やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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分度器作戦とは結局なんだったのか…、私、気になります!!

…やっぱりムズいよ戦車戦!!


そして、戦車道全国大会二回戦に決着がつく。

「わっ!なんか後ろから来たんですけどー!!」

 

十字路の南側、偽戦車の看板を撃ち抜く事に成功したウサギさんチームは指示通り撤退を考えていたがそこにちょうどセモヴェンテが現れた。

 

もちろんカルパッチョの指揮するセモヴェンテ部隊の本命はあんこうチームのⅣ号である、こちらには1両のみだ。

 

「ど、どうしよう!?撃つ?撃っちゃう!?」

 

「でも後ろ取られてるよ!!」

 

M3リーには主砲と副砲の2つの砲があるが回転砲塔は副砲のみ、主砲は上下にしか動かない、背後を取られたこの状況は明らかに不利だ。

 

「周り込んで撃っちゃいなよ~」

 

「みんな落ち着いて!こちらウサギさんチーム、十字路の更に南からセモヴェンテが1両来ました、撤退出来ません!!」

 

車長の澤は急いで今の状況を十字路の反対側、北側に居るであろうあんこうチームに知らせる。

 

『こちらあんこう、十字路の北側にはセモヴェンテが二両居ます、おそらく相手は私達をこの十字路に足止めするつもりです』

 

「こちらのセモヴェンテ、私達が引き受けますか?」

 

『いえ、まだP40の姿が見えない以上、こちらのフラッグ車が狙われている可能性があります、そのまま敵を引き付けながら十字路を進んで下さい』

 

「みんな聞いた?このまま進んで西住隊長と合流するよ」

 

「梓、格好いい~」

 

「茶化さないの!!」

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「隊長車を狙って!指揮に専念させないで!!」

 

自車の装填を素早く済ませてカルパッチョがもう1両のセモヴェンテにも指示を出す。

 

撃破出来ればそれが一番だが、それよりも狙いは指揮系統の混乱だ、こうして自分達が絶え間なく砲撃で狙っていれば隊長車は満足に指揮をとれなくなる。

 

「あのセモヴェンテ…装填スピードが速いですね、私も見習いたいです」

 

「うん、やっぱりこのまま戦うのは分が悪いと思う」

 

二両のセモヴェンテを相手にしながらもウサギさんチームと合流すべく、あんこうチームは十字路の中心へと動く。

 

『こちらウサギさん、もうすぐ十字路の中心です』

 

「わかりました、麻子さん、合図と共に右に寄せつつ停車して下さい」

 

「わかった」

 

ウサギさんチームからその通信が入ると西住みほは操縦手の冷泉に向けてそう指示する。

 

「…て、止まるの!?敵に撃たれちゃうよ!!」

 

「大丈夫、その前に決めるから」

 

その瞬間、前方から合流の為にこちらに向かうM3リーがやってくるのが見えた。

 

「停車ッ!!」

 

それを確認した西住みほの合図と共にⅣ号は右に寄せつつ停車、その横をM3リーが通り抜けて行き。

 

当然、M3リーを追いかけていたセモヴェンテがすぐにⅣ号の射程圏内に入る。

 

「発射ッ!!」

 

Ⅳ号はそのセモヴェンテに砲撃を命中させ、白旗を上げさせるとすぐに前進して南側を抜ける。

 

「ふえー、あんこうすごい」

 

その一瞬の出来事にウサギさんチームの皆が驚きの声を上げる。

 

『ウサギさん、南側が空きました、このまま十字路を切り抜けます、ついて来て下さい』

 

「わかりました、すいません、あまり役に立てなくて…」

 

結局、自分達がやってる事といえば逃げているだけなんじゃないかと、澤は少し表情を曇らせる。

 

『大丈夫、セモヴェンテの狙いはたぶん、隊長車のあんこうです、そこでウサギさんチームの皆さんにお願いがあります』

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「もー、まだ追いかけて来てる!追いかけて来るのは素敵な男子だけで良いのに!!」

 

「追いかけられた事、あるんですか?」

 

十字路の包囲を切り抜けたといっても依然としてセモヴェンテに追いかけられている状況に変わりはない、しかも相手のP40はまだ姿が見えないときている。

 

「カメさん、カバさん、おそらく相手はP40単独でフラッグ車のカメさんを狙いに来るはずです」

 

あの十字路は明らかに足止めだった事を考え、西住みほはアンツィオ高校の今回の作戦に予想をつける。

 

『な、なにぃっ!?』

 

「こちらのフラッグ車は当然標的になりますが、相手もフラッグ車です、ここはⅢ突の長所を生かす為にあえて囮として、敵を引き付けましょう」

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「ーーーと、向こうは考えているはずだ」

 

『つまりどういう事ッスか?』

 

「だーかーら!何度も説明しただろう!向こうはフラッグ車を囮にしてⅢ突を待ち伏せさせるはずだと!!」

 

通信の向こうから返ってくるペパロニの呑気な返事にアンチョビはため息をついた。

 

『おおっ!さすがアンチョビ姐さん!でもなんでそんな事わかるんッスか?』

 

「ふん、西住流の相手をした事なんて一度や二度じゃないからな、それくらいお見通しだ」

 

西住流との戦いなら姉の西住まほの方ではあるが経験済みだ、アンチョビはそれを踏まえて偵察用にペパロニを連れて来たのだ。

 

『へー、すごいッスね、それで、結果はどうだったんです?』

 

「そ、そんな事、今はどうでも良いだろ!つまりだペパロニ、お前は隠れてるⅢ突を見つけるんだ、フラッグ車の近く、必ずどこかで待ち伏せている」

 

『了解ッスよ!アンチョビ姐さん!!』

 

ペパロニの乗るCV33はフラッグ車の38(t)とその近くに隠れているであろうⅢ突を探して森を駆けた。

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「この作戦にはカバさんチームの協力が必要です、皆さん、八幡君の用意したあれの準備は良いですか?」

 

『いつでも出来ている』

 

『ようやく我等の出番だな』

 

西住みほの通信にカバさんチームの皆は自信満々といった風に返した。

 

「ではこれより、敵フラッグ車を叩く【ぶんしん作戦】を開始します、一発勝負になりますので充分に注意して下さい」

 

『了解した、これより黄金劇場を設立する!!』

 

『やはり秀吉の一夜城…、む、しかし真田丸も捨てがたいな』

 

「あの…【ぶんしん作戦】、なんですけど」

 

ちょっと恥ずかしそうに呟く西住みほだったが自分達も現在セモヴェンテに追われている身なのでそれ以上の言及は避ける事にした。

 

キューポラから顔を覗いて自分達に迫る二両のセモヴェンテを確認する。

 

「やっぱり私達を狙っている…、ウサギさんチームの皆さん、お願いします」

 

『了解です!!』

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「せっかくあんこうチームのみんなが囮になってくれてるんだから、絶対やっつけるよ!」

 

「やっと撃てる!!」

 

M3リーの主砲の砲手を勤める山郷は嬉しそうにスコープで照準を合わせる。

 

逃げる途中であんこうチームと別れた彼女達だが、セモヴェンテ側の狙いはやはり隊長車のⅣ号。

 

「慌てなくて良いから落ち着いて狙って」

 

「よーし!!」

 

無事単独になる事に成功した彼女達はⅣ号を追うセモヴェンテの内の1両に狙いを定めた。

 

「撃ってッ!!」

 

M3リーの砲撃がセモヴェンテに命中して白旗を上げさせた。

 

「やった!当たった!!」

 

「やれば出来るね!私達!!」

 

試合での撃破は初となり、車内の彼女達はおおはしゃぎだ。

 

「落ち着いて、もう1両も狙うよ」

 

「梓、西住隊長みたい~」

 

「だから茶化さないでって…、あれ?」

 

気が付くと彼女達のすぐ近くまで来ていたのはセモヴェンテとCV33である、この二両はカルパッチョの率いていた部隊ではなく、八九式を追いかけて撃破した二両が戻って来たのだ。

 

「うわっ!なんか来てる!!」

 

「どどど、どーしよ?」

 

突然の敵の襲来に慌てふためくウサギさんチームにセモヴェンテが迫る。

 

「やろう調子に乗りやがって!こっから反撃だ!!」

 

セモヴェンテの車長の指示に砲手がトリガーを引いたその瞬間、大きな爆発と共にセモヴェンテの砲身が吹っ飛んで白旗を上げた。

 

「…あれ?なんか勝手に爆発したんだけど」

 

「どういう事?」

 

「わかんない」

 

突然の事に動揺するウサギさんチームであるが、セモヴェンテと一緒にやって来たCV33の乗員の方もそれは同じである。

 

「え?えーと…、とりあえず撃って」

 

M3リーはそのままCV33の撃破に成功、しかしそんなやり取りのおかげでⅣ号と残った最後のセモヴェンテは完全に見失ってしまった。

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

『すいません、なんかセモヴェンテ勝手に爆発しましたー』

 

「え?」

 

突然の報告にカルパッチョは耳を疑ってしまったがすぐに答えがわかった、というのも…彼女達の乗ってたセモヴェンテは試合前に急遽購入した中古の謎の激安商品だったのだ。

 

「み、みんな大丈夫なの!?」

 

『砲身が吹っ飛んだだけなんで全然大丈夫でーす!!』

 

車内のカーボンについてはきちんと確認したがどうやら砲身が不良品だったらしい。

 

ともあれこれで残りは自分達の乗るセモヴェンテだけ、作戦が成功して追い詰めていたつもりだったがそれも覆された。

 

思えば十字路での包囲の抜けかたも完璧のタイミングでやられた、挟撃する事を読まれて逆手に取られたのだ。

 

「…これが西住流、ですか」

 

形勢は逆転され、1両だけとなった自分達にⅣ号戦車が迫る、一対一の状況となれば勝ち目がないとカルパッチョは理解した。

 

「でも…時間稼ぎくらいなら」

 

まだアンチョビの乗るフラッグ車のP40が残っている、Ⅳ号をここで引き付け、時間を稼ぐ。

 

「ドゥーチェ、後はお願いしますね」

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

『見つけましたアンチョビ姐さん!フラッグ車とⅢ突ッス!!』

 

「よし!でかしたぞペパロニ!!」

 

ペパロニから報告を受けたアンチョビは全速力でその場へと向かう。

 

まずは隠れているⅢ突だ、向こうはまだこちらが気づいてないと思っているだろうから下手に動かないだろう。

 

Ⅲ突さえ落としてしまえば38(t)は恐れる必要が無い、どうとでも対処できる。

 

『すいませんドゥーチェ、セモヴェンテ隊、全滅しました』

 

その途中、カルパッチョから連絡が入る、

 

「なっ!おいカルパッチョ、みんな怪我してないだろうな!!」

 

『ふふっ、それは大丈夫です』

 

「なら良い、ご苦労だったな、こちらもすぐ終わる!!」

 

ペパロニから報告を受けた地点に移動したアンチョビは前方にフラッグ車、そして木の茂みの中に隠れているⅢ突を見つけた。

 

「やはり囮か…、だが隠れ方が甘い!!」

 

ぐずぐずしていると大洗の主力が戻って来る、アンチョビはP40の砲塔を隠れているⅢ突に向け砲撃を放つ。

 

「はっはっは!よーし、後はフラッグ車を…」

 

砲撃は無事命中し、Ⅲ突はバラバラに崩れ落ちた。

 

「なっ…」

 

そう、バラバラに崩れ落ちたのだ、地面に落ちるのは破片となった木の板、看板である。

 

「なんだってぇーッ!!」

 

自分達が練習の時に良く見た、まるでデジャブのようなその偽物のⅢ突にアンチョビが驚きの声を上げる。

 

「じ、じゃあ本物のⅢ突はどこに…」

 

瞬間、P40の車体を砲弾が貫いた。

 

その場からおおよそ1500メートル離れた場所。

 

「仕留めた!!」

 

「これぞ訓練の成果だな、左衛門佐」

 

本物のⅢ号突撃砲による砲撃がP40を貫いたのだ。

 

『アンツィオ高校、フラッグ車走行不能、よって…大洗学園の勝利!!』




























八幡「べ、別に出番が欲しかった訳じゃないんだからね!!…うん」

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