やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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わりと長くなってきた番外編もいよいよ終盤、今回の番外編は俺ガイルでいう10.5巻とか、そういう幕間の話だと思って下さい。


【番外編】肝試し・ウォー5

『だから!日本人形とかでよくあるだろ!おかっぱ頭の!!』

 

「はぁ…、まぁありますけど」

 

『それがなんかいっぱい出てきたんだぞ!なんなんだあれは、聞いてないぞ!?』

 

なんなんだと聞かれたら…大洗の治安を守護して下さる守り神みたいな人達です。

 

あぁ、安斎さん風紀委員の人達に出くわしたのね。よくよく考えたらうちの風紀委員は100人以上、しかも風紀委員長のそど子さんの指導によりその全員がおかっぱ頭である。

 

確かに知らない人が夜中にバッタリ出くわしたら恐怖しかないな…。

 

「つーか…なんで俺のとこに電話してくるんですか?会長が居るでしょう、あとペパロニとかカルパッチョにでも」

 

早速連絡先を交換してしまった事が仇となったな…、まさか電話に出るなりいきなり叫び声から始まるとは思わなかったが。

 

『角谷の奴にこんな話できるか!…あの二人はもっと駄目だ』

 

まぁあの会長に知られたらろくな事にならなそうなのは同感だ、ペパロニとカルパッチョに関してはドゥーチェとしての立場もあるのだろう。

 

つーか俺ならいいのね、まぁ消去法で一番どうでもいい奴を選んだのだろうけど。

 

「とりあえず迎えに行きますから、あんま動かないで下さい」

 

この森を普段戦車訓練にも使っている俺達ならともかく、外部からやって来た安斎さんが下手に動き回ると厄介だ。

 

夜中なのを考えると最悪遭難の危険もある、…そうなれば捜索の為に風紀委員の人達が森にわらわらとやって来て、ますますこの人にトラウマを作りかねないな。

 

『…なぁ比企谷、この話、みんなには内緒にしてもらえないか?』

 

「そりゃ…まぁ、話しませんけど」

 

『そうか!感謝するぞ!お前は良い奴だな!!』

 

なんか電話越しでも表情がパッと明るく変わったのが分かる…、大丈夫だろうか?この人も結構チョロそうな気がしてならない。

 

安斎さんとの電話を切る、さて、肝試しの最後の組であるあんこうチームはまだ来ていないが、こうなると肝試しよりこちらを優先させるべきだな…。

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「うぅ…、せっかくいろいろ持ってきたのに」

 

優花里さん…まだ落ち込んでるんだ。

 

他のチームの皆さんが出発し、最後は私達、あんこうチームと小町ちゃんの組の番です。

 

夜中に森の中といえば昔、夜戦用の訓練をした時以来でちょっぴり懐かしいな、あれは肝試しとはちょっと違うと思うけど。

 

「みほさん、嬉しそうですね」

 

懐中電灯を持って先頭を歩いてくれるのは華さんです、落ち着いててすごく頼りになります。

 

「そうかな、えへへ…、全国大会の合間にこうやってみんなで肝試しなんて考えた事もなくて、…楽しいなって」

 

黒森峰でも全くそういうのが無かった訳じゃないけど、やっぱりちょっと違うかな。

 

「甘い!甘いよみぽりん!!」

 

「沙織さん?」

 

「本当の肝試しっていうのはね、女の子が男の子とグッと仲良くなれるモテイベントなんだから!!」

 

え、えーと…そうなのかな?

 

「仲良くなれた事…ありましたか?」

 

「雑誌にはそう書いてあったの!!」

 

「ほほぅ…では沙織さんは誰か仲良くなりたい男の子が居るという事ですか?小町気になる!!」

 

沙織さんの言葉に興味をもったのか、小町ちゃんがニヤリと微笑んでいます、…なんだか、すごく悪い笑顔で。

 

「え!えーと…、それは」

 

沙織さんが慌ててる…、どうしよう?止めた方が良いのかな?でも…少し知りたい、かも。

 

「いや、私の事じゃなくてね!雑誌!雑誌にそう書いてあっただけだから!!」

 

「それ、男子は肉じゃがが好きってアンケートと同じ雑誌なんじゃないですか?」

 

「そういえばあの時は比企谷殿にあっさり否定されてましたね」

 

「兄に一般男子のアンケートを適用するのはムダだと思いますよ…」

 

「小町殿、厳しいですね…」

 

「あはは…」

 

…そういえば八幡君が部屋に来てくれたのはあの一回だけだったっけ。

 

普段教室では全然話してくれないし、お昼もどっかに行っちゃうし、なんだか…ちょっと寂しいな。

 

せっかく友達になれたんだし、もう少し…仲良くなりたい、かも。

 

「「「「………」」」」

 

なんでだろ…、私もそうだけど、みんなも急に静かになっちゃった。

 

「私ーーー」

 

と、言いかけたところで急に電話がなりました。

 

「もう…びっくりした!みぽりん、誰からなの?」

 

「え?えーと、八幡…君」

 

「比企谷さんからですか?」

 

なんだろう…?八幡君は脅かす役目だから電話してくるのも変だよね?

 

『西住か?』

 

「う、うん…、どうしたの?八幡君」

 

さっきまで八幡君の話をしていたせいかな、上手く言葉が出てこなくて、変に思われたらどうしよう…。

 

『いや、なんか安斎さんが俺達の後を追いかけて来たらしいから合流して欲しいんだが』

 

「え?アンチョビさんが!?」

 

肝試しに参加したくなったのかな?と、とにかく一人で居ると危ないし早く合流しないと!!

 

『とりあえず俺からも安斎さんに連絡いれるから、西住は小町達にこの事を伝えて合流してくれ』

 

「う、うん、わかった、えと…みんな、ちょっといいかな?」

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「………」

 

西住との通話を切り、すぐにあんこうチームと合流させる為に安斎さんの携帯に電話をかける。

 

安斎さんが出るまでの合間に盗み見るようにして、チラリと、木の陰から顔を出した。

 

そこには先ほどの俺の伝達を小町や武部達に説明する西住の姿が見える。

 

…これでいい、よな。

 

安斎さんの事は西住達に任せよう、仕事というものは丸投げしてなんぼだ、うん。

 

俺は運営側なのでコースを回る必要はない、後はさっさと肝試し終了後の合流場所に移動しとくか。

 

残りの脅かし役を生徒会に任せ、俺は当初決められていた合流ポイントに向かった。

 

「…ん?」

 

だがそこで待っていたのは意気消沈とした表情で疲れた顔をしている戦車道メンバー達、驚いた事に暇さえあればパス回しの練習をしてるあの体力モンスターのバレー部の連中でさえ今は大人しい。

 

唯一丸山だけがいつもと変わらぬ様子でぼーっと明後日の方を向いているが…、まぁあいつに関しては置いておこう。

 

「なぁ、何かあったのか?」

 

状況を知る為にも近くにいた歴女グループに声をかける、普段からコスプレみたいな格好で怖いもの知らずなこいつらでさえぐったりしてるってどういう事なの?

 

「ヘルマンか…、生徒会にしてやられた」

 

「まさかあんな仕掛けがあったとは…驚きぜよ」

 

え?なにそれ超気になる、正直わりと神経が図太いと思っていた大洗戦車道メンバーをここまで追い込むとか、あの後いったい何があったんだろうか…。

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

さて、途中で安斎さんと合流したあんこうチームと小町も来てこれで肝試しが終了した訳だが…。

 

「………」

 

平気そうなのは五十鈴と丸山くらいなもので他はほぼ全滅である、普段うっとうしいくらい可愛い小町ですらダウンしている、本当にうちの生徒会どんな仕掛けしてたんだよ…。

 

「なんだお前ら!度胸が無い!そんな事ではこの先到底勝ち進めないぞ!!」

 

河嶋さんがメガホンで激を飛ばす、そういやこの人さ、しれっと運営側に回ってるけどサンダース戦の映像とかないの?是非とも見せてあげたい。

 

「度胸の訓練なら河嶋先輩も参加するべきなんじゃ…」

 

「ね、なんかズルくない?」

 

あーあ、言っちゃったよ一年共、それを言ったらもう戦争だろうが。

 

「ふっ…、私は運営側だ!残念だが今回の肝試しにはーー」

 

「もちろん参加するよー」

 

…は?

 

どや顔で反論しようとした河嶋さんだが、途中で会長の言葉に遮られる。

 

「肝試しの最後は…私達カメチームだね」

 

「か、会長っ!?」

 

「あの、聞いてませんけど…」

 

「うん、言って無かったし、いつも運営側ばかりなのもつまらないでしょ?それに…」

 

会長がチラッと俺の方に視線を向けた。

 

「今回は参加した方が面白そうだからね、ね?比企谷ちゃん」

 

「………」

 

うわぁ…なんという風格、どこのラスボスですか貴方は?

 

「そんな訳で最後は私達がやるよ、他のチームと比企谷ちゃんは脅かし役をよろしくぅ」

 

「って事は…つまり?」

 

「我々が生徒会相手に勝負できると言う事だ!!」

 

「先ほどの屈辱を晴らす時が来た…、これぞまさに織田信長公に復讐を誓う斎藤龍興である!!」

 

おい、それもう失敗フラグにしか聞こえないから止めろ。

 

「頑張ってねー、私達を驚かせたら商品として干し芋プレゼントしちゃうよ」

 

うわー、見事にそそられないわ。つーかこの会長がそう言い出す時ってだいたいろくな事がないんだよなぁ。

 

「ただし、つまらなかったらまたみんなであんこう音頭、踊ってもらおうかな」

 

「「「「「えー!!」」」」」

 

…やっぱりろくな事がなかったよ、これヘタすれば参加しなかった冷泉が一番得するんじゃないか。

 

しかし戦車道メンバー全員で生徒会と肝試し勝負とはね、もしかしたらこの肝試しの本当の狙いはそこにあるのかもしれない。

 

大洗戦車道メンバーが一丸となって協力できる舞台を作り上げ、その為に自らがラスボスとして君臨するとは。

 

これが大洗学園の学園艦を統括する生徒会長、【角谷 杏】であり、改めてその手腕には油断できない何かを感じさせる。いや、絶対単純に面白がってるだけな気がするけどね。

 

とはいえ今回はちょっとラスボスが強すぎませんか?ゲームバランスおかしくない?

 

「そもそも会長、驚く感情とか持ってるんですか?」

 

「比企谷ちゃん、一人であんこう音頭踊りたいの?」

 

いや…だってさ、戦車戦における西住の肝の座りっぷりは前に説明したけど、この人の場合常時それが発動してるでしょ、パッシブスキルかよ。

 

戦車に乗ろうが乗るまいが、この人の驚く姿自体、ちょっと想像できない。

 

少なくとも幽霊とかお化けで驚くような神経はしてないだろう、え?失礼だって?いや、だって本当の事だし。

 

とはいえ…、この人が納得出来ない結果ならあんこう音頭かよ、相変わらず横暴もいいところだ。

 

「会長、一個確認してもいいですか?」

 

「ん?何かな比企谷ちゃん」

 

俺と会長はお互い、牽制し合うかのように視線を交えた。

 

「ようは驚かせればいいんですよね?」

 

「そうだよ、なんか面白いの期待しとくからね」

 

よし…言質はとったな。

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「なんだか…とんでもない事になりましたね」

 

「うん…、どうしようか?」

 

さて、生徒会の人達がスタート地点に移動している間、現在残りの戦車道メンバーで集まって作戦会議中である。

 

「我々ももちろん協力するぞ!角谷の奴に一泡吹かしてやる!!」

 

アンツィオ校の三人も協力してくれるようだ、まぁこの人達も今まで散々会長にはしてやられているからな。

 

「一応そこに生徒会がサンダースの映画部から借りた肝試し用の道具があるが…」

 

「おぉ!これは鎧武者ではないか!!」

 

「ドイツの軍服もある、グデーリアン、一緒に着ないか?」

 

「本当ですか!ぜひ着てみたいです!!」

 

「新鮮組の羽織…、奇兵隊の物が欲しいぜよ」

 

はいそこ、勝手に漁らない、というかその段ボールの中にどんだけ詰め込まれてんだよ、なんかいろいろありすぎててサンダースの映画部ってすげぇな。

 

「カエサルもどうだ?ローマ甲冑もあるぞ」

 

「ほ、本当か!い、いや…、んんっ、今日はいいかな、ははは…」

 

一瞬目をキラキラと輝かせるカエサルだが、すぐ隣のカルパッチョを見てごほんと咳払い。もうバレてるんだから今さら恥ずかしがらなくても。

 

「面白そう、ね!たかちゃん、何か着てみよう?」

 

「ひなちゃん…、うん!」

 

やだ、カルパッチョの嫁力高すぎない?ただ発動する相手がおかしいから心配になるんだけど。

 

つーかこいつら事の重要性が分かってるのか?あんこう音頭がかかってるんだぞ。

 

バレー部の連中なんかテレビで見た事にあるピンク色のバレーボールのキャラクターの格好してるし、一年共もわいわいとおおはしゃぎ。

 

これもう肝試しっていうかただのコスプレ大会だな、ハロウィンのノリでウェイウェイ言いながら街を練り歩く恐怖の集団がコレに似ていて頭が痛くなってきた。

 

「ね!ね!比企谷、これ可愛くない?」

 

武部が猫耳をつけてにゃーっと猫のポーズをとる、猫のポーズってなんだよ。

 

「可愛くしてどうすんだよ…、生徒会を驚かすんだろ、だいたい猫ならうちにもう居るし間に合ってる」

 

「あぁ!かー君ね、でもお兄ちゃん、かー君とよく遊んでるし、猫の扱いならばっちりじゃない?」

 

「こ、小町ちゃん!?あ、扱うって…、それは流石に恥ずかしいかなーって…」

 

「何その理屈、ワイルドハーフなの?サルサなの?」

 

ちなみに小町の言うかー君はうちで飼っている猫である、本名はかまくらだ。

 

「八幡君のお家猫居るんだ、私は実家で犬飼ってるんだ」

 

「いや、だからって犬耳つける必要ないだろ…」

 

なに?猫飼ってる俺は猫耳つけなきゃなんないの?

 

「えへへ、なんだか懐かしくて、久しぶりに会いたいな」

 

というか西住の実家で飼ってるのなら散歩とかは誰がやってるんだろうか、姉住さんが犬の散歩してる姿もいまいち想像出来ないけど。

 

さて、こんな感じでお気楽ムード全開な訳だが、今回の目的はどうにかして生徒会のメンバーを驚かせなければいけない。

 

小山さんは未知数だが、やはり一番の強敵となるのは会長だろう、河嶋さん?うん、そんな人も居ましたね。

 

「西住、ちょっといいか?」

 

「え?うん」

 

ちょいちょいと手招きして西住を呼ぶとすぐに来てくれた、警戒心ないな…、こいつ。

 

「ちょっと耳貸してくれ」

 

ヘタに他の奴らに知られて会長に作戦がバレるのは避けたい、他のメンバーには好き勝手やってもらうのが一番だ。

 

「え?えと…どうぞ」

 

西住は付けていた犬耳を外して渡してくれた、いや、そういうボケはいいから…、この天然さんめ。

 

「じゃなくてだな…、ちょっと頼みたい事があるんだよ」

 

「…あ!!」

 

ようやく西住も意味がわかったのか、恥ずかしがり顔を真っ赤にさせると顔を近付けてくる。

 

近いよ!本当に警戒心ないな…。

 

「ーーーーってのをやって欲しいんだが」

 

「え?えと…なんでかな?」

 

…そりゃ西住からしたら疑問しかないわな、だがこちらとしてはなんでと聞かれてもやってもらう必要があるのだ。

 

「駄目か?」

 

「駄目じゃないけど…、うん、上手く出来るかわからないけどやってみるね」

 

よし、西住の方もこれで問題はないだろう。

 

後は出たとこ勝負…、横暴をかざすうちの会長さんにもたまには痛い目を見てもらわないとな。

 

「あの、比企谷さん」

 

「ん?どうした五十鈴ーー、うぉっ!!」

 

声をかけられ振り返ると…、一人だけガチなお化けの格好をした五十鈴が居た。

 

「ふふっ、大成功です!びっくりしましたか?」

 

「あぁ…、えと、まぁ」

 

五十鈴さんが楽しそうでなによりです…、この状況を一番楽しんでるなー、このお嬢様。


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