やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】 作:ボッチボール
劇場版オーケストラの円盤にゲームにドラマCDにリゼロコラボ(!?)に年末の怒涛の展開がすごいです!!
え?実写版?個人的に迫力満点で戦車戦を実写で見れるのはありっちゃありかも、そこは賛否両論わかれそうですね。
「西住殿!砲弾の積み込み、完了しました!!」
「ありがとう、優花里さん」
急遽する事になった模擬戦に私達は準備を進めます。
今回の模擬戦、私達のチームはあんこうチームと…。
「あの、いきなり試合で大変だと思いますけど、落ち着いて頑張ってくださいね」
今回から加わった風紀委員の皆さん、カモさんチームです、元々、いきなり試合するよりも前にどこかで模擬戦はしなくちゃと思いましたが、こんなに急にする事になるなんて、…大丈夫かな?
「わからないことがあったら無線で質問してくれ、そど子」
「だからそど子って呼ばないで!私の名前は園 みどり子!」
「わかった、そど子」
「全然わかってないじゃないの!」
うん、麻子さんも居るし大丈夫そう、私も精一杯フォローしなきゃ。
…でも、結局模擬戦の結果で作戦を決める事になって他のチームのみんなは八幡君の方に付いちゃったな。
「もー、みんな勝手だよ、せっかくみぽりんが作戦考えたのに…」
「皆さんがやる気なのは大変よろしい事だと思いますが…」
「風紀委員の皆さんがこちらについてくれて良かったですね」
「当然よ、命令っていうのは規則と一緒なんだから、守るのが当たり前じゃない、西住さん、あなたも隊長なんだから年下だからって遠慮しなくていいのよ」
「あ、はい…」
遠慮…してるのかな?さっきの作戦会議でも上手くみんなをまとめられなかったけど…。
人間は機械みたいに簡単に気持ちのスイッチを切り替えられないから、あの時はみんなの士気も下げたくなかったし、一気に攻める作戦に変えようかと思ったんだけど。
「………」
「西住殿、何か気になる事でも?」
「あ、うん…、八幡君がなんで急にあんな事言ったのか気になっちゃって」
そもそもこの模擬戦も八幡君が言い出した事だけど、なんだろう…、この変な感じ。
「確かに…一気に攻める作戦に賛同するのは比企谷殿らしくないですね、作戦が王道というか…」
「あーそれはわかる!比企谷って絶対まともな告白とか出来ないタイプだね!!」
「あの、今は告白の話ではなくて…作戦の話では?」
「どちらにせよ、この模擬戦に勝てば良いんだろ?」
「…うん、なんか勝った方の作戦でいく流れになっちゃったし」
…勝った方の作戦、じゃあ、私達が勝ったら八幡君の作戦は?
「…もしかして」
ーーー
ーー
ー
「ハクションッ!!」
…寒い、戦車の中って想像してたよりずっと冷えるんだよなぁ、うちのチームの連中、よくスカートで平気だよな。
「おや、比企谷ちゃん、風邪?」
「いや、まぁ…、寒いんで」
ひょっとしたら誰か噂してるのか?いや、されるなら今からだろう、主に悪口方面で。
さて、模擬戦という事で最早恒例となった38(t)に乗り込む、他のチームでも別に構いやしないが三人しか居ないここが一番余り者が入りやすい、修学旅行の班別けかよ…。
それにこの人達なら事情ももう知ってるしな、俺が今回やろうとしている事にはうってつけだ。
「そ、じゃあ比企谷ちゃん、そろそろ急に模擬戦始めた理由教えてくれない?」
「会長はもう気付いてるんじゃないんですか?」
「さて、どうかな?」
まったく、相変わらず食えない人である。
「あの作戦じゃ勝てないでしょ?」
「何ぃッ!どういう事だ比企谷!!」
いや河嶋さん…マジか?えーと…なんつーか、マジか?
「プラウダ高校はあんな特攻紛いの作戦が通用する相手じゃない、かと言って単純に否定したんじゃ士気に関わる、なら身をもって味わってもらえばいい」
荒治療ではあるがそれで慢心中の戦車道チームの連中も少しは目を覚ますだろう。
「えっと…じゃあわざと負けるって事かな?」
「わざと?まさか…全力でやりますよ」
そもそもわざとだろうが全力だろうが、西住相手に勝てる訳ないじゃないですかー、やだー。
だから今回必要なのはやられ方だ、それもいかに俺が無能で使えないか知らしめる必要がある。
「ただ、俺のやり方でいくんで口出しはしないで欲しいんですけど、良いですか?」
「具体的には?どうすんの?」
「…なんでも良いじゃないですか」
「それじゃあ模擬戦は始めないよ」
…いつもは適当に流す癖に今回はやけにぐいぐい来るな、正直面倒臭い。
「話したら俺のやり方でいくって事でいいんですね?」
「いいから言ってみてよ」
…上手く誤魔化すつもりなのかもしれないが、仕方ない。
「…まぁ、簡単に言えば嫌われます、徹底的に」
「え?えーと…、比企谷君、それってどういう事なの?」
「まるで意味がわからんぞ!!」
そう言うと思ったから言いたくなかったんだよ…、説明すんのも面倒だけど言わなきゃ納得しそうにないし。
「この先、また作戦に反対意見が出てきたら俺が西住と逆の事を言えばいいんですよ、誰だって嫌いな奴の言う事なんて聞きたくないでしょ?」
要するに、信用の差、というやつだ。
周囲に好かれている者と嫌われている者が居るとする、その二人の意見が別れた時、周りの者がどちらの意見を採用するかなんて考えるまでもない。
もし仮にそれが同じ言葉だったとしても、説得力がまるで違う。
大事なのは″何を言うか″じゃない、″誰が言うか″、なのだ。
もっとわかりやすく言うなら…イケメンと不細工が同じ事してても感じる印象が違う、ただし、イケメンに限る現象、みたいなものである。自分で言っててこれ以上わかりやすい例えねぇな。
「優勝しなきゃダメなんでしょ?なら集団をまとめる為のわかりやすい敵とか必要でしょ」
これは別に準決勝に限った話ではない、大洗の廃校を阻止するには優勝しかない、それなら今後を考えても勝率を上げる為に少しでも集団をまとめるべきだ。
少なくとも今回のように流されて無謀な作戦が採用される事はなくなるだろう。
「でも…それじゃあ比企谷君、みんなに嫌われちゃうよ?」
「いや、だからそれが狙いなんですけど…」
「ふざけるな!そんな事許さんからな!!」
「…河嶋さん?」
河嶋さんがキッと俺を睨んでくる、この人が反対するなんて正直言って意外だった。
真意の分かりにくい会長は別としても、この人はわかりやすいまでに自分の学び過ごした大洗の学園艦が大好きな人で、勝ちへのこだわりは人一倍強いと思っていた。
「…負けたら廃校なんですよ、勝率を上げられる所があるなら上げとくべきでしょ?」
「そんな強引なやり方は認められん!!」
…まぁ、確かに強引だ。おまけにこれは別に必ず勝てるなんて話じゃなく、ただ少しでも集団をまとめて勝率を上げる効果しかない。
だが、これはもう決めた事だ。
試合が始まれば、あとは俺は何も出来ないし、しない。
試合前にやれるだけの事は全部やる。
「強引って言うなら嫌がってた西住を戦車道に無理やり誘った時点で充分強引でしょ、今さら何言ってんですか?」
「ぐっ…、そ、それはだな」
「…比企谷君、それで私達が優勝しても、来年はどうするの?みんなから嫌われたままになるのよ?」
「別に…来年戦車道選ばなければ関わる仲でもないですし」
負けて大洗が廃校となればなおのことだ、へたすれば二度と会う事もないだろう。
「もう入院のペナルティもないですし、来年の選択科目は自由に選べますからね、だったら戦車道を選ぶ理由もないでしょ?」
来年はこの人達も卒業して居ないのだから、つーか生徒会特権で無理やり入れられただけでそもそも戦車道は本来女子しか選べないし。
「ふーん…選ぶ理由はない、ねぇ」
「…なんですか?」
会長が面白くなさそうに呟く、今までずっと黙って俺と河嶋さん、小山さんのやりとりを見ていたがいよいよこの人が出てくるか…。
「いーじゃん、やってみなよ」
「か、会長!よろしいんですか!?」
「まっ、比企谷ちゃんのやり方でいくって約束したしね」
なんだ、思いの外あっさりしてるんだな、もっといろいろ言ってくるもんかと思っていたのは俺の考え過ぎか。それとも…思い上がりか。
しかし…気になるのはーーー。
「…やってみなよ、ですか?」
「そ、やってみなよ、だね」
…なんだそれは、ひょっとして俺は挑発でもされているんだろうか?
だったらとんだ見込み違いだ、俺はこの人の事を買いかぶり過ぎていたのかもしれない。
「余裕ですよ、伊達に生まれてからずっと嫌われ者やってた訳じゃないですからね」
いつもするように、自虐的に、しかしどこか自信満々に答えてやる。
「そこがもう間違ってるんだよねぇ」
「…何がですか?」
「私は好きだよ、比企谷ちゃんの事」
「ぶっ…!!」
え?何急に!?大胆な告白は女の子の特権ってやつなの?
「…生徒会室にはいつでも来ていいからな、比企谷には仕事を沢山用意してやる」
「桃ちゃん、素直にいつでも遊びに来てね、って言ったらいいのに」
「う、うるさい、こんな奴にはこれで充分だ!!」
「………」
あまりに突然の事で呆けてしまい、なんとか意識を戻す。
全く…これだからこの人達は油断できない、調子が狂わされてしまう。
それじゃ駄目だ、こんな事で揺らいでどうする?
「ふぅ…」
気持ちを落ち着かせる為に一息いれる、よし…少しは落ち着いてきたか。
やってみなと言うならやってみせてやろう、煩わしい人間関係の全てを切り捨ててきたぼっちの真骨頂を。
『ヘルマン、何をやっている?そろそろ試合が始まるぞ』
『比企谷先輩、今回はどういう作戦ですか?』
『どんな作戦でも根性で成功させる!!』
切っていた無線をつけると各チームから連絡が入ってくる、今回の模擬戦では突撃案を提案したチームが俺の側についている。
つまりのあんこう、カモ以外の大洗のほぼ全チームがこちら側だ、これはこちらからしても都合が良い。
「どんな作戦でも成功させる…って言ったな?」
根性云々は聞かなかった事にしとく。さて、じゃあ始めるか、たぶんこれが俺の最後の模擬戦になるのかもしれない。
「じゃあお前ら、俺らのチームの盾になれ」