書き続けないとダメなんですね。
続きは今月中にはあげたいです。
注:5月6日に最後を少し修正しました。
「ねえ、ソーソーどうして簪ちゃんにあんな事聞いたの?」
その日の授業が終わり、ソレイユが帰ろうと昇降口で靴に履き替えようとしていた時、追いかけてきた本音がそう尋ねてきた。基本的に自分から進んで女生徒に話しかける事が無いソレイユがわざわざ簪に質問したうえに「何か悩みがあるなら話して欲しい」とまで言った事を不思議に思ったのだ。
「・・・彼女は何か思い詰めているようだったからな。まるで昔の俺を見てるみたいで放っておけなかったんだ」
ソレイユは少し言い難そうにしながらも答えを返した。その返答を聞くと本音の顔は少し面白くなさそうな物になった。
「ふ~ん・・・ねぇソーソー。前に約束を破った時に~埋め合わせは必ずするって言ってくれたよね~」
「ん、ああ。言ったぞ。それがどうかしたのか?」
いきなりあの時の事を言われてソレイユは少し驚いたが、何か欲しい物でもあるのかと思い、普通に返したが、次の本音からの言葉にソレイユはかなり驚かされた。
「じゃあ~これからは私の事は~苗字じゃなくて本音って呼んでほしいの~」
「は、ハアッ!??」
動揺するソレイユをよそに、畳みかけるように本音はソレイユに詰め寄った。
「いいよね~ソーソー。約束してたもんね~」
「ソレイユさん。埋め合わせはすると約束してたのでしょう。ならば守らなければなりませんよ」
「タンジェント!・・・わ、わかった。ほ・・ほ・・・本音・・・さん」
本音はソレイユの言葉に少し顔を膨らませたが、顔を赤くして名前を呼ぶソレイユを見て直ぐに笑顔になった
「さんは別につけなくて良いんだけどな~まあいいか~。じゃあまた明日ねソーソー、今日はご馳走様~」
本音は走り去っていき、後には顔をニヤニヤさせたタンジェントと未だに顔を赤くしたソレイユが残された。ソレイユはいきなり名前呼びするように頼んだ本音の真意が全く分からなかった。正しこれはソレイユが殊更に鈍感だからというわけではない。顔を赤くしていたのも年が近い女を今まで名前呼びしたことが無かった為恥ずかしかったからである。
「な、何だった・・・布仏、いや本音さんはどうしてあんな事を頼んできたんだ?」
「ニャハニャハニャハ、彼女は貴方があの更識さんに気にかけているのが面白くないんですよ。いうなれば嫉妬というものです」
「し、嫉妬!?という事は本音さんは俺に好意があるってことか!?」
「少なくともそうでしょう。でなければ名前をよんで欲しいなんて言いませんよ」
ソレイユは頭を抱えた。今までの人生でこのような事は全く無かった為、どうすればいいのか分からないのである。サカズキに拾われるまで生きるのに精一杯であったし、拾われた後も強くなるので頭が一杯で、おまけに周囲には同世代の女性など居なかった。これで、どのようにすればいいか理解しろというのが無理であろう。
「タンジェント、どうしよう?明日からどんな顔して本音さんに合えば良いんだろう」
「普通に今までと変わらない接し方で良いでしょう。折角仲良くなったんですから。変に意識したり、避けたりすると彼女も傷つきますよ」
「そ、そうか。分かった」
「ソレイユさんもこういう所は年相応ですね。ニャハニャハニャハ!」
「しょうがないだろ!!経験ないんだから」
「ニャハニャハニャハ!」
笑うタンジェントに怒りながら、ソレイユは靴を履き替えて昇降口を出て行った。本音の事はとりあえずは置いておこうと心に決めて。
「シク、シク、シク・・・」
基地に戻ろうと軍艦を泊めてある場所に向かってソレイユとタンジェントが歩いていると、何処からか泣き声が聞こえてきた。ソレイユにとって一部を除いたこの学園の生徒達などどうでもいいのだが、泣き声を聞いて何もせずに立ち去るのは海兵として、人として、そしてソレイユの人間性から許せることでは無いので、声のする方に向かった。もし虐めなどが行われていたのなら加害者を半殺しにしてやろうと心に決めて。
「あれは・・・鳳さんじゃないか?こんな所で何で泣いてるんだ」
「さあ、とりあえず事情を聞いてみましょう」
女尊男卑主義者でも無く、礼儀などもしっかりしている彼女の事を人間として好意的に見ているソレイユは何があったのか聞くために彼女の元に向かった。
「鳳さん、どうしたんだ?何を泣いているんだ」
「そ、ソレイユ少将・・・・い・一夏が・・シクッ・・シクッ」
「織斑!?あいつに何かされたのか!?」
「そ・・それは・・・それは・・・」
鈴音は事情を話そうとするのだが、泣きながら事情を話すというのは中々に難しく、ソレイユもこんな場所で泣き続けているのは良くないと思い、とりあえず彼女を落ち着いて話せるように、休憩所まで連れていく事にした。
「タンジェント、悪いがこれであそこの自動販売機で何か買ってきてくれ。」
「はいはい。私の分もよろしいですよね?」
「あたりまえだろ」
それからしばらくは鈴音が落ち着くまでソレイユは待つことにした。タンジェントも気を利かせたのか、飲み物を買って戻ってきた後もしばらくは渡さなかった。
数分後、少しずつだが鈴音は泣き止み始めた。
「どうぞ鈴音さん、ミルクティーです」
「あ・・ありがとうございます」
やや遠慮がちながらも、タンジェントに手渡されたミルクティーを鈴音は受け取った。
「ソレイユさんもどうぞ。青汁です」
「すまんなって・・・何でだよ!?何で青汁!?」
「青汁は健康に良いんですよ、ソレイユさん」
「そんなことは知ってるよ!なんで今のこの空気で青汁を買ってくるんだよ。普通にコーヒーとかでいいだろ!!てかよく売ってたな!」
「安物のコーヒーはあんまり好きじゃないもので」
「そりゃ、おまえの好みだろうが!」
「フッ・・・フフフッ」
二人のやり取りを見ていた鈴音は可笑しくなり、ほんの少しだが笑みを見せた。鈴音は自分を慰めようとこのようなやり取りをしてくれているのだろうと思った。実際はタンジェントがソレイユをこのようにからかうのは日常茶飯事なのだが。
「何があったかお話しします。私は今日一夏と昼食を一緒に取る約束をしてました。あいつ元気が全然なかったから少しでも元気出してもらおうと思ったんです。(余計なのも一人付いてきましたけど・・・)」
「なかなか友達思いじゃないか。やっぱり君は今の時代には珍しいまともな女性だな」
「そ、そう言われると少し恥ずかしいです。は、話を戻しますが、昼食を取ってるときにあいつに何があったか聞いてみたんです。そしたらあいつの姉の千冬さんがテロリストに襲われて顔に跡が残るような大怪我を負わされたと聞きました。そんなことがあったんじゃ落ち込むのも無理はないと思いました」
「(成程な。いつも何かと突っかかって来る愚夏が大人しかったのはそういう事か。それにしてもあのテロリスト、顔に障害が残ったか。まあ重点的にボコボコにしたからな)」
「あいつの為にいろいろと元気になるように言葉をかけたり、励ましたりしたのもあって少しは元気になったみたいで、昼休みが終わる頃には何とか普段の調子を取り戻してました。私もそこまではアイツが元気になったので嬉しかったし、喜んでました。でも、でもアイツ・・・」
鈴音が再び話しにくそうになったので、ソレイユは止めようとしたが、鈴音はそれを制した。ここまで話したのだから、最後まで話したいのである。
「今日の授業が終わったから、アイツと一緒に帰ろうと思って、教室に行って一緒に帰る事になりました。その時アイツに小さい頃にしてた約束を聞いてみたんです」
「約束?」
「は、はい。私、中国からこっちに来た時に中々馴染めなくて、苛めにもあっていたんです。その時にあいつが助けてくれて、その事がキッカケで私アイツの事がす、好きになったんです・・・で、でも事情で中国に帰らなきゃならなくなって、その時にあいつと約束したんです。「将来、もっと料理が上手になったら毎日酢豚を食べてくれる」って」
ソレイユは鈴音の言葉がイマイチ理解できなかったが、タンジェントが耳打ちで「あれは将来結婚して欲しい。という事ですよ。恐らくは日本の味噌汁を毎日飲んで欲しいというのを彼女なりにアレンジしたのでしょう」と教えてもらい何とか理解できた。
「それなのにアイツ・・・約束の事を聞いたら・・・「約束、ああ覚えてるよ。酢豚を奢ってくれるってやつだろって・・・」
それを聞いたソレイユとタンジェントは心底あきれ返った。男女の関係に疎いソレイユですらだ。二人はどうすればそのような解釈になるだろうと思った。
「それを聞いて私心底悲しくなって・・・それと同時に怒りが沸いて・・・あいつの事を思いっきり怒鳴りつけて・・・殴った後に駆け出して・・気づいたらあそこで泣いてて・・ヒック、ヒック・・・」
思い出すうちに再び悲しさが蘇ったのだろう。再び鈴音は泣き出してしまった。ソレイユは口を挟む事もせずに静かに鈴音を見守り続けた。長年抱いていた思いがこのような形になってしまった今の鈴音には何も言えなかったのである。
対照的にタンジェントは手を組んで何かを考えているようだった。
鈴音の悲しみを聞いたソレイユとタンジェント
これからどうすべきなのか悩む鈴音
そんな鈴音にタンジェントはある提案をした。
次回、IS 復讐の海兵
「タンジェントの提案。打倒織斑一夏」
あいつらは必ず地獄に落とす!!