やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
いや…もう、あれだね、俺から言える事はただ一つ、君らみぽりんの事好き過ぎるでしょ…。
西住殿ルートの解放パスワード、途中からもう数えるの止めちゃうくらい頂きました、作者の悪ふざけに付き合って貰って嬉しいです。
そんな訳で皆さんのおかげでみぽりんルートスタートです。
八幡と西住殿を会話させてたら予想以上に長くなったので前編後編で分けます。
まぁ…自分も好きなんで、この結果は仕方ない。
そしてアンツィオ校への潜入偵察決行日、前回と同じく、アンツィオ行きのコンビニの定期船に乗り込む事になった。
…なんで観光客に成り済ます予定なのに、またコンビニ店員の格好して潜入してんだよ、生徒会の全面協力とはなんだったのか?きっと予算無かったんだなぁ…。
「わぁっ!これ、新商品だ!あ、こっちのは地域限定のやつもある!!」
さて、俺の隣にはコンテナに詰まれた荷物を見て何故かやたらとテンションの高い西住が居る。
「なんか…嬉しそうだな」
コンビニの定期船に乗れると聞いてからの西住のテンションがおかしい、テンション上がる要素なんてどこにもないと思うんだけど…。
「うん!私、コンビニが好きだから!!」
力強くそう宣言する西住、いや、コンビニが嫌いな奴はそう居ないだろうが、好きだと宣言する奴は初めて見た。
「まぁ…便利だしな」
「うん、ずっとお店の中に居ても飽きないよね?」
…え?飽きるでしょ、普通に。
「ずっとって…いつもどれくらい居るんだよ」
もしかして開店から閉店まで居るのだろうか?24時間だよね、それ。
「んー…、だいたい三十分から一時間くらい、かな?」
「あぁ、漫画やら雑誌の立ち読みしてりゃそんくらいにはなるよな」
四大少年誌に漫画コーナー、そう考えると俺もコンビニに長居する事は多いな。
え?四大少年誌に相応しくない雑誌があるって?そこら辺の議論は各自でやってくれ。
「立ち読みはしないよ、お店の中見て回ってたら、だいたいそんな時間になっちゃうの」
…店の中を見て回るだけでそんな時間がかかるものか?
「並んでいる商品を見るとね、いろいろ楽しいんだよ!その店にしかない商品とか、値段も違ってたりしてて、あと期間限定の商品とか…」
それってコンビニ限定なの?スーパーじゃダメなんだろうか?
「ドリンクコーナーにお菓子コーナー、それにね!それにね!やっぱりデザートコーナーがすごいの!!」
それにしてもなんだろう、この西住のイケイケ具合は…、全国のコンビニ業界の回し者なの?
「この船に積んである商品もこれからお店に並ぶって考えたら…、なんだかわくわくしてすっごく楽しみだよね!!」
「お、おう…」
…なるほど、わからん。
「八幡君も今度一緒にコンビニに行こう!ね?」
「…まぁ、それくらいなら」
コンビニなんてどこにでもあるし、ちょっと寄るくらいなら、まぁ気にしなくていいだろう。…いろいろと。
「本当?えへへ…、約束だよ!!」
ただコンビニに行くって言っただけなのに…、なんでそこまで嬉しそうなのかね、西住の考えはたまにわからんな。
「楽しみだなぁ、八幡君と一緒なら何時間でも見て回れるかも」
「いや…、それもう絶対追い出されるから」
あれ…もしかして安請け合いしちゃったのか?本当にただコンビニに行くだけだよね?伝説のコンビニ探しに行くとかじゃないよね?
「コンビニもいいが…わかってるよな?今から向かうのは二回戦の相手の本拠地だぞ」
本来、隊長である西住が潜入偵察とか、捕まった時のリスクを考えると絶対あり得ないんだが…。なんで連れてきて来ちゃったんだろ、捕まったらうちのチーム詰んじゃうよ?
「…ごめんね八幡君、我儘言っちゃって」
そんな俺の言いたい事がわかったのか、西住は申し訳なさそうに言う。
「本当にな…、あんだけ言ったのに」
今回、西住は自分から立候補してこの潜入偵察に付いてきた。正直、もう少し隊長として自覚を持って欲しい。
俺達も散々説得したが西住も言い出したら頑固な所があり、結局押しきられてしまった。
まぁ…、おかげであの四人の中から選ばなくてよくなったし、少し助かったけど。
「そんなにアンツィオ校の様子を自分の目で見たかったのか?」
隊長として、自分の目で相手の戦力を確かめた方がそりゃ作戦は立てやすいとは思うけど。
「うーん…、それもあるんだけど、私、いっつもみんなに助けられてばっかりだし、私も何かしたくて」
「西住がか?」
「うん、一回戦も優花里さんに偵察してもらって、沙織さんには各チームへの連絡をメールでしてもらったし、麻子さんの操縦技術にはいつも助けられてるし、試合の勝敗を決めたのは華さんのおかげだよ」
自分だっていろいろやってるだろうに…。そうやってすらすらと誰かの活躍を言えるのが西住の良い所だな、と素直に感心した。
人の長所を見つけるのが上手い、短所ばかり探そうとする俺とは真逆だな。
「西住は本当、あいつらのこと大好きだよな」
「うん!大好きだよ、大切な友達だもん」
茶化すつもりで言ったんですけどね…、恥ずかしがるどころか、眩しいまでの笑顔で返されたよ…。
「…そっか、友達か」
あまりの眩しさに思わず顔を背けてしまう。
「…八幡君も、だよ?」
「………」
まぁ、西住ならそう言うだろうな、本当に優しい女の子だと思う。
そう、これは彼女の優しさなのだ、そんなものに甘えて勘違いをしてはいけない。
「…あのな、西住」
「うーん…」
「…西住?」
否定の言葉でも送り付けてやろうと思っていたら、彼女はなにやら首を捻って考えていた。
「ねぇ、八幡君、名字で呼んじゃうと私が西住流の娘だってすぐバレちゃうかも」
「…ん?あぁ、言われてみればそうだな」
もう一回戦で西住の事は相手側にバレてるだろうし、そんな中、潜入先で彼女の名字を呼ぶのは西住流の娘が来てますと宣言しているようなものだ。
「じゃあどうする?やっぱり帰るか?」
「だ、大丈夫だよ!お姉ちゃんと違って私は有名じゃないから」
「いや、名字で呼ぶなら同じだろ…」
だいたい、お姉さんの方は俺の中で姉住さんで固定されてるし、心の中でだから呼んでもわからないだろうけど。
「だから…ね、その、名前で呼んでくれたら…いいかなって」
「…まぁ、そうだな」
確かに、姉住さんと違って西住がそこまで有名じゃないなら、名前で呼べば問題はない、か。
名前…、名前で。
「…それなら、えと」
「う、うん…」
「………」
「………」
なんだこれめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!!
そもそもシチュエーションが悪い、お互い向き合って改まっちゃって変な雰囲気になっちゃったし、言い出しっぺの西住は顔を赤くさせてもじもじしているし。
「…よし、なら北住でいくか」
…これは無理、うん、ごめんなさい、無理です。
「…えっ?」
「…いやほら、馬鹿正直に本名名乗らんでも潜入偵察中は偽名を使えばいいだろ?」
我ながらナイスアイデアである、そう、ようは西住と呼ばなければいいだけの話だ。
サンダースで秋山がオットボールと名乗ったように…、いや、それはさすがにやり過ぎだが。
「だからアンツィオ校に居る間は北住って呼べば問題は解決だな、うん」
「………」
自信満々な俺だったが、西住の方は返事がない、というかプイッと後ろを向いてしまった、
「あー…、えと、その、北住?」
「…誰の事言ってるの八幡君、そんな人ここに居ないよ?」
…なんで拗ねてるんだよ、もしかしてもう一つ考えてた偽名の方がよかった?魚住なんだけど、ほら、バスケとか超強そうじゃん?
「おい、西住…」
「………」
駄目だ、なんか知らんがこれ、完全に拗ねてる、そんなに気に入らなかったのか…。
「…はぁ、わかったよ」
ため息をついてそう言うと後ろを向いていた西住はピクリと身体を反応させた。
「…み、えと…み」
「………」
言い淀んでいると西住がさっきからチラッチラッこっち振り返ってるんだけど…。
なにこの可愛い小動物感は…、あぁもう!!
「…みぽりん」
…はい、駄目でした、もうヘタレとでもなんとでも呼んでくれ。
「…そんなに名前で呼ぶの嫌なの?」
「あのな西住…、男子にとっちゃ女子を名前で呼ぶとか、普通にハードル高いんだよ、ほら、別に西住以外の奴にも名前呼びしてないだろ?」
だからそんな悲しそうな顔しないで察して?頼むから。
「男の子って…そうなの?」
「まぁ…少なくとも俺はそうだな」
爽やかイケメンのリア充共とかならともかく、一般的な男子高校生はそうであるべきだ。…俺って一般的だよね?
「そっか…、そういうものなんだ」
まぁ黒森峰は女子校だしな、西住がそういうのに疎いのは仕方ない。
…が、少しお仕置き(意味深)が必要だな。
「そんな訳でわかったか?みぽりん」
「…うっ、それはまだ続くんだ、なんか違和感がすごいんだけど」
安心しろ、言ってる俺も違和感しかないから。
まぁあだ名みたいなもんだし、カバチームの歴女達のソウルネームと一緒だと言い聞かせれば、直接名前を呼ぶよりかは精神的に楽である。
「もちろん続くぞ、なんせみぽりんが言い出した事だからな、なぁみぽりん?」
「え、えと…その、…八幡君、なんか楽しんでない?」
ないない、どう反応していいか困っている西住を見て楽しんでるとか、そんなことないから。
「何言ってんだみぽりん、これも潜入偵察の為だからな、なぁみぽりん?」
「…お兄ちゃん」
「すまん、俺が悪かった」
だからその言葉はもう止めて!俺の兄属性と西住の妹属性がタイプ一致とこうかはばつぐんで三倍ダメージくらっちゃうから!!
「八幡君が意地悪するからだよ…」
「つーかやっぱお前、俺が動揺するって分かって言ってたのかよ、それ」
ずっと前から分かってはいたが、使いどころが完全に確信犯である。
「…えへへ、バレちゃった、八幡君が動揺するの珍しいから、つい」
…動揺というか恐怖なんですけどね、姉住さんに対する。
確信犯で言っちゃう辺りが男心を揺さぶる小悪魔のようだが、西住の場合は天然で言っちゃってるので余計にたちが悪い。
「あ!思ったんだけど、小町ちゃんは名前で呼んでるよね?」
「そりゃな、妹を名字で呼ぶ方が変だろ」
え?もしかして俺と小町って本当は血が繋がってないとか?実妹じゃないってわかったら大変な事になるぞ、俺が。
「じゃあアンツィオ校に居る時は兄妹って設定にすれば、八幡君も名前、呼んでくれる?」
「だから名前呼びの時点でアウトだから…、つーか何その設定?比企谷 みほにでもなるのか?」
「…え?」
「…あ、いや待て、今のはなしだ」
「比企谷…みほ」
…もう勘弁して下さい、この娘の天然攻めをこれ以上受けきる自信ないよ、俺。
だいたい、そんな設定にしてみろ、草葉の陰であなたのお姉さんが泣いてるぞ。いや、あの人の場合草葉の陰から俺に砲塔向けてそうまであるけど。
…ん?姉か、そうか…その手があったな。
「よし、わかった、西住の言う通り、アンツィオ校では『きょうだい』の設定でいくか」
「…え?ほ、本当!?本当にいいの?」
「あぁ、確かに西住って呼ぶのはマズいもんな、俺ももう覚悟を決めた」
「…そっか、うん!そうだよね!!」
この設定ならアンツィオ校に居ても、俺も西住も問題なくお互いの事を呼び合えるだろう。
ーーー
ーー
ー
「そろそろアンツィオ校につくな、姉ちゃん」
「ねぇ八幡君、きょうだいって…」
「決まってるだろ?西住が姉で俺が弟だ」
つまり姉弟である。これなら俺は西住の事を姉と呼べばいいし、西住はいつもの調子で呼んでも問題ない。
「…さすがに無理があると思うけど、八幡君の方が背も大きいし」
「疑われたら複雑な家庭環境があるとでも言っとけ、そういう設定だろ?」
「そんな複雑な設定、考えてないよ…」
西住はなんかがっかりしているが、ここら辺が妥協案だろう…特に俺の。
まぁ姉弟で弟の方が身体が大きいなんてよくある事だ、問題は俺と西住がまったく似てない事だが、そこはほら、複雑な家庭環境だとでも言えば相手も追及しにくいだろうし。
「…って事で、アンツィオ校では俺は西住の事を姉と呼ぶからな、ちゃんと反応してくれ」
でないと無視されてると思って悲しくなるから。
「う、うん…、なんかすごい変な感じだけど…」
俺の気持ちが少しでもわかってもらえたなら幸いだ、これに懲りたら西住も不用意な発言は控えてもらおう。
「…そろそろ降りるぞ、準備はいいか?」
しかし…まだアンツィオ校についてすらいないのにこのグダグダ感、この先本当に大丈夫だろうか?