やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

13 / 205
そういえば西住殿と、あと多分五十鈴さんって一人暮らしだよね?普段ご飯とかどうしてるんだろう?
カップ麺とかで生活してるとしたらそれはそれで…うん。
そして謎の女子登場、実はさりげなく一度登場させてたんですが誰も気付かなかっただろうなー(棒読み)


それでも彼は、暗がりの方を好む。

「散らかってるけど…、どうぞ」

 

「お邪魔します」

 

「西住さんらしい部屋ですね」

 

西住の案内でマンションの一室、西住の部屋へと案内される、うん、確実に浮いてるな俺。

 

さて、西住の部屋だが小町とボコられ談義を弾ませてたくらいには部屋にボコられグマのボコシリーズのぬいぐるみが置いてあった、女の子らしい部屋ではある。

 

「さて、それじゃあ作ろっか!華はじゃがいもの皮をお願い」

 

「え?あ…はい」

 

武部の合図と共に五十鈴がスーパーの袋を持っておそるおそる台所へと赴く、…なんだか嫌な予感がするぞ。

 

「私、ご飯炊きます!!」

 

秋山は元気良くそう手を上げると鼻歌混じりにテーブルに飯ごうを置いていく。

 

…なんで飯ごう?

 

「それ、いつも持ち歩いてるの?」

 

「はい、どこでも野営出来るように」

 

いや、部屋の中なんだから野営でもなんでもないんだが、そこは文明の利器に頼っていいだろ…、炊飯器先生が泣くぞ。

 

「痛っ…」

 

今度は台所の方で小さな悲鳴が聞こえた、慌てて駆け寄ると五十鈴が指を小さく切ってしまっていた。

 

「すいません、花しか切った事がなくて」

 

「大変!?ば、ばんそうこう、…あれ?どこに仕舞ったっけ」

 

五十鈴のイメージ的にある程度料理は出来そうなもんだったが、意外と駄目だった。

 

ってか今の台詞、どうでもいいけど花の所を人に変えるとすげぇ物騒になるな、うん、どうでもいいか。

 

…飯を貰いに来たというのに、このままじゃまともな物食べれないんじゃないか?

 

「五十鈴、包丁貸せ」

 

「え?ですが…」

 

「いーから、さっさと西住んところ行って治療してこい、ばい菌入るぞ」

 

「…すいません」

 

五十鈴から包丁を受け取るとじゃがいもの皮をするすると剥いていく。

 

「…意外、比企谷って料理出来たんだ」

 

横を見ると驚いた顔の武部が居た、眼鏡をかけていたので一瞬誰だかわからんかったが。

 

「うちは両親が共働きだからな、基本的に飯は小町が作ってくれるが小町が小学校の頃とか包丁やら火は危ないってんで俺がやってたんだよ」

 

「へぇ…そうなんだ、知ってる?料理の出来る男って女受けいいんだよ」

 

「へぇへぇ、そりゃ嬉しいこって、…何作んの?」

 

「肉じゃが!!」

 

「了解…っと、つーか俺からしたら武部が料理出来る方が意外だけどな」

 

「…ひょっとしたら私、馬鹿にされてる?」

 

「してないしてない、ちなみに黒焦げでホームセンターとかに売ってそうな木炭とかは料理とは言わないからな」

 

「絶対馬鹿にしてるよね!?よ〜し…、見返してやるんだから!!」

 

武部の料理をそこそこにアシストして、完成した品々をテーブルに運ぶ。

 

テーブルでは戦力外を悟ったのか、五十鈴がしずしずと花を花瓶に生けていた。

 

テーブルにメインの肉じゃがと、あと数品おかずを並べていく。

 

「じゃあ食べよっか」

 

皆でテーブルを囲み、いただきますと手を合わせる、この世の全ての食材に…いただきます。

 

肉じゃがを箸でつまんで口に運ぶ、なるほど、本人が言うだけあって中々美味い。

 

「おいしい…」

 

「やっぱり男を落とすのは肉じゃがだからね〜」

 

落とす?ひょっとして締め落とすの?何それ怖い…。

 

「落とした事…あるんですか?」

 

「練習は大事でしょ!!男子には肉じゃが、雑誌のアンケートにも書いてあったし」

 

あぁ、あの女子がよく読んでる頭の悪そうな雑誌な、小町もたまに読んでるけど何で先月号も今月号もこの春の新作コーデなんだよ、どんだけ新作なんだ?

 

「ていうか男子って肉じゃが本当に好きなんですかねー?比企谷殿、そこの所どうですか?」

 

「…何で俺に聞く?」

 

「いや、だって比企谷殿男子ですし」

 

男子代表の意見なんて生憎持ち合わせていないし、正直飯の好みなんて人それぞれだろうに。

 

「いや、好き嫌いなんて誰にだってあるだろ、肉じゃがが嫌いな奴も居るだろうしな」

 

「でも雑誌のモテる男子に聞いた好きな料理ランキング1位なんだよ」

 

へぇ、世のモテる男子はみんな肉じゃが大好きなんですね、もう3食肉じゃがばっか食ってればいいんじゃないですか?

 

そもそも何だそのアンケート、モテない男には聞かなかったの?残酷過ぎない?

 

「大体、お前ら男ってのを勘違いしてるぞ、男なんて単純でアホだからな、女子の手料理ってだけで心なんて簡単に揺れるもんだ」

 

何でこんな恥ずかしい話せにゃならんのか。

 

「へー…、あっ!じゃあ比企谷も揺れてるの?やだなー、私モテモテじゃん!!」

 

「あぁ、俺だって超揺れるね、まぁこれは俺も作ったからノーカンだけど」

 

「私がメインじゃん!!」

 

まぁ…ね、うん、どれもこれも確かに美味いよ、本当に料理出来たんだな。

 

「比企谷殿も料理出来るんですね、さすがです」

 

「まぁ、俺の将来の夢でもあるからな」

 

「まぁ…、もしかして料理人になるのが夢なんですか?」

 

「え?いや、専業主夫だけど?」

 

「「「「………」」」」

 

え?何でみんなそこで黙るの?

 

「比企谷君、それはちょっと…、働こ?」

 

「ばっか、西住お前、専業主夫だって立派な仕事だぞ?家守ってんだから」

 

「なんか将来の夢はお嫁さん、みたいですね」

 

「いいか?俺は男女差別をしない、女性の社会進出を手助けする立派な男だぞ」

 

あれ、今戦車道手伝ってるのもある意味その一環みたいなもんじゃね?

 

無意識のうちに今から専業主夫の修業してる俺、マジで有能。

 

「あれ?それだけ聞くとなんか比企谷が凄く考えてる人に聞こえる!?」

 

「武部殿…それ絶対騙されてますよ」

 

「将来…、変な男の人に引っ掛からないといいのですが」

 

などと話しながらパクパクとテーブルの料理を食べて空にする、五人で食べてるので思いの外、すぐに食べ終わった。

 

さて…と。

「さて、飯も食ったし、そろそろ行くわ」

 

「…え?比企谷君もう行くの?」

 

「まだご飯食べただけじゃん」

 

「いや、元々飯ご馳走になるって話だろ?」

 

「それは…そうだけど」

 

「ならもう飯も食ったし、用は済んだだろ」

 

カチャカチャと、自分の分の食器を台所に運ぶ。

 

「西住、ちょっと水道借りるぞ、自分の食器くらい自分で洗うからな」

 

「そ、それはいいけど…、本当にもう帰るの?」

 

「私、比企谷殿ともっと戦車について語りたいんですが」

 

「悪いな、あんま遅いと小町も心配するしな」

 

嘘だ、というか多分、小町からすれば俺が早く帰った事について怒り出すかもしれん。

 

ここで小町の名前を出して逃げるのは卑怯かもしれんが、小町は小町でよくわからん理由で俺をここに仕向けたのだ、たまには利用してやろう。

 

あと秋山と本格的に戦車談義始めたらヘタすれば朝方までかかりそうだし、リアル朝まで生戦車である。

 

「それじゃあご飯、ありがとな、おかげで1食飯代浮いたわ」

 

「う、うん…」

 

いまだざわついてる四人を残してさっさと西住の部屋をあとにする。

 

だいぶ暗くなった夜道、ふと立ち止まり、マンションのまだ明かりのついている西住の部屋を見た。

 

窓から微かに夜を明るく照している。

 

…明るくて、ぼっちの俺にとっては眩しいくらいだ、近付いたらその眩しさに目でも焼かれてしまいそうになるくらい。

 

楽しくなかったのか、と聞かれればそんな事は決してない、それでも俺にはあの空間がどこか居心地が悪い。

 

「…帰るか」

 

その明るさから背を向けて、さっさと逃げるように暗がりに向かって歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

新しい朝が来た、特に希望も喜びを胸に秘める事もなく学園へと向かう。

 

普段より少し家を出るのに遅れてしまったが、こちとら自転車出勤、まぁ余裕で間に合うだろう。

 

ケイデンスをもっと上げる必要もひーめひめと鼻歌を歌う必要もなく、ペダルを漕いで学園へと向かう。

 

「…あ?」

 

その登校中に西住の後ろ姿を見かける、それだけならまだいいが、西住は肩に誰かを支えて歩いていた。

 

「…何やってんの?」

 

スルーしてもよかったかもしれんが思わず自転車を止めて声をかける。

 

「あ…、比企谷君、何だかこの人が具合悪そうで」

 

言われて西住が肩を貸している人物を見るとどこかで見覚えがある、確かこいつ、戦車探しの時に堂々と授業サボって昼寝してた奴じゃないか?

 

「…ツラい」

 

顔は青ざめており、確かにツラそうだ。

 

「生きているのが…ツラい」

 

「わかる」

 

あまりに共感できたのでノータイムで返答できた。

 

「…比企谷君」

 

「これが夢の中ならいいのに…」

 

「超わかる」

 

なんかコイツ、妙に親近感がわくな。

 

「だが…行く、行かねば…」

 

「あぁっ!?待って!!」

 

謎の女子はフラフラとした危ない足取りで先に行こうとし、西住は慌ててそれを追っていく。

 

いや、あの様子はどう見ても具合が悪そうとかそんなんじゃなさそうだが、西住もお人好しだな、あのままだとまとめて遅刻だろうに。

 

「…はぁ」

 

大きな溜め息をついて、自転車のペダルを軽く漕ぐと二人を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「どうしてこうなっ…た!」

 

自転車の荷台に謎の女子を乗せ、えっさほいさとペダルを漕いでいく、たまに小町を学校まで送る事もあるので別に普段、二人乗りに慣れてない訳ではない。

 

「…ZZZ」

 

だが、荷台に乗っけた相手が眠りこけているとなれば話は別だった、人に自転車を運転させて寝てるとかいい身分過ぎるだろコイツ。

 

もういっそのことそこらに放置してやろうかとも考えたが、この女子、驚いた事に眠りながらも俺の身体をガッチリホールドしてやがる。

 

「…ZZZ」

 

んで身体を預けて寝てるもんだから運転がしづらくて仕方ない、肉体的にも、そして精神的にも、だ。

 

だがようやく学校につく、思わぬ時間を取られたが遅刻という事はないだろう。

 

ぼっちにとって遅刻は厳禁である、後から教室に入って皆の注目を浴びるなんて事態はあってはならぬのだ。

 

「そこのあなた達!自転車の二人乗りは校則違反よ!!」

 

ようやく正門…、という所でおかっぱ頭の女子に声をかけられた、腕章を付けており、げっ…風紀委員かよ。

 

わが大洗学園の風紀委員三人は風紀委員の決まりなのかなんか知らんが全員おかっぱで見分けがつきにくい、あとフーキーンじゃなくて風紀委員、これ、大事な。

 

見分けがつきにくいけど、多分、この人は風紀委員長の園みどり子さんだろう。

 

「何だ…?遅刻はしていないぞ」

 

謎の女子は自転車から降りると園さんと睨み合う。

 

うん、俺のおかげでね、そこんところちゃんとわかってる?あといくら眠いからって人の肩に手を置かない、手すりじゃないんだから。

 

「どっちにしろ校則違反よ!冷泉さん、いくら成績が良いからってこれ以上違反が多いと留年もあり得るわよ」

 

「ぐぬぬ…」

 

おいおい…留年するくらい遅刻してんのかコイツ、しかも授業サボってたし、それで成績良いとか天才かよ。

 

「あなたもよ、えっと…比企谷君、今度通学中に冷泉さんを見つけても、手を貸さないでね」

 

「うっす…」

 

いや、言われるまでもなく手は貸さないですけどね。

 

「それと…あなたの目は風紀を乱す可能性があるわ!もっと改善しなさい!!」

 

どうやってですか?つーか改善でこの腐った目が直るならとっくにしてます。

 

「二人共、今からちゃんと反省文を書く事、わかった!!」

 

「…そど子」

 

「何よ?」

 

「…別に」

 

謎の女子が園さんと睨み合うが、まぁ悪いのはこっちだしな、おとなしく従うしかない。

 

「…悪かったな」

 

「…本当にな、おかげで仕事が増えたわ」

 

「この借りは、いつか必ず返す」

 

「え?お、おう…」

 

まぁ通学中に一度あったくらいの仲なんでもう会う事もないだろうから期待はしないでおこう。

 

…そういえば、今日はいよいよ教官が来るんだったか、大洗学園の実質的な初の戦車稼働日だな。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。