やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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この八幡は戦車は好きですけど戦車道は嫌いです、なので今のところ戦車道に関する知識はあまり無いです、


いつの間にか、西住みほには友達が出来ていた。

「えぇっ!?」

 

「会長ッ!よりにもよってなんでこの男に!!」

 

生徒会長のその発言は他生徒会メンバーにとっても初耳だったのか、二人は驚いた顔だ、つーか俺の方が驚いてる。

 

「まぁまぁいいじゃん、どーせ男手も必要だろうし、比企谷ちゃん、戦車好きなら詳しいでしょ」

 

「話聞いてましたか?戦車は好きですけど戦車道は嫌いなんですが?」

 

「んじゃあ、そういう事でよろしく〜」

 

やっぱ話聞いてねぇじゃねぇか、耳に都合の悪い事シャットダウン出来る機能でもついてんのかよ、何その機能欲しいんだけど、きっと俺についてたら世の中何も聞こえなくなるレベル。

 

「俺に拒否権とかは…」

 

「ん?あると思ってるの?」

 

あぁ、駄目だこりゃ、この会長、一度決めた事は何があっても覆しはしない、無理に反発でもしようものなら俺の身が危うい程に。

 

だが無理に反発するのが駄目でも、ささやかに、それとなく抵抗していく事なら出来るはずだ。

 

第一、いくら突拍子もない事をよくやらかしてくる生徒会でも、今回の事は突拍子がなさすぎる。

 

「戦車道を始めるって言っても、この学校に戦車とか無いでしょ、今から買い集めるんですか?悪いですけど、学園艦ってそこまで景気が良いとは思えないんスけど」

 

戦車道自体嫌いなのでそんなに詳しくはないが、戦車を用いる武道だ、金がかかるのは当たり前。

 

砲弾等は消耗品だし、そもそも戦車自体の価格が馬鹿高い、 大洗学園は最近、特に目立った活躍もないうえに生徒数も年々減ってきている、今から戦車道をやった所で大会に出るだけの戦車は集められないだろう。

 

「ちょっと違うなぁ比企谷ちゃん、戦車道を始めるんじゃなくて、復活させるの」

 

「…?」

 

「大洗学園はね、昔は戦車道が盛んだったの、20年前くらいに廃止されちゃったんだけどね」

 

俺が首を傾げていると副会長の小山さんが当時の資料を見せてくれた、なるほど、確かに戦車道の記録だ。

 

「でも、その割りにはこの学校で戦車なんて見たことないんですけど」

 

「1台はもう見つけてあるよ、あとは…探せばあるんじゃない?」

 

「無茶苦茶な…、自転車とかじゃあるまいし、それに戦車があったとして、急に戦車道やるって言って誰が集まるんです?」

 

「その点は抜かりない、近々選択科目のオリエンテーションを開き、全校生徒の前で戦車道復活と我々生徒会が用意した戦車道に関する素晴らしい映像を流す、これで人が集まるはずだ」

 

俺の反論には広報の河嶋さんが答えた、何?素晴らしい映像って、洗脳でもするのかしらん、この生徒会なら素でやりそうだけど。

 

「あとは優勝したら遅刻見逃し200日とか、通常の授業の3倍の単位とか特典もつけちゃうよ」

 

「あぁ、物で釣っちゃうのね、そりゃわかりやす…、え、何?優勝?」

 

「そ、目指すは全国大会優勝だから、比企谷ちゃんもそのつもりでね」

 

「えっと…、今年戦車道を復活させて、今から人集めて、戦車探して、優勝するつもりですか?」

 

「そーだよ」

 

ひょっとしてうちの生徒会は馬鹿なんじゃないだろうか。

 

「百歩、いえ、もうその倍くらいは譲ってですよ、仮に戦車が見つかって、人が集まったとします、でもそれって結局、素人の集まりですよ?全国大会とか出ても恥かくだけじゃないですか」

 

もうあまり反論の言葉もないが、これはもう決定的だ、大洗学園で戦車道が廃止されたのが20年前ならば、戦車道を経験してる者なんぞこの学校にいる筈がない。

 

「もしかして会長、戦車道やった事あるんですか?」

 

「え?ないけど」

 

そりゃそうだ、いくら有能な生徒会長といっても戦車道経験者って訳じゃない、言い出したからにはこの人達も参加するんだろうが、結局は素人である。

 

「ふふ、実は戦車道経験者に関しては目星をつけてるからね、小山ぁー」

 

「はい、会長」

 

生徒会長に言われて副会長の小山さんが別の資料を見せてくる、そこには一枚の写真があった。

 

この写真の人物を俺は知っている、つか、ついさっき偶然会ってたし。

 

「西住みほちゃん、比企谷ちゃんと同じクラスだよね、彼女、戦車道経験者だから、ちょっと一言声かけて勧誘してきてねー、それが比企谷ちゃんの仕事だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

場面が切り替わり、教室、休み時間。

 

俺は机でうつ伏せになり、耳に音楽プレーヤーのイヤホンをつけている。

 

別に音楽を聞いている訳ではない、神経を集中させているのだ。

 

生徒会からの案件は戦車道経験者である西住を戦車道に勧誘する事、ならば闇雲に声をかけるのではなく、ここは慎重に、相手の様子を伺うのが得策だ。

 

べ、別に…女子に話しかけるのに照れてるとか、そんなんじゃねーし、機会がないだけだし。

 

いやほら、クラスでぼっちの俺とかがクラス内で大々的に西住に声かければ嫌でも目立つじゃん?女の子に声かけるとか調子乗ってるとか言われて最悪通報とかされそう。

 

下手すれば西住にも迷惑がかかるだろうし、ここは話しかけないでいる方がいいな、よし、一生話しかけないでおこう、人に迷惑をかけるのはよくない。

 

…生徒会の依頼である以上、それは俺の身が危うい。

 

幸いにも今回の相手である西住も俺と同じぼっちだ、話しかける機会ならいくらでもある、まずは西住が一人になるまで待って…。

 

「みぽりーん」

 

「みほさん」

 

え?何?増えたんだけど…。

 

「沙織さん、華さん」

 

二人に声をかけられた西住が嬉しそうに笑顔で答える、ま、眩しい!昼休みまでの西住とは別人のようだ。

 

西住に声をかけたのは同じクラスの武部沙織と五十鈴華、だったか?

 

武部はクラス内でも明るく気さくで誰とでも仲良くなれるようなムードメーカーな存在、クラスのカーストでもトップクラスの奴だ、いってみりゃコミュ力高いリア充。

 

もう一人の五十鈴は常に清楚な佇まいで長い黒髪が特徴的、そのお嬢様らしい立ち振舞いから大和撫子を表したような女子だ。

 

武部と五十鈴が友達同士なのは知っていたが、二人していつの間にか西住とも交流を持ったようだ。

 

まぁ、この二人ならば問題もないだろう、特に武部はその性格からクラス全員はもちろん、クラス外の奴らとの交流も多い、西住、ぼっち脱却おめでとう。

 

え?クラス全員って、もちろんクラス全員に俺は含まれてませんよ。

 

あぁ、でも不味いな、こうなってくるとますます西住に声をかけづらい、三人に勝てる訳がないし、もう諦めてなんの成果も得られませんでしたーとか報告しようか。

 

そう思っていると脳裏に不敵に笑う生徒会長がチラついてきた、あ、駄目だ逃げられないわ、これ。

 

…覚悟を決めるか。

 

俺は立ち上がり、足取りは重いながらも楽しそうに話す三人に向かう。

 

「あー…、こほん、西住、ちょっといーか?」

 

脳内で何度も繰り返してきたこの台詞、よし、噛まずに言えた!!

 

「比企谷さん?」

 

「あれ?ヒッキーが自分から誰かに声をかけるなんて珍しいね、みぽりんに何か用?」

 

突然の俺の声かけに三人は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに答えてくれた、特に邪険にしてこない辺り、武部いいやつだなー。

 

「や、その…、西住に用事が、ちょっと待て、そのヒッキーってのは何だ?」

 

「えー!比企谷だからヒッキー、何か変?」

 

「いや、変だろ…」

 

マトモに話したこともない男の子をいきなりあだ名で呼んでくるとか、さすが武部、コミュ力高い、でもあだ名のセンスは低いっぽい。

 

「それで比企谷さん、みほさんに何か用事でも?」

 

そーかなーとか言って考え始めた武部をほっといて五十鈴が話を進めてくれた。

 

まぁあだ名の件はいいや、もう話す事自体あんまないだろうし。

 

「ちょっと西住に用があってな、その、ちょっと借りてもいいか?」

 

「「「………」」」

 

ぎこちない俺の言葉に女子三人は顔を見合わせて。

 

「…あっ!」

 

まず最初に何か察したような声をあげて武部がポンと手を叩いた。

 

「そっかー、へー、なんか意外だけど、なるほどなるほどー」

 

そして一人納得したように呟くとうんうんと首を縦にふる。

 

前々から思ってたけどコイツ結構アホの子っぽいよな。

 

「よし、そういう事なら華、あたしら二人は邪魔だし、ちょっと向こうに行ってよ」

 

「何だかよくわかりませんけど…、ではみほさん、比企谷さん、また後程」

 

「ヒッキー、頑張ってねー!!」

 

そう言いながら五十鈴を連れてぶんぶんと手を振る武部。

 

なんだろう、せっかく西住と二人になれる状況作ってくれたのに、何か嫌な予感がする。

 

「あの、比企谷さん、それで、用ってのは」

 

「あー、その、ここじゃなんだし、ちょっと廊下にでも出るか」

 

不安を残しながらも、俺は西住を連れて一度廊下へと出る事にする。

 

それで武部さん、なんでさっきからずっと良い笑顔なんですか?


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