ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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トレジャーバトル 一回戦(3)

 ハッタリーの実況は、目まぐるしく動く戦場の全てを言葉にしていた。

 あちらを見ればルフィとバギーが戦っており、こちらを見ればビビとアルビダが戦い、さらに違う場所を見ればカルーが宝箱を運んでいる。そうして全域を見なければならない。

 そのせいで数秒の遅れは仕方なかった。

 それでも彼は必死に目と口を動かし、会場の状況を細かく説明していたのである。

 

 《今! 再びブルーチームが宝箱をゲットォ! カルガモが素早く運んで、その間にビビ選手とアルビダ選手が――な、なんとォ!?》

 

 驚愕したせいでつい絶叫してしまった。

 慌ててハッタリーは今見たものを言葉にして説明する。

 

 《さ、酒だ! 家の中にあった酒を使ったのか! ビビ選手によってアルビダ選手の全身が火に包まれてしまったぁ! これは堪らない! 急いで海へエスケープ!》

 「んなぁにぃ!? アルビダは苦戦してやがるのか!」

 

 実況を聞いてバギーは思わず空を見上げた。戦況が知れるのは彼の言葉のみだったからだ。

 

 《なぁ~んと番狂わせェ! 一方的かと思われた勝負だが、反対にビビ選手がアルビダ選手を海に落としたぞ! もちろん我が社と契約した海ネコが救助しましたが、顔に似合わず意外とえげつないことするぞ、この子はァ!?》》

 「ちくしょう、何が起きてやがんだ! 宝はどうなった! おれたちも動くべきか……!」

 「ゴムゴムのォ!」

 

 宝箱が奪われたのなら今すぐにも奪取に向かいたい。だがここには彼が居る。

 場所はそう変わらず、戦闘可能なエリアの中央。

 ルフィは自分より多いラパーンやシーラパーンの集団に対して善戦し、力任せに殴り飛ばしているだけだが、野生動物に対しては何よりも効果的だっただろう。

 

 こいつには勝てない。

 野生の本能がルフィを恐れ、いつしか彼らの動きは精彩を欠いていた。

 

 その隙を衝いてルフィが集団を突破する。

 振り向いたバギーの驚愕した顔が見えて笑みを深くした。

 どうやら勝利を確信したようだ。

 

 「ピストル!」

 「ぶへぇ!? おのれ麦わらァ!」

 

 殴られたバギーがまたも地面を転がった。

 腕を縮めたルフィは同じくハッタリーが居る空を見上げ、翼を広げて飛翔する大きな鳥を見た。そしてその行動がビビの活躍を決定付けるものとなったらしい。

 

 空からアルビダが降ってきたのである。

 髪や服が焦げたりはしているが存外無事な姿で、彼女は滑るように地面へ着地した。

 

 「あうっ……!? くそ、あの小娘、やるじゃないか……!」

 「なぁにぃ!? アルビダっ!? なんでてめぇが降ってくるんだよ!」

 「しっしっし、ビビは勝ったのか。これならもう怖くねぇぞ」

 

 辺りを見回して、高く掲げられたブルーチームの旗を見つける。

 ルフィはそれを目印に走り出し、自陣へ急いだ。

 

 「あっち行きゃいいのか」

 「待ァてェ麦わらァ! てめぇの思い通りにゃさせぇぞ! おいラパーンども!」

 

 敵を追うため、バギーが鋭く声を発するものの、彼らはすっかり怯えていた。度重なる攻撃で威圧されて戦意を失ってしまったらしい。もう動きそうにはなかった。

 チッと舌打ちを一つ、彼らを見限って自らが走り出す。

 バギーはルフィのみを標的に全力で追いかけた。

 

 「チクショー! 報酬も払ってやったっつうのにもうギブアップか! こうなりゃ破れかぶれじゃあっ!」

 

 時間はもう残されていない。

 ブルーチームの陣地に二度も置かれている。それだけ回収船が近付いていた。

 これが最後の局面。互いのチームがそれを理解している。

 

 家屋を迂回することなく飛び越え、ルフィが港へ到着した。

 前方、自陣の前にビビが、リング上にカルーが居る。

 

 気付いたビビが大きく手を振っていた。怪我はしているが表情は元気そうである。同じくカルーもバサバサと翼を振り、彼の到着を喜んでいた。

 ルフィもさらに速度を上げて走る。

 その後ろからはバギーが迫っていた。

 

 「ルフィさん!」

 「ビビィ! お前やったなぁ!」

 「待ちやがれ麦わらァ!」

 

 その声を聞いてルフィは急に足を止めて振り返った。

 バギーが一人で向かってくる。

 互いに正面から視線を交わらせ、気合いを入れ直した。

 

 「よし、来い!」

 「誰に負けても構わねぇが! てめぇにだけは負ける訳にはいかねぇんだ!」

 「おおおおっ――!」

 

 ルフィとバギー、両者が同時に攻撃を行う。

 

 「バラバラフェスティバル!」

 「ガトリングッ!」

 

 全身がバラバラになり、襲い掛かろうとする一瞬、ルフィの方が素早く敵を捉えた。

 無数に見える拳の乱打が全てのパーツを捉え、バギーに尋常ではないダメージを与える。

 

 「ぶべががががっ――!?」

 「おおおおおおりゃあっ!」

 

 最後のとどめに顔面に拳を叩き込んで、凄まじい勢いでバギーが殴り飛ばされた。

 先程ビビが放り込まれた家屋の、窓ではなく壁を壊して内部へ姿が消える。轟音が鳴り響いた時にはバギーの姿は見えなくなっており、ルフィは一瞬笑みを浮かべた。

 

 回収船が到着間近。

 落ちていた金棒を拾い、アルビダが地面を滑って急速に接近してくる。

 

 先に気付いたのはビビであり、咄嗟に自身が迎え撃とうと走り出した。

 彼女との間にルフィが居る。当然声をかけて警戒を促したのだが、ルフィは逃げない。

 自らが迎撃すべくアルビダを見たのだ。

 

 「ルフィさん、私が!」

 「下がってろビビ。おれがやる」

 

 ルフィの一声を受けてビビは止まった。

 怒りを感じさせたり、威圧するような声ではない。その一言は驚くほど静かだった。しかしだからこそ彼の覚悟と本気を感じずにはいられず、止まったというより、止められたと言った方が正しいに違いない。

 

 アルビダがさらに加速して真正面から向かってくる。

 金棒が掲げられ、迎撃のためルフィが身構えた。

 

 「来なよルフィ! アタシを止めてみなァ!」

 「おぉし! ゴムゴムの~……」

 

 腕を後方に伸ばし、ルフィもまた自ら前へ出て、急接近した二人が攻撃を繰り出す。

 

 「星におなり!」

 「ブレットォ!」

 

 金棒にルフィの拳が激突した時、アルビダは目を見開いて自らのミスに気付いた。

 なぜ自身がビビにやられてしまったのか。おそらく彼女は気付いたのだろう。スベスベの肌は物理的な攻撃をスリップさせて無効化するが、彼女が持つ物はそうではない。宝箱も金棒も、ただ持っているだけで衝撃を受け流すことはできないのだ。

 今更能力の弱点を知り、甘く考えていたのは、自分の方だったと思う。

 

 ルフィの拳を受け、衝撃に負けて金棒だけが殴り飛ばされた。

 くるくると回った金棒はバギーの姿が消えた家屋の屋根を破壊し、その真下に居たバギーの体にドンとぶつかった上、やっと動きを止める。

 

 認めざるを得ない。

 やはり自分はルフィに負けたのだろう。

 

 ハァと溜息をついて、静かに腕を降ろし、アルビダは目を伏せる。

 ルフィも肩の力を抜いて子供っぽく笑った。

 目を開いた時、アルビダは優しく微笑んでいた。

 

 「まいったねぇ……やっぱりあんたには敵わないよ」

 「しっしっし」

 

 呟いた直後、空に上がった花火が大きな音を立てて炸裂した。

 ブルーチームの陣地に回収船が到着したようだった。

 

 《試合終了~! 波乱あり! 激闘ありと見応え十分だった第一回戦! 勝者は!》

 

 ごくりと観客たちが息を呑んだ瞬間、ハッタリーの絶叫が彼らを爆発させた。

 

 《ルフィ&ビビペア~!!》

 

 まるで優勝したかのような歓声だった。

 ルールやどんな展開になるか想像ができなかったトレジャーバトル第一回戦。彼らは初戦に相応しい戦いを見せ、この先の試合を期待させるという役割は大いに果たしただろう。

 

 試合の前から準備をして、策を弄して勝利を狙ったバギー。

 策を一切弄さず、己の身一つで向かってくる敵を全て弾き飛ばしたルフィ。

 海賊としての格を見せつけ、若輩の敵を焚きつけたアルビダと、見事それに答えてみせたビビ。

 初戦、トレジャーバトルは大いに盛り上がった。

 

 勝利を得たルフィは両腕の拳を突き上げて笑みを見せていた。

 同じくビビが跳び上がり、カルーと抱き合って喜びを分かち合う。

 

 「よっしゃ~! 勝ったぁぁっ!」

 「やったわカルー! 私たちの勝ちよ!」

 「クエーッ!」

 

 また、ブルースクエアの港では仲間たちが笑顔で叫んでいた。

 麦わらの一味は当然、ケイミーやパッパグも飛び跳ねんばかりに喜び、アーロン一味の一部も拳を突き上げて踊っている。そこに居たマシラやショウジョウも同じだった。

 一時は冷や冷やさせられたが、結果として彼らは勝利をもぎ取った。

 イガラムは大粒の涙を零しながらビビの勝利を喜ぶ。

 

 「うぐっ、ひっぐ、ビビ様……お強くなられましたっ。なんと立派なお姿に……!」

 「おいおっさん、いつまで泣いてんだ! ビビちゃんが勝ったぁ!」

 「いいぞいいぞぉ~! 強いぞル~フィ~! 強いぞビービィー!」

 「へっ、一味の船長なんだ。これくらい当然だろ」

 「よかった……ビビ、よく頑張ったわね」

 

 サンジとウソップが肩を組んで踊り、腕組みをしたゾロは不敵に笑って、ナミはほっと胸を撫で下ろす。反応は様々、しかし喜んでいるのは確かだった。

 まだたった一度勝ったのみ。大会は始まったばかりである。

 しかし大会の今後を左右する初戦で勝利し、その二人は確実に大会の旗手となっていた。

 

 出場者用の船でも喜びを露わにする者たちが居た。

 肉眼で試合を見ていたチョッパーが欄干の上に立ち、興奮して両手を突き上げる。

 その隣でエースが腕を組み、弟の成長を目で見て喜んでいた。

 

 「うぉおおお~っ! ルフィとビビが勝ったぁ~!」

 「強くなったな、ルフィ。ピストルみてぇなパンチってのも、今じゃ冗談じゃねぇか」

 

 彼らの傍ではキリとシルクが隣り合って立ち、同じく島の状況を見ながら話す。

 どちらも穏やかな笑みを浮かべていた。

 

 「キリが言ってた秘策ってカルーのこと?」

 「そうだよ。バギーが宴を抜け出してこそこそしてるのはすぐわかったし、性格的に何かしてくるとは思ったからね。念のために呼んでおいたんだ」

 「そうなんだ。とにかく無事に終わってよかった」

 「でもまさかミス・ウェンズデーとはね。流石にそこまでは予想できなかった」

 「ふふっ。あれがあったからビビも吹っ切れたみたいだったね」

 

 シルクがくすくすと笑っていた時、勝利を喜ぶルフィとビビ、それにカルーがやってきた。

 二人と一匹は岸に横付けされている船へと飛び移る。

 すぐさまチョッパーがルフィの胸元へ飛び込み、彼を受け止めた。

 

 「しっしっし! 勝ってきたぞ!」

 「ルフィ~! それにビビも、お前ら怪我は大丈夫か!? すぐおれが治してやるからな!」

 「おう、頼んだ」

 「ありがとうトニー君。それにキリさんもシルクさんも……ありがとう」

 

 ビビは柔らかい笑顔を見せ、彼らに礼を言った。

 その直後にはルフィにも礼を言う。

 

 「ルフィさんもありがとう」

 「いいさ。楽に行こう」

 「ボクらは何もしてないよ」

 「いいえ、私はあなたたちに守られていた……だけどもう心配いらないわ。これからは私もみんなと一緒に戦うから。私にもみんなを守らせて」

 

 晴れ晴れとした笑顔だった。

 憑き物が落ちたとでもいうのか、妙に肩の力が抜けている。

 キリとシルクは互いに顔を見合わせた。

 直後にはくすっと笑い、迷いのない笑顔をビビへ向ける。

 

 「じゃあお言葉に甘えて」

 「ビビ、最初から一人じゃないよ。みんなで一緒に戦おう」

 「ええ」

 

 ビビも怪我をしている。

 チョッパーは二人に座るよう促して治療を始め、次の戦いに影響がないよう手当てを急いだ。

 

 その間、エースは敢えて二人に声をかけず、移動を始めた一人の人物を目で追った。

 試合が始まった時から甲板の端で見ていた人物。Mr.Sだ。

 相変わらず素顔を隠して怪しい風貌だが、時折俯いて頭を押さえる仕草が気になった。頭痛でも感じていたのかもしれない。些細なことだがやはり目に付いてしまう。

 Mr.Sは船内へ移動していき、甲板からは姿を消した。

 

 この大会、もはやエースは優勝に対して興味がない。

 弟の成長と活躍も見れた。このまま優勝して欲しいとも思うが、その前に一つ。

 エースはキリの隣に立って彼にだけ言った。

 

 「この組み合わせになったのは、おれにとっちゃ幸福以外の何ものでもねぇ」

 「どうも気になるみたいだね。あの人」

 「ああ……絶対に負ける訳にはいかなくなった」

 

 初めは、弟のために少し手を貸してやろうと考えただけだった。

 それが今では、自分のために、同時にルフィのために確かめなければならないことがある。目を閉じて深く息を吐いた後、エースは海を眺めながら呟く。

 

 「準決勝はあいつらが来る」

 「うん……そうだね」

 

 ルフィとビビの傍に居るシルクとチョッパーには聞こえていない。

 それを悪いと思いつつも、キリは即座に頷いた。

 

 「だがおれにとっちゃその方が有難い。もちろんおれたちの初戦に勝つことが絶対条件だが、準決勝に行ったらよ、あいつとは一騎討ちがしてぇんだ」

 

 キリはエースの顔を見上げた。

 

 「頼むよ」

 

 じっと見つめてくるその目に迷いはない。冗談の類ではないのだ。

 大海賊と呼ばれてどれほど前へ進もうとも、彼にだって退けない一線がある。

 キリは力強く頷いた。

 

 「ありがとう」

 《さぁ~てそれではこの勢いのまま二回戦へ進もう! 舞台は変わり、常夏島へ移動する!》

 

 出場者が乗る船が動き出し、別の島へと移動する。すでに気絶したバギーと疲弊したアルビダも乗せられていて、羽を休めるためハッタリーと彼を乗せる鳥も船の甲板に居た。

 ブルースクエア北側の常春島から、東側の常夏島へ。

 そこは常春島よりも小規模で、戦いの舞台は一層狭くなった印象であった。

 

 島は楕円形。

 中央が緑のある土の地面。それを囲うように砂浜が広がり、さらに波打ち際までもが戦いのための舞台となっており、足が着かなくなる海の地点から柵で一線を引かれていた。

 

 その見栄えの通り、常春島ほどのイレギュラーは起こらない。家や港、無造作に置かれた荷物もなかった。先程と同じ展開にならない理由はきちんと存在する。

 言わばここは実力勝負のために用意された島と言ってもいいだろう。

 期待されるのは真っ向勝負で、次の試合に出てくる選手もそれを望む者たちだった。間髪入れずに次の試合へ移ったこともあり、観客たちの熱気は弱まるどころか倍増する。

 

 《次に出てくるのは話題の魚人族、アーロン&はっちゃんペア! そしてこちらも謎に包まれているが実力は確か! Mr.2・ボン・クレーが参戦だァ!》

 「楽しくなってきたわねぃ! 暴れるわよ~う!」

 

 移動距離はさほどないため、すぐに目的地には到着した。

 アーロンとはっちゃん、そしてMr.2も島へ降りる。

 中央の盛り上がった土の台座に宝箱が置かれていて、その地点を挟んで両チームが対峙し、いよいよ試合が始まろうかという時、ハッタリーが妙なことに気付く。

 

 ペアで参加することが絶対条件のトレジャーバトル。なぜかMr.2は一人しか居ない。

 昨日から気になってはいたが一夜置いて決定的となり、ハッタリーは彼へ声をかける。

 

 《え~、Mr.2選手。あなたのパートナーは今どこに……?》

 「なぁに言ってんのよぅ。受付にも言っといたでしょうが。あちしはあやふや、男で女、つまり一人で二人。パートナーは必要ないわぁん!」

 《はぁぁ!? いやいや、あんた一人じゃだめだっつーの!》

 「なんでよぅ! ここまで一人でやってんじゃないの!」

 《だからそれがだめなんですって! 大会は二人一組を絶対厳守! 今から失格ってのも興ざめなんで大目に見ますが、急いでパートナーを見つけてきてください!》

 「まったく融通が利かない連中ねぃ。今からそんなこと言われてもぉ……」

 《あんたがルールを守らないからでしょうがァ!》

 「そもそも海賊にルール守れなんてナンセンス! つってもあちし、海賊じゃないけどねぃ!」

 

 昨日から堂々とルール違反をやってのけたMr.2はいつも通りに回って豪快に笑う。

 しかし突然ピタッと止まって、なぜかハッタリーをじっと見つめ始めた。

 

 《なんですか?》

 「あらぁん? でもあんた、よく見ると結構いい男……シャルウィーダ~ンス?」

 《ワッツ!? まさかおれですか!? でもおれは主催者兼実況で……!》

 「ぐずぐず言ってんじゃないわよぅ! さっさと降りてこいやぁ!」

 《えぇえええ~!?》

 

 怯えた様子の鳥が自分の意志で下り始めてしまい、跳び上がったMr.2がハッタリーの首根っこを掴んで力尽くで降ろしてしまった。

 これで舞台に立った人間は四人になる。

 即席だがMr.2のペアが作られ、彼は上機嫌に笑っていた。

 

 「これで役者は揃ったわぁ~ん! トレジャーバトル始めましょうかぁ!」

 「ど、どうしておれがこんな役回りに……」

 《実況が出場するんじゃ仕方ねぇ。ここからはおれ様が実況してやろう》

 

 新たな声が聞こえてきて、大会を見守っていた全ての人間が首を傾げた。

 ハッタリーに代わってマイクを握ったのは、いつの間にか怪我も気にせず元気に動き出し、船内にあった予備のマイクを奪ったバギーだったのである。

 

 《ここからの実況は道化のバギー様が務めてやるぜ!》

 「あ、バギーが復活してる」

 「しぶといなぁあいつは」

 《うるせぇ麦わらァ! いいか、おれはてめぇに負けたわけじゃねぇぞ。ほんのちょっぴり油断しちゃっただけなんだもんね~!》

 「そんな子供みたいな。見苦しいよ?」

 《黙れ紙め! よっててめぇらと手を組むなんて話も無効だってわけだ!》

 「残念だなぁ。ナバロンの隠し財産もあったのに」

 《どうせハナから渡す気なんてねぇだろうが! ってだ~れの鼻が手渡せるだぁ!? こいつは取り外し可能な玩具じゃねぇぞ、自前なんだ! なんか文句あんのかクラァ!》

 「そんなこと一言も言ってないけど……」

 《と~にかく次の試合行くぞてめぇらァ! ついて来れねぇ奴は振り落としてくからなァ!》

 

 観客たちの驚きや、ハッタリーの落胆もあったが、とにかく試合は始められる。

 バギーの絶叫によって開戦の合図は出された。

 

 《二回戦は魚人どもとオカマと実況が戦うぞ! てめぇら、試合を開始しろォ!》

 

 荒々しい言葉と共に花火が上げられ、破裂した瞬間に試合が開始された。

 


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