やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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雪が…ヤバい!!
いよいよプラウダ戦のスタートにこの豪雪は運命力を感じるが、雪かきで軽く死ねます。

さて、今回の試合は皆さん気付いていると思いますがアリクイさんチームが先に登場したり、継続さん達が登場したりで少しアニメと展開が変わる…かも?


いよいよもって、戦車道全国大会準決勝が始まる。

【第63回、戦車道全国大会『準決勝』】

 

「寒ッ!マジ寒いんだけど!!」

 

いや、本当にな、マジ寒い。

 

長い北上を終えてようやく試合会場に到達する事ができた。こここそが宇宙よりも遠い場所…ではないが、思えば遠くまで来たものだ。

 

だが試合会場が近場でなくて助かった部分もない訳じゃない、そのおかげで普段の試合間隔よりも練習する時間が貰えた。

 

ただ何も夏期にこんな場所でやらんでもいいだろうに…。

 

「Ⅲ突のキャタピラはヴィンターゲッテンにしたし、ラジエーターに不凍液もいれたよね」

 

「はい」

 

大洗の戦車も、自動車部の皆さんの力も合わせて冬仕様に、欲を言えば白く塗りたかった…、さっきチラッと見えたがプラウダ側はしっかり白く塗ってたな。

 

しかし港に並んで止まっているのを比べたらプラウダの学園艦も大洗よりずっとでかい、まぁ学園艦内は畑とかが多かったが。

 

「ミカさん達、どこ行っちゃったのかな?」

 

「気が付いたら居ませんでしたね」

 

継続三人組だが、本当にいつの間にか居なくなっていた、相変わらず神出鬼没というか、学校は行っているんだろうか?

 

まぁでも…いろいろと残してくれた事には素直に感謝しなければいけない。

 

特に三式中戦車チヌと猫田達オンラインゲームチームが戦列に加わった事が大きい、カモチームの風紀委員に加え、新チーム、『アリクイさんチーム』だ。

 

…なぜアリクイ?しかもイラストのアリクイは新体操のリボンをやっているし。

 

だがカモもアリクイもこの試合が初の公式戦だ、上手くやってくれれば良いんだが…。

 

「ん?」

 

エンジン音が聞こえて来たと思うとプラウダ側の陣営から何かやって来ている、雪も降り、視界も暗くてよく見えんな…。

 

「おぉ!!」

 

あれは多連装ロケット兵器!カチューシャ・ロケットじゃないか!!自走式多連装ロケットランチャー、これぞ男のロマンである。

 

え?何?もしかして試合前にあれでうちの戦車潰しに来たの?さすがロシアインスパイアのプラウダ高校、まさに恐ロシア…。

 

と思っていたらカチューシャ・ロケットから誰か降りてきた、カチューシャさんとノンナさんである。

 

カチューシャが!カチューシャ・ロケットに乗ってやって来た!!

 

「あの人達は…プラウダ高校の隊長と副隊長」

 

「地吹雪のカチューシャと、ブリザードのノンナですね!!」

 

なに?知っているのか秋山!?いや、そりゃ知ってますよね。

 

カチューシャさんとノンナさんは…、カチューシャさんはやたら偉そうに肩で風をきりながらそのままこちらに向けて歩いてきて。

 

「ぷっ、あっはっはははははははは!!」

 

うちの戦車を見回すと大爆笑した。

 

「このカチューシャを笑わせる為にこんな戦車用意したのね、ねぇ?」

 

俺達を笑わせる為にわざわざカチューシャ・ロケットに乗ってやって来てくれたんですね、ねぇ?

 

「やぁやぁカチューシャ、生徒会長の角谷 杏だ、よろしく」

 

会長がそう言いながらカチューシャさんの前に立って握手の為に手を差し出した、が…身長に差があるので若干腰を曲げている。

 

会長も背が低いんだけど、この身長差を見るとカチューシャさんはよっぽどだよなぁ、なお、二人共高校三年生である。

 

「む…、ノンナ!!」

 

「はい」

 

そんなやり取りに不満を感じたのか、カチューシャさんは頬を膨らますといつものようにノンナさんとドッキング…もとい肩車してもらった。

 

「あなた達はね、全てがカチューシャより下なの、戦車も技術も身長もね」

 

肩車された状態で腕を組んで偉そうにするカチューシャさん、危なくない?

 

「…肩車してるじゃないか」

 

そんな状態を見かねた河嶋さんが普通につっこんだ、俺は前回空気読んで黙ってたんですけどね。

 

「聞こえたわよ!よくもカチューシャを侮辱したわね!しょくせいしてやる!!」

 

また噛んでるがたぶん、粛正してやるとでも言いたいのだろう、いい加減にしないとあの名言が『そんな大人、しょくせいしてやる!!』みたいになって台無しだぞ。

 

「あら、あなた西住流の?」

 

「…あ」

 

と、ノンナさんに肩車されたままのカチューシャさんが西住の方を見るとニヤリと笑みを浮かべる。

 

「去年はありがと、おかげで私達優勝できたわ」

 

「…うっ」

 

西住がその一言にピクリと身体を震わせると顔を俯かせた。

 

ふーん…、わざわざ何しに来たのかと思ったが、挑発でもしに来たのかね?

 

「今年もよろしくね、家元さん、じゃ~ね~、ピロシキー」

 

「ダスヴィダーニャ」

 

おーおー、好き勝手言いなさる。

 

まぁ言いたい事があるなら言えばいい、ただ、こっちが言われっぱなしでいるとでも思ってんの?

 

格言大好きダージリンさんを真似るなら、撃って良いのは、撃たれる覚悟のある人だけだって言うよ?ちなみにこの元ネタはあのアニメじゃないからね。

 

「カチューシャさん」

 

去って行こうとするカチューシャさんに声をかける、カチューシャさんとノンナさんはこちらをチラッと振り返るが。

 

「あら、あなた誰だったかしら?」

 

「比企谷さんですよ」

 

素で忘れられているのかわざとなのか、どちらにせよ性格悪いなー、このお子様は。

 

もしかしたら1週間たつと俺の記憶無くなっちゃうの?フレンドでもないのに?

 

「あぁ、あのゾンビの…、名前はいいわ、どうでもいいもの」

 

あぁそういう事ね、大洗に西住が居る事を聞き流していたし、興味の無い事にはとことん関心を持たないのか。

 

まぁ別に俺の事を覚えてようが覚えてなかろうが、そんな事はどうだっていいけどね、なんならクラスの連中にさえ覚えられていないんだし。

 

しかしそう考えるとわざわざ向こうからこっちに来てくれたのは運が良かったな、俺が一人で行ってたら門前払いだっただろうし。

 

そうなってたらせっかく覚えたこのロシア語も無駄になる。

 

「ーーーーー」

 

よっし、噛まずにちゃんと言えたぞ、言えたよな?うん、たぶん大丈夫…。

 

「…何よ、今の言葉?」

 

「ロシア語ですよ」

 

「そんなの知ってるわよ!なんて言ったの!?ノンナ!!」

 

予想通り、カチューシャさんはノンナさんに通訳を求める。

 

「…あなた、それは本気ですか?」

 

「ひっ…、の、ノンナ?」

 

だがノンナさんは氷のように冷えきった眼差しを俺に向けて来た、うわっ!怖っ!!ブリザード!!

 

これにはカチューシャさんもガクガクブルブル、肩車した状態でそれって危なくない?

 

「え、えぇ…と、まぁ、はい」

 

だがここで否定する訳にもいかないので曖昧ながら頷いておく事にする、っべー、心臓まで凍る勢いだわ。

 

「…カチューシャ、戻りましょう」

 

「え?あっ…、そ、そうね、覚悟なさい!ボコボコにしてやるんだから!!」

 

最後にそんな台詞を言いながら去って行くが、直前までノンナさんに震え上がっていたのでどうも捨て台詞感が否めない。

 

…しかし、味方に震え上がるってどうなのよ?

 

「…八幡君、なんて言ったの?」

 

「ん?…まぁ、別に、なんでもない」

 

そんは俺達のやり取りを不思議そうに眺めていたあんこうチームが声をかけてきた。

 

なんでもない、うん、なんでもないから。

 

「なんでもないであの様になるとは思えませんが…」

 

「ノンナ殿のただならぬあの様子…、もしかして、カチューシャ殿の悪口を言ったのでは?」

 

「そ、そんなのダメだよ!八幡君!!」

 

秋山の話を聞いた西住が声を上げる、それを聞いて少し…、ほんの少しだが、よくわからんが、なんだかもやもやした気分になる。

 

「…西住、お前だっていろいろ言われてただろうが」

 

「私は…、えと、その、別に…気にしてないから」

 

…思わずため息の一つでもついてやろうかと思ったが試合前にあーだこーだとやり取りをしてても仕方ない。

 

「そもそも悪口じゃないからな、悪口に悪口で返すとかガキの喧嘩みたいな事するかよ」

 

悪口には陰口で返すのが一番だ、それも心の中で、相手に聞こえないように言いたい放題言う俺ってどんだけ優しいんだろ。

 

まぁ今回に限っては本当に悪口でも陰口でもないし、文句を言われる筋合いはない。

 

「だったらなんて言ったのよ…」

 

「いや、だから気にすんなって…」

 

「だって気になるじゃない…、ねぇ麻子、比企谷はなんて言ったの?」

 

あ…こら、そもそも俺にそのロシア語指導した冷泉に聞くとか卑怯じゃないか。

 

「…カチューシャさん、今日も綺麗ですね、一目見たときから美しい人だと思ってました、日本語訳するとそんな所だな」

 

「………」

 

よっし、もう冷泉の奴起こしてやらねぇからな、決めたぞ。

 

「…え?それって」

 

「比企谷殿、もしかしてカチューシャ殿の事が!?」

 

「比企谷さん…そういう趣味があったんですね?」

 

「いや、違うからな、ないから」

 

あと五十鈴、それはカチューシャさんにも失礼だからやめたげてよぉ!!

 

「でも…、だったらなんでそんな事言ったの?それもロシア語で」

 

「ロシア語だからわざわざ言ったんだよ、カチューシャさんはロシア語がわからんみたいだし、必ずノンナさんに通訳を求めるだろ?」

 

「うん…、さっきもそんな感じだったけど」

 

「カチューシャさん的には必ず悪口を言われているつもりだろうが、実際は違う、だが、それを訳してもらっても信じられないだろ」

 

つまり、悪口を言われていると思っているカチューシャさんがノンナさんの通訳を信じる事ができない、という状況に持っていきたかった。

 

あの二人はツーカーの仲とも言えるぐらいだが、これで試合前に少しでも亀裂が入ってくれれば御の字だ。

 

「でも…綺麗とか美しいってどうなの?カチューシャさんの場合、可愛いとか言った方が…」

 

まぁ武部の言いたい事は最もだ、あのチビッ子相手に綺麗とか美しいとか…自分でも言っててどうなの?とは思うが。

 

「あの手のプライドが高そうな人に可愛いなんて逆効果だろ、肩車してもらってるぐらいだぞ」

 

身長が低いのはコンプレックスだろうし、そんな相手に可愛いはむしろ禁句である。

 

「えと…、じゃあ、本気で言った訳じゃない…って事かな?」

 

「…当たり前だろ」

 

「そうなんだ…、でも…やっぱりダメだよ、八幡君」

 

西住がふと寂しそうな表情を見せたのは気のせいだろうか…。

 

「なんでだよ…、悪口言った訳じゃないんだし」

 

「乙女心を弄ぶのがダメだって言ってるの!!」

 

「はぁ?」

 

いやだから、カチューシャさんは信じないだろうから、弄ぶも何も無いだろうに。そもそも向こうは俺に対してこれっぽっちも興味持ってないんですよ?

 

「みんな!今日終わったら比企谷の奢りで何か食べに行こうよ!!」

 

「そうですね、行きましょう」

 

「そうだな」

 

「えぇ、私も今日はたくさん食べれそうな気がします」

 

「は?いや…おかしいだろ」

 

特に最後の五十鈴が聞き捨てならない、今日はたくさん?いつもは?え?どんだけ食べるの?

 

「なにもおかしくない!決まりだからね!みぽりんも良いよね?」

 

「…うん、そうだね」

 

うわぁ…なんだか知らんが強引だ、しかもなんかみんな怒ってないか?

 

乙女心って…カチューシャさんの事を言っているんだろうが…。いや、だから信じないって。

 

つーか例えカチューシャさんがノンナさんの通訳を信じたとして、あんな台詞でどうこうなるほどチョロくもないだろ…。

 

「…いいから、もう試合始まるぞ」

 

「あっ…うん、そうだね」

 

まぁ…そんな事より今は試合だ、この試合に負ければ大洗は廃校になる。

 

「……まぁ、その」

 

後はもう彼女達に任せるしかない、そんな時、いったい何を言えば良いのか。

 

頑張れなんて無責任な事はいえない、頼むなんて押し付けはできない。

 

「…見てるから、な」

 

こんな事しか言えない自分がもどかしくなる。

 

「うん!見ててね!!」

 

だが、西住達は嬉しそうに微笑みながら返してくれた。

 

「まぁなんだ…、最悪みんなでスクールアイドルとかやって廃校回避しても良いしな」

 

それが少し照れ臭くて、誤魔化すように廃校回避に有名なネタを入れてみると阪口の奴が大爆笑していた。

 

ただし阪口だけである、阪口に通じたという事は他の奴らには通じないという事である。

 

「あ、アイドルって…私達が?」

 

「比企谷先輩、私達の事そんな目で見てたんだ…」

 

「いや、違うからな…」

 

うわっ!通じないのね…、みんなライブ大好きなライバーじゃないの?

 

「そうか!アイドルがバレーをやればみんなにもバレーの良さが伝わるのかもしれない!!」

 

「なるほど…、歌ってバレーのできるアイドルですね!!」

 

「それならアイドルが歴史について語るのはどうだろうか?」

 

「うむ」

 

「妙案ぜよ」

 

それはどちらもイロモノアイドルだ、地下から出てくる事はないだろうし、出てこないでもらいたい。

 

「アイドルかぁ…、そうなったらきっとモテモテになっちゃうね、私達」

 

「そ、そんな…恥ずかしいよ、衣装とかも着れないし」

 

いや、なんか君ら普通に着れそうな気がするのは俺だけだろうか?具体的に言うと課金してガチャ回せば。

 

課金?ガチャ?…いったい俺は何を言っているんだろう?

 

まぁ…試合前に戦車道メンバーの緊張をほぐせたのなら良しとするか。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「それでノンナ!あのゾンビは何言ったの!!」

 

プラウダ側の陣営に戻ったカチューシャはノンナから先ほどの比企谷からのロシア語について問い詰めていた。

 

「ふん、どーせまたカチューシャの悪口言ったんでしょうけどね、それくらいはわかってるわ」

 

「………」

 

「…の、ノンナ?」

 

だがノンナの表情がずっと険しいのでどうにも強く出れないのである。

 

「カチューシャ、あなたが綺麗だと、一目見たときから美しいと思っていた…と、彼は言っていました」

 

ようやくノンナが先ほどの比企谷が言ったロシア語の訳を伝えた、彼女がカチューシャにデタラメな嘘の通訳をする事は″ほぼ″あり得ない。

 

「…え?わ、私が!?」

 

さて、比企谷八幡の狙いはカチューシャがこの通訳を信用しない事にあった。

 

悪口を言われていると思っているカチューシャがノンナの通訳を信じず、それによって二人の関係に不和を生じさせるのが狙いである。

 

「へ、へー、そうなの、ふーん…」

 

だが、ノンナがカチューシャにデタラメな嘘の通訳をするのが″ほぼ″あり得ない事であると同時に、カチューシャがノンナの通訳を信じない事も、又あり得ないのだ。

 

二人の関係性はそんな程度で崩れる事はあり得ないのである。

 

「な、なかなか見る目あるのね、あいつ、目が腐ってる癖に…」

 

カチューシャはノンナの通訳を信用し…、つまりは比企谷の言葉をそのまま受け取り。

 

「ふふっ、綺麗で美しい…だって、まぁ当然ね、ねぇノンナ」

 

嬉しそうに照れて、はしゃいだ。

 

「…カチューシャ」

 

ノンナの方は比企谷が何か狙いがあってそう言った事に気付いてはいるが、カチューシャのそんな嬉しそうな様子にそれ以上は何も言う事ができなかった。

 

「ーーーーー(訳:ノンナさん、今の話、本当ですか?)」

 

そんな二人の様子を見たクラーラが声をかけてくる、もちろんロシア語である。

 

「ーーーー(訳:えぇ、彼にも何か狙いがあったのでしょうが…)」

 

「ーーーーー(訳:ところでノンナさん、彼は試合には出るのですか?どの戦車に乗るかは?)」

 

「ーーーーー(訳:男性なので出ないでしょうね、残念です)」

 

「ーーーーー(訳:そうですか、でも観客席には居ますよね?)」

 

「ーーーーー(訳:落ち着きなさいクラーラ、″試合中″はダメです)」

 

「あなた達!ちゃんと日本語で話なさい!ノンナ、クラーラは何を言ってたの?」

 

「いえ、なんでもありません、単なる試合前の確認です、カチューシャ」

 

涼しい表情でそう答えるノンナ、…あえて何度も言おう、彼女がカチューシャにデタラメな嘘の通訳をする事は″ほぼ″あり得ないのである。


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