居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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五分でモバマスを理解出来て満足


安倍菜々:幸せの空気

カーテンの隙間から差し込む日差しに、瞼を擦りながら二度寝の為にと布団に入り込む

 

「悠人さーん、朝ですよー!」

 

大声で部屋に入ってきた菜々に阻止された。

響き渡る大声に、周子ちゃんも起き上がるのではないかと思ったが、確か仕事の為に二三日家を開ける予定になっていたのを思い出す。つまりは被害者は俺だけである

 

「菜々、今何時っすか…」

 

「菜々…、いい響きですね、呼び捨てって…。ハッ!いいから起きてくださーい!」

 

そんな声にもぞもぞと布団から頭を出す。時間を教えて貰えなかったので自分で壁に掛けてある時計を見る。時刻は朝の7時

 

「わんもあすりーぷ」

 

「だ、め、で、すっ!約束通り今日は夫婦見たく過ごすんですから!菜々の目が黒い内は不規則な生活なんてさせませんよー!」

 

ウサミンパワー、ファイッ!オー!

なんて叫ばれては起きるしかない。被っていた布団をはいで立ち上がり

 

「おはようございます、菜々」

 

「はいっ、おはようございます、悠人さん!」

 

朝の挨拶を交わす。

そのまま顔を洗うために洗面所に向かい、冷たい水道水を顔に叩きつけるようにして洗い、目を覚ます。

タオルを探して手を動かすと

 

「はいっ、どーぞ!」

 

いつの間にか隣に菜々がタオルを持って立っていた。タオルを受け取り、顔を吹きながらふと思う

 

「ダメ男製造機…」

 

「な、なんですかその不名誉な称号は!」

 

何か菜々がいれば俺のやることが無くなってしまいそうである。だからダメ男製造機。

 

「そんな称号要りませんから…。そんな事より、朝ごはん出来てますから、行きましょう!」

 

そうして手を取られて、並びながら歩き出す。

 

 

 

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「おぉ…」

 

「どうですか?意外と美味しそうでしょ?」

 

言ってはあれだが、菜々は料理が出来るのかと不安だった。基本的には俺が何時も食事を用意するし、よくて手伝ってもらう程度だ。

それが、今では俺の目を奪うような光景が広がっている。

卵焼きに焼いた鮭の切り身、サラダに目玉焼きと豆腐とワカメの味噌汁。切り干し大根に納豆と味付け海苔。ゴキゲンな朝食である。卵焼きと目玉焼きとで被っていたが、ニコニコ笑顔の菜々を見て、指摘する必要はないと判断する。

 

「さぁ、召し上がれ!」

 

「頂きます」

 

対面に座り、食べ始めた菜々を見て、自分もと思い卵焼きに箸を伸ばす。箸で触れた卵焼きはふっくらとしており、よくある焦げ目で中の層が黒くなっている、なんてことは無い

 

「……甘い」

 

「菜々のお家は砂糖で味付けするんですよねー。悠人さんが出すのは出し巻き卵ですけど、どうでしたか?」

 

初めて食べた砂糖入の卵焼き。温かく、優しい味の卵焼き。

 

「凄い、美味いよ菜々」

 

正直お店に出すのもありかと思える程美味い。店には既に出し巻きがあるが、菜々の砂糖入の卵焼きを出す事を考える。

次に手を出したのは味噌汁

 

「……ふぅ」

 

「味噌汁はお母さんから教わったやつなんですよー。ちゃんと煮干の腸も取って、一から作ったんです」

 

知らぬ内に漏れたため息が、味の証明である。温かい味噌汁を飲んだだけで、心が落ち着いたように思える。これがお袋の味なのだろうか…。

向かいに座る菜々の顔を見てみる。彼女は笑顔でこちらを見続けていた。

 

「美味しいよ菜々」

 

「ありがとうございます」

 

そう告げると、物凄く嬉しそうに彼女は笑った

 

 

 

 

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食後にどうぞと渡されたお茶を飲み、一息つく。

 

(このままだと、ダメ男になってしまう)

 

流石にまずいと菜々にやる事は無いかと訪ねたのだが、洗濯機は既に回されており必要無い。では掃除をしようと思ったら既に完璧に終わっている。

 

「菜々はもうメイドでも十分働けると思う…」

 

「いやーナナは本職の人と比べたらまだまだですよー」

 

ポツリと呟いたそれは聞こえていたのか、否定されてしまった。何でも本職の人は読心術を使うのが基本らしい。成程櫻井家は魔窟だったか。

 

「それに…、ナナはメイドよりも奥さんの方が良いですから」

 

照れたように喋る菜々を見て、こちらも照れてしまう。そしてそのまま、沈黙が場を支配する。

 

(なんか、甘い…)

 

空気が甘い。意味不明な表現が浮かび、どうにかこの空気を変えようと思った時に、洗濯の終わりを告げる音がなった。

 

「あ、ナナ取ってきますね!」

 

そう言って彼女は走り出し、戻ってきた時には籠の中に洗濯物を詰め終えて抱えていた。

 

「菜々、手伝うよ」

 

大量に抱えていた洗濯物を見て、流石に手伝わないわけにはいかないと思い声を出す。

 

「いいんですか?こういうのは、奥さんのお仕事だと思うんですけど…」

 

「今の時代男性が家事するのも普通何だし、菜々ばっかり仕事してるのも悪い気がするし手伝うよ」

 

じゃないと本格的にダメ男になってしまう。

菜々は笑顔で申し出を受け入れて、階段を登っていく。俺もその後を追うようにして付いていく。

今日は日差しが強いため、乾燥機で乾かすのをやめてベランダに干すことにした。自室の窓からベランダに出て、干し始める。

 

「いい天気ですねー!」

 

「確かに、散歩に行くのもありかも知れないですね」

 

そんなやり取りをしながら、洗濯物を干していく。ふと、見慣れない小さな下着を手に取ってしまった。

 

(縞パン…)

 

恐らく菜々の物であろうそれを眺めて、流石にまずいと思い籠の中に戻す。何食わぬ顔で作業を続けようとした時に、目が合った。バッチリと見られていたらしい

 

「べ、別に夫婦何ですし!下着を見られた位で恥ずかしがる程ナナは子供じゃないですし!」

 

そう言いながらも、しっかりと自身の下着を抱え込んだのは見逃さない。

その後も黙々と洗濯物を干していく。紛れ込んでいた周子ちゃんの下着もしっかりと菜々が干していた

 

 

 

 

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家事を一通り終えて、のんびりと隣りあってテレビを見ている

 

(今は…11時か…)

 

朝食を満足行くまで食べたからか、昼食の心配はしなくても良いだろう。

アクビをひとつこぼし、隣に座る菜々を見る。菜々は夫婦の様に過ごすだけで良いと言っていたが、このまま何処にも行かずに居るだけでいいのだろうか。欲が無いのかと思うが、そもそも欲が無ければ『菜々』と呼び捨てにする事すら望まないだろう。

菜々さんは、周子ちゃんと違った魅力がある。周子ちゃんは綺麗で、菜々さんは可愛い。アプローチの仕方もまた違うのかも知れない。周子ちゃんはガンガングイグイくるタイプだったが、菜々さんはこうしてのんびりと過ごす事で距離を縮める感じである。渋谷凛や佐久間まゆといったストーカー行為に近しいアプローチもあるが、それを実践されないだけでも良しと思う。

そうして、菜々を見つめていたら視線が交わった。

すると、何を思ったのか彼女は目を瞑り、口をこちらに少しだけ出してきた

 

(いや、これは流石に不味いかと…)

 

このまま口付けをするのは、流石に無理があったので。前髪を掻き分けておデコにそっと口付ける。すると菜々はそれに気付いて花が咲いたように微笑んだ

 

「周子ちゃんが言っていたんです、悠人にキスしたって。だからナナはさせちゃいましたっ」

 

そう言って可愛らしく舌を出す彼女に、トゥンクと胸が高鳴る。それに恥ずかしくなり、彼女にデコピンをする。「へごぉ!」なんて女性が出すような声ではない悲鳴を上げておデコを摩る彼女を見て、笑ってしまう

 

「メメタァって鳴りましたよ今!」

 

そんな突っ込みに素知らぬ顔で「気のせい」と返す。納得していない顔でこちらを睨んでいた菜々であったが、閃いたと言わんばかりに顔を輝かせて

 

「えいっ」

 

俺の足に頭を乗せるように倒れ込んできた。所謂膝枕の状態である。

それに慌てるのは当然である。菜々が見上げるようにしてこちらを見るものだから、思わず照れてしまう。

照れてばかりだなと思ったが仕方が無い事だと思う。いつもと雰囲気が違い、可愛らしさの中に色気が混ざっている感じがするのだ。今のこの状況もそうである、自然と上目遣いになった彼女、少し潤んだ艶のある唇から何故か艶めかし吐息が漏れており、思わず喉を鳴らしてしまう。

 

「ナナ、こうして好きな人に膝枕してもらうのが夢だったんです」

 

止めさせようとした矢先、話し出す

 

「お母さんとお父さんが、こうして膝枕してる時。二人とも凄く笑顔で幸せそうにしてるんです。それを見て、夫婦って良いな、愛し合うってこういうのを言うんだろうなって、ずっと思ってて…。だから、今こうして膝枕してもらってナナは幸せなんですっ」

 

恥ずかしいですけどね?

そう言って俺には見えないように顔を隠す菜々。それを聞いてこちらは顔が赤くなっていくのがわかる。

正直、この可愛さは反則だと思う。普段のポンコツっぷりも交わって今のこの菜々とのギャップに正直魅力を感じる

 

「菜々、少し散歩しに行こうよ。途中でパンとか買って、ピクニックみたいにさ」

 

このままだと取り返しのつかないことまでしてしまいそうで、逃げるように話を変える。

それに彼女は気が付いたのか、少し不満気に口を尖らせてアピールしてくる。不機嫌ですよーと目が語っている。

それに苦笑して、どうですかと訪ねる。すると彼女は笑顔で頷いて、支度をするために部屋に戻っていった。

自分も支度をしなければと立ち上がり部屋に戻る。そして、一人になったからなのか色々と考え出す。

ここまで菜々さんが魅力的な女性に思えたのは、失礼かも知れないが初めての事である。だからなのか、する事全部が魅力的に思えてしまい。何度か狼になりかけた。流石にそれは脳裏に周子ちゃんの顔が浮かんで行わなかったが、菜々さん一人に想われていたら作ってワクワクしてた。

考えが少し変な方向に向かっている事に気付き、軽く両頬を叩いて切り替える。

外は日差しが強いこともあり、少し暖かい。薄手のシャツを羽織り、手荷物を片手に部屋を出る。

すると向こうもちょうど支度が終わったのか、鉢合わせした

 

「ど、どうですか?」

 

そうして少し落ち着かない様子で髪の毛を弄り出した菜々。最初は何を聞かれているのかわからなかったが。

 

「似合ってます、可愛いですよ」

 

そう答えると、彼女は笑みを浮かべて「嬉しいです!」と喜んでいた。

そんは彼女の手を取り、歩き出す。

一先ずは、行先を決めずにふらふらと歩き回ろう。

 

 

 

 

 




砂糖マシマシキャラメルシロップマシマシチョコレートシロップマシマシガムシロップマシマシの何かを飲んだ気分

本当はもっと早く投稿する予定だったけど、携帯がイキナリ電源落ちて冒険の書が消えた状態になったので書き直し

泣けるぜ…

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