やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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今回、場面転換が多くてせわしないです、あと八幡のキャラちょっと崩壊気味だけど男子高校生なら仕方ないよねー。


くどいようだが、戦車を洗車するのは冗談では無い。

「いいか!明日にも戦車道の教官がお見えになる!失礼のないよう、心を込めて綺麗にするのだ!!」

 

河嶋さんの合図と共に各チーム、それぞれに搭乗する戦車の洗車が始まった、…冗談じゃないよ?

 

「うわっ…ぬめぬめしてる」

 

武部がⅣ号の装甲を指先でなぞって、すぐに後悔してる、そりゃあ20年も放置されてたんで当たり前だ。

 

あと…、あれだ、ぬめぬめとか言わない、ほら、なんかこう…、アレじゃん。

 

「昨日の戦車探しもそうだけど聞いてたのとなんか違う…、戦車道してるとモテるんじゃなかったの?」

 

え?まだその話信じてたのかよ、つか、本当にモテるとして昨日の今日でどれだけ即効性求めてるの?焦ってんの?

 

「明日、格好いい教官来るから」

 

ぶーっと文句を言い始めた武部に会長が笑顔でそう話す。

 

「えっ!?本当っ!!」

 

「本当本当、紹介すっから」

 

「よーしっ!張り切って綺麗にしちゃおうっ!!」

 

ちょろっ!いくらなんでもちょろ過ぎんだろ!?

 

大体、戦車道の教官だぞ?普通に考えれば来るのが女性だとは思わないのかしら。

 

「とは言ったものの…、何から手をつければいいの?」

 

まぁ戦車どころか普通の車の洗車だって満足にしたことないお年頃だろうし。

 

「これじゃあ中も…」

 

西住が慣れた様子でⅣ号に登り、フタを上げた、ちょっと、スカート履いてんだからもっと気にしなさい!!

 

「うっ…、やっぱり、中の水抜きをして、サビ取りもしないと、後古い塗装も剥がして…」

 

鼻を塞ぎながらもしっかりと清掃すべきポイントを押さえてくれる辺り、やはり頼もしい。

 

うん、戦車道経験者が一人も居なかったら詰んでたなこれ、主に臭いで全員止めてただろう。

 

「よっと…」

 

Ⅳ号から軽快に降りた西住は他の戦車チームの清掃のポイントを教える為に別の戦車に向かう。

 

「大変だな…」

 

まぁ素人集団でただ一人の経験者である、こればっかりは誰も手伝えん。

 

「あ、比企谷君」

 

各戦車を転々としてる西住にふと声をかけられた。

 

「昨日、戦車の中、臭くなかったの?」

 

「臭かったに決まってるだろ、おかげで妹にすげぇ怒られた」

 

あの後、疲れた身体を癒そうとリビングのソファーに腰を下ろした瞬間、鼻を摘まんだ小町に即行で風呂場送りにされたくらいだ。

 

「比企谷君、普通に中に入ったから…」

 

まぁ、そこはホラ、汚れるのには慣れてますし、女子にこの臭いさせるのもアレだし。

 

しかし、これは思ったより時間かかりそうだな、小町との時間に間に合えばいいけど。

 

「各人、汚れてもいい服装に着替えてくるように」

 

との河嶋さんの言葉に皆が女子更衣室に入っていく。

 

元々戦車道専用の倉庫なのでそれくらいの設備はあったようだ。

 

「覗いちゃ駄目よ、比企谷ちゃん」

 

「覗きませんよ、つーか俺はどこで着替えるんです?」

 

そう、これはあくまでも戦車道の為の更衣室であり、最初っから男子の更衣室なんて存在しない。

 

「適当にそこら辺でいいんじゃない」

 

「マジッスか…」

 

酷い男女格差を見た気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「それーっ!!」

 

「高松城を水攻めじゃ!!」

 

「ルビコンを渡れ!!」

 

「ペリーの黒船来襲ぜよ」

 

「戦車と水と言えば、ノルマンディーのDD戦車でしょ」

 

「「「それだ」」」

 

「恵みの雨だー!!」

 

「あっはははっ!!」

 

総員、体操着に着替えての戦車一斉清掃のスタートである、あぁ、生徒会の皆さんは更に用意がよく、水着である。

 

副会長の小山さんの身体についてる普段でさえ凶器であるものが更に強調されてる、これは職務質問ものですね、わかります。

 

ちなみに会長と河嶋さんは制服のままだ、何?働いたら死んじゃうのこの人達?

 

しっかし、皆よくはしゃぐな、プール清掃する小学生じゃあるまいし。

 

俺?もちろん働いてますよ、特定の戦車を持ってない俺はあちこちのサポート役だ、足りない道具持ってきたり、あと重いもの持つ時呼ばれたり。

 

あれ?サポート役とか格好つけたけどこれっていいように使われてるだけじゃね?雑用全般じゃね?

 

「ブラ透けちゃうよ〜」

 

…なん…だと?

 

はしゃぐ声に混じって聞こえてくるその声を俺は確かに捕らえた、悪いが俺は難聴系主人公ではない。

 

聞こえてきたのは…、なんだ、一年生チームの方か、小町と一つくらいしか変わらん奴等の青春ラブコメによくありそうなサービスシーンなんて誰も望んでない。

 

あぁ、でもよく見たら一年生チームの洗剤が切れかけてんな、よし、補充しに行こう、そうしよう、ナイスアシスト、俺。

 

青春の神様が居るのなら、たまには良いことをするもんだ、一年生チームの所に向かった俺は道中に置いてある洗剤に足をとられて盛大にスッ転んだ。

 

薄れゆく意識の中、俺は思う。

 

やはり俺の青春ラブコメはーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

気が付いたら、夕方だった、俺の前に並べられたピカピカに洗車された五両の戦車。

 

「あ、比企谷君、気が付いたみたいですよ、会長」

 

「おー、起きた?」

 

「比企谷、もうとっくに今日の戦車道の授業は終了したぞ」

 

「…マジですか」

 

なんだか悪意のあるカットを感じたぞ…。

 

「あとの整備は自動車部の部員に今晩中にやらせる、今日は早く家に帰ってゆっくり休むがいい」

 

もっと怒られるかと思ってたけど生徒会の皆さんが優しい。

 

まぁ、他の人らが帰ってもこうして残ってくれてたんだ、本当に心配してくれてたんだろう。

 

「ありがとうございます、もう大丈夫ッス」

 

三人にお礼を告げると小町との約束もあるので早々に立ち上がる、こりゃちょっと急がないとマズいな。

 

…それにしてもまた自動車部ですか、今夜は徹夜とか、うちの自動車部どうなってんの?労働基準局に訴えられないの?

 

謎の自動車部に興味が出てきたので今度機会でもあれば覗いてみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「ねー、お兄ちゃん、そろそろ行こうよ、小町もう飽きちゃったんだけど」

 

「まぁ待て小町、落ち着け、サイゼは別に逃げたりせんから」

 

「やー、むしろ小町が逃げ出したいんですけどねー」

 

場面は一気に変わって、今俺と小町は戦車倶楽部に居る。

 

小町の希望した雑貨屋でボコられグマのボコのなんかよくわからん別バージョンっぽいぬいぐるみを購入後、俺としては待望のこの店に移動した。

 

大洗学園の学園艦の良いところはマッ缶とサイゼ、そして何よりこの戦車倶楽部を忘れてはならない。

 

なにしろこの店は今や珍しい戦車専門店である、若干、商品に戦車道に関する物が多いがそこに目を瞑れば最高の店だろう。

 

「もー、小町、ちょっと向こうの椅子に座って待ってるから、早くしてね」

 

「おー…」

 

「あ、駄目だこれ、聞いてないやつだわ」

 

小町は呆れた顔で椅子に向かっていく、そうは言うが小町よ、俺はさっきの雑貨屋で同じように待たされたんだぞ。

 

さて、俺の目の前には一つの戦車のプラモデルがある。

 

スティングレイ軽戦車、開発こそされたがアメリカ陸軍には正式に採用されなかった、結構レアな戦車だ。

 

なかなかのレア物戦車、こんな物も見つかるとはさすが専門店の品揃えだ、でもお高いんだよなぁ。

 

などとスティングレイと睨み合ってると。

 

「この店です、私が連れて来たかったのは」

 

「こんな店があるんだ…」

 

店の入り口から何やら聞き覚えのある声が聞こえて来たのでチラッと視線をそちらに向けると…。

 

「げっ…」

 

西住と武部、五十鈴と秋山の四人組が店の中に入って来た。

 

おいおい、何でアイツらがこの店知ってんの?つーか学校帰りの女子高生が来るようなお店じゃないからね、ここ。

 

「ここは戦車倶楽部といって戦車関連の専門ショップです、戦車道を始めるなら、何かと来る事になると思いますよ」

 

先頭を歩く秋山の顔がエラい嬉しそうだ、…あっ、今完全に思い出したわ、確かに俺と秋山は何度か会ってたかもしれん、この店で。

 

どうやら向こうはまだこっちに気付いてないっぽいな、よし、帰ろう。

 

余談だが、学校外でこういった知り合い程度の奴等に会うのって結構気まずいものだ、お互いに一言二言こそ交わしても、最終的には「じゃ、じゃあ…」「お、おう…」みたいな会話で別れる事確実である。

 

スティングレイのプラモはまたの機会にでもするとして、ぼっち特有のステルス能力全開で帰ろうと小町に声をかける。

 

「凄い品揃えですね」

 

「でも、戦車ってどれも同じに見える」

 

「違いーーー」

「全然違う!!それぞれの戦車が色んな戦場で対応出来るように個性や特徴、特化されてんだよ!」

 

「えっ!?だ、誰!?」

 

「比企谷さん!いつからそこに!?」

 

「作られた国や運用方法でも全然違うんだよ!!」

 

「そうですよね、乗る人によっても全然変わりますし」

 

「なんか二人にめっちゃ攻められてるよ〜…」

 

はっ!しまった…、つい。

 

「もー、お兄ちゃん…、恥ずかしいんだからあんまお店の中でデカい声出さないでよ」

 

げっ、小町も来た。

 

「えと…、比企谷君」

 

「その子…誰?」

 

あー、もうメチャクチャだよ。

 

固まる俺達五人をよそに小町は西住、武部、五十鈴、秋山とそれぞれの顔を順に眺めた。

 

「はは〜ん…」

 

おい、何その何かを察したような顔をする、なんかすっげぇ悪い顔になってますよ?小町さん。


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