やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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なんとか八幡の誕生日に間に合わせたかったけど無理でした!!


意外にも、比企谷八幡は受け入れられていた。

『みんな、各々配置についたわね?』

 

蝶野教官が無線にて呼び掛ける、成り行きで俺が乗るはめになった生徒会、Eチームの38(t)、歴女CチームのⅢ号と一年DチームのM3リーが地図で指定された所まで辿り着いた。

 

森を挟んでもう片方側には西住率いるAチームのⅣ号戦車とバレーボール部Bチームの八九式が居るはずだ。

 

…まぁ辿り着いたというか、辿り着けたというか、初めて戦車を動かすので当然と言えば当然だがここまで来るのが大変だった。

 

俺の乗るEチームの操縦士は小山さんなので性格上比較的安全に運転をしてくれたのが救いか、バレーボール部チームとか木に思いっきりぶつかってたし。

 

ゴラァッ!てめえ免許持ってんのかぁ!?とか言われればありませんと答えるしかない、つーか今更ながら戦車って免許いるの?学園内だからセーフなの?

 

『戦車道の試合には殲滅戦とフラッグ戦の二種類があります、戦車道全国大会ではフラッグ戦を行いますが今回は殲滅戦ルールでいきます』

 

…フラッグ戦は相手のフラッグ車を先に倒した方の勝ち、それに対して殲滅戦は。

 

『つまり、相手チームの全車両を撃破したチームの勝ちよ、みんな、バンバン撃ってバンバン撃破しちゃって』

 

「やー、ずいぶんざっくりッスね」

 

蝶野教官の無線に会長が答える、全くもってその言葉には同意しますけど、あんたがそれを言いますか。

 

『試合開始は…、そうね、今から30分後にしましょうか、チーム戦ですし、お互い作戦を練ってもいいと思うわ』

 

…そりゃあありがたい、いきなりはいスタートと言われたらどうしようかと思ったわ、この人なら言いそうだし。

 

「その前に質問、いいですか?」

 

だが、作戦を練るにしても情報は欲しい所だ、今の内に少しでもこの人に聞いておこう、何しろこっちは全員が素人だ。

 

『はい、比企谷君』

 

「戦車を降りるのはありですか?簡単にいえば歩兵戦みたいな感じで」

 

『そうね、偵察に関しては試合でも認められているわ』

 

「え?いや…、偵察もまぁ、そうなんですけど、落とし穴とか、相手戦車に直接乗り込んで無力化とか」

 

『………』

 

え?何でそこで黙るの?そんな変な事聞いた?

 

『あ、えと…ごめんなさい、確かに戦車の乗り降りは自由だけど相手戦車を直接攻撃するような事は駄目よ、戦車を撃破するのは戦車で、あと、もちろん誰も乗ってない戦車を撃破するのは自由よ』

 

「…マジッスか、戦争の華は白兵戦でしょ?」

 

『これは戦車道、戦争じゃないの、あと、あなたのそのやり方はどちらかというとゲリラ戦ね』

 

…さいですか、まぁ駄目だと言われれば仕方ない。

 

『最後に、戦車道は礼に始まり、礼に終わるの、一同、礼』

 

「「「「よろしくお願いします」」」」

 

「…します。」

 

そんな蝶野教官の号令と共に、俺の戦車道初体験がスタートした、あんだけ適当なのに礼にはこだわるのね、この人。

 

「さーて、どうしようか?」

 

「我らの初陣だな、作戦はどうする?」

 

「ここは車懸かりの陣だな」

 

本格的に試合が始まるのは30分後、とりあえず一度各チームのメンバーが戦車から出て集まる事にする。

 

「…はぁ」

 

「おんや、どうしたの比企谷ちゃん?」

 

「…俺がここに居るのが違和感しかないからですよ、なんで俺まで練習試合に参加させられてるんですか」

 

「そう言うが比企谷、貴様、戦車に乗り込んだ時はやたらにハイテンションだったではないか、正直少し引いたぞ」

 

やだ…それ言わないで、恥ずかしくて戦車乗る前から白旗上げちゃいそう。

 

「しかもなんで隊長なんですか…」

 

「まーまー、なんとかなるでしょ」

 

会長がバンバン俺の肩を叩いてくるが現になんともならない事が起きている訳で。

 

「ほら…、一年の奴らとかめっちゃ遠巻きで近づいて来ませんし」

 

そう、一年チームは俺達とは少し離れた所で固まっていて近寄ろうとしないのだ、どうしたのかなー?上級生のお兄ちゃんが居て照れてんのかなー。

 

まぁ普通に警戒されてんだろう、女の武道な戦車道に男が混じってて試合にも何故か参加してて隊長で上級生でしかも目が腐ってるときてる、最後のは関係ないか、関係ない…よね?

 

「そこは隊長である貴様がなんとかするべきだろう」

 

「いやいや、ムチャ言わんで下さい、俺が近付いても余計に警戒されるだけでしょう?」

 

警戒している相手に自分から近付くとか、愚策にも程がある。

 

「仕方ないなー、比企谷ちゃん、一年のみんなはちょっと任せて作戦でも考えて」

 

そう言って会長が小山さんと河嶋さんをお供に一年チームに向かっていった。

 

「八幡」

 

また無理矢理なんとか言うこと聞かせようとかしてるんじゃないだろうな…。

 

「八幡」

 

つーか、作戦考えとけって言われてもなー、俺があれこれ考えた作戦は蝶野教官の駄目とのお言葉で却下を受けてるし。

 

「八幡ッ!!」

 

ホント、実はいろいろ考えてたんだよ、落とし穴に落としたりキャタピラに細工したり、空の戦車囮にして相手戦車制圧したり、それのどこが…、うん、ゲリラ戦だわな、これ。

 

「聞いているのか!八幡!!」

 

「え!?お、おう!?」

 

突然、肩を思いっきり掴まれて思わず変な声を上げてしまった、改造した軍服を着た女子が俺の肩を掴んでいる。

 

えっと…コイツは確か歴女チームのエルヴィン、だったか、間違いなく本名ではないだろうが。

 

「さっきからずっと呼んでるんだが、聞こえなかったか?」

 

「え?誰の事?」

 

「お主の事に決まっている」

 

「八幡ぜよ」

 

…え?ほぼほぼファーストコンタクトなのに名前呼びとかこの歴女チーム、意外とコミュ力高いの?

 

「…悪い、あんま名前で呼ばれる事なかったから気付かなかった」

 

むしろ名字で呼ばれる事すらあまりないまであるが。

 

「そうか、なら安心しろ、お前のソウルネーム、我らはしっかりと呼んでやる」

 

「…は?」

 

「八幡か、南無八幡大菩薩嶺、ふむ、いいソウルネームだ」

 

「八幡神から取るとは、神をも恐れぬ諸行ぜよ」

 

「…ぐふっ!?」

 

止めろ…、その言葉は俺に効く。

 

あれは忘れてしまいたい中学二年の頃、まだ若かった俺はこの名前に自分には特別な力があるとか勘違いして八幡神社関係の資料とか調べまくってた頃があった。

 

だって八幡だよ?比企谷って名字も珍しいし、あっ、ちなみに親に聞いたら8月8日生まれだからって理由だそうで、親適当過ぎんだろ。

 

「む?どうした八幡、ソウルネームを呼ばれてそんなに嬉しいか?」

 

「比企谷八幡、言っとくが本名だからな…」

 

「なん…だと?」

 

「なんと羨ましい!!」

 

羨ましくなんてねーよ…、コイツらやっぱどこか中二くさいな、どこぞの材木屋君かよ。

 

この歴女チームはなんか、メンバー全員本名を名乗らない、なんかソウルネームとかいう愛称で呼びあっている。

 

古代ローマ史に詳しい、赤いマフラーをしたカエサル、ローマッ!!

 

軍服を着たのは欧州戦争に詳しいらしいエルヴィン。

 

普段、何故か左目をつぶったまんまで弓道の胸当てを付けている戦国時代に詳しい左衛門佐、目悪くなるぞ。

 

羽織をはおっているのは幕末史に詳しいっぽいおりょう。

 

っと…、歴史好きがこうじちゃったのかコスプレ所か名前まで影響されまくってる四人組だ、ほんと、どこの剣豪将軍だよ。

 

「して八幡、作戦は?」

 

「やはりここはパンツァーカイルだな」

 

「鶴翼の陣ぜよ」

 

「石兵八陣(かえらずのじん)だ」

 

「「「それだ!!」」」

 

どれだよ…、あと最後の大軍師の究極陣地は違うからね、一番それじゃねーよ。

 

「つーか三両しかないんだぞ…陣形もなにもないだろ」

 

…いい加減、歴女チームの相手も疲れて来た、生徒会はまだ一年の所だろうし。

 

「比企谷先輩ッ!!」

 

「…え?」

 

呼ばれて振り返ると一年チームが全員キチンと集まっていた、会長がニンマリとした笑顔でこちらを見ている。

 

「比企谷先輩、作戦よろしくお願いしま〜す」

 

「よぅし、相手チームをみんなやっつけちゃえ!!」

 

…しかもなんかやたらとやる気満々だし、いったいどんな手を使ったんだこの人。

 

「えと…会長?なんの話したんですか?」

 

「ん?いやー、いいことはするもんだよ、比企谷ちゃん」

 

「…はぁ?」

 

気になって聞いてみたがなんだか尚更よくわからない。

 

「えと、比企谷君覚えてる?入学式の日の事故の事」

 

「そりゃあ…まぁ」

 

忘れる訳がない。

 

大洗学園の入学式の日、正直な話高校生デビューするつもり満々だった俺は普段より早く目が覚めたのでそのまま学園へ向かった。

 

そして学園へ向かう途中、何故か道路にウサギが飛び出して来たのだ。

 

そしてお約束の如く車に轢かれそうになったウサギを助ける為に道路に飛び出した俺は車に激突し、入学式早々病院送り、高校生活のぼっちが確定した。

 

後でそのウサギが大洗学園から逃げ出したウサギだとわかった事で生徒会とも知り合った、ってか知り合ってしまった訳だが。

 

「えと、その事故と一年チームになんの関係が?」

 

「彼女達の乗るM3リーがウサギ小屋で見つかったのもあってね、今は彼女達がウサギの世話をしてるの」

 

「………」

 

…なんだかそれで一年チームが素直にやる気になるのは複雑な気分だ。

 

あの事故だって一年も前の話で、それこそ彼女達一年にとっては本当になんの関係もない話だというのに。

 

「なんだ、やっぱり関係ないじゃないですか」

 

「比企谷君…」

 

「まー、それでやる気になったんならいいんじゃない?結果オーライ」

 

「…はぁ」

 

いろいろと思う所はあるが…、それよりも今は試合中だ、ぐだぐたやってたせいか時間も思ったより過ぎている。

 

「それじゃあ初めよっか?作戦会議」

 

「はい!!」

 

「ふむ…」

 

生徒会チーム、一年チーム、歴女チームが一斉に俺の方を見る、1度にこれだけの女子に見られるのはどうにもやりづらい。

 

「あー、こほんっ」

 

なので気持ちを落ち着かせる意味を込めて咳払いを一つ。

 

「それじゃあ、西住、バレーボール部の合同チームに対する作戦会議を、えと、始めます」


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