何を言われても仕方ないです。
活動報告でも書きましたが、もう「必ず」や「絶対」といった類の言葉は使いません
「ねえソーソー、さっき2組の鳳さんが言ってた~昨日の件ってな~に~?何か~打倒オリム~っていうのも聞こえたんだけど~」
先程の鈴音との件を本音が友人の相川とソレイユ達に尋ねた。それをクラスの他の生徒達も興味深々な様子で聞き耳を立てていた。ソレイユの事は怖いが気になる物は気になるのであろう。因みに織斑はまだ来ていなかった。
「ああ、今度のクラス対抗戦まで俺とタンジェントが鳳さんのコーチをするって話なんだ。打倒織斑一夏を目指してな」
「え~~~~~~~っ!??」
「「「「「「「えええーーーーーっ!!!!???」」」」」」」
ソレイユの爆弾発言に本音だけではなく聞き耳を立てていた周囲の生徒たちまで驚いた。何処の世界に自分のクラスの代表を倒す為に、他のクラスの代表をコーチする人間がいるというのか。
「ソーソーどうし「ちょっとそれどういう事よ!!?」て・・え?」
本音がソレイユにどういう理由でそうなったのか聞こうとした時、周囲にいた生徒の内の3人がソレイユに詰め寄った。いくらソレイユの事が怖いといってもあんな事を言われては黙っていられなかったようだ。
「何で2組の代表のコーチ何かすんのよ!?」
「アンタ、このクラスを裏切る気!??」
「普通なら織斑君をコーチするべきでしょう!!」
ソレイユに口々に詰問する女生徒達。ソレイユは鬱陶しそうな顔をするのみで何も答えようとはしなかった。それを見た女生徒達は益々頭に血が上り、ソレイユに罵詈雑言を浴びせようとした。その時、生徒達の前にタンジェントが出てきて笑顔で尋ねた。
「ソレイユさんに何か御用ですか?御用があるのでしたら私が承りますが」
ソレイユの裏切りとも言える行為に頭に血が上っていた生徒達だったが、タンジェントを前にして先日の、片手で織斑を締め上げた事、篠ノ之を蹴り一発で気絶させた件を思い出し、生徒達は蛇に睨まれた蛙状態になってしまった。
「い、いえ・・・」
「な・・・何でも無いです・・・」
「そうですか、ならばお引き取りを。今ソレイユさんは布仏さんと話をしていますので。ニャハニャハニャハ」
生徒たちはスゴスゴと遠巻きに見ていた場所まで戻っていった。タンジェントは手を振って笑いながら見送った。
「ふぅ、邪魔な奴らは消えたな。さて、本音さん達はどうして俺とタンジェントが2組の代表のコーチをするのか聞きたいんだったな」
「う、うん。どうしてソーソーとニャハさんが2組の代表さんのコーチをする事になったの~鳳さんと何かあったの~」
「うーん・・・そうだな~キッカケは鳳さんの事情もあるから詳しくは話せないんだ。申し訳ない。しいて言うなら・・・まあ成り行きってところだな」
「え~それじゃ~全然分かんないよ~」
ソレイユのはぐらかした答えに本音はほっぺを膨らました。ソレイユはそれを見て内心可愛いと思ってしまった。
「ぶ~~、ソーソー酷い~これじゃあオリムーの優勝ほぼ無理になっちゃった~」
本音はほっぺを膨らしたまま相川と共に肩を落とした。これだけガックリしている本音を見るのはソレイユは初めてだった。付き合いはまだ短かったが、本音はこんなに勝負事に拘るような性格ではなかったはずである。ソレイユはどうしてこんなにも二人がガックリしているのか疑問に思った。
「どうして本音さんはそんなにクラス対抗戦の優勝に固執してるんだ?何か優勝したらいい事でもあるのかい?」
本音に代わって相川が答えた。曰く、今度のクラス対抗戦に優勝したクラスには半年間のデザートフリーパス券が贈られる事になっており、本音はそれをとても楽しみにしていたらしい。
基本女性の趣味に疎いソレイユも、女性が基本スイーツ好きだというのは、海軍の女性士官がケーキ類で喜んでいたり、以前本音が食堂でスーパーデラックスパフェを注文した事から理解していた。
「そうだったのか。それは悪いことをしちまったな」
「ム~~~~」
その後、ソレイユはふくれっ面になってしまった本音の機嫌を直すため、この埋め合わせはする事を約束させられる事になった。
ソレイユが四苦八苦している間に織斑もクラスに入ってきたがその顔は何か悩んでいるかのようであった。その後、山田先生が教室に入って来てホームルームが始まった。ホームルーム中に織斑千冬がクラス対抗戦の当日に復帰することが知らされた。ファンの生徒達が歓喜の声を上げる中でソレイユは不快そうにしていた。そして弟である織斑は不安そうな顔をしていた。
(・・・大丈夫だよな・・・あんな状態でも千冬姉は千冬姉なんだし・・・)
そしてその日の授業が終わり、鈴音との訓練の為にソレイユが準備をしていると本音が話しかけてきた。
「ソーソー今から鳳さんと訓練なの~」
「ん?ああ、そうだ。また明日な本音さん」
「私と簪ちゃんも一緒に行っちゃ駄目~?」
「え!?んーーーそれはちょっと・・・」
「お願い~簪ちゃんが見学したいってお昼に言ってたの~前に海兵として助けられる事があるかもって言ってたでしょ~」
痛い所を突かれたソレイユは額に手を置いて、少し悩んでからため息をついた。
「ふぅ、わかった。鳳さんにお願いしてみる。でももし駄目だって言ったときはあきらめてくれよ」
「うん、わかった~ありがとうソーソー」
こうして本音も一緒に訓練場に行く事になった。高圧的に要求してくる女に対しては半殺し、もしくは10分の9殺しにして黙らせるソレイユだが、このようにきちんと頼んでくる女性に対してはそれなりに便宜を図る事もあるのである。
「ところで本音さん、今朝私の事をニャハさんと呼んでいましたが、それは私の呼称ですか?」
「うん、ニャハニャハって笑うからニャハさん~どうかな~?」
「なかなか良いネーミングだと思いますよ。ニャハニャハニャハ」
「じゃあ、これからはニャハさんって呼ぶよ~」
「ええ、それでお願いします」
雑談を交わしながら、訓練場に向かって行く途中で簪も合流した。急に頼んだ事を簪は詫びたが、ソレイユはまだ見学できるか決まった訳じゃないから謝らなくてもいいと宥めた。訓練場に着くと鈴は既に来ていたらしく準備運動を始めていた。
「おっ、鳳さん早いな。まだ約束の時間の5分前だぞ」
「ソレイユ少将、お待ちして・・・あのそこの二人は?」
「申し訳ない、教室を出ようとした時に訓練を見学したいと急に言われてな、鳳さんが嫌だというなら帰らせるよ」
鈴音はどうしようかと迷ったが、簪と本音から頭を下げてお願いされた事で、邪魔をしないならと見学を許可した。
「「ありがとう~」ございます!」
「俺からもお礼を言うよ。ありがとう鳳さん」
「い、いえ気にしないでください。で、では今日は宜しくお願いしますソレイユ少将とタンジェントさん」
「ああ、ビシバシ鍛えていくからそのつもりでな」
「ニャハニャハニャハ、打倒織斑一夏の為に頑張りましょう」
準備運動を終えた後に訓練は開始された。最初にタンジェントが鈴音に現在の実力を知りたいとソレイユと模擬戦を行うように求めた。鈴音は快諾したが、ソレイユは避けるだけかつ目隠しをして戦うという内容に内心ムッとした。仮にも中学3年生から猛勉強を行い、必死に努力して代表候補生となり専用機まで政府から授かったのだ。馬鹿にされているのかと思っても仕方ないだろう。
「あの、失礼かもしれませんが怪我をしても知りませんよ」
「ニャハニャハニャハ、大丈夫ですよ。攻撃なら当たりませんから」
「心配しなくても大丈夫だ、鳳さん」
「!!?・・・解りました、ではお願いします」
内心の腹立ちを抑えて努めて冷静に返した。こうなったら攻撃を当てて見返してやると鈴音は心に誓った。
「では・・・始め!」
「先手必勝!」
鈴音はソレイユに向かっていき甲龍の武器である双天牙月を大きく振りかぶって切りかかった。ソレイユはその攻撃を最小限の動きで躱した。
「えっ!?」
鈴音は驚きながらも、すぐに体制を直して再びソレイユに切りかかっていった
「(さっきのは偶然よ!今度こそ!)」
しかし結果は変わらなかった。ふたたびソレイユはその攻撃を最小限の動きだけで躱したのだった。それから鈴音はソレイユに何度も切りかかったがソレイユに当たることは無かった。
「くーーー!あの、ちょっとすいません!!」
「どうした?鳳さん」
「ソレイユ少将の着けている目隠しを確認したいのですが!」
「ん、ああいいぞ。ほら」
ソレイユは着けている目隠しを外して鈴音に手渡した。鈴音はそれを注意深く確認した後にソレイユに返した。
「・・・ありがとうございました。これ、お返しします」
「おう。じゃあ、模擬戦を続けよう」
「はい(目隠しには何も細工は無かった・・・ならどうして躱されてるのよ!こうなったら・・・)」
鈴音はソレイユから距離を取ると、甲龍のもう一つの武器である衝撃砲「龍咆」をぶっ放した。接近攻撃が躱されるのならば、遠距離攻撃で攻めようという考えだ。
「(これならどうよ!衝撃だから感知しにくいだろうし、恐らくこういった攻撃は初めてでしょう!?)」
しかし結果は先程と変わらなかった。龍咆による衝撃もソレイユは軽々と躱したのだった。まるで何処から衝撃が来るのか分かっているかのように。
「っ!?くぅーーーー!!」
学園にいる中国出身の先輩から代表決定戦の事を事前に聞いていたとはいえ、これほどまでの強さだとは鈴音は思わなかった。攻撃が軽々と躱されることに完全に頭に血が上った鈴音はそれから幾度も龍咆を放ち続けた。
見学している本音と簪は目の前で繰り広げられている信じられない光景に唖然としていた。鈴音による果敢な攻撃をソレイユは目隠しをして躱しているのだ。本来ならば絶対にありえない光景なのだから当然であろう。
それから数分後、相変わらず鈴音は龍咆を打ち続け、ソレイユはそれを躱すことが続いていたが頃合いだと判断したタンジェントが止めに入った。
「そこまでです。もういいですよ鳳さん」
「!?、待ってください!!もう少しだけ続けさせてください!せめて一発だけでも当てて・・・」
「そこまでと言っているでしょう!!」
ビクッ!!「は、はい」
鈴音の懇願を遮りタンジェントは一喝した。鈴音は威圧感籠った声に驚き、攻撃を止めた。昨日のお道化たタンジェントからは考えられないような声だった。鈴音はISを解除してタンジェントがいる所に向かって行った。
「お疲れさまでした。ソレイユさんに鳳さん」
「ああ」「はい・・・」
「では、鳳さん。貴方とソレイユさんの戦いを見ていて気になった点がいくつかあるのでそれを・・・鳳さん?」
「・・・」
鈴音の心は敗北感と悔しさで一杯だった。目隠しをした相手に対してただの一度も攻撃を当てられなかった事、強いとは聞いていたが、たったの2歳違いでここまでの強さだと思わなかった事、そして自分との圧倒的な実力差に。自分がしてきた2年間の鍛錬は一体何だったのであろうという悲しみで心が押しつぶされそうであった。
タンジェントは鈴音の悔しそうな顔からその事を察した。ソレイユを手招きして、鈴音から少し離れた。
「ソレイユさん、どうやら鳳さんは余りの実力差に打ちひしがれているようです」
「そうみたいだな・・・ちょっと大人げなかったかな?」
「ソレイユさんへのハンデも少々遣り過ぎましたね。目隠しは余計でした」
このままでは鈴音の訓練に悪影響が出かねない。打倒織斑一夏も難しくなるだろう。そうなると鈴音に申し訳が無い。仁義を大事にしているソレイユにとってそれは許せない事であった。
「・・・鳳さんに俺が何歳から海兵としての訓練をしているか教えてやったらどうだろう。そうすれば年季の違いという事で少しは持ち直すんじゃないか?」
「いいんですか?ソレイユさんの過去を少し話す事になりますが」
「構わん。このままじゃ訓練になりそうにないからな」
「わかりました。では」
タンジェントとソレイユは再び鈴音の元へ戻っていった。鈴音は先程と同じように打ちひしがれ続けていた。見学していた二人もこの状態の鈴音に何と声をかけていいか解からず困っていた。
「鳳さん、ソレイユさんが何歳から海兵としての訓練を受けていると思いますか?」
「えっ?ええと・・・14、15ぐらいからですか?」
突然のタンジェントの意図不明の質問に驚きながらも鈴音は答えた。タンジェントはその答えに首を振って答えた。
「8歳からです。ソレイユさんは10年海兵としての訓練を続けています」
「8、8歳!!?」
傍で聞いていた2人も鈴音同様に驚いていた。3人の常識からしたら8歳といえばまだ小学校に通っている年齢である。そんな少年といえる年齢の頃から海兵としての訓練を受けていると聞かされれば驚くのも無理はないだろう。
「もう一つ質問をしますね。鳳さん、貴女がISを扱う為の訓練を受け始めたのはいつからでしょうか?」
「ちゅ、中学3年生の頃からです」
「成程。つまりは訓練を始めて2年程という事ですね」
「は、はい。間違いないです」
そこまで聞いたタンジェントはニコリと微笑んで、鈴音に話しかけた。
「もうお判りでしょう。ソレイユさんと貴女には8年という長い年月の差があるのです。年齢では2歳違いかもしれませんが、この差は大きいでしょう。なのでそんなに気にする事はありませんよ」
「・・・・はい。分かりました」
鈴音はまだ少し悔しそうであったが、ソレイユとの実力の違いが年季の差という抗えない理由である事がわかり、納得する事にした。
鈴音が気を取り直した様子を見たタンジェントは手をぱちんと叩いて空気を変えた。
「では、鳳さん。訓練を再開しますよ」
「は、はい!お願いします」
再びソレイユを相手にした鈴音の訓練が始まった。ちなみに今度は流石にソレイユは目隠し無しである。
訓練は先程と同じように戦闘形式で行われた。鈴音はある程度基礎が出来ていた為、一から教え込むより、実戦で教えた方が効率がいいだろうとタンジェントが判断した為である。非常に厳しいながらも、無理はさせることは無く途中で休憩を一度挟みながら行われた。しかし、終わる頃には鈴音は息も絶え絶えの状態になっていた。
「今日はここまでにしましょう」
「おーう」「ぜーぜーぜー・・・は・・・はい」
「鳳さん、大分お疲れのようですね。ソレイユさん、何か飲み物でも買ってきてください」
「OK」
鈴音は少しずつ息を整え直した。そして先日思ったある種の自由人だという考えは全くの間違いであったと分かった。訓練中の二人に以前見た軽さは全く無く、常に厳しく、少しでも気を抜けば容赦無く強烈な攻撃を当てようとしてくるのである。ただし、本当に当たることは無くギリギリの所で全て寸止めされていた。その後タンジェントから 責が飛んでくる為、鈴音は精神的にも肉体的にも疲弊してしまったのである。
「それにしても、こんなにソレイユ少将が一生懸命に訓練をしてくれるのは意外でした。聞いた話では女性をかなり憎んでいるという事でしたが」
「ニャハニャハニャハ、確かにソレイユさんは女尊男卑主義者の女は憎んでいますが、そうではない女性に対してはそこまでではありませんよ。事実、あちらに居るお二人とも普通に話されていたでしょう」
「そういえば・・・そうでしたね」
「すまない。待たせたな」
ソレイユが5人分の飲み物を持って戻ってきたが何故か飲み物の一つにに赤い物が少し付いていた。
「あ、あのソレイユ少将その赤い物はいったい・・・」
「ああ、これか。飲み物買ってたら上級生が絡んできてな、男の癖にとかどうとか言って来やがったから顔面を殴ってやったんだ。そしたらその上級生、鼻血出しやがってな。そのせいで持ってたこれに付いちまったんだよ。皆のはその後、ちゃんと手を洗った後に買ったから安心してくれ。これは俺がもらうよ」
「そ、その上級生はどうしたんですか?」
「手を洗った後戻ったらもう居なかったよ。恐らく保健室にでも行ったんじゃないか?おーい本音さんに簪さん、二人の分もあるから来いよー」
人を殴ったというのに、あっけらかんと言うソレイユに鈴音は少し引いた。そして初めに一組のクラスに入った時、クラスの女生徒がソレイユに近づくのを止めたのか分かった。鈴音は心中でソレイユ少将を怒らせるのは止めようと固く誓ったのだった。
タンジェントが休憩していると、鈴音が真剣な顔で近づいてきた。因みにソレイユは上級生を殴打した件を学園長に報告しに行っている。契約があるとはいえ、こういう事はきちんと報告しておかなければならないのだ。
「タンジェントさん、一つ質問があるのですが」
「何でしょうか?」
「初めの模擬戦でソレイユ少将は目隠しをしていました。それなのに私の攻撃がまるで見えているかのように躱していました。あれはどういったカラクリがあるんでしょうか?」
本音と簪も興味深々で聞き耳を立てていた。先程の信じられない光景の種が分かるとなれば、知りたくもなるだろう。
教えるのは容易いが、どうせならこれを訓練に励む為の動機にしようとタンジェントは考えた。目標がある方がやる気も出てくるだろうし、頑張ってくれるだろうと。
「教えてもよろしいですが、一つ条件を出させてください。それが出来たときに先程の件を教えましょう」
「条件とは何でしょうか?」
「クラス対抗戦で織斑一夏を完膚なきまでに打ちのめす事です。それが出来た時に教えるということで」
タンジェントの言葉を聞いた鈴音の顔からやる気と闘争心が出てきた。打倒織斑一夏を達成したとき、ソレイユのあの神業のような物の秘密が分かるというのだ。目標だけでなくご褒美まで示された。これでやる気が出ない方がおかしいだろう。秘密が聞けなかった本音達はすこし残念そうであったが。
「分かりました!明日からも訓練をお願いします」
「ニャハニャハニャハ、頑張ってくださいね」
その後、帰ってきたソレイユを交えて五人で軽く雑談を交わした後に、今日は解散となった。帰りの道中に面倒な事が起きたが、ソレイユとタンジェントによってあっさり片づけられた。
「お帰りなさいませ!ソレイユ少将にタンジェントさん!!」
「ああ、ただいま」
基地に帰ってきたソレイユは荷物を置こうと自室に向かおうとしたが、数人の海兵がソレイユを呼び止めた。全員真剣な顔であった。
「ソレイユ少将、少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」
「ん、構わないがどうした?」
「ありがとうございます。では・・・我々は全員ISというゴミ屑によって職を失いました。しかしソレイユ少将の提案によりこうして海兵になる事が出来ました」
ソレイユの提案というのが、日本の海軍基地にはISによって職を失った人間を積極的に採用しようというものである。海兵になる事が出来ない年齢の者や適性が無い者は基地内の事務員、コック、掃除夫といった仕事を斡旋している。
「その事を我々は深く感謝しており、一生の恩とも思っております。しかし・・・最近のソレイユ少将は来日した頃に比べて女に対して丸くなったように思うのです。今日も女尊男卑の考えを持っていないとはいえ女などと訓練を・・・差し出がましい事だとは思っております。しかし我々はこのままソレイユ少将が変わってしまうのではないかと・・・奴等への恨みが消えてしまうのではないかと不安なのです」
海兵達の言葉をソレイユは黙って聞いていた。少ししてからソレイユは彼らに語り掛けた。
「貴方達の不安は分かった。しかし心配することは無い。俺は今でも女尊男卑主義者の女共への憎悪は深くある。骨髄にも達している程だ。それに貴方達を苦しめた雌共への復讐も考えている。これを見てくれ」
ソレイユは簀巻きにした雌共を軍艦から持ってこさせた。これらは先程の面倒な事・・・女性権利団体の奴らが襲撃をしてきた際に捕らえたゴミクズ共である。因みに聞くに堪えない罵詈雑言を聞きたくない為口には雑巾を詰めている。
「こ、こいつらは!?」
「こいつらは女性権利団体所属の奴らだ。尋問方法は任せるからこいつらに襲撃した理由を吐かせてくれ。持ち物からこいつらが女性権利団体の奴らだという事は分かっているが、証言も欲しい。最悪殺してもいいぞ」
「は、はい!!分かりました」
「部下である貴方達の苦しみは俺の苦しみでもある。女性権利団体とIS委員会の奴等には必ず天誅を与えるから少し待ってくれ」
ソレイユも本音を言うなら、女性権利団体もIS委員会も今すぐにでも潰してやりたい。それこそすぐにでも本部にかち込んで全員レインボーシャワーで消滅させてやりたい程である。
しかしそんな事をすれば海軍の面目が、国の名誉に傷が付いてしまう。だからこそソレイユは我慢していた。ゴミクズどもを焼却する為の正当な理由を手に入れる為に。
「俺は忘れねえよ・・・あの日からずっと・・・ずっと奴らが憎い・・・それこそ全てを焼き尽くしたい程にな」
ソレイユは最後にそう呟くと、自分の部屋に向かって行った。ソレイユの心情を理解した士官達はソレイユに敬礼をした後に、深く深く頭を下げたのであった。
ついに始まったクラス対抗戦
ソレイユとタンジェントとの訓練によりパワーアップした鈴音は織斑一夏を圧倒的な実力で追い詰める
その戦いの最中、招かれざるモノが
次回、IS 復讐の海兵
「開幕、クラス対抗戦!!」
アイツらは必ず地獄に落とす!!