やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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ちょっと強引ですがオリジナル展開、8話にしてようやく八幡と西住殿をきちんと会話させる事が出来たよ、八幡だけに。
ちなみに注意ですが作者は戦車の知識は本当、全く無いんで基本的にウィキペディア先生です。


ようやく、比企谷八幡と西住みほは話をする。

「ZZZ…」

 

「………」

 

さて、戦車を探せと言われても特に当てもやる気も無い訳ではあるが、一応形式的に探していると戦車よりも妙なのを見つけた。

 

森の近くにある広場、そこで一人の女子が堂々と眠りこけているのだ、読みかけの本が近くにあるのを見ると読書の最中に眠くなって寝てしまったのだろう。

 

俺だって今ぶらぶらとしてはいるが、今の時間は選択科目の授業時間である、つまりこの女子、どう見てもサボりである。

 

まったく羨ましい…、こちとら生徒会に目をつけられての社畜生活だというのになんて格差社会だろうか。

 

などと愚痴をこぼしても仕方ないし、とりあえず森を適当にぶらついてみるか、え?この寝てる女子?そりゃほっとくでしょ。

 

下手に関わって妙な誤解を受けるのも面倒なので、さっさとその場から離れ、森の中に入る。

 

この森も大洗学園の敷地内である、他にも山や崖も学園内に存在しているのがこの大洗学園の敷地面積の広さを物語っているようだ。

 

まぁ元々この学園艦自体、大洗学園の設立の為に作られたものだしな、なんか教育で船の上に学園を作る、みたいなのがあるらしい、税金の無駄遣いだと思うが。

 

しかし、これほどの敷地面積がある事を考えれば昔、大洗学園が戦車道が盛んだったのも頷けるな、戦車道は試合はもちろん、練習をするにしても広大な土地や様々なステージが必要になるっぽいし。

 

仮にこの森が戦車道の練習に使われていた可能性があるなら、もしかしたら本当に廃棄された戦車も見つかるかもしれない、そう思っていたら。

 

「ビンゴかよ…」

 

戦車を見つけた訳ではない、が、俺が見つけたのは森の中にある今や誰も使わなくなったであろう、ボロボロの小屋だ。

 

ただしこの小屋、半壊している、それは長い年月で自然 にこうなったというより、そう、例えば砲弾でもぶちこまれたような跡だ。

 

つまり、戦車道の練習の跡だ、こんなものがあるならこの森は戦車道の練習に使われていたのだろう。

 

「って事はこの近くに…」

 

更に森の奥へと入って行く、戦車道の跡を注意深く探して行くと思いの外それはあっちこっちにあった。

 

不自然に倒れた木や崩壊した岩。

 

大洗学園が戦車道を廃止して20年は経つという話だが、案外、残ってるもんだな、と思いながらその足どりを更に森の奥へ、奥へと進めて。

 

「…うん」

 

しばらく進んだ所でふと立ち止まり、空を仰いだ。

 

結論…迷子になった、何やってんの?俺!?

 

やー、ほら、戦車道の跡を見つけるのに夢中になってたからさ、周りが見えてなかったっていうか。

 

っべー、マジっべー、とか思わずキャラ崩壊しそうになるが、まだ慌てる時間じゃない、何故なら俺には携帯があるのだ。

 

これで誰かに連絡を…、よくよく考えれば俺、誰の連絡先も知らねーじゃねーか。

 

警察…は最終手段だな、あんま大事にもしたくないし、学園で迷子になりましたーとか笑い話だし。

 

いよいよもってちょっとヤバいな…と冷静になろうとすると。

 

「…ん?」

 

視界の隅にチラリとそれは見えた、木々の隙間から微かに見えたその鉄の固まりは。

 

「…戦車か」

 

いや、今は戦車とかどーでもいいんだけど、でも一応見つけた事は見つけたし、どんなものかと近寄ってみると。

 

「比企谷君!!」

 

「西住…?」

 

戦車の横で体育座りをしていた西住がパァッと明るい笑顔で顔を上げると立ち上がって俺に駆け寄りその手を握ってきた。

 

「よかったぁ〜、戦車は見つかったんだけど皆とはぐれちゃって、どうしようかって思ってたんだ」

 

そのまま嬉しそうにぶんぶんと俺の手を振ってくる、相当不安だったのだろう、でもほら、ちょっと勘違いしちゃうから止めて。

 

というか勘違いしているのは西住だ、俺は決して彼女の救援に来た訳ではない。

 

「あー、その、何だ、悪いが西住、俺も迷子なんだわ」

 

「…え」

 

俺の言葉を聞いた西住は俺の手を握ってた腕をだらんと下ろした。

 

「えっと、比企谷君も…迷子?」

 

「あぁ、戦車道の練習をしてた跡っぽいのを追い掛けてたら、ここにたどり着いたんだが、帰り道がわからん」

 

「私も…、華さんが鉄と油の匂いがするって言って皆でこの森に入った後、戦車道の練習の跡見つけて追い掛けてたら皆とはぐれちゃって」

 

まぁ西住は戦車道の経験者だし、あのメンバーの中では一番そういうのに気付きやすいだろう、んで状況は俺と全く一緒か。

 

というか鉄と油の匂いを嗅げる五十鈴さん何者ですか?

 

「あ!そうだ、比企谷君、携帯は持ってないんですか」

 

「ある」

 

「だったらそれで誰かに連絡を…」

 

「連絡する相手が居るならとっくに連絡してる」

 

あ、西住の顔が明らかに引いてる。

 

「生徒会の人達の番号とか知らないんですか」

 

「知らん、つーか知ってても絶対登録しないし教えない」

 

俺の番号が生徒会に知られたら今まで以上にこき使われるのは明白だ、それは絶対に避けよう、俺の安寧の為にも。

 

「まぁいざとなりゃ警察に連絡は出来る、そんな心配すんな」

 

「う、うん、そうだよね、よかったぁ」

 

西住を安心させ、俺は戦車の方を向いた。

 

「…Ⅳ号戦車か」

 

ドイツ戦車にて最も多く生産され、改良に改良を重ねて長く主力として戦場で使われていた汎用性の高い戦車だ。

 

「本当に見つかるとは思わなかった」

 

「うん、私もこの森が戦車道の練習に使われているのはわかったんだけど…」

 

「つーか動くのかコレ?20年は放置されてたんだろ」

 

「私も本格的な整備は専門外かな、会長は自動車部の人に修理させるって言ってたけど」

 

マジかよ、てっきりちゃんとした所に修理に出すと思ってたしそれで本当に直ったらうちの自動車部有能過ぎんだろ。

 

「本当に直っていいのか…?」

 

「…え?」

 

たぶん、そんな事を聞いたのは後ろめたいからだったのだろう。

 

「戦車が直らなけりゃ、戦車道復活もなにもない、西住も戦車道に関わる必要がなくなるかもしれない」

 

西住の過去、黒森峰での事件を俺は知っていて、それでも尚、彼女の良心を利用して戦車道へと再び引き戻した事に対する後ろめたさ。

 

「それは…、うん、そうかも」

 

「だろ、だったらいっそ、このⅣ号も見つけられなかった事にするか、なんならもっと壊してもいいかもしれん」

 

「あはは…、それはどうかなって思うけど…」

 

俺としては俺も西住もこれ以上戦車道と関わる必要がなくなるナイスなアイデアだったが西住は意外にも苦笑していた。

 

「真面目な話だ、西住、戦車道を本当に避けるならここが最後の選択だぞ、安心しろ、生徒会には黙っとく」

 

「…比企谷君って生徒会の味方じゃなかったの?」

 

「俺は俺の味方だ、ってか、ぼっちに味方なんてはなっからいないんでな」

 

戦車道が復活しないのは俺にとっても都合が良いのだ、生徒会の味方とか冗談じゃない。

 

「何か変なの」

 

そう言って西住は小さく笑った。

 

「本音を言うと…、やっぱりちょっと怖い、かな、でも私、嬉しかったから」

 

「嬉しい…?」

 

「沙織さんと華さん、二人が私の為に一生懸命になってくれて、私、そんなの初めてだったから」

 

生徒会室でのあのやり取りの事だろう、確かにあの二人は生徒会の脅しにさえ屈せず、西住の為に戦った。

 

「前の学校でもずっと私の気持ちなんて誰も考えてくれなくて、お母さんもお姉ちゃんも、家元だから戦車道やるのは当たり前って、まぁあの二人は才能あるからいいけど…」

 

そう言いながら西住はどこか寂しげに先程とは違った強がったような笑顔を見せて。

 

「でも、そんなお姉ちゃん達に比べてダメな私は…、ずっとダメなままで」

 

西住の語る姉とは多分、黒森峰の隊長だろう、名前は確か…西住 まほだったか。

 

「一年で副隊長でフラッグ車を任された西住がダメ?アホか、全国のダメな奴に謝れ、てか俺に謝れ」

 

「ひ、比企谷君?」

 

「俺なんて妹、おっと間違えた、世界一可愛い妹が居るが中学の頃同級生に比企谷さんのお兄さんとか呼ばれたんだぞ」

 

「そ、それは…、あはは…」

 

え?何?引いてる?まぁ小町の可愛さに同級生がそっちに目がいくのはわからんでもない、が小町はやらん、絶対にだ!!

 

「でも私、よく怒られてたんだ、考え方が甘いとか、戦車道以外抜けてるって」

 

「あぁ黒森峰とか西住流ってなんかそんな感じだわな、戦車道やる流派っていうかなんかもう自分達が戦車だ!みたいな」

 

身体はきっと鉄で出来ていそう、西住姉とか見てると本当そんな感じ。

 

「そうそう…堅苦しくって…、あれ?そういえば私、比企谷君に前の学校とかの話したかな?」

 

「…あ」

 

まずった、完全に失言だったな。

 

「悪い、西住を戦車道に勧誘するためにちょっと調べさせてもらった」

 

「そう…なんだ」

 

その言葉を聞いて西住は顔を下に向ける、まぁいい気はしないだろう。

 

「じゃあ、あの…、去年の戦車道全国大会の事も?」

 

「…あぁ、悪いが知ってる」

 

「あ、あの、比企谷君、お願いがあるんだけど、その事、沙織さんや華さんには内緒にして下さい、いずれ私から話したくて」

 

「…安心しろ、内緒話が出来る程仲良くないから」

 

「あはは…、その、ありがとう」

 

そう言って西住は苦笑雑じり気にお礼を言う、礼を言う必要はない、ぼっちは喋らないのが得意なのだ。

 

しかしまぁ、気にするのはやはり武部と五十鈴か、西住にとってこの二人は大切なお友達なのだろう。

 

やる事は戦車道として同じではあるが、今と前とではその状況はガラリと違う。

 

人も設備も、西住の戦車道に対する気持ちも。

 

「楽しくなるといいな、戦車道」

 

「…え?」

 

「ここは黒森峰とは違う、西住流も無いし友達も居る、まず生徒会がアレだしな、だからまぁ、今度の戦車道はちょっとは楽しくなればいいんじゃねぇの?」

 

「比企谷君…、うん!!」

 

守りたい、この笑顔。

 

…と、冗談は置いといて、西住を戦車道に連れ戻した責任が俺にはやはりあるだろう。

 

ぼっちは基本的に誰かに借りを作ってはいけないのだ、責任だって取らねばなるまい。

 

だからまぁ…、その、西住が戦車道をやるというなら、彼女を戦車道に連れ戻した俺がその責任を放棄する訳にもいかないだろう。

 

彼女が戦車道を楽しめるように。

 

 


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