IS 復讐の海兵   作:リベンジャー

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王室の高貴さを表現するのにかなり苦労しました。

こういったのもう書かないかもです(書かないとはいいません)


幕間1

イギリスが要求を受け入れる前日にイギリス王家では女王と政府の高官達が集まって会議を行っていた。

 

「陛下、この度のかの国からの要求、陛下はどうお考えでございますでしょうか?」

「・・・かの国の事ですから脅しなどでは決して無いでしょう。我が国が受け入れないと知った瞬間かの国は間違いなく我が国に宣戦布告した後に、あの恐ろしい兵器を我が国に落とすことでしょう。議会は何と言っていますか?」

「議会では意見が真っ二つに分かれております。女尊男卑主義者である女性議員やそのシンパ達は要求を突っぱねて開戦を主張し、それ以外の男性議員たちは要求を受け入れることを主張しております」

「馬鹿なことを・・・大方ISがあればかの国など恐れるに足らずなどと思っているのだろう。かってかの国と戦争をした南北に分かれた国とてISを所持していた。しかしかの国の兵器のまえでは一瞬にして滅んだのだ。そんな物の前にISなど何の意味があるものか・・・」

 

官僚の苦し気な声を聞いて、女王は言葉を続けた。

 

「・・・アメリカ等の同盟国は何と言っていますか?」

「今回は中立の立場を取るとどの国も言っております・・・」

「クソッ!!かの国の脅威に屈したか!?」

「・・・同盟国を責められません。かの国は敵対した国に対して一切の容赦をしないことは有名ですから」

「それでもっ!・・・何の為の同盟だ!」

 

高官は大きく机を叩き、そのまま突っ伏した。口惜しさと憤りから体は少し震えていた。

 

「この事態の原因となったセシリア・オルコット元代表候補生はどうしてるんだ?あの馬鹿のせいでこんなことになっているんだぞ!?」

「彼女なら現在自宅にいる。逃げ出したりすることがないように見張りを付けてな」

「自宅だと!何故牢獄に入れて置かない!?奴のせいでこのような事態になっているのだぞ!」

「それは私とて同意見だ。だが下手に牢になどぶち込めば人権主義の奴らが騒ぎ出す可能性がある。だからこその処置だ」

「こんな事態を引き起こした奴に人権だと!?あいつは売国奴といっても過言ではないのだぞ!!」

「・・・セシリア・オルコット元代表候補生の身柄をかの国に引き渡すことで条件を緩めてもらうのはどうだ」

「何を言ってるんだ!先ほどの話を聞いてなかったのか!?そんなことをすれば人権主義の奴らが」

「そいつらに気づかれる前に引き渡してしまえば良い。先程も奴は売国奴のようなものだという声も上がっただろう。そのような奴がイギリスから消えても何ということは無い。引き渡した後なら人権主義の奴らが騒ごうがどうすることも出来ん」

「・・・・・・残念ながらそれは無理だ」

「何故だ?人権主義の奴らの事を気にしているのか?それとも世論を・・・」

「違う・・・もう既にかの国に打診したのだ。セシリア・オルコット元代表候補生の身柄を引き渡すので要求を少し緩めてほしいと。だが、かの国は受け入れてはくれなかった。「そのような問題のある人間を引き渡されても困る。嫌がらせか」とも言われたよ・・・」

「そうか・・・どうすればいいんだ・・・」

 

再び会議に沈黙が訪れた。要求を受け入れても、開戦を決意してもイギリスには明るい未来は無い。そのことを全員理解していた。

 

「かの国の要求を受け入れましょう」

 

女王の突然の言葉に高官たちは一斉に女王に振り向いた。

 

「陛下、何を仰っているのです!?」

「責任は全て私が取ります。イギリスという国と国民の事を思えばこれが最上の選択です」

 

女王の気迫のこもった言葉はその場にいる全ての人間を黙らせるには十分なものであった。女王は言葉を続けた。

 

「この度の一件はそもそも私に責任があるのです」

「陛下!突然何を仰られるのです!?責任があるとすれば、それはセシリア・オルコットにあり、陛下に責任など」

「黙ってお聴きなさい!!」

 

自分を擁護する高官の言葉を遮り、女王陛下は怒鳴りつけた。女王陛下が普段見せることのない姿に高官達は、ただただ驚き、黙り込んだ。

 

「私は最近の風潮である女尊男卑というものに嫌悪感を持っていました」

「「「「!?」」」」

「驚きましたか?しかし事実です。私は女性だから偉い、優れている。という考えは間違っていると思っています。しかし、女尊男卑主義者からの反発を恐れて、私はそれを今まで隠してきてしまっていたのです。何を言っても言い訳にしかなりませんが、もし私が女尊男卑という考えに嫌悪感を持っていると公表すれば、当然女尊男卑主義者やそれに連なる女性権利団体は私に反逆心を持つことでしょう。逆に国内の男性達や反女尊男卑主義者は「女王陛下は我々と同じ考えをお持ちになっている!即ちこれは我々の考えが正しいのだ」と喜んで女尊男卑主義者達を排斥しようとするでしょう。そうなればイギリスという国自体が二つに分かれてしまう事態に陥ってしまいます。そして・・・」

 

女王陛下は顔を歪めて言葉を止めてしまった。周囲の高官達は心配そうに見守っていたが、陛下は異を決して話し始めた。

 

「私のみならず私の家族達にまで危害が及ぶ可能性がありました。私はそうなる事を恐れてしまいました・・・私の愛する大切な家族に危害が・・・と、そして私は女王としてでは無く、1人の人間としての意思を優先してしまったのです。だからこそ私は今までどっちつかずの態度を取り続けました。わが身可愛さに女尊男卑主義者の蛮行を見て見ぬふりをしてしまったのです。しかし、今となっては思うのです。私が毅然とした態度で自身が女尊男卑主義者に嫌悪感を持っていると公表していればと、国内の女尊男卑主義者にそのシンパ達を積極的に捕らえるようにしていればと。そうすればこのような事態になっていないのでは無いかと。今となってはもう遅い事ですが。・・・私は女王失格です。高貴なる者の務めを忘れた愚か者です。ウゥ・・・」

「陛下・・・・・・」

 

涙を流し始めた女王陛下に高官達は言葉をかけようとしたが、女王陛下の後悔と葛藤を考えると出来なかった。誰だって自分の事と自分の大切な存在を優先したいものだろう。それはたとえ階級の者であっても例外ではないはずだ。しかし女王陛下は自身の責任感の強さゆえにそう割り切ることができなかったのである。

 

涙を流していた女王陛下は涙を拭うと、高官達に再び命令した。

 

「取り乱した姿を見せました。私はまだやるべき事があります。イギリス女王としての最後の務めが。先程言った通り、かの国の要求を受け入れます。これは私の独断であり、全責任は私が背負います。貴方方はもう退出しなさい」

「陛下!?それは余りにも無謀すぎます。そんな事をすれば陛下の御身が!?」

「退出しなさいといったはずです!!これはイギリス女王としての命令です!そして・・・最後の命令になるでしょう」

 

女王陛下の目には再び涙が浮かんでいた。その涙の意味を感じ取った高官達は苦渋に満ちた顔をしながら彼らもまた涙を流した。そして、1人、また1人と部屋から退出していった。

 

「皆さん・・・ありがとうございます。そして・・・申し訳ありません」

 

女王は誰もいなくなった部屋で涙を流しながらそうポツリと呟いた。

 

 

しばらく後に女王陛下の親族が女王陛下の私室に集められた。国外に住んでいる者はテレビ電話での参加となった。

 

「・・・聞いての通りです。かの国の要求を我が国は受け入れます。これが最上の選択だと私は思っていますが反発は大きいでしょう。ですから責任は全て私一人で負います。私の身勝手に貴方たちまで巻き込むわけには行きません。貴方達は今から急いで必要な物を準備して王族専用のプライベートジェットを使いイギリスを離れなさい。幸いにも今回の1件には中立を決めた同盟国の国々も、王族達の亡命なら受け入れると仰ってくれました。外国に住んでいる者達もそのままその国に亡命しなさい。さあ、お行きなさい」

 

女王陛下は自分の家族に退出を促した。こうすることで女王陛下は自分の家族を守り、全責任を被ろうとしたのである。独り善がりだと思う人はいるかもしれないし、傲慢だと感じる人もいるかもしれない。しかし、女王陛下はこれが最善のの選択だとこの時思っていた。自分一人だけが犠牲になれば・・・という自己犠牲の精神である。

 

しかし、ここで女王陛下の予想だにしない事態が起きたのである。何と集められた親族全員がイギリスを出ていくことを拒否し、国外に居る者も亡命を拒否したのである。これには女王陛下も驚いたが、再び退出を命じた。ここで皇太子が声を上げた。

 

「陛下・・・いえ、母上様。我々もイギリス王室の人間です。責任を取るのなら我々もご一緒させてください」

「何を言うのですか!?なりま」

「母上様!!我々は母上一人に責任を負わせ、生きていきたいなどとは言いません!!母上が我々を大切に思っているのと同じように我々も母上の事は大切に思っているのです。どうか最後まで一緒に居させてください。王室の血を守ることが大事なのは分かっていますが、それ以上に我々は母上・・・母さんの事が大事なのです。幼少の頃から我々を愛情深く見守り、育ててくださった母さんのことが」

「「「母上」」」

「「母様」」

「「「叔母・伯母上様」」」

「「「「お婆様」」」」

「「「「「「「「「「「「どうか最後までご一緒に居させてください」」」」」」」」」」」」

「・・・・・・貴方達・・・・」

 

自分の親族の覚悟を感じとった女王陛下は涙を流した。この涙は先程2回流した涙とはまた違ったものであった。

 

その後、王室から要求を受け入れるとかの国に連絡が入り、その後イギリス国内にも公布されたが一部の女尊男卑主義者を除き、殆どの国民は戦争にならなかった事に安堵し王室の決断を支持した。

 

 

時は少し遡り、舞台も別の場所に移る。

「千冬姉・・・」

 

病院の集中治療室のベッドで眠り続ける千冬を一夏はガラス越しに心配そうに見つめていた。いくら馬鹿な男でも家族は心配なようである。

 

あの騒動の日の放課後、一夏は山田先生に再び病院の名前と住所が書かれている紙をもらい(その時一言も謝罪の言葉が無く、明らかに自分が何をしたのかも忘れているようだったので、流石の山田先生も少し顔が引きつっていた)病院を訪れていた。

 

「織斑千冬さんのご親族の方ですか?」

 

一夏の前に突然一人の女性が話しかけた。格好から察すると医者のようだ。

 

「は、はい。貴方は?」

「私は織斑千冬さんの主治医の小池と申します。貴方は織斑千冬さんの弟の織斑一夏君ですね。この度は御気の毒でした」

「せ、先生!?千冬姉は、千冬姉は大丈夫何ですか!?元気になるんですか!?」

「・・・すいませんが此方に来てください。大切な話になるので」

 

織斑一夏の問いには答えず、小池は自分の診察室に案内した。

 

「早く教えてくれよ!!千冬姉は元気になるんだろ!?なあ、そうなんだろ!!?」

「・・・元気にはなります」

「そ、そうか・・・良かった~~~」

 

主治医から元気になると聞いた一夏はとりあえずはホッとした。しかし、小池先生の顔は厳しいままだった。

 

「我々としても驚いています。普通あれだけの怪我をすれば全治1年、早くても半年は掛かりますが、君のお姉さんは1か月もすれば元気になるとの見込みです。今は一応集中治療室に居てもらっていますが、もう少しで普通の病室に移れます」

「そうなのか!?やっぱり千冬姉はすごいぜ!!」

「ですが・・・」

「ん、どうしたんだよ?なんか問題でもあんのか?」

 

一夏の質問に小池先生は言い淀んでいた。かなり言い難い事であるのは予想できた。

 

「落ち着いて聞いてください。ハッキリ言いますが、顔はもう元には戻りません」

「えっ・・・・・ど、どういうことだよ!?」

「織斑千冬さんは暴行を受けた際に、顔を鈍器のようなもので殴られたのは既にご存じでしょうか?」

「そ、それは知ってるけど、それが何の関係があるんだよ!?」

「・・・鈍器で殴られたことで、顔の骨格が曲がり筋肉も大きく破損していました。そのせいで回復したとしても顔は以前のようにはなりません。恐らくは・・・一生」

「そ、そんな・・・な、何とかならないのかよ!?手術するとか?!」

 

一夏の言葉に小池先生は顔を伏せて、首をゆっくりと横に振った。

 

「それも無理です。顔の骨格そのものが駄目になっており、筋肉も同様なのですから・・・手術したとしても変わりません・・・最悪、更に悪化する可能性があります」

「そ、そんな・・・・」

 

一夏は膝から崩れ落ち、手をついた。自慢の姉の顔が2度と元には戻らない。その事実は重すぎた。

 

「・・・・しろよ」

「えっ?」

「何とかしろよ!?お前ら医者なんだろ!!医者なら千冬姉の顔を治せよ!!」

「だから、それは無理だと・・・」

「うるせえ!治せ!治せよ!!」

 

馬夏はそう叫び小池先生に掴みかかった。いきなりの事に小池先生は悲鳴を上げ、それを聞きつけた他の男性医師数人によって馬夏は引き剥がされ、病院から摘まみ出された。病院側はこの件をIS学園に抗議しようとしたが、貴重な男性操縦者という事で政府から圧力がかかった事と小池先生が怪我も無く、気にしていないという事で馬夏の愚行は闇へと葬られた。




約束通り、本音と昼食を共にするソレイユ

そして、予てから言われていた本音の友人が紹介される

彼女はとある事情を抱えた少女だった。

次回、IS 復讐の海兵
「食堂での出会い 更識簪」
あいつらは必ず地獄に落とす!!

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