やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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ようやくアニメの1話終わった…、と同時にストックも切れたので多少更新速度落ちるかと。
八幡の性格って難しいなぁ。


彼と彼女達の戦車道は、ここから始まる。

「これは一体どういう事だ?そこのそれから話は聞いていただろう」

 

「西住さん、戦車道やりましょうよ、ね?」

 

「さっきから聞いてれば勝手な事ばかりじゃん!」

 

「そうですよ、西住さんはやらないと言っているんですよ!!」

 

生徒会室、その中では予想通りに生徒会メンバーと武部、五十鈴による話し合いが今も尚続いていた。

 

つーか、そこのそれって俺の事ですよね?そりゃ西住勧誘には失敗しちゃったけどこの扱いは酷くないですか?

 

広報の河嶋さんが目線を鋭くさせてこちらを睨んでるのがわかる、多分、なんでこの二人を連れて来たのかと言いたいのだろう。

 

いや、そりゃだって、連れて来ないと怖いじゃないですか、二人に後で何言われるかわかったもんじゃないし。

 

しかしまぁ、話し合いとは言ったけどこれは決してそんなもんじゃないな、生徒会がやれと言ったのを武部と五十鈴がやらないと返す、そんなやり取りがずっと続いている。

 

それも生徒会の小山さんと河嶋さん、西住側の武部と五十鈴の計四人の言い争いで生徒会長と西住はまだ一言も喋っていない。

 

生徒会長は依然として椅子に座って頬をつきながら面白くなさそうな顔をしているし、西住は武部と五十鈴に手を握られながらずっとうつ向いたままだ。

 

え?俺?喋れる訳ないじゃん、ここで口を挟もうものなら総叩きくらうだろうし。

 

「そんな事言ってるとさぁ、あんた達…」

 

と、ここで生徒会長が初めて口を開いた、おっ、ようやく軽いジャブでも来るか?

 

「この学校から居られなくしちゃうよ」

 

おぅ…、ジャブどころかフィニッシュブローだよ、何なの?生徒会ってそんな事まで出来んの?

 

…というか、どうしてそこまで西住に、いや、戦車道にこだわる必要がある?

 

必修選択科目のオリエンテーションでは文科省から戦車道に力を入れるみたいな要請があった説明は聞いた、だからまぁ戦車道復活させるのはいい。

 

それでも復活させるくらいなら経験者も必要不可欠という訳ではない、まぁ素人が集まって大会に出たとしても結果は知れてるだろうが。

 

「お、脅すなんて卑怯です…」

 

この会長の一言にはさすがの武部と五十鈴も少し言葉に詰まってしまう。

 

「脅しじゃない、会長はいつだって本気だ」

 

「今の内に謝った方がいいと思うよ、ね?」

 

そう、ぶっちゃけ生徒会にそこまでの権力があるかはわからないが、この生徒会長は虚言の類いは吐かない。

 

有言実行、多少の無茶なら平気で実現させてきている。

 

「とにかく、みほは戦車やらないから、もう諦めてよ!!」

 

「だいたい、そんな横暴が許されると思ってるんですか?」

 

最近転校してきた西住はともかく、武部も五十鈴も、それはわかってるだろうに、二人は今も尚、生徒会メンバーに抗議を続けるのを止めない。

 

…不覚にも少し、羨ましいと思った。

 

それはとても不確かな物で、曖昧で、それでも俺が渇望している何かに感じて。

 

西住、いい友達が出来たじゃないか、いい友達出来た事ないからわかんねーけど、ってか友達出来た事ないまであった俺にこんなことを言う資格ねーな。

 

「比企谷、あんたからも何か言ってやって!男でしょ!みほの為に、なんか…、こうガツンと!!」

 

「そうだな比企谷、お前からも西住に言ってやれ、貴重な男の意見だ」

 

次第にこの口論の決着が見えない事がわかったのか、武部も河嶋さんも俺に声をかけてきた。

 

やれやれ、ようやく声がかかったか、なんか今までずっと放置されてたんで皆俺の事生徒会室の備品か何かと勘違いしてんじゃないかって思いそうになっちゃったじゃねーか。

 

ほら、歴代生徒会長の銅像とかさ、…今の生徒会長なら作りそうだよな、それ。

 

ここで一つ、武部も河嶋さんも大きく勘違いしている所がある。

 

こういった言い争いで、こうして別の誰かの意見を求める時ってのは自分に味方する意見を求めての行動だ。

 

だから二人は勘違いしている、何故ならぼっちには最初から味方なんて居ないのだから。

 

ぼっちは崇高にして孤高、何処にも組みせず、誰の味方でもなく、誰も味方は居ない、だから俺は生徒会の味方でも、西住の味方でもない。

 

だから、全てをぶち壊そう、厄介な第三勢力として、全てを台無しにしてやる。

 

「別に、必修選択科目なんだから、本人がやりたいのを選択するのが一番だろ」

 

「…ヒッキー」

 

「比企谷ッ!?き、貴様、我々生徒会に…」

 

河嶋さんが何か言おうとしているのを生徒会長が肩に手を置いて止めてくれた、ありがとう会長、そうそう、まだ人が喋ってる最中だって。

 

「比企谷さんもそう思いますよね、西住さんがやらないと言ってるのに、無理にやらせるのは酷いです」

 

「比企谷君…」

 

西住がわずかに顔を上げて俺の方を見る、…その顔は酷く弱々しく、これから喋る事に少し躊躇しそうにさえなる。

 

だが、もう賽は投げられてしまった、だから俺はこう付け加える。

 

「だから武部と五十鈴、お前らは戦車道をとれよな、んで西住は…香道、だっけ?はい、問題解決」

 

「は?ちょっと比企谷、何言ってんの?」

 

「私達は西住さんと同じものを選択しています」

 

続く俺の言葉が予想外だったのだろう、二人は驚いた顔をして俺に詰めよって来る。

 

「お前らこそ何言ってんだ、お前ら最初戦車道やりたいって言ってたろ」

 

「それは…、そう、だけど、でも…」

 

「私は…、私達は西住さんと同じものにすると決めましたから」

 

「おいおい、やりたい事をやらないお前らが、やりたくない事をやらせる生徒会にケチつけてたのか?」

 

「それとこれとは話が違うじゃん!!」

 

「同じだろ、本来香道やりたいって西住が生徒会から戦車道やれって言われてるのと、本来戦車道やりたいお前らが、西住の為に香道を選択するのは、別に何も違わねーよ」

 

「それは…」

 

「比企谷さん、あなたって人はその…、卑怯です…」

 

卑怯か、確かにこのやり方は卑怯で悪辣なものだ。

 

人の良心につけこむ、決して誇っていいものではない。

 

大事な10連覇のかかった戦車道全国大会の決勝戦で、西住は全てを捨ててでも仲間の救出に向かった。

 

それでその後どうなるかくらい、想像がついてただろうに。

 

だからきっと、西住みほは優しい女の子だ。

 

そんな優しい女の子が自分の友達の思いを無下にはしないだろう。

 

友達の為に彼女はきっと、決意する。

 

「あ、あの!私!!」

 

西住がゆっくりと顔を上げる、それは先程までの弱々しいものとは違って、何かを決意したような表情だった。

 

「私!戦車道…やります!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

一仕事終えた後はマッ缶に限る、いや、マジで。

 

その後、必修選択科目を戦車道へと変更する為に西住と武部と五十鈴は生徒会に残っていた中、俺はそっと生徒会室から出た、こういう時、ステルス能力習得してて良かったわーって実感する。

 

近場の自販機からマッ缶、我が学園艦のソウルドリンクと俺が決めたこれを飲む。

 

キリッとした甘さが仕事で疲れた俺の心を潤してくれる、大洗の名物は干芋?水産物?いえいえ、マッ缶です。

 

西住も、ついでに武部と五十鈴も戦車道を選択した事で生徒会からの依頼もクリア。

 

ただ明日からの俺の評判が多少気になる所ではあったが、よくよく考えたらもともと評判されるほど誰かと関わってねーや、てへっ。

 

だからまぁ、今まで通り、特に何も変わらない、例え大洗で戦車道が始まろうがあれは女の武道、俺にはなんも関係ない。

 

「な~に一仕事終えた感じになってるのかな、比企谷ちゃん」

 

「会長…?いや、西住はちゃんと戦車道選びましたし、実際に仕事終えてるじゃないですか」

 

ってかこの人ステルス能力に気付いてたのね、くっ、まだまだ精進が必要か、いずれこの能力を磨いて完全な無にならねば…、俺の存在消えてるな、それ。

 

「知ってる?比企谷ちゃん、仕事に終わりなんてないんだよ」

 

うわぁ、嫌な事聞いちゃったなぁ、とか考えてると生徒会長は一枚のプリントを俺に見せてきた。

 

「比企谷ちゃんの必修選択科目、まだ貰ってないなぁって」

 

あぁ、そういえば最近は戦車道のゴタゴタのおかげで自分の必修選択科目については考えてなかった。

 

「そういえばそうですね、じゃあ今日中に書いて出しとくんで、そのプリント貰います」

 

「いやいや、いーよ、生徒会でちゃんと受理したから」

 

「…は?」

 

よく見ると…俺の名前の書いてあるその必修選択科目のプリント、そこに普通なら男子ではあり得ない項目が手書きで追加されていた。

 

戦車道の文字、そしてその横には大きな○。

 

「生徒会の仕事って…終わったんじゃないんですか?」

 

「んー、言わなかった?比企谷ちゃんの仕事は戦車道を手伝う事だって、ほら、最初からさ」

 

あー、うん、そういや西住を勧誘するのはとりあえず、って言ってましたね。

 

いや、詐欺でしょ、これ。

 

「そーいう事だから、明日からまたよろしくー」

 

バンバンと肩を叩かれ、生徒会長は笑顔で退場していった。

 

残された俺はしばらく呆然としつつ、やがて手にあったマッ缶を一気に飲み干した。

 

「…嘘だろ」

 

男の俺が戦車道に関わるのは…間違ってる。


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