やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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まほ「みほ妹可愛い」

八幡「いや、うちの小町のが妹可愛い」

まほ「あ?」

八幡「…すいません、西住も可愛いですよね」

まほ「あ?」(みほに手を出したらわかってるだろうな?的な目)

八幡(もうやだこのお姉ちゃん…)


それでも、姉妹は少しだけ距離を縮める。

「…げっ」

 

何故?What's?Why?なんでこのタイミングで電話かけて来ちゃうかなこの娘は!?

 

と、思わずサンダースのノリが移っちゃうくらいには動揺してしまう。

 

「…みほから電話だと?」

 

机の上に放置してあった俺の携帯はそのおかげで姉住さんにもばっちり見られてるし…。

 

「………」

 

「………」

 

お互い無言のまま、リビングにはひたすらイギリス戦車コンカラーの砲撃音が響く、ケイさんの時もそうだったけど放置しとくとマジうるせぇな、だがそれが良い。

 

…いや、良くないだろ、もう今度から着信音変えよう、次はティーガーⅠの砲撃音にしようかな。

 

とりあえずこの電話はスルー安定だな、姉住さんの居る隣で西住と電話とか、俺の心臓に悪い。

 

「何故出ない?」

 

「…え?いや」

 

「みほを無視するのか?」

 

…状況わかってるでしょ?西住にここに居ること知られたらマズイんじゃないの?むしろ俺もマズイ。いや、やましい事は何一つしてないよ。

 

俺を見る姉住さんの目が、完全に妹に寄り付く悪い虫を見る目になってる、これはこんな時間に男に電話かけてくる妹を心配してるな。このシスコンめ…。

 

「…うす」

 

そんなプレッシャーに勝てる訳もなく、睨んでくる姉住さんを横目に電話を受けとる。

 

『八幡君?ごめんね、こんな時間に』

 

そんな俺の状況を知らない西住はいつも通り、ちょっと遠慮がちに話をしてきた。

 

…一瞬、あまりのタイミングのよさに、もしかしてここに姉住さんが居ることを知ってて電話かけて来たんじゃないかと思ったが、さすがにそれはないか。つーかあったら怖すぎる。

 

「い、いや…、何かあったのか?」

 

落ち着け…、すぐ隣で目を光らせる姉住さんは気にするな、…いや、した方がいいな。

 

何か選択肢ミスって勘違いさせたら西住流戦車集団がやって来そうだし。

 

『えと…、麻子さんのおばあちゃんの事なんだけど、さっき沙織さんから連絡があって』

 

「…大丈夫だったのか?」

 

多少なりともあの場に居て関わってしまったのだ、あの後どうなったかは気になる。

 

『うん!麻子さん達が来た頃には目を覚ましたんだって!!』

 

「そっか…、そりゃ良かった」

 

どうやら大事にはなってないらしい…良かった。

 

『それでね…八幡君、明日大洗に帰港するからみんなで麻子さんのおばあちゃんのお見舞いに行こうって話になって』

 

「…ん?いいんじゃないか、行ってくれば」

 

何でそんな事わざわざ俺に言う必要あるんだ?行きたいなら行けばいいだろうに。

 

『やっぱり八幡君は行くつもりないんだ…』

 

「いや、だってそんな間柄でもないし」

 

西住や五十鈴、秋山達はそりゃ友達なんだし、行ってくればいいと思うけど。

 

『…やっぱり電話してよかった、麻子さんが八幡君は絶対連れて来てくれって』

 

「…は?いや、何で?」

 

冷泉の奴が自分からそんな事言い出すとは思えんが…。

 

『沙織さんがおばあちゃんに八幡君のこと言っちゃって…毎朝麻子さんを起こしてるって…』

 

ちょっと武部さん!?何とんでもない事言ってくれちゃってるの?

 

…よくよく考えると、つか、考えなくても普通にマズイよな。毎朝異性の男が冷泉の奴を起こしに行ってるとか、身内からしたらとんでもない。

 

なんか冷泉の手間のかかる感じとか体格とか、つい世話を焼いてしまう、これが小町によって鍛えられた兄スキルか。何その呪い。

 

『麻子さん…八幡君が来なかったらおばあちゃんに殺されるって』

 

行ったら俺が殺されそうなんだけどなぁ…。話だけ聞いても冷泉のばあちゃん、相当ヤバそうだし、やっぱり豪血一族なの?

 

「…はぁ、わかったよ」

 

『うん、集合場所とか時間が決まったらまた連絡するね、それで…その』

 

電話越しに西住が言い淀む、遠慮がちな西住は言いにくい事があるとだいたいここからスタートするな。

 

…となれば。

 

『その…八幡君とお姉ちゃんが、いつ知り合ったのかなって、戦車喫茶の時は全然話してなかったよね?』

 

やっぱりその話題が出てくるか、そもそも西住は姉住さんがあの試合会場に居た事すら知らなかったもんな。

 

電話の相手は西住だし…、そのお姉ちゃんがすぐ隣で目を光らせてるし、これが西住サンドか?何それ?

 

「別に…たまたま今日試合会場で会って、そのまま一緒に試合を観戦しただけだ」

 

『えぇ!?お姉ちゃんと!!』

 

「…勘違いするなよ、ダージリンさんとオレンジペコ、あぁ、あと逸宮も居た」

 

本当、今思えばなんだあの珍妙な集団、姉住さんとかダージリンさんとか有名所が居たのに周りに誰も近寄って来なかった、どんだけ近寄り難いんだろ、あの空気の重さは。

 

『…逸見さんだよ、でも、そっか…そうなんだ』

 

「…西住?」

 

なんだ?電話越しでよくわからんけど、急に声が沈んで、何か納得してるし。

 

『やっぱり、お姉ちゃん…綺麗だし、格好良いもんね』

 

「え?そうか?」

 

『え?』

 

やべ…即答しちゃったよ、姉住さん、会話の内容聞こえてないよね?西住イヤーは地獄耳、とかじゃないよね?

 

いや…まぁ、確かに姉住さんは凛としてて綺麗だとは思うけど、それ以上に…ね、うん、ほら…察して。

 

『で、でも、お姉ちゃんと比べたら…私なんて全然ダメダメだし…』

 

「…前にも言わなかったか?西住がダメとか全国のダメな奴に謝れ、つか、俺に謝れ」

 

『ご、ごめん、八幡君』

 

「そこで本当に謝られると悲しくなるな…」

 

『ち、違うの!今のはそういう意味じゃなくて…えと、あれ?何で悩んでたんだろ…私』

 

「…いや、知らんけど、まぁ解決したんならいいんじゃないか?」

 

つーか悩んでたの?それなら今度茨城県横断お悩み相談メールに相談してみたら?

 

『…うん!ありがとう、八幡君!!』

 

「いや、礼を言われる意味がわからんが…」

 

とりあえず自己解決してくれたなら何よりだ、姉住さんの目が怖いしそろそろ話を切った方がいいな。

 

「とりあえず冷泉の件はわかった、明日な、それでいーか?」

 

『うん、また連絡するね』

 

よし、このまま何事もなく通話終了だな、よかった…。

 

『ごめんね、つい頼っちゃって…ありがとう、お兄ちゃん♪…なんちゃって、えへへ…』

 

自分で言って恥ずかしいのか西住はすぐにプツン…と電話を切った。あ…違うか、これは俺の命の消える音かな?

 

…ちょっと西住殿、何最後にとんでもない爆弾投下してくれたの。

 

ゆっくりと姉住さんの方を見る、大丈夫、そもそも電話なんだし、聞こえているはずがない。

 

「………」

 

はずが…ない、よね?聞こえてないよね?聞こえる訳ないよね?西住イヤーとか無いよね?

 

「…そういえば君は大洗の戦車道を手伝っていると言ってたな」

 

「え?あぁ…、まぁ、はい」

 

…急に何だろ?というか姉住さんの淡々とした口調が怖いんだけど。

 

「試合には出ないのか?」

 

「いや、出れないでしょ…つか、それくらい知ってるでしょ?」

 

「そうか…、それは残念だ」

 

何が残念なの!?残念って叩き潰せなくて残念とか、そんな意味ですか?試合にかこつけて何するつもりだったのこの人!?

 

…本当に聞こえてないよね?

 

西住からの連絡は救いどころか死神の足音だったよ、この状況を何とかしてくれる救いの神は居ないのだろうか。

 

そう考えてると今度は姉住さんの携帯が鳴り出した、…となれば。

 

「…エリカか」

 

そうか、西住のさっきの電話で聞いたがもう冷泉達を大洗に送ってくれたんだもんな、となれば後は姉住さんを迎えに来るだけだもんな。

 

現副隊長さんマジ女神!ごめんね逸神さん、もう名字間違えないから。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

『比企谷ちゃん、今の大洗の座標はーーー』

 

「どもっす、あぁ、あとちょっと学園の校庭使わせてもらいますよ」

 

『んー、いいんじゃない?あ、貸し一つね』

 

…ちゃっかりしてるなぁこの生徒会長、あんまり生徒会に借りとか作りたくなかったんだけど。

 

「とりあえず今の大洗の座標はわかりました、あと、ヘリは校庭に止めてOKです」

 

「…そうか、助かる」

 

大海原をかける学園艦は当然ながら常に移動している、現副隊長さんが迎えに来る為に現座標を会長から聞いて姉住さんに伝えた。

 

学園艦自体、ほとんど生徒が運航しているし、あんなのだが、学園艦全体を管理しているのがうちの生徒会なのだ。

 

「もう行っちゃうんですか?泊まってくれてもよかったんですよ?」

 

姉住さんが帰ると聞くや小町も自分の部屋から降りて来て見送りに来た。

 

「いや、明後日には試合もある、あまり長居する訳にもいかない」

 

…ん?もしかしてこのまま姉住さんここで捕まえれば…何なら迎えに来た現副隊長さんも一緒に捕まえておけば一回戦、黒森峰は隊長、副隊長抜きになるんじゃないか?

 

我ながらナイスアイディアだ、実行に移す武力も勇気もないけど、つーか後が怖い、怖すぎる。

 

「そうだ!まほさん、せっかくですからうちに来てくれた記念に写真撮りましょうよ!写真!!」

 

「おい、小町…」

 

「いいじゃんお兄ちゃん、まほさんみたいな有名人、もう来ないかもしれないんだし」

 

「私は別に構わないが…」

 

構わないのね、もっとお堅い人かと思ってたけど、テレビに出るくらいだし、案外撮られ慣れてるのか。

 

「それじゃあ撮りますよ!ほら、お兄ちゃんも」

 

「いや、俺は別にいいから…」

 

俺が小町と姉住さんの二人を撮るって話だと思ったのに…何故か小町は三人で集まりだした。

 

「いいからいいから…、それじゃあ行きますよ!!」

 

小町はそのまま強引に自撮り機能を使って俺達三人の写真を撮ると満足そうに微笑んだ。

 

「…こんなものでよかったのか?」

 

「もちろんですよ!まほさん、次はみほさんも一緒に、四人でどこか出かけて撮りましょう!!」

 

…我が妹ながら、なんとも末恐ろしい、これには姉住さんもびっくりしている。

 

「…それ、俺も入ってるの?」

 

「何言ってるのお兄ちゃん、当たり前でしょ?」

 

当たり前かぁ…、小町からしたら俺の拒否権ってものは存在してないのかな?

 

「…そうだな、いずれ機会があれば」

 

小町に強く出れない辺り、姉住さんももしかして妹と名の付くものに弱いのだろうか?その辺はこの人もやっぱり姉なんだろう。

 

「はい、楽しみにしてます!お兄ちゃん、ちゃんとまほさんを学園まで送らないとダメだよ」

 

「へいへい…」

 

当然だが姉住さんは大洗学園までの道を知らないので結局俺が自転車を出す事になった。

 

自転車の二人乗りは校則違反だが、今の時間ならうるさい風紀委員の方々は居ないだろう、そもそもこちとら毎日冷泉を学園まで送ってるしな。

 

「…自転車の後ろに乗るなんて久しぶりだな」

 

そりゃ姉住さん、車乗れるくらいですもんね、というかそんな事言わないで、背中意識しちゃうから。

 

…あとは姉住さんを学園まで届ければ現副隊長さんがヘリで迎えに来てくれるだろう。

 

結局、西住も姉住さんもすれ違ったまま…か。

 

「…途中に西住の家がありますよ、よかったら寄ってきます?」

 

…何で俺はこんな事を言ってるのだろう?姉住さんに声をかけて、自分でもびっくりしている。

 

あれだけ余計なお世話はしないようにしていたのに。

 

「…何故君がみほの家を知っている?」

 

そっち!?…というか、しまった。そりゃそうだ…本当に余計な事をするとろくなことがないな。

 

「えと…、まぁ、成り行き?で」

 

「成り行きだと…?」

 

痛い痛い…、ちょっと…肩掴む力強めないで下さい。

 

「それで…どうします?このまま学園に行きますか?」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

明日、お見舞いに何持って行こうかなって考えていたら突然ピンポーンとインターホンがなりました。

 

「…?」

 

こんな時間に誰だろう?と思って玄関のドアを開けるとそこには誰も居ません。あれ…イタズラかな?

 

「…なんだろう?」

 

ドアノブに何かかけてある…紙袋かな?

 

紙袋には手紙がついていました、中を視てみると。

 

【みほへ、ヘリでの件、すまなかった。どうやらヘリの音で聞こえなかったらしい。西住 まほ】

 

「…お姉ちゃん」

 

短い文章で、それだけ書いてありました、なんだかすごくお姉ちゃんらしい手紙で思わず、ちょっと笑ってしまいました。

 

…あれ?でも何でお姉ちゃんが大洗に居るんだろ?

 

手紙には続きがありました。

 

【追伸、ダージリンからお土産を貰った、後で食べるといい】

 

…お土産って、この紙袋の中に入ってるのかな?なんだろうと思って封を開けてみると。

 

『うなぎのゼリー寄せ』

 

「……………………………お姉ちゃん」

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…いいんですか?」

 

「あぁ、もうエリカも着いたようだからな」

 

…いや、俺が言いたいのはそこじゃなくてうなぎのゼリー寄せの事なんですけど。

 

結局あれ、ダイナマイトの如く回されてんだけど、ダージリンさん本当に何て物を寄越してくれたんだ。

 

「それに…みほがこのまま勝ち進めば、いずれ戦う事になるだろうからな」

 

「…そん時はちょっとは手加減とかしてくれませんかね?」

 

「立ちはだかるのなら容赦はしない、それが西住流だ」

 

うん、知ってた。…本当、不器用な人だわ。

 

「…世話になったな」

 

「いや、もともとヘリ借りたこっちが悪かったんで」

 

姉住さんがヘリに乗り込む、一回戦の試合会場と合わせて、このヘリが飛び立つ所を見るのは二回目か。

 

結局、姉妹間の問題は解けずとも、少しくらいは前進した…のかもしれない、いや、うなぎのゼリー寄せでむしろ下がってないかな?

 

ともあれ姉住さんのプチ大洗体験はこれにて終了となった。

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

ラララ木さん風に言うなら、後日談というより今回のオチ。

 

「………」

 

いろいろあったがようやく今日も終わり、寝ようと思っていたらまた携帯が鳴り出した。

 

しかもまた知らん番号だ、無視しても何度もかかってくるし。

 

「…はい、もしもし」

 

このまま放置しても延々とかかってきそうなんで渋々出てみる。

 

『ようやく繋がったわね!あんた!さっさと出なさいよ!!』

 

「…誰?」

 

『逸見エリカよ!!』

 

…誰?

 

「…何の用だよ?つか、何で俺の番号知ってる訳?」

 

『番号は隊長に聞いたわ、それであなた、隊長の写真持ってるんですって?』

 

写真…?あぁ、小町が無理やり撮ったやつか。

 

「まぁ…妹がな、え?なんかダメだったのか?」

 

別に黒森峰の機密に関わるとか、そんな写真じゃないんだけど。

 

『それ、私にも送りなさい』

 

「は?何で?」

 

『私だって隊長の写真欲しいのよ、でも言えるわけないでしょ?副隊長の私が写真撮らせて下さい!なんて!!』

 

いや、言えば結構簡単に撮らせてくれると思うけど、あの人なら。

 

『…今から私のメールアドレス教えるから、いい?絶対送るのよ!!』

 

「いや、登録のやり方とか知らんし」

 

『そんなの教えてあげるわよ!!』

 

…そんな訳で、記念すべき俺が自力で連絡先登録した一人目は黒森峰女学園のイッツ・ミーさんになってしまったりする。

 

こいつ、姉住さんの事好き過ぎるだろ…。

 

『なんで写真にあんたまで写ってるのよ!!』

 

「いや、知らんし…」


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