ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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シロップ村編
シロップ村


 三日間の休息を終えて、軍艦島を旅立つ時が来た。

 一味は二隻の小舟を島民から譲り受け、それぞれ男性と女性に分かれて乗船する。

 世話になった間に打ち解けたこともあってか、島民総勢で見送られようとしていた。

 桟橋の上、小舟に最も近い場所にはアピスが立っており、傍らにはリュウ爺。その後方に島民たちが並んでいて、四匹の巨大な千年竜も海に浸かって彼らを見ている。

 奇妙な体験だった。死にかけた時もあったし、絶望した瞬間もあって、けれど生き残った後に見れたのはとても美しい風景。あの光景は今も彼らの心に刻まれ、温かな気持ちが生まれている。今回の冒険も決して無駄な物ではなかった。皆がそう思えていただろう。

 船上から振り返った麦わらの一味はアピスの笑顔を見つめる。

 別れを辛く思う様子はない。休息の間、彼女とはたくさん親交を深めた。

 すでに再会を約束し、必ず会いに来るとの言葉を受け取っている。その時まで彼女は竜の巣を守り続けることを約束した。千年竜たちの故郷は誰にも荒らさせないと。

 後ろ手に隠していたそれを前へ掲げ、アピスはにこやかに笑う。

 

 「ねぇルフィ。これ、もらってもいいかな?」

 「ん? あ、おれたちの旗か」

 「うん。船が壊れちゃった時に島まで飛んできたんだ」

 

 見せられたのは彼らの旗だった。麦わら帽子をかぶったドクロ。端の辺りが少し破けているものの、船に掲げればそれだけで自らの身分を海賊だと証明するマーク。

 それが欲しいとアピスは言って、ルフィは不思議そうに首を傾げた。

 

 「別にいいけどよ、何すんだ?」

 「みんなと約束したから、迷わないようにこの旗を上げておくの。そしたら方向音痴のルフィでも、ここが軍艦島だってすぐわかるでしょ」

 「そりゃいいなぁ。おれ道とか全然わかんねぇから助かるぞ。なっはっは!」

 「笑い事じゃないよルフィ。方向音痴って傍から見てると面倒なんだから」

 「おい、なんでおれを見て言ってやがる」

 

 ルフィは腰に手を当て笑っていた。後ろではキリの言葉にゾロが眉間の皺を寄せている。

 拒否する理由はない。それが彼女の決めたことならばしたいようにすればいいと思う。

 彼がそんな様子なのもあって、身を乗り出したのはシルクだ。

 村や町が海賊旗を掲げればどうなるか。海賊に関する話をいくつも聞いていた彼女は意味を理解している。言わばその言葉は親切心から来る忠告だった。

 

 「気持ちはわかるけど、気をつけなきゃだめだよ。もし海賊旗が見つかったら海軍が怒るかもしれないから、あんまり目立ち過ぎないようにね」

 「大丈夫。私たちには強い友達がいるんだもん」

 

 アピスが海を見れば、首をもたげた千年竜が小さく鳴き、同じくリュウ爺も鳴き声を発する。

 前々から思っていたがやはり彼女は思い切りが良い。

 一人で海軍に立ち向かったり、海賊に向かって助けを求めたり、行動力はとても普通とは言えない。とはいえ、それで軍艦島が助かったのも事実だ。

 シルクは思わず苦笑してしまう。

 確かに千年竜が居れば海賊も海軍も簡単には手を出せない。

 世界で最も平和な海、イーストブルーに彼らを倒せるほどの実力者は居ないだろう。

 多少の危険も承知で旗を掲げる気があるようで、溜息をついたナミが口を開いた。

 

 「ハァ、ほんと世も末ね。ここにも海賊に憧れる子が一人……あんたと同じよ、シルク」

 「そうだね。ふふ、そう言えば私も同じ歳くらいの頃から好きだったかな」

 

 話すことなら島に滞在している間にたくさんしゃべった。

 今更話すことは少ない。出航の時は確実に近付いて、桟橋と小舟を繋ぐロープが投げられる。

 潮の流れに乗って、船はゆっくりと動き出そうとしていた。

 ルフィがアピスを見て呟く。

 離れながら最後の会話が行われる。

 

 「なぁアピス。おまえは友達じゃなくて、おれたちの仲間だ」

 「仲間? 友達とどう違うの?」

 「友達よりもっと近いってことさ。おれたちは世界を一周して、ワンピースを見つけて海賊王になって、もう一回この島に来る。それまで竜の巣とその旗、守っててくれ」

 「うん! もちろん!」

 「約束だ。おれたちの仲間ってこと忘れんなよ」

 「絶対だよ、絶対また会おうね!」

 

 徐々に離れていく船を見送り、アピスは見えなくなるまで手を振り続けた。

 しばらくして、船は彼方へと消えていく。

 手を振るのをやめ、両手で旗を持った彼女はしばらく水平線を眺めた後、ふと振り返る。

 何を想ってか突然小走りで駆けだした。

 

 「リュウ爺、来て」

 

 傍らにはリュウ爺もついてきて、島民たちの間をすり抜けて砂浜へと走る。

 浜へ辿り着くと、あらかじめ選別しておいた長い木の棒を持ち上げ、端に海賊旗を括りつける。風にたなびくようになれば、棒を地面へ突き立てた。

 風に揺れたドクロマークが海を眺める。

 本来、海賊が島に己の海賊旗を掲げる時、そこを自らのナワバリだと主張する意味があった。それを知ってか知らずか、軍艦島には確かに彼らの旗が立てられたのである。

 この風景に気を良くしたアピスが笑って水平線に目をやった。

 彼らと出会えてよかったと心から思える。

 いつか必ず、約束は守ってもらえるだろう。

 そう信じてアピスはリュウ爺に微笑みかけ、小さくなってしまった彼も笑ったように思え、前とは違う可愛らしい鳴き声を発した。

 

 

 *

 

 

 昼時になって太陽の位置が変わっていた。

 今日は快晴。空には雲の姿も少なく、青々とした色が広がっている。

 温かい陽気を感じて崖の上から海を眺めていた少年は、島に近付く二隻の小舟に気付いた。

 

 「ん? なんだあれ」

 

 体重を預けていた木の幹から背を離し、立ち上がって船を見つめる。

 船は右手側にある海岸を目指しているらしい。島の住人として地形を知り尽くしている彼はふと小走りでそちらへ向かい、やがて船が着岸する頃にその場所へ到着する。

 この島に来訪者など来ない。村は陸の中にあり、海に面していないため存在を知っている者以外は滅多にやって来ないのだ。彼が動き出したのも単純に珍しい物を見たからだろう。

 片方の小舟から一人の少年が降りてきた。

 麦わら帽子をかぶって、歳の頃はおそらく同じ。危険そうな顔つきではない。そのせいか海賊の類には思えず、ただの旅行者だと思って、彼は逃げ出さずに坂を下りていく。

 対して、一足先に上陸したルフィも顔を上げ、目の前に立つ人物を見つけた。

 

 「だれだおまえ?」

 「いやそりゃこっちのセリフだろ。誰だおまえら?」

 

 妙に鼻の長い人間だった。

 茶色のオーバーオールを着て、頭にはバンダナを巻き、肩からがま口の大きな鞄を提げている。

 おそらく町民だろうと思うほどやさしげな顔つきで、大して警戒心はない。相手も同じく警戒心は持っていない。初対面でありながら好奇心を見せるようですらあったようだ。

 どうやら、目が合った瞬間に馬が合う物を感じたらしい。

 他の面子が船が流されないよう作業している間、二人は何の気なしに話し始めていた。

 

 「おれはルフィ。海賊だ」

 「海賊ぅ? 嘘つけよ」

 「うそじゃねぇよ、ほんとだ」

 「どっからどう見ても海賊には見えねぇ」

 「でも海賊だ。マークだってあるんだぞ」

 「どれ?」

 「今はねぇけど」

 「じゃあ証拠はねぇじゃねぇか」

 「証拠はねぇけど、海賊なのはうそじゃねぇ」

 「やっぱりおまえら海賊じゃないだろ。船だってそんなちっちぇぇし」

 「もうちょっと前はでっけぇ船乗ってたんだぞ。あれは奪った奴だったけどな」

 「言っとくけどな、おれに嘘ついたって騙されやしねぇぞ。嘘にかけちゃそこらの奴に負ける気はねぇんだ。おれ自身が嘘つきだからな」

 「ほんとなんだって」

 

 ルフィの言葉を聞き、不敵に笑った少年は親指で自身を指しながら、自信満々に言いのける。

 

 「おれの名はウソップ。このシロップ村を占拠するウソップ海賊団の船長だ」

 「へぇ~おまえも海賊なのか!」

 「気をつけた方がいいぜおまえら。もしこの村を襲うようなことがあれば、このおれが絶対に許さねぇ。おれの一声で八千人の部下が動き出し、おまえたちをあっという間に倒すだろう」

 「えぇっ!? 八千人!?」

 

 ウソップと名乗る少年の言葉に、面白いほどルフィは一喜一憂。

 さらに調子を上げてきたウソップがしたり顔になる中、船から下りたナミが近付いて来た。

 

 「あぁそうだ。だからおまえら、言葉遣いには気をつけろ。人々はおれを称え、さらに称え、こう呼ぶんだ。キャプテ~ン・ウソッ――」

 「嘘でしょ」

 「げ、バレた!?」

 「ほらバレたって言った」

 「あぁっ、バレたって言っちまった! おのれ策士め!」

 「あっはっは! おまえおもしれぇ奴だなぁ」

 

 ナミの端的な言葉に次々大げさな反応を見せる彼。ウソップのリアクションでルフィは腹を抱えて笑い、ずいぶん面白がっていたようだ。

 自ら嘘つきだと名乗ったのだから、嘘をついたとバレるのも当然だろう。

 それ以前に、彼は八千人の部下を従える海賊には見えない。

 呆れたナミは嘆息し、やれやれと頭を振る。

 彼らが軽快なやり取りをしている間に残りの三人もやってきた。

 会話は聞こえていて、ウソップの態度や言葉からは危険性が感じにくく、警戒する者は居ない。むしろ楽しそうな人物だと興味を持ったところで不思議はない相手。

 気軽にやってきて戸惑い無く会話に混ざる。

 

 「面白い人だね。そのシロップ村ってとこの人?」

 「まぁな。それよりおまえらこそどこの誰なんだよ」

 「さっきルフィが言った通り。海賊さ」

 「嘘じゃなくてか? おれには旅行者にしか見えねぇが」

 「そう見えても仕方ないよ。まだ駆け出しで自分たちの船さえ持ってないんだ」

 

 一歩前に出てルフィの隣に並んだキリが右手を差し出した。

 多少の驚きを抱きつつ、ウソップも笑顔ですぐにその手を取る。

 

 「ウソップ、だったよね。ボクはキリ。よろしく」

 「ああ。しっかし海賊かぁ……人は見かけによらねぇっつーか。全然見えねぇな」 

 「それでさキャプテン。一つ聞きたいんだけど、村に船を造ってくれる大工さんとか居る? もしくは売ってくれる人とか、譲ってくれる人とか」

 「あとメシ屋! メシ屋教えてくれ!」

 

 警戒していないのはウソップも同じで、友好的な態度の彼らを恐れていない。

 尋ねられればすぐに考え始めて、顎に手を添えて平然と答え始めた。

 

 「うーん、メシ屋くらいならそりゃ案内できるけどよ。船ってことはあれだろ、海賊船が欲しいってことだろ?」

 「ズバリその通り。どっかで手に入らないかな」

 「そりゃ無理じゃねぇかな。いや、可能性があるとすりゃ一つか」

 

 顔を上げたウソップはキリを見ながら言う。

 すっかり役割は分けられているらしく、誰が指示するでもなく雑務は彼が受け持つ様子。細かな話し合いも大概はキリが進み出て行っているのが常だ。

 他の者は彼らのやり取りを見守るばかりで口を挟むことはなかった。

 

 「大きな屋敷が一つだけあるんだけどよ。船を持ってるとすりゃそこだけだろうな」

 「じゃあ交渉の余地ありか。とりあえず行って確かめてみよう」

 「つーかおまえらほんとに海賊なのか? おれはそこが半信半疑のまましゃべってんだが」

 「本当だって。証拠は何もないけどさ」

 

 そう言われてもまだいまいち理解できていないらしい。船を必要としていることはわかったものの、話したところでそれらしさが感じられないのが原因だろう。特に笑顔で話しかけてくるルフィとキリの態度は海賊だと名乗られてもそうは思えない。

 ルフィは尚も笑顔で、妙に親しげに話しかける。

 

 「なぁ、ウソップは得意なこととかあんのか?」

 「は? なんだよいきなり」

 「なんとなくだ」

 「そりゃおまえ、おれは狙撃の王様って呼ばれてるんだぜ。おれのパチンコに狙われた奴は絶対に逃げられねぇさ。まず間違いなく百発百中だからな」

 「へぇ~。じゃあ狙撃手にちょうどいいな」

 

 笑顔のまま告げられた一言に全員がきょとんとした顔になり、気にせずルフィは言う。

 

 「ウソップ、おれの仲間になれよ」

 「……はぁ!?」

 

 唐突な発言にウソップが思わず声を出した。だがその一言には他の面子も驚いており、彼の突発的な行動には慣れているキリでさえ驚愕して表情を変える。

 これにはシルクやゾロも口を開かずにはいられず、見守っているだけから口を開いた。

 

 「ねぇルフィ、ちょっと突然過ぎない? いくらなんでも出会ったばっかりだよ」

 「それに船も見つかってねぇんだぞ。ちゃんと考えて言ってんのか?」

 「んー、なんか懐かしい感じがするんだよな。なんでだろ?」

 「いやおれに聞かれても」

 

 言われたウソップも困惑しているようだ。

 嘘つきの彼でも、ルフィが嘘を言っているのか否かがわからない。ただ出会ったばかりでも本気で言っているのではないだろうかという疑念があって、不思議な男だと思う。

 腕組みをして笑いかけてくる顔は本気に思えた。

 彼は尚も意見を変えない。

 

 「だっておれたちには狙撃手が必要じゃねぇか。大砲撃っても当たんなかったんだし、キリも必要だって言ってたろ? それになんかウソップはいい奴そうだ」

 「だからってこいつの腕も見てねぇだろ。一発でもその腕前を見せたんならまだしもだ」

 「じゃあ見せてもらおう。なぁウソップ、海賊やる気になったか?」

 「いやいやいやいや。ちょっと待て、待てって。おまえら会ったばっかりで何を色々と……」

 

 話が好き勝手に進められてウソップの困惑が深くなる。

 出会って数分、ここまで親しい態度になれるものか。初めて出会う性質の相手に、人懐っこい彼ですら戸惑ってしまう。他人と話したりするのは好きで、自分でも得意だと思っているが、あまりに唐突過ぎる。尚且つ、今直面している問題はあっさり決められるほどの簡単さではない。

 海賊になるか否か。

 いつか、とは思っていた彼は徐々にだが真剣に悩み始めていた。

 海賊に対する憧れがある。それも理由があって幼少の頃から。

 今になって状況が理解できてきたらしく、ウソップがじとりと汗を掻く。

 自分は今、確かに出会ったばかりの彼らから仲間にならないかと勧誘されたのだ。

 

 「おれが、本物の海賊に……?」

 「ああ。おれはさ、グランドラインを航海して海賊王になるんだ。いっしょに冒険しようぜ」

 「か、海賊王!? そりゃおまえ、あのワンピースを見つけるってことじゃねぇか!」

 「本気でやるぞ。おれはガキの頃からずっと決めてたんだ」

 

 迷いのない目を見ると体が震えそうだった。

 心の奥底から焦りも生まれてきて、決断を求められていると感じる。しかし彼らが悠長に待ってくれる様子もなく、緩い表情でキリが仲間を振り返った。

 

 「それじゃ、ウソップの力量のほどは船長に見極めてもらおう。その間に必要な物資を買って来ようか。ルフィは肉でしょ」

 「おう!」

 「お、おい、おまえら本気か?」

 「嫌だったら断ってもいいんだよ。無理強いはしないから」

 

 キリは気楽に言うものの、ウソップの表情は晴れず。

 どことなく楽しそうなキリがルフィの頭へ手をやり、撫でるように軽く頭を叩きながら言う。

 

 「この人も多分まだ半信半疑の状態なんだ。なんとなく波長は合ってるみたいだけど、本気で連れてくって決めたらしつこいよ。断るなら今の内だから」

 「しっしっし」

 「あ、ああ……」

 

 一方的に振り回されている気がするウソップだが、異論を唱えるだけの冷静さも無いため頷くしかない。彼らは気遣いも無く独自のペースを守っていた。

 仲間たちの顔を見回したキリは別行動を考える。

 人数も増えて役割を分けられるようになった。

 何も常に全員で行動する必要はないだろうと提案を始める。

 

 「ルフィにはウソップの狙撃技術を確認してもらおうか。その方が確信も強まるでしょ」

 「そうだな。じゃそうする」

 「とはいえ一人じゃ不安だな。もしもの場合を考えるとストッパーを用意したいところだけど」

 

 キリの目がゾロを捉える。途端に彼は表情を歪めた。

 

 「なんだよ」

 「人格は問題ないとしても方向音痴がネックなんだよなぁ。不安が二つ重なりそうだ」

 「うるせぇ。ほっとけ」

 「やっぱりシルクの方が任せられるかな。頼んでいい?」

 

 視線を向けられたシルクは戸惑わずに笑顔で頷く。

 この面子の扱いにも慣れてきた頃だ。特にルフィとの航海では二番目に付き合いが長くなる。

 そろそろ彼の性格もわかってきて、おそらくは暴走を抑えることもできるだろう。

 

 「うん、いいよ。ルフィを見てればいいんだよね」

 「そうそう。問題起こさないように」

 「おまえら子供扱いすんなよ。失敬だな」

 「仕方ねぇだろ。普段のおまえ見てたら」

 

 ゾロが声をかければ、ルフィは不満そうな顔を見せた。

 置いてきぼりでウソップが困惑しているだろう。それを知りながらキリはくすりと笑う。

 

 「ボクとゾロとナミで買い出しかな。またここで合流する?」

 「そうすっか。じゃあよウソップ、パチンコ見せてくれよ」

 「それくらいならいいけどよ……しかし、海賊かぁ」

 

 まだ答えは出せずに悩む彼を押し切り、頷かせることができた。

 相変わらず強引だと思いながらキリは歩き出し、他の二人を呼ぶ。

 ゾロは表情を変えず、ナミは溜息をつきながら歩き出した。

 

 「それじゃ行くよ。おいで、二人とも。あとで船のことも聞かないとね」

 「犬か、おれたちは」

 「ほんとナチュラルに使ってくれるわよね。念を押すけど仲間にはなってないのよ」

 

 三人が坂道を上り出し、村へ向かおうとして、振り返るウソップにルフィが声をかけた。

 やけに楽しそうで迷いなど欠片も無く、まるで友達のような感覚。

 不意にウソップの表情も緩み始めた。

 

 「おれたちも行こうぜウソップ。どっかで的当てやろう」

 「ったく、しょうがねぇなぁ。それじゃおれがいつも使ってる練習場に行くか」

 「おう!」

 「二人とも、あんまりはしゃぎ過ぎないでね。怪我するようなことはだめだよ」

 

 残った三人も歩き出して、向かった先は真っ直ぐ進んだ先にある村ではなく森の中。

 土地勘のない二人とは違い、視界の悪い中を楽々歩いていくウソップはまさしく島中のことを知っているかのような態度で、一度も道に迷うことはない。

 歩く内にも会話は続き、不思議とルフィは出会ったばかりの彼に対し、最初から親近感を持っていることを自覚していた。

 その理由が掴めそうで掴めない。

 首をかしげながらしばし考え、どこで彼を見たのだろうかと考え始める。

 


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