やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
今話、そして次話からはもうほぼほぼオリジナルです、批判とか来るだろうとは覚悟してますが八幡を置物にするのもなんですから。
公式戦ではもちろん八幡の出番無いですが。
そして…うん、ストック切れです、このタイミングでですがまたちょっと更新遅れるとは思います、籠ってくんで応援よろしくです!!
「特別講師の戦車教導隊、蝶野 亜美教官だ」
「みんなー、こんにちはー」
河嶋さんがやってきた戦車道教官を紹介し、蝶野教官は元気よく手を振った。
いや、それはいいんですけどね…。
俺を含む、大洗戦車道チームの注目は目の前の蝶野教官より、その登場によっておきた駐車場の惨劇だろう。
この教官、なんと輸送機から戦車ごと学園の駐車場に降下し、その際に学園長の車(なんか高そうなスポーツカー)と派手に衝突したのだ。
学園長の車は派手にひっくり返り、それだけならまだしもこの教官の乗る戦車はそのまま車を踏み潰していた、わざとなの?
こんな登場の仕方をした教官がまともとは思えないんだけど…、先行きがいきなり不安だ。
「…騙された」
やってきた教官が女性だった事に武部は頬を膨らませている、甘いな武部、会長はカッコいい教官が来るとは言ったが、男性だとは一言も言ってないのだ。
「戦車道は始めての人が多いと聞きますが、一緒に頑張って行きましょうね」
多いっていうか、経験者約一名だけなんですがそれは?
「…おや?西住師範の娘さんじゃないですか!師範にはお世話になってるんです、お姉さんも元気?」
「あ…、はい」
西住は見つかってしまった…、とでも言うように顔をうつ向かせる。
何なのこの人、いきなり現れて地雷原をタップダンスで踊り始めてんだけど。
…去年の戦車道全国大会の事とか、西住がこの大洗に居る理由とか考えてないんだろうか。
「西住…師範?」
「有名なの?」
教官と西住のやり取りを見た他の戦車道メンバーがざわざわと騒ぎ出す、まぁ他のメンバーからすれば西住は戦車道の経験者、くらいの認識だっただろう。
「西住流は戦車道の中でも由緒ある流派なんですよ」
確かに由緒はあるんだろうよ、古臭い凝り固まったような由緒が。
第一、西住流が最強流派とか片腹痛い、俺が知る中で最強の流派はどこぞのアジア師匠の流派東方不敗だ、戦車なんてワンパンだろう、マジで。
「教官!戦車道の教官ってモテるんですか?」
戦車道メンバーのざわめきに西住が居心地が悪いのを感じたのか、武部が話題を変えるようにそう質問する。
武部のやつ、結構こういう気配り出来るよな…、俺にももっと気配って欲しい、わりと俺に容赦ない気がするよ、コイツ。
「モテる、というより…、狙った獲物を外した事はないわ、撃破率は120%!!」
全弾必中とか何それ怖い、どれだけの男がこの人に撃破されてんの?どこぞの売れ残り気味な国語教師にでもその秘訣教えてやって!頼むから!!
「それで教官!今日はどのような訓練を行うのですか?」
次に秋山が質問する、どうやら戦車好きだけあってやる気は充分のようだ。
訓練…とは言っても西住以外の全員が今日初めて戦車に乗るようなものだし、軽く操縦の仕方とか教えるくらいだろう。
「本日は本格戦闘の練習試合、さっそくやってみましょう」
…は?えーっと、…は?
「い、いきなり実戦ですか?」
「何事も実戦あるのみよ、大丈夫、戦車なんてバーッと動かしてダーッと操作してダンッと撃てばいいんだから」
ちょっと、本当に戦車道の教官呼んだの?ただのどこぞのブラック企業の先輩呼んだだけじゃないの?
俺が前にやってたバイト先の先輩の説明とほとんど一緒なんだけど今の。
しかもそれで説明した気になって、わからない所聞くとちゃんと説明したよな?とか言ってくるからタチが悪い。
「それじゃあ早速戦車を動かして、各々地図の印の所まで向かってちょうだい」
教官の号令に各々が戦車倉庫に向かう、倉庫内にはすでに整備を終えた5両の戦車が並んでいた。
そう、なんと既に整備済みである、昨日洗車を終えてから本当に一晩で動くようになったらしい。
リアル自動車部が一晩でやってくれました、だ、特にⅢ号突撃砲とか水没してたって話なんだけど時間を巻き戻す風呂敷とか持ってるの?
「いきなり操縦なんて、わかんないよー」
「私、詳しそうな友達に聞いてみる」
「待って、そういう時こそネットで聞いてみよ!!」
ほう、一年生グループはネットで調べるつもりか、中々に賢い選択だな、よし、ここは先輩としてさりげなく、優しく教えてやろう。
『ググレカス』っと。
「それじゃあ皆、役割を決めて乗り込んで、さぁ早く」
各チームが操縦士、装填手、砲手、通信手、車長を決めて戦車に乗り込んでいく、まぁ人数的に必然、兼任が多いのだが。
しかも今日始めて戦車に乗った彼女達がその役割の意味を理解しているはずもなく、その振り分けはくじ引きだったり、最初に座った席だったり、もう適当だ。
「…なんだかなぁ」
こんなんで本当にいいのだろうか、いや、よくない。
「あなたが比企谷八幡君ね、話は聞いてるわ」
今だに動き出す気配のない戦車をぼーっと眺めていると蝶野教官に声をかけられた。
話?話ってなにかしら、たぶん、悪い話でも聞いてるんだろう。
「こうして彼女達の戦車道を手伝ってる所を見ると、相当戦車道が好きみたいね」
俺にとって悪い話だったわ。
「いえ、嫌いッス」
「…はい?」
「いや、だから…、確かに戦車は好きなんですが、戦車道は嫌いです、手伝ってるのも成り行きみたいなもんなんで」
つーか、もういい加減こうやっていちいち否定すんのも嫌になるな、どっかに戦車道は嫌いです!!とか書かれたTシャツでも売ってないかな、着ないけど。
「またまた〜、比企谷ちゃんも強情だなぁ」
たまたま近くに居て話を聞いてたのか、会長が声をかけてきた。
「いや、だって戦車道とか、あぁやって適当に戦車を動かして戦争ごっこする遊びでしょ?戦車への冒涜っスね」
戦車道の教官に向けて言っていい台詞じゃないのはわかっているが、それでも俺は嫌いだ。
子供の頃から戦車が好きだった、憧れていた。
戦車に乗ってみたかった。
戦車に乗れる競技がある事を知って心を踊らせた。
…女の競技だと知り、絶望した。
「遊び…ね」
俺の言葉を聞いた蝶野教官は顔色一つ変えないままふむ…と考えるように手を顎に置くと。
「そうだ、いいことを思い付いたわ!!」
やがて名案が浮かんだ、とばかりにポンっと手を叩く、笑顔で。
え?もしかして俺、戦車道を馬鹿にした事で消されちゃうの?
「西住さーん、ちょっといいかしら!!」
「え?はい!!」
今だ運転開始に苦労しているⅣ号(操縦は五十鈴がしている)に居る西住に蝶野教官が声をかける。
「えと…、何でしょうか?教官」
「今日の実戦演習の事よ、本当は全車両によるバトル・ロワイアルにするつもりだったんだけど、予定を変えるわ」
うわ…、いきなりの実戦でバトル・ロワイアルやらせるつもりだったのかよこの人、やっぱり戦車道ってブラック企業だわ。
「本日の実戦演習はチーム対抗戦をします、チーム分けは…そうね、A、Bの二両チーム対C、D、Eの三両チームね」
「チーム戦…ですか?」
まぁチーム分け的には経験者の西住が二両の方に居るのは納得だな、しかもBチームの戦車は八九式だし。
「それで西住さん、あなたにはA、Bチームの隊長をお願いしたいの」
「えぇっ!?私が隊長ですか!!」
いや、そこは別に驚く所じゃないでしょ、まぁ唯一の経験者だ、当然である。
しかしそうなると経験者が誰一人居ないC、D、Eチームの隊長は誰だろう、やっぱり生徒会長か、あんなでも一応権力的には一番だし。
「比企谷ちゃん、後でちょーっと話があるかな?」
え?ヤダ何この人、人の心でも読めるの…?
「それで、C、D、Eの三両チームの隊長は比企谷君、あなたにするわ」
…は?
「…は?」
「…えっ?」
「へぇ…」
俺と西住は間抜けな声を上げ、会長は面白そうに頬を吊り上げる。
「「えぇえっ!?」」
しばし状況の掴めなかった俺と西住は互いに顔を合わせて声を荒げる。
「はい、じゃあそういう訳で皆にも伝えるわね」
「あの…教官、戦車道はその…」
「いやいや、ちょっと、おかしいでしょ、戦車道は女子の競技、男の俺は出られないでしょ?」
「確かに公式戦ではもちろん駄目よ、でも別にこれは公式戦じゃなくて校内の模擬戦よ、細かいルールは省いちゃっていいの」
いや、どう考えても細かくない部分でしょ?そこ。
「それに比企谷君、本当に戦車道を嫌い、否定したいなら、一度体感してみるのが一番よ、さっきも言ったでしょ、何事も実戦あるのみって」
あー、もしかして、やっぱりさっき俺が戦車道否定した事について怒ってんのか、この人。
「いや、それは…、第一、乗る戦車がありませんし」
「比企谷ちゃん、私らの戦車なら一人分空いてるよ」
しかもよりによって生徒会メンバーの38(t)戦車ですか…。
「もう他の言い訳はなさそうね?」
「…はぁっ」
確かに、中身を知りもしないのに勝手に否定するのは悪い事だ、漫画もラノベもゲームも、携帯小説だって、タイトルだけで中身を判断してはいけない。
ちゃんと購入した者、ちゃんと読み終えた者こそが感想や評価、批判する権利を持つとは俺も思うよ。
大事な事なのでもう一回言っとこうか、ちゃんと読み終えた者こそが批判する権利持つと思うよー。
それに…その、戦車、乗れるし。
「…えと、よろしくな、西住」
「あ、うん…、よろしく?」
それは良いとしても…だ、なんで隊長なのかなー?
「えと…、お互い頑張ろう?比企谷君」
…なんで初陣で相手西住流なのかなー?
ラスボスだよー、この子ー!!