やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
最近更新した話しで一番人気あるのは…西住殿が八幡をお兄ちゃんと呼んだ回なんだけど…君達それで良いの?お姉ちゃんが黙ってないよこれ。
そんな西住まほさんですが小説を書くに当たって多少柔らかくしてます、というかアニメまんまでは喋らなさすぎるので。
「君はあの時ルクレールに居た…」
…まずった、完全に不注意とはいえぶつかった相手がまさか姉住さんだとは。
なんでこの人とこんな所で出会うの?まだ全国大会の一回戦だよ?RPGなら最初のダンジョンくらいだよ、やはりダンジョンに出会いを求めるのは間違っている。いや、求めてねーけど。
こうなったらこちらがとるべき戦術はただ一つ!!
「あぁ、その節はお世話になりました、ぶつかってすいません、それじゃ!!」
早口で捲し立てると頭を下げてさっさと転身、はちまんはにげだした。
「待て、少し君と話がしたい」
しかしまわりこまれてしまった!!姉住さんに肩をガシッと掴まれてしまう、うん、知ってた。大魔王からは逃げられないんだよね。
「…話って、そんな談笑する間柄じゃないでしょ」
俺と姉住さんが出会ったのは戦車喫茶でのあの件だけ、それもあの時だってまともな会話なんて何一つしていない。言うなれば知り合い以下、完全に他人と言ってもいいだろう。
「君の事はあの後すぐ蝶野教官から聞いた、大洗の戦車道復活に手を貸しているそうだな」
「…はぁ、あの後すぐ、ですか?」
「? あぁ、あの後すぐだ」
あぁ、だからあの時、さっさと帰ろうとしてたのね、今ので納得した。そして姉住さん本人は気付いてないかもしれんけど今ので確信した。
久しぶりに再会した妹が辞めたと思っていた戦車道を続けてて、その横には見知らぬ男、これが小町だったら俺だってそーする、誰だってそーする。
要するに妹が心配だったからすぐに家に帰って状況を調べたかったのだろう、蝶野教官も西住の事を知っていたし、その姉と繋がりがあっても不思議ではない。
ルクレールの時から違和感はあった、というか俺を見る目が完全にそれなんだけど…この人はあれだな。
どれだけ西住流の強化外骨格を身に纏おうが、溢れ出る妹大好きオーラは隠しようがないな、つまりシスコンである。
「…それで話って何ですか?」
「その前に君とみほの関係を教えて欲しい、蝶野教官に聞いても答えをはぐらかされた」
「関係って言われても…、てか、何聞いてんですか、あんた」
どんだけ妹の事好きなの?なんか姉住さんが蝶野教官に問い詰める様子が想像出来てしまった。まぁ俺が姉住さんと同じ立場で小町に知らない男が居たら同じ事してたけどさ。
「君とみほは付き合っているのか?」
「ぶはっ!?」
なんというストレートな直球、…これが西住流か!違うか?うん、違うな。
「単に同じ戦車道授業選択してる者同士なだけですよ…、西住は隊長ですから、全く関わりがない訳じゃないですけど」
「…そうか、みほは人見知りが激しい、君みたいな男性と話してるのは珍しいが」
たぶんそれは黒森峰が女子校だからでしょ…、まぁそれを抜きにしても、戦車道に男が関わってるのがそもそも珍しいかもしれんけど。
「みほの様子はどうだ?」
「それ、俺に聞くより本人に直接聞けばいいんじゃないですか?連絡先を知らない訳でもないでしょうに、なんなら今日会ったっていいでしょ」
いくら西住が黒森峰から単身、大洗に転校して来たとはいえ家族の連絡先を知らないとは思えない。
「…私はみほに避けられているからな」
…それは否定出来ないか、西住の口からあまり姉の話は聞かないし聞いても否定的な話が多かったからな。
仕方ない、ここは同じ妹を持つ者として少しくらいは協力しとくか。
「転校したての時は俺みたいなぼっちでしたけど、最近じゃ友達と楽しくやってるんじゃないですかね、黒森峰の時は知りませんが」
「…そうか」
姉住さんはそれだけ答えると口元に手を当てて何やら考えている、普通なら喜びそうなもんだと思うが…本当にこの人は表情があまり変わらないな、ポーカーとかめっちゃ強そう。
笑わない猫ならぬ笑わない姉住さんである、ならば変態王子は誰だろう、俺ではないな、うん。
「…まだ戦車道を続けていたのは驚いたが、みほが納得しているなら私が口を挟む事ではないな」
「………」
あ、あっぶねぇ…、もし西住が戦車道再開した経緯を正直に話したらうちの生徒会と俺、完全に潰されてたんじゃないの?つーか俺、完全に巻き添えだよねそれ。
「…去年の大会の事を言ってるんですか?」
「知っているのか…」
「まぁ…少しくらいは」
嘘、だいたいは知ってるし、それが西住が大洗に転校する原因となった事もわかっている。
「あの試合、みほを責める者も居たが、フラッグ車をあそこまで誘導されたのは私のミスだ、結局はただ単に私が未熟だっただけの話だ」
…なるほど、姉住さんの中ではあの試合はそう結論付いているって訳か、話だけ聞くと去年のプラウダは車長が抜けた隙をついてフラッグ車を撃破したセコイイメージだったが、やはり強豪校というだけはあるな。
少し安心した。しかし、それと同時にそこまで考えていて何故、西住が戦車道を辞めて大洗に転校するまで追い詰められたのか、苛立ちも覚える。
「西住の判断は正解だったと?」
「…犠牲なくして大きな勝利は掴めない、みほのした事は西住流とは正反対だ」
…そこを譲るつもりはないって事か、根っこの所では、この人もこの人で西住流であろうとしているのだろう。
そりゃ西住と相反するのもわかるな…、まぁ別に俺はどちらの味方をする気もないが、そもそもこれはもう終わってる話で俺は部外者なんだし。
「一つ、いいことを教えますよ、去年の試合、黒森峰が負けたのは西住のせいでも、あなたのせいでもないですよ」
ただ…そうだな、一つだけ付け加えるなら。
「…君に何がわかる?」
「わかりますよ、だって去年の試合、黒森峰は大会10連覇のかかった大事な試合だったんでしょ?」
「…あぁ」
「なら、単純にフラグ立てちゃった黒森峰が悪いですね」
「…フラグ?フラッグ車の事か?」
そこで真っ先に戦車道関連のキーワードが出てくる時点でこの人もだいぶ戦車脳だよなぁ…。
「簡単にいえばお約束みたいなもんですよ、例えば貴様でちょうど100人目だ!とか、ここで会ったが100年目!とか、そんなフラグ立てて成功した奴見たことありませんし」
「…面白い考え方をするな、君は」
あまり表情に変化こそ見えないが驚いているのか、でも何か声が若干引いてないですか?
それにフラグって結構バカに出来ませんよ、うちにもお約束な事なんていくらでもありますし、広報さんの砲撃とか。
「…ところで、君に聞きたい事がある」
「西住の事ならさっき話しましたけど?」
「いや、ぼっちとは何だ?」
「…はい?」
ぼっち…、ぼっちって何だ?(哲学)、いや、この人は別に哲学的な答えを求めてないだろうけど。
「君もみほもぼっちだったのだろう?ぼっちとは何だ?」
「あー…、簡単にいえば友達の居ない一人ぼっちの奴、じゃないですか?」
よりによって本人に言わせんな、恥ずかしい。とはいえ、なんかこの人ガチで知らなそう。たぶん西住流の家元でそういう言葉と無縁だったのか、それとも性格的なものなのか。
「友達…か」
ふと姉住さんがなんとも言えない微妙な表情を見せた、今まで変わる事のなかったそのポーカーフェイスが崩れたのだ。
「…友達、居ないんですか?」
「………エリカが居る」
「あ、すんません、真っ先に出てくるのが自分の隊の副隊長な時点でわかりました」
でもたぶん、同じぼっちでもこの人と俺とではだいぶ意味合いは違うだろう。
俺みたいにただ単に周りから浮いた嫌われ物の存在とは違い、姉住さんの場合は尊敬出来る、近寄り難い存在なのだろう。
俺みたいな、孤独…という表現より孤高って言葉の方がしっくりくるな。
尊敬…いや、西住流を元にしている黒森峰からすれば、下手したら崇拝の対象でさえあるのかもしれない。
…そういえば、それを体現したような様な奴が居たな。
「隊長!カレーパンとハンバーガー買って来ました、一緒に食べま…、な!!」
そうそう、確かこんな感じの…本人じゃん。
俺と姉住さんに声をかけてきたのは戦車喫茶でも姉住さんと行動を共にしていた逸…、逸崎?逸山?えっと…逸なんとかさんだ。
「な!何であんたがここにいるのよ!!」
「そりゃ大洗の試合なんだし、大洗の生徒が居ても変じゃないだろ、現副隊長さん」
「…ふん、それはご苦労様ね、わざわざ負ける試合見に来るとか、あなたも暇ね」
「いや、それなら自分達の試合でもないのに見に来るあんたらの方がよっぽど暇人だろ、学園艦使ってわざわざ見に来てんだし」
今回の試合会場は南の島、単純に試合観戦するとしても移動とか結構手間だったろうに、姉住さんはまだ妹の試合だからわかるけど、こいつももしかして西住大好きなの?
「私達はサンダース校の偵察に来てるのよ、だいたいここにはヘリで来てるの、まぁあなた達無名校にはそんなもの無いでしょうけどね」
ヘリで来た!!いや、それはそれで…わざわざヘリ飛ばしてまで個人的に試合見に来てるって事じゃないんですかね?
しかしヘリとか黒森峰も金あるなぁ…、まぁドイツ戦車の宝庫ならそりゃあるか、西住流のお膝元だしな。
「エリカ、大洗は無名だがその分情報が無い、どちらの戦い方もよく見ておけ」
「…了解、です」
やーい、怒られてやんの。
「…ふん、あっさり試合が終わって私達が偵察に来た意味がなかった、なんて事がなければいいわね」
「なんだ、応援してくれんのか?」
「違うわよ!不様な戦いをして西住流の名前を汚されたら困るからよ!!」
まぁ…この現副隊長さんも、なんだかんだ心境は複雑なのかもしれない。
「ダービーは常に強い馬が勝つ、だが、一番強い馬が勝つとは限らない」
「…はい?」
この格言は…、てか、人思い出すのに『この声は…』とかじゃなくて『この格言は…』って何だよ?でも心当たりは一人しか居ないんだよなぁ…。
「ダージリンさん…」
「えぇ、お久しぶりねマックス」
「練習試合以来ですね」
俺に声をかけてきたのは聖グロリアーナのダージリンさんとオレンジペコだった。
「どうしたんですか?試合でもないのにわざわざこんな所まで来て」
ひょっとして暇なんですか?そういえばわざわざ無名校の大洗との練習試合受けてくれてたし、あれ?本当に暇なんじゃ…。
「別に、私がどこで何をしようとあなたには関係ないのではなくて?」
つーか…、ダージリンさんの言葉に何か刺があるんだけど、俺、この人に何かしたっけ?むしろ何もしてないまであったはずなんだけど。
「マックスさん、ちょっとよろしいですか?」
俺が首を傾げているとオレンジペコが声をかけてくる、そういえば前の練習試合ではあんまり喋ってなかったな。
オレンジペコがチラリとダージリンさんを一度確認すると俺に耳打ちをしようとしてくる。
だけどまぁ、身長差あるから無理なんですけどね。
「…ちょっと屈んでもらってもいいですか?」
少し恥ずかしそうにそう言う、いや、俺も恥ずかしいんだけど。でもダージリンさんの機嫌が悪い理由をオレンジペコは知ってるっぽいしなぁ。
「…マックスさんがあんまり自分から連絡しないから、ダージリン様、拗ねちゃってるんですよ」
「いや、だって特に連絡する用事もないし」
そりゃまぁマックスコーヒーのお礼はもちろんしましたし、たまにマックスコーヒーとか英国流の美味しい紅茶の入れ方とか格言とかメールでやり取りしてますけど。
ちなみにだが、戦車道関連の話はしていない、こちらの情報を簡単に教えてしまうほど馬鹿ではないし、ダージリンさんも曲者でその話については上手くはぐらかしてくる。
「あと…返信が遅いみたいですね」
「だってあれだぞ、メールの初手からいきなり格言が来るんだぞ、あんなもん誰でも返事に困るわ」
いや、本当に何の脈絡もなくいきなり格言が送られてきたときはどこのスパムDMかと思ったわ。
西住にダージリンさんの連絡先の登録頼んだ時もなんかすげぇ曖昧な表情されたし…、女子のアドレスゲットしてメールのやり取りとかもっと心踊るもんなんじゃないの?リア充達は常にこんな試練を体験してるの?
「気持ちはわかりますが、その…、少しダージリン様のお相手をしてもらえたら嬉しいです、今だってちょっとマックスさんの事探してたんですよ」
気持ち…わかっちゃうんだ、オレンジペコも結構苦労してそうだなぁ。
てか、わざわざ俺を探してたとか本当に暇なんじゃないだろうか、いや、たぶんこの人の場合格言を言う相手でも探してたんじゃないの?ねぇ、ダージリンさん?
「えっと…ダージリンさん、わざわざすいません、応援に来てくれたんですか?」
「えぇ、私、あなた達のファンですから、まほさんが居たのは少し意外でしたが」
「ダージリンか…、久しぶりだな」
「えぇ、お久しぶりですわ、あなたもみほさんの応援に?」
「私達は試合の偵察です、大洗もサンダースも関係ないわ」
…あれ?ちょっとこれ、マズイんじゃない?
トーナメントでは確か…黒森峰と聖グロリアーナって順当にいけば準決勝で当たる組み合わせじゃないか。
…正直逃げたいんだけど、何この空間、姉住さんもダージリンさんもお互い知ってるみたいだけど、なんとも言えない微妙な雰囲気が漂っている。
「君はダージリンと知り合いなのか?」
「え?あー…、まぁ」
「マックスコーヒー友達ですの」
「…ぼっちではなかったのか?」
え?何その裏切ったな、みたいな顔は、ぼっち仲間になった覚えはないし、そもそもぼっちに仲間はいねぇ。
「…比企谷、君の連絡先を教えてくれ」
「た、隊長!なんでこんな男の!!」
「え?嫌ですけど」
「なっ!あなた!せっかくの隊長の誘いを断るつもり!?」
いや、だっていきなり連絡先教えてくれとか怖いじゃん…、姉住さんの表情って基本的に変わらないし、何を考えているのかわかりにくいから尚更。
というか逸前さん…、あんたはどっちだよ。
「…駄目か?」
…本当に何考えてるのか、ちょっと無表情過ぎる、そりゃ近寄り難い存在にもなるわな、怖いもん。
「まぁ…、いいですけど、これ、俺の携帯です」
「…?」
姉住さんは俺の携帯を受け取ると不思議そうな顔で眺めている。
「あぁ、俺登録のやり方とかわかんないんで、適当にアドレス登録して下さい」
いい加減アドレス登録のやり方くらい覚えた方がいいかなぁ…、なんか最近変にアドレス増えてるし。
「…エリカ」
「はい、何ですか、隊長」
「すまないが…登録を頼む」
…おい、それでいいのか西住流、西住も戦車道以外は結構抜けてるけど、まさか姉住さんもそうなの?西住流の血筋なの?
「…わかりました、全く、何で私が隊長とこの男のアドレスを」
そう言いながらも尊敬している隊長の頼みは断れないのか、逸部さんは携帯を受け取るとぶつぶつ文句を言いながらも操作している、ちょっと逸山さん、あなたも大概甘やかしてないですか?
「それでマックス、私達はこれからティータイムを楽しみながら試合を見るのだけど、良かったらあなたもどうかしら?」
「いや、おれは一人で見るつもりだったんですけど…」
「マックスさん?美味しい紅茶とマックスコーヒーをご用意してるんですよ?」
オレンジペコの俺を見る目が『さっき言った言葉、忘れてませんよね?』って言ってるようだ、この娘、大人しそうに見えて結構怖いかもしれない。
「まぁ…ちょっとくらいなら、お邪魔します」
「それは良かった、ふふっ…、練習試合の最後にお会いした時よりずっと良い顔してますわよ」
…あの時の俺はそこまで酷い顔だったのだろうか?いや、俺は顔はそこそこ良いはずだ、腐った目さえ除けば。
「そういえば、ローズヒップもあなたに会いたがっていたわ」
「今日は連れて来てないんですね」
「彼女には少し聖グロリアーナの優雅さと気品さが足りていませんので、アッサムとお勉強中なのよ」
アッサムってのが誰だか知らないけど、まぁあの暴走戦車娘が居ても騒がしくなるだけだしな。
「…登録終わったわよ!言っとくけど隊長に変なメール送ったら承知しないわよ!!」
逸口が乱暴に俺の携帯を返してくる、どちらかと言うと俺の連絡先が西住流のブラックリストに乗っちゃいそうで怖いんだけど。
「それでは行きましょうか、…まほさん、あなた達も良かったら一緒にどうかしら?」
あー、これはアレだな、俺も経験あるからよくわかるわ。
学校での行事の打ち上げとかやるノリの時に一応、比企谷にも声かけとく?みたいなやつだ、こっちは行きたくもないのに声かけられて断るとあっ!やっぱり~、みたいになるやつである。
俺を誘った手前、一緒に居る姉住さん達にも一応声だけはかけとかないと気まずいもんね、そこら辺の配慮は英国淑女っぽいね!なお、ダージリンさんは日本人である。
まぁ…こんな誘いに姉住さんは乗らないだろうし、この二人とはここでお別れだろう。
「そうか、なら頂こう」
「えっ!?」
「…あら?」
なんとも珍しいダージリンさんの呆けた声、いや、俺も正直驚いてるんだけども。
「た、隊長!私達は偵察に来たはずです!!」
「別に試合を見ない訳ではない、せっかくの誘いだ、断るのも悪いだろう」
「聖グロリアーナは順当にいけば準決勝の対戦相手ですよ?」
「試合前の学園艦同士の交流は禁止されていない、問題はない、ダージリン、私達も参加して構わないか?」
「え、えぇ…、よくってよ」
…何この展開、もしかして今から黒森峰と聖グロリアーナ、両校と試合観戦するの?君達、いずれ戦うかもしれないんですよね?
嫌だなぁ…、怖いなぁ…、帰りたいなぁ…。
「………」
そんでさっきからなんか姉住さんがチラチラこっち見てるんだけど…、もしかしてアレかな?『ほら見ろ、私にも友達くらい居る』とか言いたいのかな?
やっぱり西住流の血筋の人ってどっかズレてる気がする…。