やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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前話、八幡ときゅうりの話しですが皆さんの感想で指摘されましたが八幡、きゅうり嫌いみたいなんですよね、すいません、知りませんでした。
トマトが嫌いなのは知ってましたけどきゅうりもダメとは…、そんな訳で前話のそこら辺、少し修正してます。

今回のサンダース戦は八九式の活躍ももちろんですがケイさんの活躍を書きたくてファイアフライとナオミさんには自重して貰います。
ナオミさんのチートっぷりが見たい人はアニメ本編を見てね!!


そして彼は、一つの格言を言いはなつ。

「エリカ、あのファイアフライはよく見ておけ、性能はもちろん、砲手の腕もだ」

 

「了解です、隊長」

 

「そういえばアッサムはあの17ポンド砲さんのデータを収集したいと言ってましたわね」

 

「…高校生戦車道において特集が組まれる程優秀な砲手ですもんね、私も知ってますし」

 

ファイアフライが動き出した瞬間、両校の注目はファイアフライとそれに乗るナオミに集中した。

 

まぁ当然か、これから戦うかもしれない相手だもんね、優秀な砲手が敵側に居るとか、マジキツイもんな。今の大洗みたいにね!!

 

だが、残念ながら君達が見るのはナオミの砲手劇ではない、うちの八九式の根性の物語だ。

 

覚悟しなサンダース、うちの最弱はちょっと響くぜ。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

ファイアフライの砲身が動き出す、大洗学園の最後尾を走るM3リーが、その有効射程に入ったのだ。

 

「………」

 

ファイアフライの砲手であるナオミはガムを噛みながらスコープでM3リーをとらえる。

 

彼女が試合中にガムを噛むのは別に相手を侮っていたり、油断している訳ではない、集中力を高める為である。

 

相手は走行中、走行中の戦車を狙撃するのは高難易度の技であるが彼女の表情は何一つ変わらない。彼女はM3リーのエンジン部分に照準を合わせた。

 

ーまず…一つ。

 

その瞬間だった。

 

「バレー部ファイトォッ!!」

 

「はい!キャプテン!!」

 

大洗の戦線から一両だけ離れ、潜んでいた八九式がファイアフライの到着を待っていたかのように前に現れた。

 

「そーれッ!」

 

「「「そーれッ!!」」」

 

そしてそのまま砲撃をファイアフライ目掛けて放つ。

 

「ッ!!」

 

スコープでM3リーに照準を合わせていたナオミだったが、突然の八九式の砲撃で揺れる戦車内で照準がぶれた。

 

「…チッ」

 

短く舌打ちすると彼女はすぐに再びM3リーに狙いを定める、ファイアフライの操縦手もそんな彼女に合わせるように微調整しながら前進する。

 

「行くぞみんな!相手にサーブ権を絶対与えないで!!」

 

「「「はい!キャプテン!!」」」

 

そんなファイアフライ目掛けて八九式は更に前進する、前進…というより、それは突撃ともいえた。

 

「ッ!この八九式…こちらに向かって!!」

 

まさに文字通りの突撃、体当たりである、再びファイアフライの車内が揺れ、スコープで狙いを定めていたナオミの照準もぶれる。

 

「くっ…」

 

『ちょっとちょっと、大丈夫なの?』

 

そんな状況を見かねたケイが通信を入れる。

 

「キャプテン!八九式がこちらをピッタリとマークしています!!」

 

ファイアフライの通信手はスコープを覗いて集中しているナオミの代わりにそう答えた。

 

『まさか…やられちゃったりしないでしょうね?』

 

「それは問題ありません…、しかし、ッ!!」

 

再三、車内が大きく揺れる、再び八九式が砲撃を放って来たのだ。

 

「…くっ」

 

「こう密着されて体当たりやら砲撃やらされては…ナオミさんの狙いが」

 

『ッ!とにかく八九式を振り切って!ハリアップ!!』

 

「イエス、マム!!」

 

ケイさんの指示にファイアフライは八九式から逃げるように動き出す。

 

「逃がすか!河西!!」

 

「了解、相手ボールに食らいつく要領で!!」

 

だが、磯辺の指示と共に八九式はとにかくファイアフライを追い、体当たりをかます。

 

「比企谷コーチとの練習通り、相手をサーブに集中させるな!絶対に止めるよ!!」

 

逃げようとすればとにかく密着し、体当たりをかまし、隙あれば砲撃を叩き込む。

 

八九式の火力ではファイアフライの装甲は抜けない、だが、車内を揺らすくらいは出来る。

 

そんな状況ではどれだけ優れた砲手であろうと、砲撃に集中できるはずがない。

 

八九式はここで、対ファイアフライにおいて一対一の状況を作り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「八九式が…ファイアフライを押している?」

 

「…あそこまで密着されてしまえば、長距離狙撃は難しいな」

 

観戦組の皆さんもこの状況に気付いたようで…、しかしバレー部の連中もよくやってくれたもんだ。

 

何もそう難しい話ではない、相手側の戦力を削ぐ方法は戦車の撃破だけじゃない。

 

某ポケットなモンスター的にいえばまきつくやほのおのうず、攻撃不能になるようなもの、これにどくどくとやどりのタネでもあればベストだね!!

 

元々ファイアフライの命中精度はそこまで高くない、ナオミという優秀な砲手が居てこそ長距離狙撃が可能なのだ。

 

ならば相手がまともに狙撃も出来ないような状況を作ってやればいい、相手の火力を奪う事は、それは相手の戦力を削いだ事も同義なのだから。

 

ファイアフライが八九式を無視しようものなら一方的に砲撃を撃ち込む事が出来るし、上手くいけば履帯だって破壊できる、本当に上手くいけば撃破も夢じゃない(切実)。

 

つまりはマークし続ける八九式をどうにかしないとファイアフライはこの試合の最中、ずっと無力である。

 

それはファイアフライをマークしている八九式にも同じ事が言えるがファイアフライの出す今後の被害を考えれば今の状況はおつりがくるものだ。

 

長々と述べたが、今回の作戦を要約するならば、ただひたすら相手砲手の妨害をしまくってやるぜ!である。相手側にとっては単なる嫌がらせだが。

 

「しかし…なんというか、やり方が姑息ね、撃破…ではなく、撃たせない、なんて」

 

「…黒森峰ではまず考えない戦い方だな」

 

「これはあなたの作戦ね、マックス」

 

「…なんでそう思うんですか?」

 

「だって、すごくあなたらしいもの」

 

涼しい表情でカップに口をつけてマックスコーヒーを飲みながらダージリンさんは答える。

 

バレちゃってますか、というか姑息とか言われた後にそんな事言われても全然嬉しくないんですが…。

 

第一、姑息やらセコいやら言われているがバレー部の連中の日頃の訓練の賜物だ、言うのは簡単だが、なかなか実行できるような作戦ではない。

 

「…君が作戦を?」

 

「…え?まぁ、一応」

 

姉住さんが少し驚いた表情を見せた、そんなにおかしいかな?おかしいよね、そもそも戦車道に男の俺が関わってるのがおかしいもんね。

 

「私達との練習試合でも面白い作戦を考えてくれましたのよ、彼は」

 

その結果反則負けだったんだけどなぁ…、なに?嫌味なの?実はやっぱりあの試合の結末に怒ってたりするの?

 

「…あれじゃ戦車じゃなくて選手の方を攻撃しているみたいなものね」

 

「ほら、授業中とかテスト中に消しゴムのカス何回もぶつけられた事くらいあるでしょ?痛くもなんともないけど集中力は削がれる、それと同じですよ」

 

いや、あれのおかげで得意科目だった国語でさえ点数落ちた事もあるし、その効果は身をもって体験済みだ、数学もあれさえなければ高得点だったに違いない、うん。

 

そもそもあいつらどんだけ消しゴムのカス持ってんだよ、人にぶつける為に新品買うとかブルジョアかよ。

 

西住はちょっかいをかけまくるから【ちょっかい作戦】と名付けたがあれはそんな可愛らしいものじゃない。この作戦は【消しカス作戦】に間違いないだろ。経験者は語る。

 

「「「「………」」」」

 

俺の言葉にこの場の全員が言葉を失っていた、ふっ…、どうやらこの説得力に納得しているようだ、違うか?違うな。明らかにみんな引いてるもんね。

 

「こうなるとサンダース側は八九式をどうにかしないとファイアフライは戦えませんね、援軍を送るんでしょうか?」

 

「…八九式相手に戦力を更に減らすって言うの?それこそ愚行だわ、わざわざ大洗と同じ数になんてするからこうなるのよ」

 

…そこら辺は隊長であるケイさんの采配次第だな、こちらとしては八九式に相手が戦力を向ければそれだけ本隊は楽になるし、相手の数が増えれば撃破される確率も高くなるが、その分フレンドリーファイアも狙える。

 

逆にこのままなら八九式はしばらくの間、ファイアフライを抑え続ける事も出来るだろう。そもそも長砲身のファイアフライは接近戦には不向きだし、八九式の目的はあくまで嫌がらせ、時間稼ぎだ。

 

敵の最大戦力であるファイアフライは抑え込んだ、あとは西住とケイさんの両隊長の采配にかかっている。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「ナオミ?八九式はなんとかなりそう?」

 

『ッ…、すいません、まだ』

 

サンダース校隊長であるケイはファイアフライの通信手からの返答にうーん…と頭を悩ませた。

 

彼女の取るべき選択は二つ、ナオミに増援を送って八九式を撃破するか、このままナオミ抜きで大洗学園のフラッグ車を追うかだ。

 

とはいえ、彼女の決断は早かった。

 

「OKナオミ、八九式は任せたわ、なんとか振り切って撃破して!!」

 

『…イエス、マム』

 

彼女はすぐにファイアフライを戦力から外し、このまま大洗学園の本隊を叩く事にした。

 

八九式はフラッグ車ではない、ここで戦力を減らしてその間にアリサが撃破されればサンダース側の敗北だ。

 

「ナオミとファイアフライにしっかり対策とってきたのはいいけど、うちはそれだけじゃないよ!ブラボー!コマンドス!Goahead!!」

 

『『イエス、マム!!』』

 

ケイは両隣の戦車に指示を飛ばす、まず狙うのは中央のフラッグ車、38(t)の後方、盾になっているM3リーだ。

 

「まず一つ目いくよ!Fire!!」

 

ケイの指示に三両のM4シャーマンが大洗のウサギさんチーム、M3リーに砲撃を放つ。

 

「わわっ!撃って来た!!」

 

「なんか私達ばっかり撃たれてる気がする…」

 

「もう!あや、今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ!!」

 

M3リーの車長、澤は他のメンバーをまとめながら、後方をしっかりと確認する。

 

「今度は…もう逃げたりしない」

 

「「「「うん!!」」」」

 

聖グロリアーナとの練習試合を得て、彼女達もまた成長しているのだ、シャーマン三両から狙い撃ちをされながらもなんとか隊列を崩さずにいる。

 

「やれば出来るよ!桂利奈ちゃん!!」

 

「先輩の力を見せてやろう!!」

 

「あぃい!!」

 

必死に抵抗する彼女達だが…、それでも相手側M4シャーマン三両を相手にフラッグ車の盾になりながらの状況は分が悪すぎた。

 

「ーーーッ!!」

 

彼女達の健闘もそこまでとなり、シャーマン三両の一斉射撃がM3リーに直撃し、白旗を上げた。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…M3がやられた」

 

マジかよ…、ファイアフライさえ抑え込めばなんとかなると思っていたが、ケイさんが指揮を飛ばすシャーマン三両は予想以上に早いペースで進行してきている。

 

ファイアフライをあっさり切り捨てて攻めてくる辺り、ケイさんの指揮能力は高い、さすがはサンダース校の隊長だ。

 

前方でアリサのフラッグ車を狙っていたⅢ突が後方へと下がり、38(t)の背後につく、無砲塔のⅢ突はこれで完全に攻撃役から離脱し、出来ることと言えばもう盾になるくらいだ。

 

ケイさん率いる相手シャーマン三両はM3リーを撃破した勢いそのままに迫って来ている、八九式がまだファイアフライを抑えてくれているのがせめてもの救いだが。

 

しかし…このままじゃ。

 

「もう時間の問題ね、まぁ無名校にしてはよくやった方じゃないの?」

 

現副隊長は一言だけそう告げ、姉住さんもダージリンさんも最早何も言わない。

 

戦況は完全にサンダース側へと傾いているだろう。

 

だが…、それでも。

 

「なぁ、現副隊長さん」

 

「だから私の名前は逸見エリカ…、もういいわ、どうせもう終わりなんだし」

 

現副隊長さんの言葉はこの場の、観客を含めた全員の言葉を代弁しているようにも思えた。

 

「…こんな言葉を知っていて?」

 

それがどうにも気に入らなくて、俺はいつものように皮肉たっぷりに一言告げる事にする。

 

「…あ、またダージリン様のマネですね」

 

「全然似ていませんわよ…、マックス」

 

…いや、俺のモノマネの精度とかはこの際どうでもいいんですけどね。

 

「戦車道の勝利の秘訣は諦めない事、そして、どんな状況でも決して逃げ出さない事、らしいぜ?」

 

まぁ逃げるは恥だが役に立つ、なんて言葉もありますけどね、誰か俺を専業主夫で雇ってくんねぇかな。

 

個人的にアニメでもドラマでも、エンディングで踊るのは名作が多いし、うちもあんこう音頭とかエンディングで踊ってみたらどうですかね?


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