やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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正直ミカさん舐めてたよ、こんなにも書くのが厄介なキャラクターだとは…。
個人的に書きにくいキャラクターを順位つけるなら三位はダージリンさん(格言わかんねぇ…)、二位が歴女グループ(歴史ネタキツい)、一位が八幡だったんですがこれは順位変動だな。

え?主人公なのに八幡一位?いや、だって八幡だよ?


やはり、彼女達がそこに来た理由はそれである。

「………」

 

その不審者っぽい女性は俺には気付いていないのか、目を閉じたままカンテレを演奏中である。

 

その女性の醸し出す何とも幻想的な雰囲気も合わさってとても絵になる光景だ。…着てるのがジャージじゃなければね。

 

というか上はジャージなのに下はスカートなのね、こう…なんか上手く言えないんだけど、いいと思います。

 

…あまりジロジロ見るのも失礼だな、もう少しこのカンテレの音色を聞いてたい気もするが、そろそろ行くか。

 

え?この不審人物?当然ほっとくでしょ、俺の第六感が関わらぬが吉と告げている。

 

だって関わるとめんどくさそうだし、見えてる地雷をわざわざ踏むのは愚行というものだ。

 

「君も風に誘われて来たのかい?」

 

「…はい?」

 

そう思っているとその女性がカンテレを弾きつつも目を開いて声をかけてきた。…気付いてたのね、そりゃそうか。

 

つーか…、風?

 

「いや…そのカンテレの音が聞こえて来たんで、すいませんね、勝手に聞いちゃって」

 

「構わないよ、この音色は私だけのものじゃないからね」

 

「はぁ…?」

 

なんだかよくわからん物言いをする人だな…、しかしどうする?声をかけられてしまったぞ?

 

見た所彼女も高校生だとは思うが…、着ているジャージが大洗の物ではないので不審人物に間違いない、ひょっとしたら大洗の学園艦に密航してきたのか?

 

もしかして俺のスパイ活動の仕返しにアンツィオ校が送り込んで来たスパイ…?いや、田舎ヤンキーっぽいあのアンツィオ校生徒と目の前の彼女を結びつけるのは無理があるか。

 

「あの…、見た感じ大洗の生徒じゃないみたいですけど、何でここに?」

 

とりあえず軽く探ってみるか、最悪会長に連絡入れて風紀委員の皆さんに確保してもらおう。なんせうちの風紀委員は100人以上居るしな。

 

「風に流され、波に運ばれて来たのさ」

 

…遭難者なの?

 

「学校はどうしたんです?今日はバリバリ平日ですけど?」

 

「学校、そんな所に大切な物はあるのかな?」

 

「あぁ、無いですね」

 

あまりにも同意できたので即答するとピタリとカンテレを弾く彼女の手が止まった、え?なんか変な事言ったかな?

 

「ここにはね、探し物があって来たのさ」

 

「探し物…?探し物ってなんですか?」

 

「見つけにくいものさ」

 

きっとカバンの中も机の中も探したけれど見つからなかったんだろう。…これ以上はいろいろヤバそうだし止めとこう、つーかこの人もわかってて言ってるだろ。

 

「わざわざ平日に学校サボってまでやる事ですか?」

 

「何かを得たいと思うなら、自ら行動しなければ手に入らないものだよ」

 

「…自分から動いた事が裏目に出る事もありますがね」

 

というか俺の場合、裏目に出る事しかないまである、…昔からずっとそうだった。

 

「人は失敗する生き物だからね、大切なのはそこから何を学ぶかだよ」

 

「学んでも成長しなければ意味はありませんけどね」

 

ちなみに俺はしっかりと成長できたので自分からは極力動かないようにしている。つまり何も欲しない、これ最強。

 

「…変わった考え方をするね、君は」

 

「どうも…」

 

いや、あなたほどじゃないと思いますが、本当にこの人なんなの?

 

「…少し喋りすぎたかな、何か飲み物でも持ってないかい?」

 

「自販機ならすぐ近くにありますけど…」

 

「じゃあ行こうか、ちょうど風向きも変わったみたいだしね」

 

「まぁ、いいですけど…」

 

どうでもいいけどさっきから風風ってそのやたらと風押しなのはなんなの?厨二病なの?

 

でもこの風、少し泣いていると思います。

 

そんな訳で俺の後をカンテレを持ちながら彼女は着いてくる、まるで吟遊詩人を仲間に加えたドラクエパーティーみたいだ。吟遊詩人で魔王討伐とか舐めてるとしか思えないけど。

 

「…着きましたよ」

 

自販機の前に到着、せっかくだし、ついでに俺もマックスコーヒー成分を補充しようとお金を入れる。

 

「君はどれにするんだい?」

 

「まぁ、これですかね」

 

当然の事ながらマックスコーヒーをチョイスさせてもらう。

 

「なら君の判断を信じよう、同じものをもらえるかな?」

 

「…いや、お金は?」

 

「後で払うさ」

 

「えと…はぁ?」

 

なんだか釈然としないまま、自販機でマッ缶を購入し、彼女に手渡した。

 

「…これはコーヒーかな?」

 

「マックスコーヒーですよ、それよりお金払って下さい」

 

俺の言葉を聞いていないのか、彼女はマッ缶のプルタブを開けて一口。

 

「…どうやらコーヒーではなさそうだね」

 

「いや、だからマックスコーヒーですって、それよりお金払って下さい」

 

「お金…、それは人生でそんなにも大事なものなのかな?」

 

「少なくとも人が生きてくうえで一番重要なものじゃないですかね?なのでお金払って下さい」

 

「お金が無くたって、それはそれで楽しく生きていけるんじゃないかな?」

 

「あればもっと楽しく生きていけると思いますよ、つーか後で払うって言いましたよね?」

 

「払うさ、でも…今はまだその時じゃない」

 

なにその理論、何処の帝愛グループですか?詐欺もいいところでしょ…。

 

いい加減付き合ってられないし、そろそろ風紀委員に通報しとくか、学園艦の不法侵入に加えて詐欺罪も追加してやる。

 

…まさか、普段通報される事を恐れている俺が通報する立場となるとは、何か新鮮だなぁ。

 

「ミカ!もー、やっと見つけたんだから!!」

 

俺が風紀委員に通報するべく携帯を取りだそうとしてると何やら二人組の女性がやって来た。

 

この二人も目の前の不審人物…、ミカと呼ばれていたが、彼女と同じジャージを着ている。

 

「やぁ、アキ、ミッコ」

 

「やぁ…、じゃないよぉ!ミカ、また探すのサボってたんでしょ!!」

 

「違う、風と語り合ってたのさ」

 

それって俺の事かな?風ってようは空気みたいな存在って事ですかね?

 

「もう、また訳わかんない事言って…、あれ?ミカ、その手に持ってるのって?」

 

「ジュースだね」

 

「なにー!ズルいぞミカ!一人だけ飲もうとするなんて!!」

 

「これは私にプレゼントされた、サンタからの贈り物だからね」

 

「もう、何言ってるのサンタなんて…、あれ?」

 

「…誰?」

 

やって来た二人…、アキとミッコと言うらしいが、二人がようやく俺に気付く、あまりに気付かれなかったんで一瞬、本当に風になったのかと思ったわ。

 

「いや、そもそもプレゼントしてないし…」

 

あと、俺がサンタになんてなったら純心な子供達の夢を壊してしまいそうだな…、サンタの目は腐ってました、とか。

 

はて、サンタ?クリスマス?合同企画?…うっ!頭が!!

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「はぁ…、甘くて美味しいね」

 

「本当だよな、もう探し疲れて喉もカラカラだったし」

 

…結局、後から来た二人にもマックスコーヒーを奢る事になってしまった、いや、奢ってないけどね。

 

「でもこれ、コーヒーじゃないよね」

 

「うん、違うと思う」

 

しかしさっきから彼女達のこのコーヒーへのこだわりはなんだろうか?コーヒーに縁のある人達なの?

 

「コーヒーじゃないのは残念だけど、喉が潤う、それだけで飲み物は尊いのさ」

 

「そんな尊い物を口にしたんですから、いい加減お金払って下さい、三人分」

 

「後で払うよ、急いで出した結論に意味はないだろう?」

 

いや、急がないとこのまま別れたら今後会う事もないだろうし…。

 

「ご、ごめんなさい、うちのミカが迷惑かけて…、実は私達、お金持ってなくて」

 

「…そんな気はしてたけどな」

 

短い髪をツインテールにまとめた彼女…、アキが申し訳なさそうに頭を下げてくる。

 

良かった…、ようやくまともに話の出来そうな奴に会えた、というかミカとか言うこのカンテレさんが特別おかしいのだろう、そう思いたい。

 

「ジュース買う金すら無いとか、飯とかどうしてんだよ?」

 

「えと…それは、ミッコが魚取ってきたり、森で食べれる茸取ったりして…」

 

なにこの娘達たくましい、どこの農家系DASHアイドルグループなの?やってる事がもう無人島生活なんだけど。

 

「無一文でよく他校の学園艦なんか来たな…」

 

どうやら観光に来た訳でもなさそうだ、…そういや探し物があるとか言ってたな。

 

「あ!ミカ、見つかったんだよ!私らの探してたの!!」

 

「そうだった…、呑気にジュースなんて飲んでる場合じゃないよ!早くしないと誰かに取られちゃう!!」

 

「誰の物になるかなんて、誰にもわからないさ、まだ私は見てもないからね」

 

急に慌て出した二人にカンテレをポロンと奏でながらミカさんは答える。どうやら探し物とやらは見つかったらしい。

 

「でも、もし出会えたなら、それにはきっと意味があるはずだよ、今の私達と、君のようにね」

 

「はぁ…、よくわかりませんけど」

 

この出会いのもたらした意味といったら俺の財布からジュース三本分のマネーが消失したくらいなんですが?

 

「君とはまたどこかで会う気がする、その時にはジュースの借りも返すよ」

 

えー、またどこかで会っちゃうの?できればもう二度と関わりたくないんでジュース代は手切れ金みたいに考えてたんだけど…。

 

「もう!ちょっと待ってよミカ、あの…ジュース、ありがとう」

 

「久しぶりにまともなもん飲めたよな~」

 

よくわからん三人組はそのまま見つかったらしい探し物のある場所に向かって行った、なんか変なのに絡まれたな…。

 

なんともムダな時間と金を消費してしまった…、そういえば俺も現在戦車捜索中だったのを忘れていた。

 

あの三人も無事に探し物を見つけたようだし、俺もそろそろ本格的に探し始めるか。

 

「あれ?比企谷殿じゃないですか?」

 

「ん?秋山か」

 

ふと声をかけられて振り向くと秋山と歴女グループだった、そういやこのメンバーで戦車探してるんだったか。

 

「ヘルマン、何か手がかりは見つかったのか?」

 

「いや、まだ特には…」

 

変な三人組…、主に一人だけど、そいつらに絡まれてて何もしていなかった、とはさすがに言えんな。

 

「あの…ヘルマン、というのは?」

 

「八幡のソウルネームだ」

 

「言っとくけど、俺から名乗った訳じゃないからな…」

 

そこら辺、勘違いしないで欲しい…、自ら異名を名乗るのはもう卒業したんだから。

 

「あ!私も頂きましたよ、グデーリアンです!!」

 

あぁ、秋山のやつ世界大戦絡みでエルヴィンと仲良いもんな…、つーか君は嬉しそうだね。

 

グデーリアンって事はかのハインツ・ヴィルヘルム・グデーリアンからとっているのか、ズルいよなー、その3つの中のどれをとってもカッコいいもん。

 

「この先は道が別れているな…、カエサル」

 

「任せろ」

 

歴女グループは分かれ道の中央になんか陰陽師っぽいよくわからん物を置くとそこに一本の棒を立てた。

 

「…なぁ秋山、あれは何をしてるんだ?」

 

「しっ!今カエサル殿が集中していますので比企谷殿もお静かに」

 

…怒られた、え?なんで?

 

「…ハッ!!」

 

気合いと共にカエサルが棒を離すと当然ながら棒はパタンと地面に倒れる。

 

「…東が吉と出たぜよ」

 

「ふむ、では向かうか」

 

「いやいや、お前ら、いろいろちょっと待て…」

 

俺も大概アレだったけど、こいつら真面目に探してるのか?

 

「案ずるなヘルマン、これは八卦だ」

 

「カエサルの八卦の的中率はなかなかだぞ、前回はそれでⅢ突を見つけた」

 

マジかよ…、ちょっと信じられないんだけど、でも確かⅢ突って水没してたんだよな?

 

「八卦で場所を占ったのはいいが、よく水の中のⅢ突を見つけたよな…、お前ら」

 

「我々は去年、忍道を選択していたからな、水蜘蛛や水遁術が役に立った」

 

へー、俺も取ろうかちょっと迷ってたけど忍道ってそんなのやるんだな、わりと本格的だと思うが俺は仙道選んだから仙人モードにだってなれるってばよ。

 

「しかし…これ、本当に信じていいのか?」

 

「とりあえず比企谷殿も行ってみませんか?」

 

まぁ…ついて行ってみるか、もし本当に戦車があれば一応、俺もその場に居たって事で仕事してる雰囲気出せるし。

 

…あれ?この道ってさっき例の三人組が向かって行った場所じゃないか?

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

結論から言おう、戦車発見、歴女グループマジぱねぇな。

 

沼地にその他の粗大ゴミと共に埋もれていたそれはルノーB1bis、最大装甲60㎜、75㎜砲と47㎜砲を搭載したフランスの重戦車だ。

 

まさか本当にまた戦車が見つかるとは、これで多少ではあるが今後の試合にも希望がもてるというものだろう。

 

…さて、そろそろいいかな?いいよね?

 

「もー、せっかく戦車見つけたのに、沼に沈んでるなんて…」

 

「でもクリスティー式じゃないのがなぁ…」

 

「なんでも望み過ぎるのはよくない、今はただ、この出会いを大切にしよう」

 

「そうだよミッコ、次の相手はあの黒森峰なんだから、贅沢言ってられないって」

 

はい、そんなルノーの周りでわいわいやってるのは他ならぬ、先ほどの三人組である。

 

「どうやって引っ張り出そう…?ワイヤーに繋いでBT-42で引っ張りあげられないかな?」

 

「じゃあ私、戦車取ってくる!!」

 

「その前にこの子にも名前をつけてあげなくちゃね」

 

「あ!そうだった、とりあえず目印だけでもつけとかないと…」

 

うん、なんつーか、君達、やりたい放題だね。

 

「えっと、誰なんですかね?あの人達」

 

「…ペリーの黒船来襲ぜよ」

 

突然の三人組に秋山も歴女グループも唖然としている中、俺は静かに携帯を取り出して電話をかける。

 

「会長、戦車見つかりましたよ」

 

『おぉ、やったじゃん、どんなの?』

 

「ルノーB1bisです」

 

『ルノーB1bisかぁ…、まぁ八九式よりはマシかぁ』

 

さらっとはっきゅんディスるのやめたげてよぉ…、バレー部の奴ら聞いたら怒りますよ?

 

「あと、戦車泥棒三人組が絶賛活動中なんで急いで風紀委員の方々呼んで下さい」

 

『はいよ~、…ん?』

 

あぁ、さすがの会長もこれには驚いてるだろうなぁ、電話越しで顔が見れないのが本当に残念だ。

 

さて、無事に再会出来た事だし、ジュース代も払ってもらおうかな。


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