やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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実はわりとプラウダメンバーってアニメでも登場遅かったせいかあんまり書いた事無かったんですよね。
改めて書いてみるとノンナさんとかクラーラとか難しいキャラクターしてますね…。

Q、「雪像って1日で作れねーだろ!!」

A、「プラウダ戦前の(おそらく)短時間に歴女チームが作ってましたし、多少は…ね?」


降雪・ウォー2

「ふぅ…冷える冷える」

 

温めたマックスコーヒーを手にストーブの前に陣取る、急ごしらえで建てた本部テントだが外で作業するより百倍はマシというものだ。

 

外では大洗の生徒達が雪像作りの為にせっせとこの辺りの雪かきをしてくれている、それを横目に見ながらすするマックスコーヒーのなんと美味い事か。

 

単なる土日の休みよりも平日の休みの方がどこか特別感が生まれ価値がある、とは昔どこかで聞いたことがある。

 

これは他人が働いている中堂々と休めるという大義名分があるからだろう、誰かが労働している中休んでいるという精神的優位性が心を穏やかにしてくれるのだ。

 

企画書を生徒会に提出した時点で俺の仕事の8割は終わったようなものだ。後は完成した雪像を写真に撮っていくくらいで、今は完全に待ちの状態になった。

 

今はこの時間を有意義に使わせて貰おう、とマックスコーヒー受けに用意しておいたお菓子を持ち出そうとした時だ。

 

「…ん?」

 

携帯が着信を告げている、画面を見るとカチューシャさんからだった。

 

「はい、もしもし…」

 

ヒントこそノンナさんから頂いたがあの二人の助言があって今の状況を作り出せたのだ、さすがに感謝の一つでも言うべきかと軽い気持ちで電話に出る。

 

『聞いたわよハチューシャ!大洗で雪まつりをやるってどういう事よ!!』

 

だが、電話に出るなり聞こえてきたのはカチューシャさんの怒鳴り声だった、まさに地吹雪。

 

「えーと、まぁ成り行きで…え?なんかまずかったですか?」

 

もしかして本家札幌の許可とか必要だったの?こんな学園艦のちょっとしたイベント企画で?

 

なにがまずい?言ってみろ。いや…お願いします、言って下さい。

 

『まずいに決まってるわ!このプラウダとカチューシャを差し置いて雪像コンテストで優勝を決めるなんてあり得ないわ!!』

 

…他所の学園艦の雪像コンテストに文句を言われましても、どれだけ負けず嫌いなのこの人?

 

『要するに、そんな面白そうな企画があるなら誘って欲しかった、との事です』

 

『ノンナ!余計な事は言わなくていいの!!』

 

あー…そういう事。いやイベントの本来の目的は雪かきにある訳でそれにプラウダを巻き込むのもどうかと思うが。

 

『そんな訳で私達も当然参加するわ、いいわね?ハチューシャ』

 

「いや、良いも悪いも…、もう始まってますし今からじゃ間に合わないんじゃないですか?」

 

今から学園艦飛ばしてこっち来たとして、そこから雪像作りとかしても間に合うはずがない。

 

『いえ、それは問題ありません』

 

「はい?」

 

はて、なんの事やらと思っているとなんだか外が騒がしい。

 

「あ、比企谷ちゃん、やっぱりここに居た」

 

「会長?なんの騒ぎですかこれ?」

 

「いやー、なんかカチューシャから雪まつりに参加したいって連絡が来て」

 

「それは聞いてますけど、どっちにしろ今からじゃ参加は無理でしょ」

 

「それがさっき、学園艦の近くにプラウダの揚陸艦が来てるって連絡があってね」

 

「…え"っ」

 

『はい、もう着いています』

 

「そんな訳で比企谷ちゃん、記録雑務としてカチューシャの相手お願いねー」

 

…記録雑務とは何かを小一時間程この人に問い詰めてやりたい。きっとかわされるんだろうなぁ。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「ポモルニク型エアクッション揚陸艦…」

 

いや、12322型エアクッション小型揚陸艦 ズーブルと呼んだ方がいいか…いや、まぁそれはこの際どっちでもいいとして。

 

「ふふん♪どう?驚いたでしょ」

 

「えぇ…まぁ、確かに驚きました」

 

ただ、俺が驚いたのは決して揚陸艦にではない。いや、それも十分驚くに値するのだろうが…。

 

「ニーナ、アリーナ、では雪像を」

 

「了解だべ、アリーナ、崩さねーよう慎重にな」

 

「わかってる、そーと…そーとだ」

 

それよりは驚いたのはその揚陸艦が積んでいたであろう雪像が、ノンナさんの指示で運ばれてくる。

 

「見なさい!これがプラウダの力よ!!」

 

自信満々のカチューシャさんがじゃーんとその雪像を紹介した。

 

「えーと、これは?」

 

「何言ってるの?どこからどう見てもカチューシャじゃない」

 

えぇまぁ…そうね、確かにカチューシャさんっぽい雪像ではある。

 

…明らかに不自然な身長の高さと盛られた胸に目を瞑ればだが。

 

「…このカチューシャさんの雪像をコンテストに出す、って事ですか?」

 

確認の意味を込めてあえて"カチューシャさん"の部分を強調させてノンナさんに聞いてみる。

 

「えぇ、この"雪像"をプラウダからの出展とします」

 

ほらー!絶対認めてないやつじゃんこれ!!無表情が怖いんですけど!?

 

「しっかし、よくこの短期間で作れましたね…移動にかかる時間だってあったのに」

 

「当然よ、粛清中の生徒を総動員したもの」

 

やだ…プラウダ怖い。

 

「そのせいで私らもうくったくただぁ」

 

「しかもあのちびっ子隊長、身長が低いって途中で作り直させるもんだしなぁ」

 

ぼそぼそとした声でプラウダ生徒の悲痛な叫びが聞こえてくる。いや…本当にお疲れ様です。

 

その一人にはなんとなく見覚えがあった、準決勝前にプラウダに行った時に案内をしてくれた生徒だろう。

 

そういえばさっきノンナさんが二人に指示してたな、名前は確かニーナとアリーナだったか。アリーナ…ソシャゲの対人戦は悪い文明である。

 

「あんた達、何か言ったかしら?」

 

「「い、いえ!なんでもありません、カチューシャ隊長!!」」

 

うーん…この独裁政治。

 

「とにかく、これでカチューシャの優勝は決まったも同然ね!!」

 

まぁ…カチューシャさんかどうかはこの際置いといて雪像のクオリティだけでいうなら文句の付けようはない。

 

カチューシャさんの雪像コンテストなら予選落ちでも雪像コンテストなら高得点の作りだ。俺との電話で大洗が雪まつりをやると聞いてすぐ作ったんだろうが…それでこのクオリティはさすが雪に強いプラウダだけある。

 

「それでハチューシャ、結果発表はいつなの?」

 

「いや、結果もなにもまだ始まったばかりですし」

 

「じれったいわね、どうせカチューシャが勝つのは決まってるのに」

 

相変わらずの負けず嫌いっぷりだが、今回に限って言えば俺も結果はもう出てしまったと思う。

 

そもそも大洗は元々雪がそんなに降らない茨城県出身者が多いので雪に不慣れな者が多い、いきなり雪像を作れと言われてそんなにクオリティの高い雪像を作れる者は少ないだろう。

 

『雪国育ちの俺があまり雪の降らない地方で無双しました』とか、新しいなろうかな?…マジでありそうだなこれ。

 

「えらいやる気ですね?」

 

「当然よ、プラウダが凄いって事を証明する良い機会になるわ」

 

とりあえず戦車道でもなんでも、プラウダが一番じゃないと気がすまないらしい。

 

「それに…優勝すれば賞品も出るんでしょ?」

 

「まぁ一応…、あんま期待しない方が良いと思いますけど」

 

なんたってそれを用意したのは生徒会だし、きっと一位【干し芋一ヶ月分】、二位【干し芋一週間分】、三位【干し芋三日分】。とかそんなラインナップのオチが見える。

 

「何を勘違いしてるのハチューシャ?カチューシャが欲しいのは大洗の賞品じゃないわ」

 

「…はい?」

 

「良いこと?カチューシャ達が優勝したらハチューシャには一つ、私の命令を聞いて貰うんだから」

 

「いや、なんでですか…、だいたい何やらせるつもりです?」

 

「それは優勝した時に言うわ、どうせカチューシャ達が勝つんだもの」

 

話聞いてねぇ…、え?マジでなんかやらせるつもりなの?

 

よし、プラウダの出展作品名の【カチューシャの雪像】の"カチューシャ"部分を強調させておこう、それだけでかなりのマイナス点を稼げる。

 

「カチューシャ、せっかくですからみほさん達にも挨拶してはどうですか?」

 

「もちろんよ、ハチューシャ、ミホーシャ達の所に案内しなさい」

 

「別に構いませんけど、俺仕事ありますからそれやりながらになりますよ」

 

「なんの仕事ですか?」

 

「記録雑務です」

 

「似合うじゃない」

 

喧嘩売ってるんだろうか…このちびっ子隊長は。

 

「なんならカチューシャの成長も記録させてあげても良いんだから」

 

カチューシャさんの成長記録とか…どうだろう?この人がこのままずっと身長伸びないまま年とったらなんかの学会に提出できる資料になり得ない?

 

「カチューシャの成長記録ならもうとっていますよ」

 

「え?そうなのノンナ?」

 

「えぇ、偉大なる指導者の成長記録となりますから」

 

「ふふん♪わかっているじゃない」

 

気付いてカチューシャさん!それ絶対ただのヤバい記録だから!!

 

「ーーー(カチューシャ様の成長記録!?ノンナさん、それはもしかして過去のカチューシャ様のお姿が?)」

 

「ーーー(えぇ、もちろん、大事な記録ですから)」

 

急に会話に加わってきたのはプラウダに留学中らしい生粋のロシアっ子クラーラだった。

 

「ーーー(だとすれば…入学したての頃のカチューシャ様の姿も)」

 

「ーーー(はい、ばっちり写真に残して記録しています)」

 

ロシア語なので何を言っているのかわからないがノンナさんにはわかっているらしく、二人はそのまま会話を続けていく。

 

「あなた達!だから日本語で話しなさいっていつも言ってるでしょ!!」

 

それはカチューシャさんも同じなので地団駄を踏んでした。会話の内容は確かに気になるが…なんだろ?知らない方が良い気さえする。

 

…ん?てか今のクラーラ、明らかに俺達の会話の内容わかってて話に入って来なかった?

 

「それでノンナ、クラーラはなんて言ってるのよ?」

 

「はい、クラーラも勉強の為、カチューシャの成長記録を見たいとの事です」

 

「いい心掛けね、せっかくプラウダに来ているんだし、しっかり勉強しなさい」

 

…これ、クラーラは絶対俺達の会話の内容理解してたよね?日本語わからないとはなんだったのか?

 

とりあえずこれ以上深くは考えないようにしよう、プラウダの闇が見えてくる気がするし…。


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