やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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前回のアンツィオ校西住殿√の後編です。

この小説書き初めて結構立ちますが今までで一番好きな台詞は西住殿の『働こ?』です、こんなん言われたら働くに決まってんだろ!社畜上等だね!!


アンツィオ校西住√後編『結局、西住みほは妹である。』

「…ついたな、ここがアンツィオ校か」

 

さて、船での一悶着もようやく終えていよいよアンツィオ校にやって来た。

 

「建物がすごいね…、黒森峰とも大洗とも全然違う」

 

「こりゃ観光客が来るのもわかるな」

 

イタリアまで行かなくても旅行した気分になれる訳か、そりゃ安上がりだ。

 

「しかし人が多いな…」

 

結婚情報誌の効果がよっぽどなのか、俺達以外にも観光客を多く見かける、それもカップルがやたらと多い、こいつらみんな爆発しないかな?

 

「うん…、沙織さんに帽子と眼鏡借りてきてよかった」

 

隣の西住だが、アンツィオ校では顔が知れてるだろうと考え、一応は変装用の道具を持ってきたようだ。

 

「帽子はともかく…眼鏡は大丈夫なのか?視力とか」

 

「ちゃんと伊達メガネ借りてきたから大丈夫だよ、…華さんはサングラスとマスクくれたんだけど」

 

そんな格好してたら余計目立つだろうし、持ってこなくて正解だな。

 

「帽子かぶって…眼鏡かけてっと、えへへ…なんか普段しないから変な感じだね、どうかな?八幡君」

 

「…ん、まぁバレにくくはなるんじゃないか?」

 

「えと…そうじゃなくて」

 

「とりあえず例の新型戦車だな、アンツィオ校の戦車道チームの練習場がわかればいいが」

 

西住の言葉をスルーして、事前に武部から貰っていた結婚情報誌、ゼクスィを取り出す。

 

いやほら…、普段見慣れない女子の格好ってコメントに困るでしょ?

 

このゼクスィにはアンツィオ校特集、と題するだけあって大まかな地図と観光スポットが載っている、観光スポットには興味ないが、地図の方はありがたい。

 

「…地図を見る限り、それっぽい所はなさそうだな」

 

「観光客向けの地図だもん、仕方ないよ」

 

「観光客ね、そういや大洗にはあまり来ないよな」

 

うちの学園艦は標準・ザ・標準だもんな、生徒会がイベント好きでいろいろ企画はするが、それも基本的に生徒向けのものだし。

 

観光客とか大勢来たら鬱陶しいだろうから、個人的には助かるが。

 

「黒森峰とかどうなんだ?」

 

「うーん…戦車道の練習とかを見に来る人ならたくさん居たかな」

 

西住流のお膝元だもんな、戦車道のファンとか集まって来ても不思議じゃないか。

 

「だからいつも緊張しちゃって…、大洗は練習しやすいなぁ」

 

…まぁ西住って人見知りだもんな、そう考えたら黒森峰では力を十分に発揮出来なかったのかもしれん。

 

「とりあえずアンツィオ校の戦車道の練習場を探すか…」

 

「うん、そうだね」

 

俺も西住も知らない人に積極的に話しかけられる性格ではないし、自力で探すしかないか。

 

アンツィオ校の学園艦も広い、足で探すとなればなかなか大変だろうが、こっちには戦車道の最大流派、西住流がついているのだ。

 

きっとそのノウハウを活かしてすぐに戦車道の練習が出来そうな所を見つけ出してくれるだろう、そう考えると西住を連れてきたのは悪い選択ではなかったのかもしれない。

 

…そう思っていた最初の俺、考えが甘い、甘すぎる。

 

「…なんで公園に来たわけ?」

 

西住が向かった先は何の変哲もない小さい普通の公園だった、子供向けの遊具とかが置いてある。

 

「もしかしたらこの公園で練習してるかなって」

 

どんな小規模の練習場だよ…、アンツィオ校の戦車道チーム馬鹿にしてない?

 

「…さすがにないだろ、普通に子供向けの遊具とか置いてあるし」

 

ここで練習するとか、公園で遊んでる児童が巻き添えになるぞ。

 

「でも、少しでも可能性があるならチェックしとかないと」

 

可能性…あるかなぁ?

 

「…八幡君、もしかしたらそこのトイレに」

 

西住は公園内にある公衆トイレを指差す、…おいおい。

 

「…まさか、トイレが練習場とか言わんよな?」

 

「あはは、さすがにそれはないよ」

 

ですよねー、さすがに俺の考えすぎか。

 

「ひょっとしたら…トイレの中に地下に降りれる所があって、地下に練習場所があるかもって」

 

しまった!俺の考えの更に上か!!

 

「確かに学園艦だし、地下ってか、船内はあるだろうが…さすがにそんな所で練習はしないだろ」

 

そもそもその入り口がトイレにあるって、どんな秘密基地だよ。

 

「でも可能性はあるんだし、一応見ておかないと、八幡君は男子トイレの確認をお願い」

 

「…はぁ」

 

西住が率先して女子トイレの方へと向かったので仕方なく男子トイレの中を確認する。当然、中は普通のトイレである。

 

…忘れてた、西住は戦車に乗ってないと天然ポンコツ娘なんだった。

 

さっきからこんな調子でまったく進展がない、このままじゃ新型戦車どころかアンツィオ校の戦車道チームにすら辿り着けないんじゃないか?

 

「八幡君、次はここを見てみよう」

 

「コロッセオって…、建物の中だろ、こんな所で練習なんてしないだろ」

 

「でもすごく大きい建物だし、もしかしたらって…」

 

ないない…、このまま西住に任せていたら『なんの成果も得られませんでしたー!!』って生徒会に土下座しなければならなそうだ。

 

一生懸命なのは伝わってくるが、何かズレてる。…こりゃ西住はもう頼りにならんな。

 

「あ!見て!八幡君!!」

 

「…ん?」

 

率先してコロッセオに向かっていた西住が入り口で何かを指した。

 

入り口には本日のコロッセオの利用状況がスケジュール表として貼り出されている。

 

「スケジュール表に戦車道の練習時間が載ってる!やっぱりこの中で練習してるんだよ!!」

 

「…すまん、俺が悪かった」

 

「えぇっ!?き、急にどうしたの?」

 

右往左往しながらも最後にはしっかり締める辺り、西住はやっぱり何か持ってる気がする…。

 

「でも練習時間までまだ時間あるみたい…、中には入れないね」

 

「みたいだな、帰るか?」

 

「か、帰っちゃうの!?」

 

「冗談だ、つーかここで帰ったらそれこそ河嶋さんがうるさいだろうし」

 

とはいえ…まだ時間はある、か。

 

「そういえば…腹減ったな」

 

「そろそろお昼だもんね、私もお腹すいてきちゃった」

 

どこかで昼飯でも食べてればちょうどいい時間にはなりそうだが。

 

ゼクスィを広げてどこか、昼飯を食べれそうな所はないか探してみる。

 

「…なんて事だ、サイゼがないぞ」

 

これは由々しき事態だ、安くて美味い、学生達の強い味方であるサイゼが学園艦にないなんて。

 

「屋台街にパスタとかピザとか、イタリア料理のお店があるからじゃないかな?」

 

ぐぬぬ、なんて事だ…。学生の味方であるサイゼが、逆に学生から迫害を受けているとは、守らねば(使命感)。

 

「ん?でもココスはあるみたいだぞ、今行くとクリアファイルが貰えるらしい」

 

「…せっかく来たんだし、屋台街の方に行ってみようよ」

 

あ、スルーされた…、え?このネタ広げちゃマズイのかな?

 

「っても、店員はここの生徒だろ、あんまり期待できそうにないな」

 

生徒がやる屋台のクオリティなんて高が知れてると思うんだがなぁ。

 

「でもお祭りみたいできっと楽しいと思うな、私、そういう学園行事ってあんまり経験した事ないし」

 

あぁ、西住はまだ大洗に来て日が浅いし、黒森峰はそういうのやるイメージないもんな。

 

決していいもんじゃないよ?去年一人で廻った学園祭とか周りの雰囲気に耐えきれなくて、最後は使ってない教室で一人、死にたくなってたし。

 

生徒会に準備やら片付けの手伝いさせられてのそれだからな、マジいい思い出ねぇな。

 

「じゃあ行ってみるか…」

 

「うん!!」

 

しかし今日は平日なんだが、それでも屋台街は営業しているのだろうか?

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

 

「…本当にこの学園艦、なんなの?」

 

「わぁー!すごいよ八幡君、本当にお祭りみたい!!」

 

屋台街なる場所にやってくると多くの屋台と観光客で賑わっていた、雑誌によると屋台の店員は全員生徒らしいが本当に授業はしてるんだろうか?

 

「…つーか人多過ぎだろ」

 

「お昼時だもん、仕方ないよ…」

 

どの屋台にも観光客の列が並んでいる、生徒の作る料理をそこまでして食べたいもんかね…。

 

「あっ!そこのカップルのお二人さん、うちの店の料理、食べてかない?」

 

並ぶのも嫌だし、さて、どうしたものかと考えていると客引きらしいアンツィオ校の生徒に声をかけられた。

 

「か、カップル…」

 

「あぁいや、姉弟です、なぁ姉ちゃん?」

 

「う、うん…、そうだね」

 

…しかし自分で言い出した事ながら、違和感しかないな。だから極力言わないようにしてたけど。

 

「へー、そうなんですか、どっちでもいいですけど、うちの店の料理、どうですか?」

 

アンツィオ校の生徒は特に疑う事なく、メニュー表を俺達に向けて差し出してきた。

 

「いや、並ぶのはちょっと…」

 

「そう言うと思って、うちの店は注文と名前を書いてもらえれば席までお届けしますよ!!」

 

ここら辺の屋台は全て、予算不足の部や委員会が予算の足しにするために営業しているらしい。つまりこれも周りの店よりも売り上げを上げる為のサービスなのだろう。

 

「ならここにするか、並ばなくてよさそうだし」

 

「うん、私もあの列に並ぶのはちょっと…」

 

西住の了承も得たし、決まりだな。

 

「ではこちらの紙にお名前とご注文をどうぞ!!」

 

西住が店員から注文表とペンを受け取る、俺はメニューを西住にも見えるように広げた。

 

「うーん…私はやっぱりパスタにしようかな、八幡君、なににするの?」

 

…結構メニュー多いな、屋台ってレベルじゃねぇぞ、これは生意気にもイタリアンレストランであるサイゼに対する挑戦か。…ん?

 

「…ミラノ風ドリアがある、だと?」

 

「えと…何かな、それ?」

 

何?知らないのか西住!!

 

「サイゼの誇る人気No.1メニューだぞ、味、値段、全てにおいて最強のコスパを誇る」

 

なお、ミラノにドリアはないしそもそもドリアは日本発祥であるが…、うまけりゃいいんだよ。

 

「そ、そうなんだ…、八幡君、好きだよね…サイゼ」

 

「よりによってこいつをメニューに出すとは…、完全にサイゼに対する挑戦だな」

 

…いいだろう、ならばその挑戦、受けてやる。

 

「ミラノ風ドリアを注文してくれ」

 

「う、うん…、大丈夫かなぁ、私、さっきの人に渡してくるね」

 

「んじゃ先に座ってるぞ」

 

さて、席は…、何でこんな時に限って二人用の席しか空いてないんだよ。そこのおっさん、一人で四人用のテーブル独占するなよ。

 

仕方なくそのテーブルに座ってしばらく待つ、…ん?なんか店員の前で西住がえらく戸惑ってるぞ。

 

「八幡君、渡してきたよ」

 

「…なんかあったのか?」

 

…もしかして正体がバレたのか?いや、それならもっと騒がれてもいいか。

 

「う、うん…、ちょっと、ね」

 

なんだ?西住の顔がやけに赤いし、明らかに目線を俺からそらしてる。

 

「…水でも取ってくるわ、いるだろ?」

 

「え?う、うん…」

 

西住がそんな様子だし、二人用のテーブルで向かい合って座ってるのもあってどうにも落ち着かない。

 

水はデパートのフードコートのようにセルフサービスらしい、まぁこの客の多さを考えるとそれくらいは妥当だな。

 

「…うっ、お水」

 

「…ん?」

 

給水コーナーの前に行くと小さい小学生くらいの女の子がいた、顔色が悪く、両手でコップを持って水を飲んでいる。

 

その小学生の周りを三人の…大学生くらい?の女性が囲んでいる。

 

「た、隊長!?大丈夫ですか…?」

 

…隊長?え?隊長!?

 

隊長と聞いて思い付くのは戦車道の隊長なんだが…、まさかアンツィオ校の隊長がここに来ているのか!?

 

「船は苦手なんですから、余り無理をしないで下さい…」

 

「船は…大丈夫、少しは慣れたから」

 

「でもまだ顔色が悪いですよ、隊長」

 

アンツィオ校の隊長が居るかと思ったら…、三人の大学生が小学生相手に隊長隊長言ってるんだけど?何この人達?ロリコンなの?

 

…なんか事件ってか、犯罪臭がするまであるが、小学生の様子を見ると誘拐とか、そんなではなさそうだ。

 

きっと大学生達は保護者かなんかだろう、あれは隊長ごっことか、隊長プレイとか、そんは感じの。

 

ごっこだと健全なのに…プレイと書くと急に如何わしくなるのは何故だろう?

 

「チーズとトマトとオリーブオイルの匂いが…苦手」

 

…何故この娘はアンツィオ校に来たんだろうか?

 

「も、もう帰りましょうか?隊長」

 

「でも…頑張る、ボコのショーがあるんだし」

 

…ん?ボコ?ボコってあれか?あのぼこぼこにされる熊のやつの事か?

 

「ここはマズイわね…、お昼は別の所で食べましょう、ココスとかあるみたいですし」

 

「そうね、ここにはお酒も無いみたいだし、そうしましょう」

 

あるわけないでしょ?生徒の屋台だからね、ここ。

 

「それじゃあ…いつも通りのーーー」

 

「「「バミューダアタックッ!!」」」

 

三人の大学生は一人の小学生を連れて素早くその場を後にした、本当に大丈夫?通報とかした方がよかったか?

 

四人の去っていった場所に一枚チラシが落ちているのが目についたので拾ってみる。

 

「…オペラ版、ボコられグマのボコのショー?」

 

チラシにはパンテオンなる場所でやると書かれている、さっきの小学生はそれを目当てに来たのか、平日なのにいいのかそれ?

 

しかしあの小学生、どっかで見た事あるような…、まぁ気のせいだろ。

 

西住の分も合わせて二人分、コップに水を汲んでテーブルに戻る。

 

「ほれ」

 

「あ、ありがとう…、遅かったけどやっぱり混んでたの?」

 

「いや、犯罪の匂いがしたから一応、監視してただけだ」

 

「…八幡君が何言ってるのかわからないんだけど」

 

安心しろ、俺もわからん。

 

テーブルに着いたら、あとは料理がくるのを待つだけと、持ってきた水を飲もうと口に含み…。

 

「クリームパスタとミラノ風ドリアをご注文の比企谷 みほさん!お料理出来ましたよー!!」

 

「ぶっ!?」

 

危うく吹き出しそうになった!…あ、危ねぇ!!

 

「えーと…、なぁ?」

 

「あ、あのね!名前書いてって言われて…、でも名字は書けないから、姉弟って事だし…ね?」

 

そんなもん適当に偽名書いてくれればよかったのに…、マジメか!!

 

「比企谷 みほさーん、どこですか?料理冷めちゃいますよ!!」

 

店員が空気を読まずに大声で連呼してきやがるし、もう勘弁してくれ…、レビューのサービスに低評価つけるぞ。

 

「あ、あの…、えっと…、は、はい!!」

 

はい!!…じゃないでしょ、恥ずかしいなら最初からやらない、なにより俺が恥ずかしいでしょ?

 

「どうぞ!クリームパスタとミラノ風ドリアです、食器はそこに戻して下さい、ではごゆっくり!!」

 

店員はテーブルに料理を置くと元気よく去って行った、愛想はいいんだけどなぁ。

 

「………」

 

「………」

 

「…えと、とりあえず食べるか?」

 

「そ、そうだね、い、いただきます」

 

このまま料理を眺めてても冷めるだけだし、なによりこの雰囲気がやだ、さっさと食べて移動したい。

 

…これで料理が不味かったら本当に低評価つけてやる、とミラノ風ドリアを口にいれる。

 

「…普通にうまくて反応に困るな」

 

さすが、サイゼに挑戦するだけはある、思わずさっきの店員を捕まえてシェフを呼んでくれ!とか言いたくなるな。

 

「うん、クリームパスタもすごいおいしい!!」

 

西住ももぐもぐと食べてご満足のようだ。

 

「この料理ってここの生徒が作ってんだよな、アンツィオ校って料理学校なの?」

 

もしかして食戟とかやってるんだろうか?そこ、戦車道より力入れるべきなんじゃない?

 

「沙織さんもそうだけど…、お料理ができる人ってすごいね」

 

あぁ、たしかに武部の料理スキルについては素直に認めるしかないな、あと西住は知らないだろうがうちの会長も。

 

しかし西住のその言葉を聞くに、彼女はあまり料理が出来る方じゃないらしい、あぁ…なるほど。

 

「あぁ、コンビニが好きって、そういう…」

 

「…ふぇ?」

 

いや…、ふぇ?じゃないでしょ、しかも食べながらとか。あざとい、さすが西住、あざとい。

 

もぐもぐしてた西住がごくんと料理を飲み込むと、不思議そうに首を傾げる、どうやら俺の言葉の意味を考えているようだ。

 

「…あ」

 

やがて気付いたのか、その表情がみるみる赤くなっていく。

 

「ち、違うよ!違うからね!八幡君!!」

 

「まだ何も言ってないだろうが…」

 

「そ、そのね!いつもコンビニのお弁当とか、冷凍食品とか、カップ麺とか食べてるって訳じゃないんだよ!本当だよ!!」

 

例えが具体的過ぎて自分からどんどん墓穴掘ってるんだけど…、なに?自分が入る為の穴なのそれ、穴があったら入りたいの?

 

「たしかにコンビニは好きだけど違うの!ご飯はちゃんとしてるから!!だから違うよ…、えぇっと、とにかく違うの!!」

 

西住が必死すぎるんだけど…。もう違う違う言い過ぎて何が違うのか、違うのが違うのかもわからない、なんかもう違うがゲシュタルト崩壊しそう。

 

「いや、もうわかったから、確かに弁当とかカップ麺とか、新しいの出たら気になるもんな、仕方ないよな」

 

チョコレート味の焼きそばとかね、さすがにあれは冒険し過ぎだが。

 

「だから違うのに…、む~」

 

頬を膨らませて何か言いたげな西住、うーむ、この小動物感。

 

「…八幡君、何か好きな食べ物ってあるの?」

 

「ん?ラーメンとか…、まぁドリアもそうなるか?」

 

「ラーメンはともかく、ドリアなら沙織さんに教われば…」

 

「…どうした?」

 

なんだか知らんけど、そこで武部の名前が出てくる時点で西住の料理スキルは察するんだが。

 

「な、なんでもないよ、…やっぱりお料理って出来た方がいいのかなって」

 

「そりゃ出来ないよりは出来るに越したことはないだろうが…、いや待て、俺の場合違うか?」

 

「え?どうして?」

 

「将来は専業主夫希望だからな、相手が俺より料理上手いと立場がない」

 

あっ、西住が明らかに引いてる、夢を語る事がこんなにもツラい世の中なんて。

 

「…相手に料理作ってもらえば楽じゃないの?」

 

「俺は養われる気はあるが、施しを受ける気はない、やることはちゃんとやるぞ?」

 

「真面目なんだか不真面目なんだかわからないけど…、八幡君、将来はちゃんと働こ、ね?」

 

「なんでだよ…家事全般だって働いてるみたいなもんだろ、実際、そういう仕事もあるんだし」

 

メイドとかね、いやでも俺ドラゴンじゃないしなぁ。

 

「たしかに…、うちにもお手伝いさんは居たけど」

 

お手伝いさんとか居たのね…、それもそうか、西住流の家元なんだし、西住って実はお嬢様なんだよな…。

 

将来お手伝いさんとして俺も雇ってもらおうかな、あぁ、でもそれだと仕事になるのか。

 

仕事と考えると急にやる気がなくなるのは何故だろう…、本当に魔法の言葉だわ、あれ。

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「ご飯も食べたし…そろそろ時間だね」

 

「あぁ、それじゃ練習場に行くとするか」

 

さて…と。

 

「あれ?八幡君、コロッセオならこっちの方が近いと思うんだけど」

 

「あぁ、そうだな」

 

「…?」

 

不思議そうにしている西住をそのままに先に進む、確か…ゼクシィに載ってた場所はこっちだったか。

 

「あった、ここか」

 

「パンテオン…?あっ!」

 

『お前らよく来たな!もうすぐおいらのショーが始まるぜ!早く見に来ないとぼこぼこにやっつけてやる!!』

 

パンテオンなる建物の前につくと、スピーカーからボコのテーマソングっぽいものが流れ、それに続き客引きのアナウンスが聞こえてくる。

 

…なんだこのアナウンス?ボコって子供向けだよね?こんなんでいいの?

 

「ボコだ!八幡君、ボコのショーがやるみたいだよ!!」

 

「…みたいだな、オペラ版だと」

 

しかし見たことないけど、ボコってぼこぼこにされるんだよな、それのオペラ版ってなんだよ?歌ってボコられるの?

 

「すごい!すごいよ八幡君!ボコのテーマがオペラで聞けるよ!!」

 

だが隣の西住はこのテンションマックスである、まぁ…西住が楽しそうならいいか。

 

「ショーは何時からだろう…、あっ」

 

ショーの開始時間を確認し、目に見えてがっかりしている西住、なぜならアンツィオ校の戦車道チームの練習時間と見事に重なっているのだ。

 

「…こっちは俺が引き受けるから、見てこい」

 

「え?でも…」

 

…元々そのつもりだったし、さすがに敵の本拠地にうちの隊長連れてく訳にはいかないしな。

 

「いいから気にするな、見たいだろ?ボコ」

 

「うん、見たい!…でも、八幡君に悪いし」

 

そう言いながら即答する辺り、やっぱり見たいんだよね…あと一押しか。

 

「ほら、向こうにボコ関連の限定土産物が売ってるだろ、小町にお土産でも買ってってやりたいんだが俺はボコについては詳しくないから、ついでに選んできてくれ」

 

「…う、うん、ありがとう!八幡君!!」

 

笑顔ではしゃぎながら西住はパンテオンに向かう、本当にボコのこと好きなんだな、あいつ。

 

まぁ…、これで普段隊長として色々やってる西住が、ちょっとは休養できるならよしとするか。

 

ショーを見てる間なら西住の正体がバレる心配もないし、一人でいても問題ないだろう。

 

小町がまだ小さい頃とか、面倒見なきゃいけない時にたまに使ってた手だ、ほぅ、経験が生きたな。

 

「しかし…、まぁ」

 

こんなエサにあっさり引っ掛かる辺り、やはり西住の奴にお姉ちゃん属性は無理があったか。

 

「~♪」

 

拝啓姉住さんへ、あなたの妹さんは今、ボコられグマのボコのショーを見る為、テンション高めに鼻歌歌いながら小学生達に混じって並んでます。ぶっちゃけ将来が心配です。

 

うちも小町が好きなんだよなぁ…あれ、今度姉住さんにそこんとこ相談して緊急の兄姉会議でも開いた方がいいのかもしれない。




そんな訳で全あんこうチームメンバーによる各々のアンツィオ校偵察、完了しました!!

今まで各メンバーと八幡をじっくり絡ませた事ってあんまり無かったんで大変でしたけど楽しかったです、大変でしたけど(大事な事なので二回)。

皆さんはどのルートが気に入ってくれたかな? もちろん自分の選んだメンバーのルート以外見てませんよね?

さて、気付いてる人も多いと思いますがどのルート選んでも最終的に八幡は一人で潜入します、世界線はそのように収束します、だって彼はぼっちですから(笑)

まぁドゥーチェ達と絡ませるには八幡はぼっちの方が都合良いですし、さすがに何話もメンバー事に書くと本編がまったく進まないので、これは仕方ない。

~追記~

わかりづらいみたいだったので書きますがあんこうチームとのルートはこれにて終了なので次回から本編に戻りますよ、きちんと。

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