、ナオミ、それに確かアッサムさんもチャーチルの砲手だったか、これで砲手三銃士が揃ったな。
「一回戦、とても良い狙撃だった」
「ふふっ、ありがとうございます、ですが私なんてまだまだです」
確かにあの一回戦、あの距離の丘の上から短砲身で動いているサンダースのフラッグ車に当てた事は素直に驚いた、あれが外れていたら大洗の負けは決まっていただろう。
しかしそれをわざわざ言う為に五十鈴の紹介を頼んできたのか、自分が負けた試合だというのにナオミもなかなかストイックだな。
「謙遜する事はありませんわ、私も後で中継を見て驚きました、戦車道はいつからやってたんですか?」
「いえ、今年からです、大洗は去年まで戦車道が無かったので」
「それであの狙撃か…、何か秘訣がありそうだね」
「秘訣…かは分かりませんが、私は華道が趣味なので、集中力だけは自信があります」
よくよく考えると華道の家元の娘が優秀な砲手ってのも変な話な気がするが、五十鈴は結果を出してるし何も言えない。
「華道ですか…、大洗の強さの秘訣は戦車道だけではないのですね」
「あぁ、サンダースにはないから私も経験ないね」
サンダースはアメリカンだもんね、そういやナオミはガムを噛んで集中力を上げてるんだっけか?
ガムを噛んで集中力が上がるなら今度五十鈴に華道の指導受ける時試してみるか。
ガム噛みながら花を生ける。…俺が五十鈴にボロボロにされる未来が見えるな。
「よろしければ今度、私がお教えしましょうか?」
「そうですね、淑女たるもの、そういう伝統を学ぶのも悪くありませんわ」
「そうだな、今度機会があれば」
止めといた方がいいと思うよ…、軽い気持ちで始めると後悔するからね?いや、ガチで。
「…狙撃といえば、次に大洗が戦うプラウダ高校には彼女が居ますね、ナオミさん、戦った事は?」
「いや、まだないな、プラウダとサンダースは何故かあまり大会でもぶつからない」
「えっと…、誰かお知り合いの方でもいるんですか?」
「知り合いというより…有名な方ですから、ブリザードのノンナ、ナオミさんと肩を並べる優秀な砲手として」
うわー…、聞きたくなかったなぁ、ナオミに続いてまた相手側に優秀な砲手の登場かよ。
優秀な砲手が相手に居る時点で相手の攻撃力が大幅に上がってるようなもんだもんな、相手の命中率が高ければそれだけこちらの戦車がやられる確率も上がる訳だし。
ただでさえ向こうは前回の優勝校なのに…、しかしブリザードって何だ?地吹雪のカチューシャと合わせてそんな通り名が付いてるのか。
「ブリザードのノンナさんですか…、これは私ももっと精進が必要ですね」
「せっかくの機会ですから、ナオミさん、何か砲撃のコツ等を教えてもらってもよろしいでしょうか」
「コツ…といえるのかわからないが、それならーーー」
しかし今気付いたけど俺さっきから全然話題に入れてないな…、ナオミによる砲撃講座も始まっちゃったし、いよいよ蚊帳の外だ、
そもそもナオミを五十鈴に紹介する為に連れて来た訳だし別にいいんだけどね…、さて、どうしようか。
「やはり場所が問題だな…」
「そうね、それに物資も数が足りないんじゃない?」
そう考えていると安斉さんとケイさんが何やら深刻そうに会話しているのが目に入った、何かの相談事か?
「ん?おっ、比企谷か、どうだ?楽しんでいるか?」
「えっと…まぁ、それなりに」
さっきからあっち行ったりこっち行ったりで全然自分の居場所がありませんけどね。
「二人共何やってんですか?」
「ふっ…、聞いて驚け!我々アンツィオにあのサンダースが直々に練習試合を申し込んで来たのだ」
「え?そうなんですか?」
「えぇ、今日の試合見てたら私達も戦ってみたくなったの!お互い正々堂々と良い試合をしましょう」
「もちろんだ、こちらこそよろしく頼む」
サンダース対アンツィオって…、シャーマン対CV33になるんじゃないかな?一回戦の俺達以上にクソマッチングなんだけど。
「しかし、もう練習試合の話ですか?」
「ん?あぁ…、大会は終わったが私達のやる事が終わった訳じゃないからな」
「来年に向けての新たな体制を作るのもキャプテンの勤めよ、その為の練習試合ね」
来年自分達が抜けても大丈夫なように今から動いているって事か、この二人もやっぱり隊長なんだな…。
「来年かぁ…、アイツら大丈夫かなぁ?」
「アリサもね…、またアンフェアな事しなければいいんだけど」
あぁ、隊長お二人の心労がこっちにまで伝わってくる、…この二人も苦労してるなぁ。
ペパロニもアリサもそこら辺、ちょっとは労ってやって欲しいものだなこりゃ。
「じゃあ今は練習試合の打ち合わせですか?」
「ん?それはもう終わったぞ」
「え?じゃあさっきの深刻そうな話はなんだったんです?」
「ふっ…、そんな事は決まっているだろ!!」
「練習試合が終わった後のパーティーよ!今日のこのパーティーみたいな楽しいものにしなきゃね!!」
あー、そうだった…、この二人はそういう人達だったわ。さっきの俺のちょっと尊敬してた気持ち返して。
「サンダースは戦車道選択者が多いと聞いているからな、当然それなりの場所と食材の確保が必要だ」
ふーむ、と真剣に考えている安斉さん、アンツィオってそういう事ばっかりやってるからお金無いんじゃないかな?
「無理しなくていいのよアンチョビ、なにもうちの選手全員招待しなくても」
「ダメだ!試合に関わった選手、スタッフを労うのがアンツィオの流儀だからな、例え試合に出ていなくてもそれは同じだからな」
自信満々にそう告げる安斉さんだが、あれ?サンダースって確か一軍から三軍まであって戦車の保有数も全国1位なんだよね?
その数50両以上、シャーマン戦車は五人乗りだから最低でも…。
「でもうち、戦車道選択者が500人以上居るわよ?本当に良いの?」
「ご、500ッ!?う、うちの何倍だ!!」
…マジでか、多いとは思ってたが500人以上って、大洗と比べると更にスケールが違いすぎるな。
「も、もちろん大丈夫だ、それがアンツィオの流儀だからな」
全然大丈夫そうじゃないんだけど…、たぶんあれだけ自信満々に啖呵をきった手前退くに退けないんだろうなぁ。
500人以上にアンツィオの生徒も加わるって、それもう宴会の域を越えてちょっとしたイベントになるぞ…。
「もちろん私も協力するわよ、楽しいパーティーにしましょう」
「そうだな…、こりゃ最初から考え直す必要があるぞ」
そう言って二人は真剣に会議を再開する、練習試合の打ち合わせじゃなくてその後の宴会の方が重要案件になりそうだなこれ。
…邪魔しちゃ悪いし、そろそろ行くか。
とはいえもうだいぶあちこちまわったしな、さすがにそろそろ疲れた。
「…ふぅ」
適当な木の下を見つけて座り込むとぼーっと宴会の様子を眺める。
大洗、アンツィオ、それに聖グロリアーナとサンダースまで加えた大宴会だ、まだまだ会場内は大盛り上がり。
何やら悪巧み中の生徒会とダージリンさん。
ペパロニとローズヒップ、そして冷泉による戦車レースとそれを楽しそうに応援する秋山。
お茶をしている一年共とオレンジペコ
武部流練習講座に大忙しな武部とちゃっかりそれに混ざっているアリサ。
談笑を続け、たまにカエサルが頬を赤らめる歴女チームとカルパッチョ。
アンツィオ高校の生徒とバレー試合中のバレー部。
砲撃談義に花を咲かせる砲手三銃士。
練習試合後の宴会の打ち合わせに熱心な安斉さんとケイさん。
しかし、いろいろ見て回ったものの、俺はやっぱりこの打ち上げとか宴会の雰囲気が苦手なのだろう、結局またぼっちになっちゃったし。
これがいわゆる唐突な当たり前の孤独というやつだ、あのアニメよりもわかりやすいでしょ?
しかしまぁ…、本当にーーー。
「楽しいなぁ…」
…?
いや、いやいやいやいや、え?誰だよ今の台詞言った奴?
幻聴かな?何か男の声が聞こえて来たんだけど、今この場に居る男って…。
…え?俺?今の言葉、俺が言ったのか?
嘘だろおい…、お前はこういう打ち上げとか宴会とか、そういうリア充的なノリは嫌いなはずだぞ。
あぁ恥ずかしい…、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!口ではいつもあれこれ否定する事言ってる癖に何唐突に呟いてんの?
穴があったら入りたい…、戦車があったら砲塔に入りたい…、それは死んじゃうな、いや、いっそ殺して欲しいくらいだけど。
幸いなのは大洗の連中には聞こえていない事だった、良かった…、これ聞かれてたら本当に悶え死んでたかも。
ひとしきり悶えた後、ようやく冷静になれたので顔を上げる。
「えっと…八幡君、大丈夫かな?」
西住とばっちり目が合った。
…あ、死んだ。