居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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ここに星晶石があるじゃろ?
単発引くじゃろ?
マギサが出るじゃろ・・・・・・え、カリオストロ何処・・・


番外編:

 

撮影の後一波乱あったが、割愛したいと思う。

 ウェディングドレスの撮影から1週間、デビューしたての凸レーションの三人の仕事が決まった

 

「服のブランドとのコラボって言われても、善し悪しがわからんよな」

 

 今回のコラボ先の『PikaPika PoP』は、若者向け+女性用の服がメインの会社である。男性陣からすればコラボしてもあまり関係無いのでは?知名度的に大丈夫なのかと不安になったが、今回は路上でお披露目をするらしく、幼さの中にある可愛らしさがウリの赤城や、姉ヶ崎の妹というだけでも十分なネームバリューであるのに、カリスマJCギャルとしても知られている城ヶ崎、とにかく凄い諸星の組み合わせと来れば、道行く人も立ち止まってくれること間違いなしと言えるだろう。

 

「先輩は、その日はお休みでしたよね」

 

 そうである。その日は嬉しいことに丸一日完全フリーとなる休日となっている。ここ最近仕事に忙殺されかけていたため、この休日は天からの贈り物かと思った。千川は悪魔である

 

「そういえばなんだかんだで、武内君だけ付き添う仕事って初めてになんのか?」

 

「以前はそうでもありませんでしたが、CPの企画を引き受けてからは初でしょうか」

 

 ラブライカのデビュー、ニュージェネレーションズのデビュー、キャンディアイランドのデビュー全て俺も付き添っていたため、こうして彼が一人で仕事をするということが何故か嬉しい。過去の出来事から一度はこの道を諦めてしまうのではないかと、不安になった時期もあったが、それが今はこうして立ち直り、なんだか嫁に行く娘を見送る気分である。武内君男だけども

 

「まぁ携帯の電源はちゃんとつけとくし、何かあったら直ぐに連絡してくれよ」

 

 折角の休みでも、仕事が来る可能性もあるわけなので。念のため電源は消さないでおかないといけない。千川には何時も電源落とさないでくださいと言われたが、電源付けっぱなしにしておくと際限なく鳴り響くのだ、メールの通知だったり着信だったりと。三浦もこんな思いしてんのかな・・・

 

「一先ず、今は休日の事は考えないで仕事を頑張りますかー」

 

「そうですね、夏に向けてまた忙しくなるでしょうし」

 

 夏に向けてと言うのも、早い話かもしれないが夏フェスの開催が決まっている。部長も笑顔でOK出してくれたこの話。会場を抑えるのも忙しい現状では中々に面倒くさい

 

「はー、一日が24時間じゃ無ければ仕事も楽になるのに」

 

「有り得ない事考えても意味無いでしょう、また今度、時間があれば飲みに行きましょう」

 

 珍しく武内君から飲みに誘われて、少し上機嫌になりつつ、その日はひたすら仕事をこなしていった

 

 

 

 

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 待ちに待った休日である。

 少し日差しが強くなった今日この頃、多くのお店の中で冷房がガンガンつけられて温度差に体調を崩さないか心配になりつつも、人通りの多い道を何処に行くわけでもなく歩いていく。

 のんびりと歩いているとクレープ屋だったり、かき氷の店だったりと並んでおり少しだけ惹かれてしまうが、個人的には甘い物と来れば和風が一番である

 

「小腹が空いた・・・」

 

 どこぞの営業マンではないが、適当なお店に入ってアームロックを決めるのもありかもしれない。違った、食事をするのもありかもしれない。何処かにいいお店は無いものかと探しながら歩いていると何処かでみたトリオが目に入る。見れば少し慌てている様子であり、一目でわかる武内君がいない。これはまた彼は何時もの場所に連れていかれたのかと思いながら、さらば休日と少しテンションを下げながら近づく

 

「あ、おじさん!!」

 

 テンションだけではなく、メンタルががりがりと削られた気がする

 

「・・・どうしたのお前等・・・。武内君は一緒じゃないのか・・・?」

 

「神楽さん、元気だすにぃ・・・。みりあちゃんも悪気があって言ってるわけじゃないにぃ・・・」

 

 わかってはいるが、ダメージは受ける。諸星に慰められながらも、しっかりと何があったのか聞いておく。プロデューサーが迷子だ!

 

「赤城はあれだな、純粋だな」

 

 武内君が迷子になったのではなく、自分達が迷子になったということに気付かないあたりが純粋

 

「お姉ちゃんにも電話したんだけど、こっちに向かってるって言われて」

 

「姉ヶ崎仕事じゃないの?」

 

「ちょうど終わったらしくて、急いで向かうって言ってくれたよ!」

 

 急ぐって言っても、仕事先が何処かは分からないがそんな直ぐ来るわけもないだろう。仕方がないと思いながら、一先ずは俺が付き添うことにする

 

「というか、今何してたの?」

 

「んっとね、プロデューサーが時間あるからって言って、私達に少し時間くれて色々見て回ってたの!クレープ食べたり、蘭子ちゃんの服が置いてあるお店とか一杯見て回ったんだー!」

 

 笑顔で嬉しそうに告げる赤城の頭を撫でながら、良かったなと優しく告げる。えへへと笑う赤城に少し何かが目覚めそうになるが、煩悩は退散させておく

 

「まぁ武内君がいなくなったのは問題だけど、俺もいるし千川に連絡しとくわ」

 

 一先ず仕事の時間が近づいているらしいので、千川に少し遅れるかもしれないと連絡することに。携帯を取り出すべく、胸ポケットに手を突っ込むが、画面が暗いままである

 

「電源切れてら」

 

「神楽さん・・・」

 

 やめろ諸星、本気で残念な物を見るような眼をするな。俺は悪くない、夜中に通知を沢山残す担当と吊り橋トリオが悪い。良い子は早く寝ろよ・・・

 

「まぁ幸い城ヶ崎も携帯持ってるし、問題はないだろ」

 

 少し借りるぞと、城ヶ崎から携帯を渡してもらい事務所に電話する。少しのコールが聞こえた後に、聞きなれた声が響いた

 

『はい、こちら346プロダクションです』

 

「ん?新田か、すまん千川に代わってくれるか?」

 

 新田が出たことに少し驚くが、今は先に千川に代わってもらい武内君を迎えに行ってもらわないといけない。例のごとく武内君交番にいるだろうし・・・

 

『ちひろさんにですか?分かりました、少し待っててくださいね』

 

 ちひろさーんと千川を呼ぶ声が聞こえて、少し待つと千川が出る

 

『はいお電話代わりました、何か御用ですか神楽さん』

 

「うん、簡潔に説明すると武内君交番にいるだろうから迎えに行ってくれない?」

 

『またですか・・・。分かりました、プロデューサーが何処にいるかわかりますか?』

 

 現在いる場所から、たぶんこの交番であると当たりを付けて伝えておく。

 

『わかりました、直ぐ向かいます。イベントの方はどうしましょうか、皆さん間に合いそうですか?』

 

「そもそも俺時間把握してないんだが、次の会場と開始時間は何時ごろだ?」

 

 次の会場と時間帯を聞いて、間に合うか微妙なラインだなと少しげんなりする

 

「一応間に合わなかった場合の替えとして・・・事務所にいるメンツで三人くらい向かわせてくれ」

 

 そう頼み、わかりましたと言われたので電話を切って城ヶ崎に返す

 

「一先ず武内君は大丈夫だろうし、俺達も会場に向かうとするか」

 

 三人を見渡してそう告げると、城ヶ崎の携帯に着信が来る。誰からなのかと思ったが姉ヶ崎からだったみたいだ。幾つか言葉を交わしたあと、歩いてきた人が城ヶ崎にぶつかり携帯を落としてしまう

 

「す、すみません!ぼーとしてて・・・」

 

「電話、壊れちゃった・・・」

 

「城ヶ崎、何とかしてやるから後でな・・・。こちらこそすみません、立ち止まったままで」

 

 壊れた携帯は後で事務所持ちで修理に出すことを考えながら、一先ず謝って移動を開始する

 

「しかしあれだな、城ヶ崎の携帯ごちゃごちゃしてるけど、重くないの?」

 

「えー、今どきのギャルならこれぐらい普通だよ?」

 

 ストラップ盛りだくさん、キラキラ沢山が普通のJCに少し恐れながら歩いていると、城ヶ崎が顔を顰めた。その様子を怪訝に思い、少し歩きづらそうに足を踏み出しているのを見て一度立ち止まり靴を脱がせる

 

「靴擦れ起こしてるな、痛かっただろうに」

 

「にょわぁ・・・ごめんね、きらり気付かなかったにぃ・・・」

 

「わ、私絆創膏あるよ!」

 

 心配そうに声を掛ける二人を見て、このグループも大丈夫だろうと少し違った考えを持ってしまう。それとは別に、このままでは城ヶ崎のペースに合わせて歩いていると、開始に間に合わなくなってしまう。どうしたものだろうかと悩んでいると、赤城が唐突に、しかし中々良いアイデアを出した

 

「ここからライブ始めようよ!」

 

 

 

 

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 結論、間に合った。

 間に合ったけど、赤城のアイデアでここまで歩きながら歌いながらPRしてきた。その際に、歩くのが辛そうな城ヶ崎を諸星が肩車して、それを見て羨ましそうに見ている赤城がこちらを見上げてきてその眼に負けて、赤城をここまで肩車する羽目になった。しかもそれを大勢の人に見られながら歩くという羞恥プレイ。アイドルを肩車している謎の男性として広まったら、俺今後顔出しすることがあったら出せないかも知れない・・・

 さらに追い打ちを掛けるように、現場に到着して俺を待っていたのが姉ヶ崎のごみを見るような目である。俺が望んで肩車をしたわけでもないのに、親の仇でも見るように睨みつける姉ヶ崎、正直怖かった。しかも肩車をしている赤城を羨ましそうに見る神崎まで両手を前に突き出すようにして強請ってくるものだからもう大変。

 

「神崎、お前スカートだし肩車は諦めろ、な?」

 

「んっ!」

 

「んっ!じゃなくて、スカートで肩車したら見えちゃうだろ?女の子としてそこはやめとこう?」

 

「んっ!!」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・んっ!!!」

 

 結局折れてしまい、肩車をする羽目になった。千川や武内君が微笑ましいものを見ているように眺め、渋谷にロリコン扱いされ、新田が次は私ですねと言い出す始末。こんな休日に誰がした

 

「武内君、後で説教な」

 

「勘弁してください・・・」

 

 だが断る。

 とりあえず、今回の仕事も無事に成功した。代わりに俺は休日を失って、ロリコンと言う称号を与えられた、大変な休日だったと思う




最後の方は駆け足ですが今日はここまで

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