やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
ん?サブタイがネタバレ?何を言ってるのかよくわかりません(断言)!!
戦車探しと言えば彼女達はその道のプロですから、劇場版を前に出すにはこのタイミングしかありません、さぁ…ぐずぐずしてると大洗の戦車が無くなっちゃうぞ(笑)
あっ…、ついでに宣伝ですがガルパン物で短編一つ書きました、ただこちらはガルパン本編のネタバレあるので知らない人は注意して下さい。
「お疲れ様、八幡君」
「…おう」
模擬戦でものの見事に敗北した俺が戦車倉庫に戻ると西住達あんこうチームの面々が声をかけてきた。
「私達の勝ちだよ、比企谷!!」
武部のやつなんか嬉しそうにブイサイン決めている、まぁいいんですけどね、負けたんだし。
「しかし八九式のちょっかい作戦の次はデコイですか…、比企谷殿もいろいろ考えてますね」
「えぇ、危なかったです」
「まぁ結果的に完敗だけどな、しかし西住も容赦ないよな…」
「…そ、そんなつもりはないんだけど、ただ、昔ある人に怒られた事もあるから、試合はお互い全力で戦う、神聖なものだって」
神聖なものとか…、誰だか知らないけど意識高そうな奴だな、まぁ西住の性格を考えたら手を抜く、とまでは言わないが相手の事を考えて全力を出せない事もあったのかもしれない。
「なら次やる時は手加減してもいいぞ、そうだな…冷泉、次の試合は寝ててくれ」
「任せろ」
「こら麻子!任せろ、じゃないでしょ!!も~…」
「真っ先に戦車の要を狙う辺り、比企谷殿らしいですね…」
いや…、さすがに俺も親指グッと立てて即答されるとは思わなかったわ。
「まぁ冗談だ、別に模擬戦だしな、次勝てばいいんだよ、次」
彼女達がやっている公式戦はトーナメントなのでそうも言ってられないが。え?次も勝てない?ですよねー。
「あははっ!八幡君の今の言葉、ボコみたい」
なにそれ嬉しくねぇ、そもそもあの熊っていつもボコボコにされて勝てない設定じゃなかった?
むしろ西住にボコボコにされてるんだよなぁ…、これは遠回しに『何度戦ってもボコボコにしてあげるよ?』って言われてるのかな?やだ…西住殿ドS。
そもそもあの熊はやられても何度も立ち上がるが俺は違う、押して駄目なら諦める、なんならそのまま死んだフリしてやり過ごしてもいいな、うん。
模擬戦も終了し、戦車は自動車部の修理待ち、となれば今日の戦車道授業はここまでだな、やったぜ!あったかホームが待っている。
「西住、次の試合に向けた戦術会議をするぞ」
「それと交換した方がいい部品のリストを作るの手伝ってほしいんだけど」
小山さんと河嶋さんが西住に声をかける、今から残業か、隊長業務は大変だなぁ。
「先輩、照準をもっと早く合わせるにはどうしたらいいんですか?」
「どうしてもカーブが上手く回れないんですけど」
そんな西住に今度はバレー部の面々が声をかける、こいつらの向上心も恐ろしいな…、あれ?バレーの練習は?
「隊長、躍進射撃の射撃時間短縮についてなんだが…」
「ずっと乗ってると臀部がこすれて痛いんだが」
今度は歴女チームだ、こいつらも模擬戦でやられて悔しがってたからな…、うん、ごめんね。あと女の子が臀部とか言わない。
「戦車の中にクーラーって付けられないんですか?」
「先輩、戦車の話すると男友達が引いちゃうんです」
「私は彼氏に逃げられました…」
更には一年生チームまでやってくる始末、こいつらは…ここまでくるともう全然戦車道関係ねぇな。
つーかこいつらの話聞いてると、ますます戦車道がモテるのか怪しく感じる、そもそも言い出しっぺの蝶野教官だって果たして彼氏が居るのだろうか?
「えと…あぅ、ちょっと待ってね、順番に」
戦車道メンバーに囲まれて西住大人気だなぁ、もうぼっちとは言えないね、本人はあわあわしてるけど。
そのあわあわした感じがなんでさっきの模擬戦には全然出ないのだろう?戦車に乗った方がしっかりしてるのはやはり西住流か。
「あの、メカニカルな事なら多少私がわかりますので」
「書類の整理くらいなら私でも出来ると思いますけど」
「…操縦関連は私が」
「恋愛関係なら任せて!!」
「…みんな」
そんな西住の状況を見かねてあんこうチームのメンバーが次々と手を上げる、なんだか一人だけおかしい気がするけど。
「みんなで分担してやりましょう」
「みぽりん、一人で頑張らなくてもいいんだからね」
「…ありがとう」
あぁ、友情って素晴らしいなぁ、うん、いいものも見れたことだし、俺はここら辺で帰りますか。
「比企谷君、比企谷君にも頼みたい仕事があるんだけど…」
「えっと…、俺はほら、この後あれがありますから」
「やることは山ほどあるんだからな、お前も少しは頑張れ」
ダメらしい、せっかく早めに帰れると思ったのに仕事用意するとかうちの生徒会ブラックすぎんだろ…。
まぁ…頑張るか、一人で。
ーーー
ーー
ー
「グリスは1ダースで良いですか?」
「うん、お願いね」
「…小山さん、この資料は?」
「戦車関係の古い資料、比企谷君なら戦車に詳しいし、私よりもわかると思って」
バレー部の相手を冷泉に、歴女チームの相手を秋山に、一年共を武部に任せて生徒会にやって来た俺と西住と五十鈴はそのまま仕事を手伝わされる羽目になった。
…書類整理ね、まぁ戦車関係の資料なら少し興味もあるし、とりあえずやるか。
「やっぱりお花があるといいねぇ、私も華道やってみたいなぁ」
机には五十鈴が用意したのか、花瓶に一輪の花が飾ってあった。
あと、華道やるのは良いですけど五十鈴さんの指導はガチなんで覚悟した方がいいですよ。
「小山先輩、お花の名前ついてますもんね、確か…桃さん」
「あっ、私は柚子、桃ちゃんはね…、桃ちゃーん」
「呼ぶなッ!!」
手を振る小山さんに河嶋さんがすぐに反応する、遠慮しなくていいのに、桃ちゃん。
「西住ちゃん、チームも良い感じにまとまってきたじゃん、西住ちゃんのおかげだよ、ありがとね」
「あ…、いえ」
まぁ確かに、素人目の俺から見ても最初に比べてだいぶ技術も上達してるし、なによりみんなのモチベーションが高い。
サンダース大付属という強豪校相手に見事勝利したのが効いているのだろう、練習試合の結果はあんなんだったし。
「お礼を言いたいのは私の方です、最初はどうなるかと思いましたけど、でも…私、今までとは違う戦車道を知る事が出来ました」
そりゃ黒森峰と比べたら、てか他の学園艦と比べても大洗って特殊すぎるからな、特殊を英語にすればスペシャル…、そうか、大洗はスペシャルなのか。うん、違うな。
「それは結構だが…、次も必ず勝つぞ」
「勝てるかねぇ?」
ピクリと俺の隣で書類を整理していた小山さんも反応して西住の方を見る。…まただ、うちの生徒会はどうにも勝利に固執している。
そりゃ負けるよりは勝った方が来年への箔はつくだろうが…、大洗の戦車道は今年再開したばかりだ、何をそんなに結果を焦る必要がある?
『目指すは全国大会優勝』と、戦車道を再開する際に会長がそう言った時は何の冗談かと思ったが、勝ちに固執してたり、かと思えば試合中ずっと干し芋食べてたり、この人達、どこまで本気なんだろうか?
「チームもまとまって来て、みんなのやる気も高まってますけど…、正直、今の戦力だけでは」
うん、本当に正直でよろしい。
現在の大洗の戦車数は5両、それも結構なイロモノ系ばかりだ、仮に二回戦を突破しても準決勝は出場車両制限が15両、決勝戦に至っては20両である。
戦力差は3倍、そして4倍、いくら試合がフラッグ戦といってもこの単純な物量差はどうしようもない。
アンツィオ校もP40に加えセモヴェンテも1両増やしたくらいだ、うちも戦力増やさないとこの先戦えないだろう。
…戦車買う金なんて無いだろうし、戦車探しも終わったし、実際どうしようもないんだろうけど。
考えてても仕方ないな、頭よりも黙って手を動かすか、さっさと書類整理して帰ろう。
そう思って小山さんからもらった古い戦車の書類を見ていると。
「…ん?」
なんか…変だぞ、この書類、今ある戦車と、売り払ったり紛失した戦車との数が合わない。
「会長、なんか書類上じゃ他にも戦車があったみたいなんですけど」
「ん~?」
ーーー
ーー
ー
「それじゃあ第二回、戦車捜索作戦、いってみよー!!」
…マジかよ、なんつーか、いや、マジかよ。
書類上で売り払ったり、紛失した記録が無い以上、まだこの大洗の学園艦に見つかってない戦車があるかもしれない、そんな淡い期待と共に二度目の戦車探しが始まった。
淡い期待ってか…、もう藁にもすがるようなものだと思うんだけど、前回5両も見つけたのが奇跡みたいなものだろうし。
まだ戦車倉庫に戦車道メンバーが残っていたのもあって、そのままのメンバーで戦車を探す事になった。
つまりバレー部と冷泉、歴女チームと秋山、一年共と武部の3グループ、三國志の始まりである。
ん?俺?俺はほら、真の平等主義者だから、どのグループにも属さないんだよ、いやー乱世乱世。
…だってほら、戦車道の授業中ならまだしもグループで学園艦歩き回って戦車探せば嫌でも目立つし、他の授業選択してる奴らにしたら戦車道の授業やってる俺って異物だし。
まぁそんなわけで単独行動させてもらう、何か言いたげだった西住はバレー部達に押し付けた。
「…戦車ねぇ」
単独行動とはいえ、さすがに前みたいに迷子になるのは勘弁だ、連絡は…まぁ、しようと思えば出来るようになったんだけどね。
正直見つかるとは思えないが、少し探してみるか。
…そういえば、あの時の俺はどんな気持ちでこの戦車探しをやっていたのか、少し気になった。
まぁ今とそう変わらないだろう、つまりはアレだ、働きたくねぇ…。
そう思いながら少し歩いていると、何か妙な音が聞こえてくる。
「…楽器?」
それも聞き慣れない音色だ、弦楽器だというのはわかるが、楽器にはそれほど詳しくないのでこの音が何の楽器であるかまでは分からない。
強いて言うなら琴のような音色だ、この音の正体が気になって音のする方に行くと。
「………」
…誰だ?
一人の女性が地面に座り込み、その弦楽器、『カンテレ』を演奏していた。
はて…楽器を使う選択授業なんてあったか?いや、それ以前にこの女性、ジャージを着ているがそのジャージも大洗学園の物ではない。
胸元の大きな『継』の文字が目立つのでつい目がいってしまうジャージだ、…べ、別にその女性の胸が大きいから目がいってしまう訳じゃないよ?八幡嘘つかない。
茶髪のストレートロングヘアーにチューリップハットをかぶり、そんなジャージを着てカンテレを演奏中。
戦車よりも先に、そんな明らかな不審人物を発見してしまった。