ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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断章 世界の甲板から-2000万の男-

 1

 

 グランドライン、とある島。

 そこは外界とは隔絶された地下の空間だった。

 

 部屋と呼ぶには広大な一室で、高価そうな調度品がいくつか置かれているものの生活感とは無縁な空間。あくまで仕事のために立ち寄る場所で、決して住むような場所ではない。

 何かから隠れるような仄暗さがあり、ひどく寂しげな空気がある。

 

 ソファの一つに女性が座っていた。

 白いコートを身に纏って、同じ色の帽子をかぶっている。その下にはへそを出すような色っぽい衣装があって、女性としての魅力を見せつけるような外見であった。

 

 顔には微笑みを湛え、手には新聞を持ち、しなやかな指が紙に触れてカサリと音を鳴らす。

 

 不思議と気分が良かった。

 果たしてそれはなぜであったか、本人も理解していない。

 おそらく理由はいくつかある。

 見覚えのある顔を見たから。面白いことをしているから。また会うのだろうと思ったから。

 そしてもう一つに、彼が言った通りだったと思うからだ。

 

 「あなたが言った通りになったわ。彼が来る」

 

 女性がぽつりと呟き、同じ空間に居る人間へ声をかける。

 数十メートルは離れているだろうか。広大な空間の中で壁際に立ち、わずかに光を放つような水槽の前に立って、彼女に背を向けたままぴくりとも動かない。

 

 返答は期待していない。再び視線を新聞に落とす。

 手配書が出たことも聞いていた。額は確か2000万ベリー。

 初めてにしてはずいぶん高く見積もられているだろう。

 

 それも当然だろうかと、くすくす笑って肩を揺らす。

 

 「まだこっちには来ないのかしら。迎えを用意しなくてもいいの?」

 

 聞いてみるもののやはり返答はない。期待もしていないのだからそれでよかった。

 言わばそれは、どんな反応が返ってくるのだろうと試す言葉。

 想像通り、彼は何一つとして言葉を発しなかった。

 

 水槽の中でワニが泳いでいる。頭にバナナに似た突起を持つ奇妙な大型のワニ。

 男はそれを見ているのか、はたまた見る振りをして何かを考えるのか。

 

 女性は予想することもなく新聞を置いて、テーブルに置かれていた手配書を手に取る。

 そこに置かれているのを見ると先に見ていたに違いない。

 

 くすんだ色の金髪を持つ柔らかい笑顔の少年。

 不思議と以前より楽しそうな顔に見えてしまって、だから怒っているのかもしれないと、またくすくす笑い声を出した。

 

 彼が来る時を楽しみにして、今はただ静寂に包まれて待つ。

 

 

 

 

 2

 

 グランドライン、霧の海域。

 

 「ギャアアアアッ!? 骸骨が海の中から覗いてるッ!?」

 

 今にも崩れかねないほどボロボロになった帆船が一隻、どこへ向かうとも知れず漂っていた。

 

 「なーんちゃって! 実はあれ私の顔なんですけど。ヨホホホホッ!」

 

 人気のない船の上には奇妙な存在が一人。

 全身から肉が無くなり、骨だけになった骸骨が、アフロヘアーだけを残して動いている。

 死者ではなく、生者でもない。

 しかしそれでも、世界の常識を覆す奇妙な存在は確かに生物には違いなかった。

 

 「いやぁーしかし、こんなに大声で独り言言ってて誰かに聞かれたら恥ずかしいですねぇ。あんまり滅多なことは言えないかも……ひょっとしたら誰か聞いてるかもしれないし」

 

 きょろきょろ辺りを見回し、誰も居ないことを確認する。

 辺りは霧に包まれて静寂だけが広がっていた。

 骸骨は、一人だった。

 

 「まぁ誰も聞く人なんていないんですけどね! ヨホホホホ!」

 

 両手を上げて大げさなポーズを取りながら叫ぶ。

 ひどく大きな声だったが反応する者は誰も居ない。ただ霧の向こうにある闇に吸い込まれて消えていき、今日は静かな海原が、船底に波をぶつけて小さな音を作っていた。

 

 耳が痛くなるほどの静寂がある。

 心を苛むほどの沈黙がある。

 言い換えればそれ以外には何もない。

 

 何もない海を、誰も居ない船で、骸骨だけが漂っていた。

 どこへ行くのかは彼にも知ることができず、ただ波に任せるまま。

 

 「最近は人が乗る船なんて見かけないですねぇ。生きた人に会えたのはもう何年前でしょうか。見かけたとしても無人の船かただの残骸。やっぱり死体狩りの影響なんでしょうね。彼らに会ったのがもうずいぶん昔のことに感じられます」

 

 誰も居ないのだが、誰かに聞かせるように。

 どこかおどける態度を残して、楽しげに見えるよう、声を弾ませて一人で語る。

 

 「あれから何年経ったんでしょう。あの子は無事にこの海を抜け出せたんでしょうか。無事に外へ出られていたらいいけれど」

 

 ただ、気をつけなければ陽気さは薄れてしまう恐れがあった。

 ふとした瞬間、孤独なせいか、やはり感情は沈んでいく。

 

 「無事に出ていて欲しいものです。私と違って太陽の下で生きれるのだから、私とは違って一日でも長く生きて欲しい……そりゃあ、辛い想いはするでしょうけど。死にたくなるくらい辛かったでしょうけど。今も生きているのでしょうか」

 

 頭の中で過去を思い出せば、当然考える物がある。

 陽気さを心掛けていた声は徐々にしみじみとした物に変わっていって。

 

 「あぁ、でも、もし出られたのなら、せめてこのトーンダイアルだけでも彼らの下に」

 

 言いかけて、咄嗟に口を噤む。

 もはや唇のない、歯がむき出しになった口を閉じて、無理やり呑み込んだ。

 

 表に出さないよう努めていたはず。

 今出してしまえば胸が張り裂けるほどの苦しみに苛まれる。

 どうあっても孤独から逃げられない彼が精神を保って生きるためには、気楽に、笑って、何も思い出さないことこそが肝要。無理やりにでも想いを秘めていなければならない。

 本心を口にしてはいけない。嘆いてはいけない。

 何を語っても現状は変わらないのだから。

 

 「――何を馬鹿なことをッ」

 

 自らを叱責するよう呟いて、杖に仕込んでいた剣を抜く。

 片手で細身のそれを振り、鋭い突きを繰り出して、空気を切り裂いた。

 

 邪念を捨てるべく、同時に強くなるべく剣を振るう。

 服はボロボロ。骨もアフロも薄汚れている。どうにかする術もこの船には残されていない。

 今できることは強くなるための努力を続けることだけだった。

 

 「自分で渡すと決めたんでしょう。私はもう、死んで骨だけ。肉も神経も細胞も失くして、これ以上体が老化することはなくなった。殺されでもしない限り、きっと死なない。アイランドクジラも長命。これから何年、何十年、何百年経ってもチャンスは残っている。必ずまた会いに行く。影を取り戻して、必ずラブーンに“最期の歌”を届けなければ……!」

 

 繰り出す突きは見る見るうちに鋭くなり、空気さえ巻き込んで音が鳴る。

 頭を使って強くなろうとした。何度も修行を繰り返して力を蓄えた。

 全ては自由を得るために。

 

 「待っていてくださいラブーン。もう少しだけ、あとちょっとだけ。必ず届けますから、みんなの“声”を。何年かかっても必ず戻ります。ですから、待っていてくださいっ」

 

 やがて突き出した剣が止まり、腕から力が抜ける。

 深い喪失感に襲われていた。

 

 「あぁ、でも」

 

 がくりと膝をついて、忘れようとしていた光景が脳裏に蘇る。

 骨だけになって脳さえ失ったはずなのに、それは忘れた日などなく、今でも鮮明に思い出す。

 

 この船に仲間は居ない。

 霧の中で出会った気のいい海賊たちも居ない。

 友は遠く、舵の利かない船では辿り着けぬ場所。

 

 忘れようとした心を苛む辛さは、ずっと彼の傍に居た。

 

 「寂しいなぁ……」

 

 その声に応える者は居ない。

 あるのはただ巨大過ぎる孤独だけだ。

 

 

 

 

 3

 

 グランドライン、とある島。

 美しい女性が海辺に立っていた。

 

 肩ほどまで伸びた髪を海風に揺らし、身に纏うのは白いワンピースで、裸足で砂の上に立ち、打ち寄せる波に足首まで濡れて佇んでいる。

 遠く、果ての見えない海原を眺めて楽しげな微笑。

 彼女は一人、大好きな海を見ていた。

 

 「ゼナさ~んっ!」

 

 その浜辺へ、彼女を呼ぶ人物がやってきた。

 海軍のコートを肩にかけた小さな少女。何やら慌てた様子で走ってくる。

 女性は振り返って笑みを向けた。

 

 「ねぇ、これ見てっ! 新聞と手配書!」

 「どうしたの、そんなに慌てて。なんで手配書?」

 「新しいのが出たの! でね、これ見てこれ!」

 「も~そんなにがっつかないでよ。せっかちなんだから」

 

 ケラケラ笑いながら膝を折って、少女が掲げる手配書を覗き込む。

 ふと女性の表情が変わった。

 

 「どう? ゼナさんそっくりでしょ? 髪の色とかも一緒だもん」

 「あらほんと。ん~、これはひょっとしたらひょっとするのかしら。いや、でも……」

 「知ってるの? あ、わかった。生き別れた弟とかじゃない?」

 「あー違う違う。だって私一人っ子だし、生き別れる状況なかったもん」

 「でもこんなに似てるのに。ただの赤の他人なの?」

 「いやぁ~どうかなぁ。それより可能性があるとしたら」

 「うんうん」

 「私の子供かなぁ?」

 

 考え込む仕草を見せながらそう言えば、少女は目をぱちくりと開閉させた後、大声で叫んだ。

 

 「えぇええええ~っ!? ゼナさんの子供!?」

 「うん。私だってこれでも出産経験あるんだよ。むふふ、でも見てほら、全然そうは見えないでしょ。奇跡のボディって言われてるんだから」

 「そんなの言われてるなんて知らないけど。だってゼナさん今いくつ? この人もう大人だよ。ゼナさんの年齢で産んでたらこんなに大きくなってないよ」

 「あ、嬉しい。それって私が若いってことよね。まぁーそれも当然なんだけどねぇ、んふふ」

 「え? ゼナさんって結構おばさんなの?」

 「失敬な。おばさんじゃなくてお姉さんなの。大人のレディに年齢の話はご法度よ」

 「う、ごめんなさい」

 

 女性が満面の笑みを浮かべておどけるように言う。

 

 「でもちょっとだけ種明かしすると、実はねぇ……お姉さんは魔女なのだ!」

 「えぇっ!? 魔女!?」

 「どう? すごいっしょ?」

 「ウソでしょ」

 「なっ、失敬な。ウソじゃないよ、ほんとだもん」

 「ほんとの魔女は自分から魔女だなんて言わないもん」

 「そんなことないわ、自分からだって言うわよ。だってほんとのことだもん」

 「絶対言わない」

 「いーえ言います~。だって私が本物だもん」

 「証拠は?」

 「んん?」

 「本物だったら魔女っぽいことできるんでしょ。証明してよ」

 「むむ、そう来たか。そう言われると困っちゃうんだけどなぁ~……」

 

 そう言われて女性は笑みから一転して困った顔になり、少女が攻勢に回ったようだ。

 

 「やっぱり証明できないじゃない。ウソだったんでしょ?」

 「違うの。ウソは言ってないけど、それはほら、証明しようがない気もして。むしろこの美貌が証明っていうかさ、この若々しさが全てを物語ってるっていうか」

 「へ~」

 「あぁっ、冷たい目!? そんな目しないでよヨーコちゃん! 今まで仲良くしてたのに!」

 「美人のそういう言葉ってふざけてても罪が重いよ。あんまり言わない方がいいと思う」

 「そう? 事実なのに。う~ん、じゃあどうやって証明しようか……」

 「もういいよ。ウソだったって認めて謝ってくれれば」

 「やだ。だってウソじゃないもん。いや、別にウソって言ってもいいけどさ」

 「ほらウソじゃない」

 「違うもん。ちゃんと証明できるもん」

 「ゼナさんって、ほんとに子供だよね……」

 

 呆れる少女の視線を気にせず、女性が辺りを見回し始める。

 砂浜に落ちている小さな木材があった。

 よし、と気合いを入れ、彼女はそちらに歩き出しながら少女の手を引く。

 

 「ふふん、見てなさいヨーコちゃん。私が魔女だってとこ見せてあげるわ」

 「別にもういいんだけど。それよりこの手配書の人のこと――」

 「いいえ、その前にこっち。はっきりさせないとちゃんとしゃべれなくなっちゃうもん」

 「めんどくさいなぁ……ゼナさん、大人になった方がいいよ」

 「もうなったわよ。どこからどう見ても大人でしょ」

 「例えば?」

 「胸とかお尻とか。あと腰も」

 「あぁ……」

 「ま、またバカにする目を!? もうっ、絶対認めさせてあげるからね!」

 

 二人は木片に歩み寄り、女性がしゃがんで手を触れた。

 

 「見ててね。すっごいことが起こるから」

 

 そう言った後に立ち上がった途端、木片は独りでにふわりと浮いた。

 少女はおぉっと声を漏らす。

 

 「ほらほら、フワフワ~。どう? すごいでしょ」

 「わぁっ、なにこれ! ひょっとして魔法?」

 「うーん違うんだなぁ。でも当たらずとも遠からずってやつ?」

 「ねぇねぇ、私も浮かせてよ! 空飛んでみたい!」

 「あ、それは無理。だって人は浮かせないもん」

 「え~っ!? なんで!」

 「誰にだってできることとできないことがあるの。むしろできることを褒めてよ」

 「あんまりすごくない」

 「あっ、ずるい! さっきすごいって言ったのにもう変えた!」

 「だって私が飛べないんだもん。魔女ってそんなにすごくないんだね」

 「むむむ、そこまで言われたら仕方ない! じゃあ一番すごいやつ見せちゃうからね!」

 

 いよいよ女性が怒り始め、少女が嘆息するのも無視して海に一歩近付いた。

 独特の構えを見せて右腕を振りかぶる。

 その姿勢で静止し、少女が見つめていると、右手に握った拳が白い光を放ち始めた。

 

 あれはなんだ。

 そうして見ていると女性は目にも止まらぬ速さで右腕を振り抜き、大気を叩く。

 

 白い光によるものか、見る見るうちに空中に亀裂が入った。ビキビキと何かが割れるような音も響いていて、少女の全身に今まで感じたことのない感覚が走る。

 背筋を震わせ、凝視することほんの一秒足らず。

 亀裂から放たれるように凄まじい衝撃波が轟音を立てて走り、海水が巻き上げられて一瞬の内に荒れ狂い、女性の前方にあった海が一直線に割れた。

 

 言葉に出来ぬほど強烈な一撃を受け、荒れた海を見ながら少女は立ち尽くす。

 何も言えなくなってただ信じられなかった。

 波が落ち着く前に少女が女性を見上げて、悪戯っぽい笑顔を確認する。

 

 「す、すごい……なにこれ」

 「ん~? 魔法」

 

 いつも通りの彼女だった。

 少女は肩を揺らす女性を見る目まで変えて、呆然としたまま言葉を絞り出す。

 

 「んふふ~どう? 見直した? お姉さんのこと尊敬したんじゃない?」

 「う、うん。ほんとだとは思わなかった……」

 「えっへん。ブイっ」

 

 ピースサインを見せて無邪気に笑う女性。とてもさっきの威容を見せた人物とは思えない。

 少女はしばしぼんやりしたままだった。

 

 「だからお姉さんの年齢については聞いてはいけないよ、少女よ。まぁ種明かししちゃうと老化が遅いだけなんだけどね。だからほんとはそこそこになってるの」

 「へぇ~……」

 「子供を産んだのもほんとだよ。愛するダンナさんがいたし、子供と別れる時はそりゃもう泣きじゃくって嫌がって大変だったんだから。あ、ちなみに泣いたの私ね」

 「なんで、別れちゃったの?」

 「危ないから。私、これでも結構有名人だからさ。子供は元気に育って欲しかったの」

 

 女性は少女の隣に並ぶとしゃがみ、手を掴んで、その手に握られた手配書を二人で覗き込んで静かに語る。妙に遠い目で、どことなく寂しそうな笑顔だ。

 

 「うーん、私に似ちゃったかぁ。ダンナさんに似たらかっこよかったのになぁ。ダンナさんラブの私としてはそっちの方が嬉しかったかも……えへへ~、でも私に似てもかわいいね」

 「また自慢」

 「だってほんとのことだもーん。会いたいなぁ……」

 

 少女は女性の顔を見つめて尋ねた。

 

 「いいの? 海賊になったんだよ」

 「うん、いいよ。だって私も海賊だったし。血は争えないってやつかな。仕方ないよね、きっと私の子なんだもん。顔も髪の色もそっくり。かわいいし」

 「会いに行かないの? 会いたいんでしょ」

 「うーん、でも向こうは私のこと知らないかもしれないの。だって自分で育てなかったお母さんなんだよ? 嫌われたりとか拒絶されちゃったら立ち直れなくなっちゃうもん」

 「ゼナさんでもそんなの気にするんだ」

 「あれ? それってどういう意味よちょっと。ヨーコちゃん」

 「だって、いつもの感じ見てたら」

 「この子は失礼な子だなぁ。どうしてそうなっちゃったんだっ」

 

 女性が力を入れて少女の頭を撫で、どちらも笑顔でじゃれ合う。

 少しそうして遊んだ後、立ち上がった女性が海を眺めて言う。

 

 遠い空の下、息子が居るかもしれない。

 こちらの海に来ればいいなと自然に思っていた。

 

 「もしあの子がここまで来たら、その時は自分から名乗るわ。私があなたのお母さんだよって。かっこいいダンナさんの話もしてあげなきゃいけないし、まぁ私も色々ありましたから? 海賊の先輩として武勇伝の数々を聞かせてあげてもいいと思ってる」

 「私も聞きたい、私も!」

 「え~そう? でも結構過激だよ? 丸くなるまで時間かかったもんなぁ」

 「どんなことしたの? 相当のワルだった?」

 「そりゃもう、ワル中のワルよ。ロジャーはイーストブルーの誇りって言われたりしたけど私はイーストブルーの恥って言われたもん。なんていうか、うん、若気の至りってやつ」

 「興味あるっ。ねぇ、聞かせてよ」

 「じゃあちょっとだけね。子供のためにとっといてあげなきゃ」

 

 女性は少女に笑いかけた後、海を見ながら言葉を紡ぐ。

 

 「私はね、物心ついた頃に海賊になったの。最初の航海は――」

 

 風が薙いで、彼女の髪を遊ばせた。

 少し独特なくすんだ色の金。

 

 彼女の声は涼やかに風と混じっていった。

 


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