やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
番外編から続いて再び武部さんと八幡のデート、最近、この二人の絡みをよく書くなぁ…。
ん?バレンタイン企画?バレンタイン歩兵戦車でダージリンさんメインの話とか?
いや、書きたいけどね、本編の進行これ以上遅れるとアレなんで本編の進行がそのままバレンタイン企画みたいなもんだと思って下さい。
そしてアンツィオ校への潜入偵察決行日、前回と同じく、アンツィオ行きのコンビニの定期船に乗り込む事になった。
…なんで観光客に成り済ます予定なのにまたコンビニ店員の格好して潜入してんだよ、生徒会の全面協力とはなんだったのか?きっと予算無かったんだなぁ…。
「せっかく気合い入れてオシャレしてきたのに…、コンビニの制服とか」
さて、俺の隣ではさっきからぶーぶーと文句を垂れ流している武部がいる。
「仕方ねぇだろ、生徒会が手配したんだから…」
俺だって今回はアンツィオ校行きの観光船とかに乗って優雅に潜入出来ると思ってたよ、やっぱり予算なの?そのわりには武部用のコンビニの制服とかすぐ用意してたけど。
「向こう着いたら着替えるんだから、別にいいだろ」
「そんな問題じゃないの!気分的なものなの!!」
あぁもう、武部の奴を連れてかないと後でうるさそうだと思ってたけど、連れて来たらそれはそれでうるさい奴だな。
「あー…、ほら、その制服だって似合ってるぞ、うん」
「コンビニの制服似合ってるって言われても嬉しくない!相変わらず女心がわかってないなぁ…」
えー…、ダメ?小町には女の子が着替えたら褒めた方がいいって教わったんだけど。
あぁでも確かに、俺もコンビニの制服似合うとか言われても嬉しくともなんともねぇな、そんなに社畜が板についてきたのかって絶望するまである。
「そもそも気合い入れてオシャレしてくる意味がないだろ、潜入偵察なんだし、目立たない方がいい」
というかオシャレに気合いとかってあるの?スポーツなの?オサレなの?
「だ、だって、今日のこれって…」
「…?」
「な、なんでもない!だいたい比企谷だっていつもよりちょっとオシャレな感じだったじゃん」
「あぁ、なんか今日の話したら小町が用意してくれた」
なので自分ではよくわからん、わかるのはあの時の小町のキラキラとした目の輝きに少し嫌な予感がしたくらいだ。
「…比企谷、まさかまだ服とかお母さんに買って来てもらってないよね?」
「さすがにそれはねぇよ…、小町とはたまに一緒に買いに行くけどな」
母ちゃんに任せると某大手ファッションセンター、島村グループの服で統一されてしまう、いや、いいと思うけどね、島村。
さすが大手チェーン店、学園艦にまで店出してるくらいである。
「じゃあ今日の服装は小町ちゃんのチョイスなんだ…、センスあるなぁ、うん!女子力高い!!」
武部相手にこの高得点、さすが小町である、つーかそこら辺も女子力の範疇なのか…。前から思ってたけど女子力ってなんなんだろ?
戦闘力みたいなものかな?私の女子力は53万です、とか言い出さないよね?
…ん?でもあれだな、女子は変身する度に女子力がはるかに増すと言われればそれに納得できるし。
女子力たったの5か…ゴミめ、と言われれば女子力5の奴は本当にゴミに思えてくる。
…やっぱり女子力って戦闘力なの?
「イタリアは服とかすっごいオシャレだと思うの!だからイタリア行くならこっちもオシャレしないと!!」
アンツィオ校はイタリア風なだけでバリバリ日本の学校なんだけどな。栃木県だしギョーザとか美味いんじゃない?
「あ、でもイタリアの男の人って日本の人と違って情熱的だし、私、向こうでモテ過ぎて大変な事になっちゃうかもー!!」
向こうに居る奴らも日本人なんだよなぁ…、武部の奴、どんだけ舞い上がってんだよ。
「どうなるってんだよ…」
「そうねぇ…、ロマンチックな夜景をバックに彼が言うの、『セニョリータ、僕と結婚してくれないか?』って」
もろもろすっ飛ばしていきなり結婚話からスタートしやがった!!…彼って誰?
「するともう一人の彼が言うの、『ちょっと待った、サオリは俺の物だ、ぬけぬけとプロポーズするなんて許せないな』」
しかもなんか恋敵が出てきたぞ…、え?結婚視野に入れて二人と付き合ってるとか武部ってビッチなの?
「睨み合う二人は私を賭けて男と男の勝負をするの!『やめて!私の為に争わないで!!』」
とどめにヒロインがよく言う台詞ん中で俺が嫌いな台詞第一位をぶち込んでくるとは…。本当、これ系の台詞ぬかすヒロインに碌な奴は居ない。
「『なぜなんだサオリ?俺はこんなにもお前の事を愛しているのに…』、驚く彼に私は決意して言うの『ごめんなさいトニオ、私にはもう…心に決めた人が居るの』」
どうやらトニオ君は武部の妄想の中でフラれる為だけに生み出されたらしい。…悲しすぎない?それ。
「『いったい誰なんだ?サオリのハートを射止めた、憎い男は!!』『そ、それは…』」
この武部劇場いつまで続くの?このまま誰もつっこまないと延々続きそうなんだけど。
俺はあらかじめ持ってきていたマッ缶を鞄から取り出すとプルタブを開ける。もちろん俺にツッコミを入れるつもりはさらさらない。
武部を放置してマックスコーヒーをぐびりと飲みつつ、空を見上げる、今日もいい天気、と思わず歌いたくなってくる。歌わんけど。
「それは…、私の心に決めた人は…」
「…?」
なんだ?チラチラこっち見て、武部劇場はもう終わりか?
「…比企谷、ちゃんと話聞いてる?」
「あー、聞いてる聞いてる」
嘘ではない、ただ耳に残ってないだけだから。
スイーツ脳全開な武部の妄想劇場には真面目に付き合ってられないが…、まぁ話半分くらいなら聞いてやる事にするか。
正直あまり興味ないけど。
ーーー
ーー
ー
「あっ!アンツィオ校についたみたい、比企谷、私着替えてくるね」
「いや、ちょっと待て武部、トニオはその後どうなったんだよ?暗黒卿に落ちて地球相手に宇宙戦争仕掛けた所で切るな、一番大事な所だろ」
「いや、でももう着いたんだし…、早く降りないと入れなくなっちゃうよ?」
あぁ…、行ってしまった。実は地球を狙う異星人の皇子だったトニオ、マジでその後どうなったんだ?気になって潜入偵察どころじゃないんだけど。
スイーツ脳全開な恋愛ドラマかと思ったら世界を股にかけたミリタリーアクション、かと思ったら全宇宙の命運を握るスペースオペラだった、何を言っているのかわからんと思うが安心しろ、俺もわからん。
しかし武部の奴もなかなか妄想力豊かだな、その妄想力を使って小説とか書いてみるのもいいかもしれない。
ハーメルンってサイトとかどう?自動保存機能とかあってわりとオススメだよ。
「でもよかった、あのままじゃせっかく気合い入れてオシャレしてきたのがムダになっちゃう所だったし」
しばらくして武部が戻ってくる、今朝このコンビニの定期船に乗る前に見た格好だ、オシャレについて疎い俺だが、まぁ似合ってる格好だとは思う。
「あぁ、ちなみに武部」
けどね武部さん、一つ大事な事忘れてるよ。
「ん?どうしたの比企谷、改まって?」
「アンツィオ校は女子校だから、あんま男は居ないと思うぞ」
居ても観光客、そんで観光客は大概カップルで来てるので相手付きである。
「それを先に言ってよ!!」
いや、もう結構前に言ってたと思うんだけど…、人の話はちゃんと聞こうぜ?
ーーー
ーー
ー
「…ついたな、ここがアンツィオ校か」
さて、船での一悶着もようやく終えていよいよアンツィオ校にやって来た。
「建物もどれもオシャレ、ん~いい雰囲気!!」
「こりゃ観光客が多いのもわかるな」
イタリアまで行かなくても旅行した気分になれる訳か、そりゃ安上がりだ。
「しかし人が多いな…」
結婚情報誌の効果がよっぽどなのか、俺達以外にも観光客を多く見かける、それもカップルがやたらと多い、こいつらみんな爆発しないかな?
「さて、とりあえず…」
「比企谷!ここ、ここに行こうよ!!」
武部が持ってきた結婚情報誌のアンツィオ校特集のページを広げる、こいつ、何しに来たのか分かってるんだろうか?
「武部、俺達はアンツィオの戦車道チームの偵察に来たんだぞ…」
「わ、わかってるよ!ちょっと言ってみただけだから」
…本当に分かってんのか?正直不安だ。
「アンツィオ校の戦車道チームの練習場所がわかればいいんだが、これには載ってないな」
「そりゃそうだよ、恋人用だもん」
となれば歩いて探すしかないか…、アンツィオ校も結構広そうだし、面倒だなぁ。
「…とりあえず練習場探すか」
「え?誰かに聞けばいいんじゃないの?」
「誰かって…誰に?」
ここには知り合いは一人も居ないんだけど?
「そんなの誰でもいいじゃん…、あの、ちょっといいですか?聞きたい事があるんですけど」
そう言って武部は見知らぬアンツィオ校生徒のグループに声をかける、いきなり知らない奴、しかもグループに声をかけるとかマジかよ。
そのグループに入っていける訳もなく、俺は遠くから見ているしかない、相手も武部もなんかすげぇ親密な感じで話してるし、本当に初対面なの?
「お待たせー、練習場の場所、聞いてきたよ!!」
しばらく談笑し、最後ににこやかに手を振ってグループと別れると武部が戻って来た。
「なぁ…、もしかして今の奴らって武部の知り合いか何かなの?」
「え?初対面だけど…、なんで?」
いや…なんで?って聞かれても。
「そのわりにはやたら親しそうだったし」
「あんなの普通じゃない?あ、でもアンツィオ校の人って陽気でフランクな感じがして話しやすいかも」
いやいや…普通じゃないでしょ、どれだけコミュ力高いんだよ?53万くらいあるんじゃない?
「それで練習場なんだけど…、コロッセオ?って建物の中みたい」
「建物の中でやってるのか…」
なるほど、それは盲点だったな、広い建物だとは思うが、豆戦車が主体ならそれも納得だ。
「でも戦車道の授業まではまだ時間あるみたいで、まだ中には入れないって」
「…どっかで時間を潰す必要があるって事か」
やってないなら今行っても仕方ない、よし、さっきの話の続きを聞こう、トニオ…、俺は応援してるぜ!!
「ねぇ比企谷、私、行きたい所があるんだけど?」
と、思っていたが、先ほどもそうだが武部には行きたい所があるらしい。
「…どこに?」
「行ってくれるの?」
アンツィオの戦車道チームの練習場所が分かったのは武部のおかげだしな、まぁ…それくらいなら。
「どのみち練習開始まで暇だしな、んで、どこに行くんだよ?」
「それはもちろん…ここ!!」
結婚情報誌のアンツィオ校特集を広げ、一つの観光スポットを指差す武部、え?マジでここなの?
ーーー
ーー
ー
「ここがトレビの泉ね、私、ずっと来てみたかったの!!」
「トレヴィーノの泉って書いてあるんだけど?」
「トレビの泉って言ったらローマ最大のデートスポットだからね!絶対チェックしなきゃ!!」
いや、だからトレヴィーノの泉って書いてあるし、パチもんじゃないの?そもそもここ…ローマじゃないし。
「なんか地味な噴水だな、こんなもんがデートスポットなのか?」
もっと見映えのある建物とかたくさんあるだろうに。しかし、周りを見渡せば確かにこの泉には多くの観光客が、それもカップルばっかり来ている。マジでこいつら爆散しねぇかな。
「何言ってんの比企谷!トレビの泉と言えば恋人同士がコインを二枚投げると永遠の愛が誓えるんだよ!!」
はぁ…、そんな言い伝えがあるのか、つってもそれって本場のトレビの泉の話でトレヴィーノの泉の話じゃないよね?
じゃあ周りのカップルはみんなその言い伝えに群がって来てるのか…、噴水の中を見ると多くのコインが落ちてるし、これ、拾っていいのかな?どっかにご自由にお取り下さいとか書いてない?
「はぁ~…、いいなぁ、うちでもこんな泉があればいいのに」
学園艦のあちこちにこんなもんがあったらありがたみがない気もするが…。
「伝説の木の下で告白した二人は永遠に結ばれる、みたいなのか?」
「え!?何それ素敵!大洗ってそんなロマンチックな場所があるの?」
「いや、知らんけど…」
つーかそんなもんでいいの?確かに使い古されて一辺回って新しいまであるけど。
「えーないの?せっかくロマンチックなのに…」
そんなロマンチックにこだわらんでも、何?ロマンチックあげるよなの?
「恋人同士…かぁ」
武部はトレヴィーノの泉から吹き出す水をぼーっと眺めている、まぁ地味だけど、噴水の雰囲気は俺も嫌いじゃない。
…周りにコイン投げてるカップルさえ居なければね。
「…ねぇ、比企谷、私達も投げてみようか?コイン」
ふと、小さな声で武部はぼそりと呟いた。
「…は?」
えと…え?いや…は?
「…そういうのは恋人同士でやるもんだろ」
「…え?あ!ちょっと待って!今のはその…」
なんか武部の方も慌てている、…たぶん、この雰囲気に酔ったのだろう、きっと。
…だから恋人だらけのこの空間は嫌いなんだよ。
「えっと…、そう!私達が投げるコインは一枚、一枚だから!!」
「一枚って…、何か意味あんの?」
「コイン一枚はね、再びローマに来る事ができるんだって」
投げるコインの数でいろいろとご利益が変わるのか…、何そのシステム、神社とかで例えると一万円と千円で御利益の幅が違う、みたいな?ありがたみねぇなそれ。
「もう一回ここに、なぁ…」
今回はアンツィオ校の偵察で来た訳だけど、次来るってどんな状況でだ?
「だからね、比企谷も私も将来素敵な恋人が出来たら、またここに来れるんだよ、コイン二枚はその時まで取っておく事にしよ?」
正直俺のそんな未来は想像できんな…、武部の奴は想像しないと可哀想ではあるが。
ふむ、しかしあれか、将来俺を養ってくれる素敵な女性が見つかればここに来てコイン二枚投げれば永遠に養ってもらえるのか、何それ素敵。呪いみたいだけど。
「それじゃあ投げるよ、後ろ向きでちゃんと泉の中に入れないとダメだからね?」
「お、おい…」
武部はもう後ろ向いてコイン投げようとしてるし、やっぱり俺も投げる流れなのね。
つーか、コイン一枚は再びローマに来る事が出来るっていうけど、そもそもここがローマじゃないし。そんな言い伝え、特に信じてないけど。
財布から適当に小銭を取り出そうとすると、…げっ!?こんな時に限って安い金額の小銭が入ってないとか。
隣をチラッと見ると武部は五百円玉を取り出していた、どんだけガチなんだよ…。
「それじゃいくよ!比企谷」
「へいへい…」
後ろ向きでコインをトレヴィーノの泉に向けて投げる、後ろを向いてるのでちゃんと入ったかも怪しいが。
「これでまたここに来れるね、よーし!次はちゃんと二枚入れないと!!」
何がそんなに嬉しいのか、武部は楽しそうに気合いを入れた。
「ちなみにコインの数って他には何かあるのか?」
「あ!三枚投げちゃダメだよ!!別れちゃうから」
一枚増えるとダメなのか…、こういうのって多い方が御利益ありそうだと思ったけど。
…いや、待てよ、泉にコインを三枚投げたら、そのカップルは別れるのか。
「そりゃいいな、今度カップルがコイン二枚投げてきたら、俺が一枚追加してやろうか?」
「それ、結局比企谷がコイン一枚投げてるだけじゃん!!」
む、駄目なのか?せっかくリア充共を根絶やしに出来る素晴らしいシステムだと思ったのに。
コイン一枚で再びローマに来る事ができて、二枚投げれば永遠の愛が誓え、三枚だと別れるね…。
…あれ?俺達の投げたコインの枚数のカウントって、どういう扱いになるんだ?
ーーー
ーー
ー
「そろそろ時間だな、コロッセオの方に行くか」
「えー…、せっかく来たんだし、もっといろいろ見て回りたかったんだけどなぁ」
何度も言うけど、俺ら偵察しに来たんだからね?遊びに来た訳じゃないから。
「ほら比企谷、この先は屋台街だって」
「すげぇ活気だな…、こいつら授業はどうなってんだよ」
「へー、いろんなお店があるんだ、どれも美味しそうだけど、いっぱい食べるとカロリーが…」
そこら辺、きちんと気にするのはやっぱり女子だな、俺とかカロリーなんて気にした事ない、マッ缶が高カロリーだし。
「…あれ?あの人達」
武部が屋台の一つで立ち止まる、なにやら店員達がえらく慌てているみたいだ。
…というか、こいつらは。
「さっき武部が話してたアンツィオ校の奴らじゃないか?」
武部が戦車道の練習場所とか聞いてフレンドリーにしてたアンツィオ校の生徒だ、こいつらも店出してたのか。
「うん、なんかすごい慌ててるけど…、どうしたんだろ?」
武部がその屋台に向かっていくので渋々ついていく事にする。
「何かあったの?」
「あ!沙織姉さん!!」
…沙織姉さん?え?初対面だったよね君達、どんだけ仲良くなるの早いんだよ。
「それがうちの相方がちょっと包丁で指切っちゃって…」
「え!?た、大変!!」
「こんなの舐めときゃ治るッスよ」
「そんなんじゃ駄目!ちょっと待って、私、絆創膏とか持ってるから」
すぐに武部が鞄から消毒薬と絆創膏を取り出して、その指を切ったアンツィオ校生徒の手当てをした。
「…手際いいな、つか、いつも持ち歩いてんのかそれ」
もしかして君はあれかな、超高校級の保健委員だったりするのかな?あれ?何故か武部が怖いぞ。
「うん、だってほら、彼氏が怪我した時、すぐに手当てしてあげたらポイント高いでしょ?」
ほんと徹底してんなぁ…、いろんな意味で尊敬するわ。
「はい、とりあえず応急処置だから、すぐに保健室に行く事、いい?」
「沙織姉さん…、ありがとうッス!!」
そしてこの包容力である、やっぱりおかん属性なんだよなぁ…。
「あぁ…でも、店が、お客さんもたくさん来てますし」
「残念だけど今日は店じまいだな」
もう昼過ぎではあるが、それでも多くの観光客が屋台街には来ている、このまま店を続けても一人欠けた状態で捌き切るのは難しいだろう。
「…ごめん比企谷、ちょっとお願いしていい?」
「…まぁ、いいけど、練習場所を教えてもらった礼もあるしな」
そうだよな、武部はこういうのを見過ごす奴じゃないのはよく知っている。
「ねぇ、だったら私、少しお店手伝うよ?」
「えっ!いいんですか沙織姉さん!!あっ…でも料理が素人の人が手伝っても…」
「いいからいいから、これを切ればいいのね?」
武部は屋台に入ると手洗いをしてやりかけだった材料を包丁で切っていく。
「ね、姉さんすげぇ…、慣れてますね」
「ふふん♪これぐらい当然よ」
いや、本当にすげぇなこいつ…、イタリア料理の屋台に入っていきなり即戦力かよ。
「ごめんね比企谷、私ちょっとこのお店手伝うから、後はお願いしてもいい?」
「…はぁ、まぁ仕方ないな」
「ありがとう!お礼に後で比企谷にも私のとっておきのイタリア料理、作ったげるから!!」
あぁ、それは本当に楽しみだな、俄然、やる気が湧いてきた。
しかし、オシャレに全力で、コミュ力高くて、デートの下見にも余念がない。とどめにこの料理スキルときたものだ。
やっぱり武部の女子力って53万くらいあるのだろうか?スカウターとか、軽く爆発するくらいの。
…女子力ってなんだろう?やっぱ戦闘力みたいなものかな?
カカロットォォォォォォォォオッ!!
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