やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

27 / 205
大洗に確実に勝つ方法がある、試合開始時間を早朝にするのだ!!

ずっと迷ってた試合中の八幡の立ち位置ですがようやく方針が決まりました、基本的に実況を八幡、解説を他校のキャラで行こうかなーって、そうすれば八幡と他校のキャラ絡ませますし。

そんな訳で今回のグロリー戦の解説には彼女を呼びました、たぶん解説になりません。

彼女について知らない人は劇場版を是非とも見よう(ダイレクトマーケティング)


どうあっても、比企谷 八幡は逃げられない。

比企谷 八幡の朝は早い(ただし、日曜日に限る)。

 

居間でコーヒーを入れ、砂糖とミルク、そして隠し味に練乳を少々入れる、マックスコーヒー程ではないにしろ、八幡ブレンドの出来上がりだ。

 

フィッシング的なナウい番組を起きたばかりでまだ覚醒しきってない頭で流し見しつつ、気付けば時間も6時半近く、今頃大洗戦車道チームの皆は学園での集合も終えている頃だろう。

 

行けたら行くと言ったな?あれは本当だ。

 

逆説的にこれは行けないから行かないという事だ、せっかくの日曜日に、わざわざ仕事しに行く訳がないだろ。

 

あなた、怠惰ですね〜、とか言われそうだが、七つの大罪の一つを背負う俺、マジ格好いい。

 

携帯の電源はもちろん切ってある、あとは昼過ぎくらいに適当にごっめ〜ん、寝てた、とか返事を返せばいい。

 

負けたらあんこう音頭なのはアレだが、俺が行った所で結果が変わる訳もない、行って後悔するのならば、せめて行かなくて後悔しておこう。

 

「…あれ?お兄ちゃん、何やってんの?今日戦車道の試合あるんでしょ?」

 

これから始まる日朝アニメに向けてコーヒーを啜ってると小町がやって来た、受験生な小町は昨日も遅くまで勉強していたが日曜日に早起きなのは血筋というものか。

 

「おぅ小町、コーヒーいるか?」

 

「うん、貰う…って、そうじゃなくて、戦車道の試合なんでしょ?学園行かなくて良いの?」

 

チッ…、誤魔化しきれなかったか。

 

「つか、何で小町が知ってんの?俺言ってなかったよね?」

 

「ふっふ〜、小町は沙織さん達とラウィンでグループ連絡してるのです、今日の朝6時に学園集合なんだよね?」

 

いつの間に…、我が妹ながら抜け目ない、大洗学園を受ける前に大洗学園に知り合いを作るとは。

 

まぁ小町のそれとは別に今回の練習試合は思ったより大々的なものになっていた、何しろ20年ぶりに復活した大洗学園の戦車道だ。

 

戦車道の試合自体、戦車同士の撃ち合いという派手なのも合わさってちょっとした祭りみたいになっている。

 

「で、お兄ちゃんはなんでまだ家に居るの?」

 

「家が好きだから」

 

実家最高、こうやって日曜日の朝からフルでゴロゴロ出来るなんて素敵すぎる、一人暮らしの西住とかマジ尊敬するな。

 

「…このゴミぃちゃんは」

 

小町はハァッと溜め息をつくと俺からコーヒーを受け取り、ポチポチと携帯を弄り始める、せっかくコーヒー淹れてやったのにディスられたぞ、おい。

 

「小町は見に行くよ、試合、お兄ちゃんは行かないの?」

 

「おー、行ってこい、っても…勉強はいいのか?」

 

「うわー、完全に行く気ないなぁ、小町、大洗に入ったら戦車道やろうかなって思ってるからいーの、その予習?的な」

 

…何?今サラッと初耳な事聞いたぞ。

 

「戦車道やるのか?」

 

「だってみほさん達と同じ授業受けたら楽しそうだし、元々お兄ちゃんの影響でちょっと興味もあったし」

 

この学園艦には大洗学園はもちろんだが、小町の通う中学にも戦車道はない、戦車道から離れたかった西住がこの学園艦に来た理由もそこにあるんだろうが。

 

「ついでにお兄ちゃんも居るし、あっ!今の小町的にポイント高い!!」

 

「お兄ちゃん的にポイント低いよ、俺はついでかよ…」

 

小町がやりたいと言うなら止める理由はないが、うちの戦車道チームブラックだよ?本当にいいの?

 

そもそも受かるかどうかの話でもあるが…、まぁまだ受験まで時間もたっぷりある、それよりもこれから始まる日朝アニメだ。

 

パパパパパパパッパラパ〜ッ!!

 

「はっ!?え?何!?」

 

日曜朝アニメに備えていると突然、軽快なラッパ音が響いた、え?何?敵襲!?

 

慌てて窓を開けると…ラッパを吹いてる秋山が居た、ちょっと、うちの庭で何してんの?

 

「あ、比企谷殿、おはようございます!!」

 

「…うっす、じゃねーよ、何で家に?つか、そもそも何で俺の家知ってんの?」

 

「小町殿から連絡を頂きまして、ダメダメな兄を迎えに来て欲しいと」

 

「ちょっと…小町ちゃん?何か俺に恨みでもあるの?」

 

「いやいや、全てはお兄ちゃんの為だよ、これ、小町的にポイント高い」

 

小町の方を振り返ると小町はニッコリ笑ってピースしている、可愛い、じゃなくて、何してくれてんの?

 

コーヒーやった時に携帯弄ってたのはこれか…、我が妹ながらやるな。

 

「だいたい迎えにって…なにで、ーー?」

 

言葉を失ってしまった、道路に見えるアレはⅣ号戦車である。

 

更にはⅣ号戦車が目覚めの一発とでも言わんばかりに砲弾を発射した、当然、ご近所さん達は何事かと様子を見に家から出てくる。

 

「すいません!空砲です!!」

 

Ⅳ号の中から西住が顔を出してご近所さん達に謝っている、いや、空砲でも何でも普通に近所迷惑だからね。

 

「あ、比企谷君、おはよう」

 

「…お、おう」

 

…もう逃げ場ないじゃないですか、やだー。

 

「皆さん、頑張って下さいねー、小町も後で応援に行きますから!!」

 

嬉しそうにブンブンと手を振る小町に恨みの視線を浴びせるも、さして気にしてない様子。

 

俺の日曜日…、終わっちゃった。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「…つか、本当に乗るのか?」

 

Ⅳ号戦車は元々5人乗りであり、西住、武部、五十鈴、秋山、冷泉と、すでに5人乗っている状態なので俺が入るのは定員オーバーだ、あ!もしかして帰っていい?

 

「比企谷が素直に学園に来ないからだからね!女の子の部屋に上がるんだからもっと嬉しそうな顔したら?」

 

「女の子の部屋って何だよ、戦車の中だぞ」

 

全く、武部は訳のわからん事を言う奴だ、戦車の中は鉄と油の染み付いた武骨でイカしたものに決まってる…の、に?

 

Ⅳ号の中に入って言葉を失ってしまった、椅子に置かれたクッション、カーテン、芳香剤、ヌイグルミ、女の子らしい感じに魔改造されたキラキラした内装。

 

「…秋山殿、これはいったい?」

 

状況が飲み込めず、困惑して思わず秋山の口調が移ってしまった。

 

「…すいません、内装までは」

 

マモレナカッタ…か、いや、ここはよく外装を守ってくれたと誉めるべきだろう。

 

「いいのか西住、戦車をこんなにして」

 

西住流の家元の意見として、そこら辺どうなんです?

 

「うん、戦車をこんなにしちゃうのって考えられないけど…、なんか楽しいね」

 

…駄目だこりゃ、まぁ西住が楽しそうなら良いんだけどね。

 

「あっ!麻子がそこで寝てるから、気を付けてね!!」

 

奥では冷泉が爆睡していた、こいつ、いつも寝てんな。

 

「ちょうど麻子さんを迎えに行っていたので、そのまま比企谷さんを乗せれて良かったです」

 

「俺はついでかよ…」

 

ちょっと、小町といい俺の扱い適当過ぎない?なんなら忘れてくれてて良かったのに。

 

他に座れる所もないので仕方なく爆睡している冷泉の隣に座った。

 

冷泉なら今俺の隣で寝てるよ?である、…アホか。

 

「…狭い」

 

「定員オーバーですからねー、仕方ありません」

 

「どーする?俺出る?」

 

「それじゃあ私ら来た意味ないじゃん…、もう、これでも食べて大人しくしたら?私、おにぎり用意しといたんだ」

 

「おにぎり?」

 

「朝ご飯、まだ食べてないでしょ?」

 

そういえば朝飯はまだ食べてなかったな、学園の集合時間を考えると武部達も朝早かっただろうにキチンと用意する辺り、武部は本当に良い嫁さんになれるのかもしれない、相手が居れば。

 

「えと…、どう?おいしい?」

 

「あぁ、うまい、良い米を使ってるな」

 

「何か褒め方がちょっとズレてない!?そういうんじゃないでしょ、もー…」

 

武部は何やら不満そうだが、さっさとおにぎりを完食すると満足そうな顔をした。

 

「では華さん、出発しましょう、ちょっと遅れちゃいましたがまだ充分間に合うと思うんで」

 

今Ⅳ号戦車を運転してるのは五十鈴か、まぁ本来の操縦手は俺の隣で爆睡中だしな、校内模擬戦での経験が生きたか。

 

「はい、わかりました、あっ、比企谷さん、私、お茶を淹れて来ましたので、おにぎりと一緒に飲んで下さい」

 

「え?えと…、いたただきます」

 

「はい、比企谷」

 

魔法瓶に入れられたお茶を武部から貰い、二個目のおにぎりを頬張りつつ、お茶を飲む。

 

何か戦車の中とは思えん落ち着き具合だが、やはりそこは動き出せば戦車であり、車とは訳が違う。

 

「…寝づらい」

 

整備された道路であれ、多少の揺れは仕方ない、そしてそんな揺れでは隣の冷泉も爆睡とはいかないようだ。

 

「当たり前だ、戦車に快眠を求めるな」

 

「…だが、寝る、何としても」

 

冷泉の身体が本人の眠気と戦車の揺れで左右にふらふらと危なっかしく揺れ。

 

「…は?」

 

最後に俺の身体におもいっきり寄りかかって来た、いや、近い近い!ちょっと、何してんの!?

 

「おいこら、起きろ、重いだろ」

 

「私の安眠がⅣ号の操縦を左右するんだ…、眠いと無理だ、だからそのままでいろ…、ZZz…」

 

何だかよくわからない理屈を吐きながら冷泉はそのまま完全に眠りに入りやがった、え?マジかよ、俺動けないんだけど。

 

隣の冷泉はそんな俺の事なんてお構いなしに全体重を預ける勢いで爆睡している、あなた、怠惰ですね〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

大洗の港にふたつの学園艦が停泊する、一つは我ら大洗学園の学園艦、そしてもう一つは今回の練習試合の相手でもある聖グロリアーナの学園艦だ、学園艦のデカさでいえば向こうはうちの倍はあり、こうして並ぶとその違いがわかりやすい。

 

無名校のうちとの練習試合を引き受けてくれた上にわざわざ向こうから来てくれるとは、さすがお嬢様学園、器量があるというか、金があるというか。

 

さて、練習試合の会場はというと、これはもうちょっとした祭りだ、思っていたよりも大勢の観客にそれ目当てに出回る屋台。

 

20年ぶりの地元チームの試合、そして対戦相手が強豪校として有名な聖グロリアーナというのもあってか、試合開始が朝の8時半だというのにもう人で賑わっている。

 

思ったより人が多いな…、うちの戦車道メンバーに緊張しているのは居なさそうだが、ちゃんと試合になればいいけど。

 

俺達大洗戦車道チームは広い草原で戦車を5両並べて相手チームを待った、あれ?俺必要なくね?

 

戦車道では試合開始の前に一度集合しお互いに礼をする、戦車道は礼に始まり礼に終わるとは蝶野教官の言葉だったか。

 

そんな蝶野教官もこの練習試合に来ているらしい、暇なの?と思ったが戦車道は戦車同士の撃ち合いである、事故や怪我、物の破壊等、練習試合とはいえ戦車道連盟がキチンと管理する必要があるのだ。

 

「…来たぞ!聖グロリアーナだ!!」

 

河嶋さんがそう指差す方に1両のチャーチル歩兵戦車と4両のマチルダⅡ歩兵戦車がやって来た。

 

グロリーの5両も俺達の前に戦車を停止させ、チャーチルから一人、女性が出てきた、代表で出てきた所を見ると彼女が隊長、ダージリンさんだろう。

 

金色の髪を上品に巻いたいかにもお嬢様、という印象を受ける女性だが、どっちかっていうと彼女の着てる服が気になる。

 

赤を全面に押し出した戦闘服、あれ、ネオ的なズィオン軍のパイロットスーツモデルにしてるんじゃないの?え?違う?ですよねー。

 

「本日は急な申し出にも関わらず、試合を受けて頂き、感謝する」

 

「構いません事よ、それにしても…個性的な戦車ですのね」

 

口に手を当ててる、たぶん笑いを隠してるんでしょう、そりゃ笑うよね、すいません、うちの戦車こんなんで。

 

「ですが…私達はどんな相手にも全力を尽くしますの、サンダースやプラウダみたいな下品な戦い方はいたしませんわ、お互い、騎士道精神で頑張りましょう」

 

…こりゃ手強いな、うちの戦車見て油断こいて舐めプしてもらえるのが一番だと思ったが、相手側にその気はないらしい。

 

いや…、そう言ってもこちらは無名校、おまけに戦車はこんなんだ、口ではあぁ言っても心の中では少しは甘く見ている、そう願いたい。

 

「…ところで、最初に私達に連絡をくれた殿方はあなたかしら?」

 

「え?あ…、はい、俺です」

 

自分が声をかけられた事が意外だったので、何だろうと返事を返す。

 

「名前を聞かせてもらってもよろしいかしら?」

 

あぁ、そういえば名前言ってなかったっけ?まぁ試合に出るわけでもないし言う必要ないかなって思ってたんだけど。

 

「比企谷 八幡です」

 

「そう、では比企谷さん、私から貴方に感謝の言葉をお送りいたしますわ」

 

「…へ?えと…感謝ッスか?」

 

…どうしよう?全く身に覚えがないんだけど、連絡も最初のあれだけだしどこでそんなフラグ立ててたっけ?

 

「マックスコーヒー、素晴らしい飲み物ですのね、我が校のティータイムに紅茶と並んで愛飲させてもらっていますわ」

 

テロリロリン。

 

はちまんの、だーじりんさんに対する好感度が上がった音がした。

 

いや、俺そんなチョロくないから…、いやーでも、そっかー、お嬢様でもハマっちゃうよねー、やっぱマッ缶最強だわー。

 

「聞けば比企谷さんは戦車道の手伝いをしていると、この後はどちらへ?」

 

「まぁ適当に観客席見つけて試合観戦しようかと」

 

あれ?ひょっとしたらコレ、帰れるんじゃないか? 試合の最中ならこっそり帰ってもバレないだろうし。

 

「でしたらちょうど良かったですわ、マックスコーヒーのせめてものお礼に我が校が最高の観客席を用意いたしましたの」

 

「へ?いや…別に」

 

「殿方をキチンとおもてなしするのも淑女の務め、こちらから観戦用に戦車を1両用意しました」

 

「観戦用に戦車…ですか?そりゃ現場で試合を見るみたいなもんですけど、良いんですかそれ?」

 

「戦車道連盟の許可は既にとってありますわ、もちろん戦いには参加しませんのでご安心を」

 

いや、まだ俺がその誘いに乗るとは一言も言ってないんだけど…。

 

「…というか、その観戦用とかいう戦車はどれッスか?今ある5両は試合に出るやつですよね?」

 

「えぇ、そろそろ来ると思いますわ」

 

「…はい?」

 

と、ダージリンさんと話してると俺達のはるか向こうの方から1両の戦車が猛スピードでやって来た、…は?

 

「巡航戦車クルセイダーMKⅢ、これも持ってきたんですか?」

 

「いえ、勝手について来て…、いえ、貴方の為に用意いたしましたの」

 

「今絶対勝手について来たって言いましたよね?」

 

「ローズヒップ、もう充分堪能したかしら?」

 

あ、無視したよこの人、お嬢様っぽい雰囲気と物言いに騙されそうだけど、案外一癖ありそうな性格してるな。

 

「まだまだ足りませんわ!ダージリン様!もう一回りして来ますわ!!」

 

クルセイダーから赤みがかった髪をした女性が出てくる、立ち振舞いからお嬢様っぽさは微塵も感じられない。

 

「もうすぐ試合が始まるのだから、大洗の客人の相手をなさいと説明したはずですが?」

 

「そうでした!客人とはそこの目が腐ってる御方ですのね?」

 

しかもすげぇな、初対面の奴をいきなりディスるとか、これが聖グロリアーナの持て成し方なの?八幡泣いちゃう。

 

「私、ローズヒップが存分におもてなししてさしあげますわ!光栄に思うと良いですの!!」

 

「…チェンジで」

 

「よくわかりませんが、そんなのありませんの」

 

これ、絶対厄介者を押し付けられただけだよね?


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。