やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
このアンツィオ戦はわりかしオリジナルの要素多めにしようかと思ってます特に戦車探しにはサプライズを用意する予定。
…それとちょっとアンケートというか軽く聞きたい事あるんで活動報告に乗せたいと思います、回答してくれたら嬉しいんですが。
「遅いぞ比企谷!貴様で最後だ」
本日の戦車道訓練が終わり、後片付けも終えて帰ろうとしていた所を生徒会室に呼び出された。
なんでも二回戦へ向けての対策会議を行うとか…、それ、俺が参加する必要あるの?
生徒会室にはすでに生徒会の三人の他に隊長の西住、そして何故かあんこうチームの面々が居た。
「…なんでお前らまで居るの?」
あと、なんで俺居るの?
「いつもみぽりんばっかり頼るのもなんだし、それに対策会議ってどんなのか気になるじゃん」
「はい!戦車戦において作戦会議は重要ですもんね!」
まぁ…、武部、秋山、五十鈴はいいけど、冷泉はこんな所でも寝ているし、本当に何しに来たんだ?こいつ。
「一回戦の試合は全て終了されたんですね、結果はどうだったんですか?」
「黒森峰、プラウダ、聖グロリアーナは一回戦を突破している」
最早語る必要もない黒森峰に去年の優勝校のプラウダ、そしてダージリンさん率いる聖グロリアーナ、どれも一回戦突破か。
まぁ順当だな、順当すぎて面白くない、うちがサンダース倒したみたいな番狂わせは他ではなかったようだ。
トーナメント表を見ると黒森峰と聖グロリアーナはこのまま行けば準決勝で試合か、よくよく考えればあのサンダース戦での観戦はよく成り立ったものだ。
大洗も準決勝まで行ければプラウダとか…、そういやダージリンさんがプラウダ校の隊長と知り合いだとかで、今度紹介するとか言ってたが全力でお断りしたい。
だって地吹雪のカチューシャとかって通り名付いてるんだぜ?絶対大女だぞ、怖ぇもん。
まぁ準決勝なんて先の事はいいとして…、今は二回戦、次の対戦相手か。
「…アンツィオ高校?」
なんだこのピザの形したふざけた公章?うちのデザインもダサいとは思うけど。
「秋山出番だ、解説を頼む」
戦車道関連ならばあきペディア先生に頼むのが一番だ。
「すいません…、アンツィオ校については私もあまりよく知らなくて」
「お前はなんでも知ってるんじゃないのか?」
「いいえ、なんでもは知りませんよ、知ってる事だけです」
うむ、模範解答だ。秋山の奴は全然意識して言ってないだろうが。
「…どんな学校なんですか?」
「あー…、確か創設者がイタリア人だったかな?」
「イタリアの文化を日本に伝えようとした、イタリア風の学校だ」
会長が適当に答えたのを河嶋さんが補足してくれる。
イタリア風の学校って…、まぁ聖グロリアーナもイギリス風だったし、サンダースもアメリカンだったしな。
近々戦車道の世界大会が行われるとか言ってたけどこれ、日本でもう世界大会やってるみたいなもんじゃね?
「ちなみに校風もイタリア風でノリと勢いがあって調子に乗られると手が付けられない、試合でもそれが吉と出るか凶と出るかで展開がガラリと変わるだろう」
「チッ…、何そいつら?リア充なの?」
「ひ、比企谷君、そんな露骨に嫌な顔しないで…」
「舌打ちまでしてますね…」
ノリと勢いとか調子に乗ると手が付けられないとか、リア充の生態系そのものじゃないか。
「まぁ比企谷ちゃんの事はほっといて…、しかしアンツィオかぁ、チョビもやるなぁ」
「誰かお知り合いの方でもいらっしゃるんですか?」
「んー、まぁね、向こうの隊長さん」
「えぇっ!?会長、向こうの隊長さんと知り合いなんですか?」
サンダースのケイさんとも知ってる仲っぽかったし、適当に見えてうちの会長って結構顔広いな、いや、実際適当かもしれんが。
「…となればやはり戦車もイタリア戦車なんですか?」
「あぁ、先の一回戦ではCV33とセモヴェンテM41を使用している」
カルロ・ヴェローチェCV33って…豆戦車じゃねぇか、そんな戦力でよく一回戦突破出来たな。ちなみにCVって聞くと声優さんの事しか想像出来ない人って居るよね。
カルロ・ヴェローチェ、キャスティングボイス33、カルロ・ヴェローチェってキャラ名からするときっと萌えキャラだな、ヴェローチェたんとか呼ばれそう。
「CV33って私大好きです、小さくて可愛くて、お花を生ける花器にぴったりです」
…え、そう?小さくて可愛いのはまぁわからんでもないが、花器って、やっぱり五十鈴の感性がいまいちわからん。
「しかし戦車道関連でイタリアって…、強い所想像出来んな」
「えぇっと…、どうしてなの?比企谷君」
なんせヘタリアって言葉があるくらい、イタリアは戦争ヘタなイメージがあるんだし。イタリアの全盛期はマジでいろんな意味でヤバい。詳しくはみんなそれぞれ調べてね。
「そもそもカルロ・ヴェローチェCV33じゃ戦車の装甲抜けないんじゃないですか?」
セモヴェンテの方は警戒すべきだろうが…、CV33って、頑張ってうちの八九式倒せるくらいな気がする。
「しかし、現に一回戦を突破している」
アンツィオが一回戦に戦ったマジノ女学院ってとこが強いのか知らんが、確かに弱い戦力で一回戦を突破したのは事実か。
確かにうちもこの戦力でサンダース倒したのを考えると油断は出来ないかもしれん、戦車道はフラッグ戦だ、どんな戦力差でもフラッグ車が倒されれば終わりだ。
「やっぱり作戦勝ちなのかな?隊長の人がよほど優秀な人なのかも…」
「優秀さであれば西住殿も負けてません!!」
「あはは…、ありがとう、優花里さん」
ここで間髪入れずに即答する辺り、秋山の忠犬っぷりがわかるな…。
「会長、向こうの隊長さんとはお知り合いなんですよね?どんな方なんですか?」
「んー、チョビ子」
それでわかる訳ないだろ…。
「安斉 千代美、衰退したアンツィオの戦車道を立て直す為にアンツィオがスカウトした」
…なんか戦車道復活させる為に無理やり西住を誘った大洗と似てるな、西住と向こうの隊長の立場も。
となれば次の試合、もしかしたらお互いの作戦勝負になるかもしれない、もしくは隊長同士の指揮の勝負か。
チラッと西住の方を見る。
「…えと、どうしたの八幡君?も、もしかして私の顔に何かついてる!?」
…大丈夫だろうか?まぁ普段はさておき戦車道補正がかかった西住なら大丈夫だとは思うが。
「一つ問題がある、アンツィオはこの大会の為に新型戦車を導入したと聞く」
「どんなの?」
「ちょっとわからないです」
「一回戦には出なかったもんね…」
…戦車一両でこの戦力差をひっくり返せるとは思えんが、いや、ガンダムっぽいあのタンクならイケるか?
「新型戦車とか、やっぱり金のある学校はやる事が違うな」
会長、うちも新しい戦車買いませんか?ガンダムっぽいタンクとか、あれなら一人乗りだし俺にぴったり、八幡、ついに戦車道に参戦す!!
「比企谷君、アンツィオ高校はうちと一緒であまりお金はないよ」
え?そうなの?ってか、今さりげなくうちの学校が貧乏だって言わなかった?大丈夫なの?
まぁ貧乏だよね、戦車道復活させる為にまず戦車探すとこから始めたくらいだもん。
「それでよく戦車なんて買えましたね…」
「それもそうだねー、もしかしてオヤツとか我慢してたのかな?」
「まさか…、あのアンツィオ校が、ですか?」
どのアンツィオ校だよ、オヤツを我慢したくらいで戦車買えるわけないと思うんだけど。
「アンツィオ…」
「? 沙織さん、どうしたの?」
…何か違和感があると思っていたが、さっきから武部がずっと黙ったままだった、こいつが黙っているとか珍しい。
「…なんかどっかでその名前聞いた事あるなぁって思って、何だったかな?」
うーん…と武部は首をひねって考えている、秋ペディア先生こと、秋山が知らないのに武部が知ってるとは思えんが。
「…あっ!思い出した!!」
そう言うと武部はカバンから一冊の雑誌を取り出した、つかそれ、その雑誌。
「…結婚情報誌、沙織さん、いつも持ち歩いてるの?」
「もちろん!女の子なら当然だよ!!」
当然…なの?普通の女の子が持ち歩くような雑誌じゃないと思うんだけど、どっちかっていうとアラサーな女性とかが持ってるもんじゃないの?
「えと…確かこの辺りに、…あった!!」
武部はその結婚情報誌【ゼクスィ】の一つのページを広げると、みんなにも見えるように机の上に広げた。
【イタリアまでは遠すぎる!学園艦ながら観光スポットとしても大人気、恋人達の新たな聖地とまで言われるアンツィオ高校特集!!】
『外国人が初めて創設したと言われるアンツィオ高校、コロッセオ等、イタリアの観光スポットを模した建物が多く、学園艦ながら多くの観光客の訪れる人気スポットとして有名であり、なかでもトレヴィの泉等、恋人達の新たな聖地として…』
…なんだこの頭の悪い文章は。
「アンツィオ高校ってイタリアの、特にローマを模した建物が多くって、恋人達の間でも大人気なデートスポットなんだって!私も行ってみたいなぁ」
「お料理もどれもとても美味しそうですね…、私も興味があります」
「コロッセオではCV33のレースなんかもやってるみたいですね、私も出てみたいです!!」
「あはは…、でも、お祭りもやってるみたいだし、とっても楽しそうな学校だね」
あんこうチームの面々も武部の広げた雑誌を見てわいわいおおはしゃぎしている、こういう所はやっぱり今時の女子高生だな。
「こりゃすごいねぇ、うちでも何かやってみよっか?」
…うちの会長は相変わらず能天気なようだけど、これ、普通にマズくないか?いや、写真の料理はどれも美味しそうだけど。
スカウトされる程優秀な隊長、新型戦車、それに観光スポットとして大人気となれば貧乏問題も解決されてヘタすりゃまだ戦力強化されるぞ…。
なまじサンダース校はまだ有名だったからいろいろ情報はあったが今回は相手側も無名校なだけに本当にわからない。
…二回戦、もしかしたら結構ヤバいのかもしれんな。
ーーー
ーー
ー
アンツィオ高校、本拠地を栃木県とし内陸県なので静岡県にある清水港を母港として借りている学園艦である。
その為栃木県以外の静岡、愛知出身の生徒も多く、現在では戦車道履修生徒も42人となった。
昔は盛んだった戦車道も資金難と保有している戦車性能の不足にすっかり衰退してしまったこのアンツィオ高校の戦車道を立て直した一人の女生徒が居る。
戦車道チームからドゥーチェ(総帥)と呼ばれる彼女はムチを手につかつかと歩くと壁に貼られた一枚の写真の前に立ち止まった。
「戦車道西住流家元の娘、西住みほ」
その写真に写るのは大洗学園の隊長である西住 みほである。
「お前の戦車道は…弱いッ!!」
バシンッ、と、女生徒は床に向かってムチを叩き付けた。
「…くくく、あっはっはははははははは!!」
そして大きく高笑いをするとその女生徒は…。
「…やっぱり違う、格好良いがこのキャラを続けるのは無理だ!!」
恥ずかしさにその場にうずくまって顔を真っ赤にして頭を抱えた。
「くそ…、二回戦の相手は西住流か、少しは威厳のある所見せないとな、もっとこう…、バシッと決めた方が…、いや、西住流だろうが島田流だろうが私達は負けない!!」
ゴホンッと咳払いをして仕切り直すと、女生徒は再び立ち上がり、ムチを構えた。
「よし、もう一度だ、西住みほ!お前のーーー」
「姉さーん!アンチョビ姉さーん!!」
「おわぁッ!?」
バタンッと突然扉が勢いよく開かれて元気の良い一人の女生徒が部屋に入って来た。
「? 何やってんですか?アンチョビ姉さん?」
「な、なんでもない!それよりペパロニ、急にドアを開けるな!ノックくらいしろ!!」
驚いてムチを落としたこの女生徒はアンチョビ、本名安斉 千代美、アンツィオ高校戦車道チームの隊長である。
「あー、すんませんアンチョビ姉さん、忘れてました!!」
そしてこのいきなり扉をぶち開けた元気のいいのが副隊長の一人であるペパロニだ、本名は…うん、大人の事情です。
「って、今はそれどころじゃないッスよ、大変なんです、これ見て下さい!!」
「何かと思えばうちの屋台やらの売り上げじゃないか、最近何故かやたらと忙しかったからな、きっと売り上げも凄い事になってるだろ」
それで驚いてわざわざ慌てて来たのか…、アンチョビはため息をしてすぐに気持ちを入れ換えるとペパロニの持ってきた売り上げの明細書を受け取る。
「それが違うんですよ!逆に売り上げが落ちてるんですよ!!」
「何ぃ?そんな馬鹿な事があるか!!」
慌てて明細書を見ると確かにそこに書かれている売り上げの頭の数字が普段に比べて小さい。
「な、何でだ?ペパロニ、お前まさか新しいピザ釜でも買ったんじゃないのか?」
「買っていいんですか?アンチョビ姉さん!!」
「駄目だ!いや、欲しいが…、今は我慢だ!いくら新型戦車が買えたといってもまだ必要な部品や燃料がたくさんあるんだからな!!」
「でも新しいパスタ鍋も欲しいッスよ?」
「我々が優勝するまで我慢しろ!…しかしなんでこんなに売り上げが下がってるんだ?最近じゃむしろ売れ行きが好調過ぎて材料が足りなくなるくらいだっただろ」
「何でですかねー?」
二人してうーんと頭を悩ませていると扉が開けたままだった事で廊下を通りかかった一人の女生徒が部屋に入って来た。
「ドゥーチェ、ペパロニ、どうしたんですか?」
「おぉ!カルパッチョ!大変だ、これを見てくれ!!」
その生徒はアンツィオ高校のもう一人の副隊長、呼び名はカルパッチョである、本名は…察して?
「…屋台の売り上げ、ですね、これがどうかしたんですか?」
「よく見てみろ!売り上げが下がってるぞ!!」
「あれだけ忙しかったのに、不思議だろ?」
「えぇっ!?本当ですか!!」
カルパッチョも二人に言われて慌てて明細書を見る。
「…あのコレ、売り上げ上がってますよ?」
「何ぃ?いや、だって数字をよく見ろ、明らかに下がってるだろ?」
「あの…、ドゥーチェ、ペパロニ、二人共頭の数字だけ見てませんか?」
「へ?そりゃ、だっていつも8とか9とかだっただろ?」
「…桁が上がってるんですよ、0がいつもより多いんです」
「カルパッチョ!ちょっと貸してくれ!!いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、…本当だ!!」
「って事は姉さん、これ」
「売り上げが上がった所じゃない!大儲けじゃないか!!」
「マジッスか!ピザ釜買えますか?」
「あぁ!ピザ釜でもパスタ鍋でも…、いや待て!まずは戦車道だ、上手くいけばまだ戦力強化が出来るぞ!!」
「今までCV33が主力でしたからね…、ようやく新しい戦車が買えましたけど」
「くっくく…、これで証明してやる、アンツィオは弱くない!…じゃなかった、強いって事を!!」
「はい、ドゥーチェ!!」
「任せて下さい!アンチョビ姉さん!!」
アンチョビ、ペパロニ、カルパッチョの三人はあまりの嬉しさに勢いで大いに盛り上がっている。
「しかし、なんで最近こんなに忙しいんですかね?」
「観光の人達、それも恋人の方々が多く来ているみたいですが」
「こ、恋人ッ!?羨まし…、じゃなくて、うちの学校、なんか見るもんとかあったか?」
「…さぁ?」
「なんの特色もない、普通の学校だと思いますけど」
アンツィオ高校が雑誌、しかも結婚情報誌であるが、それに取り上げられているのを知らないのか、三人は首を傾げた。
「確かに食事には少しうるさいが…、それだけだよな?」
「ですよね、どうしてこうも観光の方々、それも恋人が多く来てるんでしょう」
「…恋人、恋人かぁ」
「? どしたんですか?アンチョビ姉さん?」
「な、なんでもない!よし、せっかくだから恋人向けに新メニューを開発して更に売り上げをアップさせるぞ!!」
「さすがアンチョビ姉さん!了解です!!…っても、うちら恋人向けのメニューとかわからないですよ?」
「ここは女子校ですもんね…、たかちゃんに聞けばわかるかな?」
「心配するな!そこは私が読んでいる恋愛小説を参考に…、じゃなくて、経験でなんとかする!!」
「さすがッス!アンチョビ姉さん!!」
「上手くいけばいいですね」
…てな訳で、全国大会二回戦に向け、より一層盛り上がりを見せるアンツィオ高校だったりする。
「…恋人かぁ、いつか私にも素敵な相手が来てくれる、よな?」