居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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今回はアニメでいうところの4話のお話です。この作品の中では動画撮影の前にデビューさせてます。理由?作者も何故この順番にしたのかわかってない。
ハーレムエンドよくわからんぞ!個人エンドにしたいでござる・・・


番外編:敢えてライブ後にPR動画を撮影するスタイル

「渋谷さん、本田さん、島村さんの三人には、これからPR動画の撮影をお願いしたいのですが」

 

「PR動画ですか?」

 

 島村の当然ともいえる疑問に、武内君の代わりに答える

 

「お前等三人と、新田とアナスタシアのデビューが終わったことで、少なからずCPの名前も知られてきた。だからこそ、もっと知ってもらうためにPR動画を撮影して皆に更に知ってもらおうってわけ」

 

「ふむふむそれはわかったけど、どうして私たちが?」

 

「ん、単純にお前等コミュ力強そうだから」

 

「何とも言えない理由だね・・・・・・」

 

 実際の所ライブの翌日ということでこの三人は今日レッスンも無く暇してる人たちである。休日なのに事務所に来ている理由は分からないが、暇なら仕事を押し付けたくなるのが俺だ。

 

「PR動画ですかー、面白そうですね!」

 

「まぁ、特にやることもないし別にいいけど・・・・・・」

 

「よーし、この未央ちゃんに任せなさーい!」

 

「撮影の内容として、皆さんの自己紹介と一緒に、自己アピールをお願いします」

 

 PR動画だし最低限それぐらいは欲しい。後の内容は彼女達に任せるとして、俺たちは仕事に戻ることにした

 

 

 

 

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「で、何でお前がここにいんの?」

 

「不思議な事を聞くものでしてー、そなたがいる場所に私がいるのは当然のことでしてー」

 

 一仕事終えて喫茶店でウサミンパワーと無駄に注入してもらったコーヒーをのんびり飲んでいたら、自然に隣に座って来たこの少女。見た目が完全に赤城や橘と同じ位なのだが、立派に女子高校生である

 

「何か失礼な事を考えられたようでー」

 

「ナチュラルに人の考え読むの、頼むからやめろ」

 

 相変わらず不思議な雰囲気を放つ子である。この子と初めて出会ったのは、去年の三月の事。医者に余命を告げられて呆然としていた所、公園にて先の事を考えている時に出会った

 

『ほー、何とも不思議な因果の持ち主でしてー』

 

 開口一番意味の分からない事を言い出したのが印象に残っている。それ以来俺の中でこの子の呼び方は不思議ちゃんになった。まぁ流石に本人に面と向かって言ったことはないが。

 

『何やら色々悩み事があるようでしてー、ここは一つ打ち明けてみるのもよいのではー?』

 

 初対面で何を言うのかと疑問に思ったが、当時の俺は何故か素直にこの子に向かって心情を述べていた。

 

『流石の私にも、これは中々荷が重いものでー・・・・・・。成程、これがお婆様の言ってた話ですかー』

 

 そう言った彼女は、何を思ってなのかそれ以来俺に付き纏うようになった。というか俺の家に勝手に住み着いてるし、現在進行形で

 

閑話休題(それはさておき)

 

 隣に座り、平然と俺のコーヒーを飲んでいる芳野。こんな彼女の奇行にも慣れてしまったのか、今更何も言うことはない。コーヒーは諦めて、置いてある水を飲んでいると、やたらと入口が騒がしい。何があったのかと思い芳野を連れて向かう。何故かラクロスのユニフォームに身を包んだ新田と、チアリーダーの格好をしたアナスタシアがいた

 

「ほー、近頃の若者は中々度胸があるものでしてー」

 

「いや、若者ってお前も該当するし。まず度胸あるならあそこまで顔赤らめてないと思う」

 

 流石にこれ以上人が集まれば面倒なことになりそうなので撮影を続けている本田に近づき止めさせる

 

「本田、人が集まり過ぎてる。PRには持って来いだけどこれ以上は俺が対応するの面倒だからストップだ」

 

「あちゃー、結構人集まってたんだね。ありがとね、みなみん!あーにゃん!」

 

「うぅ・・・・・・恥ずかしい・・・・・・」

 

「ミナミ、顔真っ赤ですよ?」

 

 顔を赤らめている新田を見ながら、彼女は露出を増やした仕事をさせるのもいいかもしれないと考える。芳野に足を踏まれた。痛みを堪えながら、何をすると睨みつけるが何処吹く風。ほら貝を一つ鳴らしてどこかに去っていった

 

「神楽さん、今の子知り合いですか?」

 

 島村の質問にどう返事したものかと悩み、親戚とだけ伝えておく。身元も知らない公園で知り合った同居中の少女なんて言ったら早苗さんに何をされるか分かったものじゃない。

 何処まで撮影が進んだのかとカメラの映像を確認してみた所、ほとんど終わりに近かった。取り合えず後で城ヶ崎と赤城の動画は取り直す事にする。後半部分はともかく、最初の部分はちょっと許容し難い。それと双葉は強制的に諸星に捕獲させて仕事をさせることを決めておく。

 

「あの・・・神楽さん、その動画本当に使用するんですか・・・?」

 

「あーどうすっかな、最初の所は使ってもいいけど、個人的にはラクロスの衣装とかは別の機会で使いたい所かなと」

 

「PRになるんですかそれ・・・・・・」

 

「アナスタシアも結構似合ってたしな、ありっちゃありだろ」

 

 ちゃんとPRもしてたし、ビジュアル的にもばっちりである。これで残るは神崎だけなのだが、どうも三人とも神崎の居場所が分からないらしい。どれどれと、三村が預かっていたらしい黒い紙を見てみる『黄昏に天使の歌声響く時、聖なる泉の前にて待つ』うん。熊本弁は難しいと思う。以前、小日向の仕事に一緒した時にも熊本弁が漏れた事があったが、解読するのが中々に困難であった

 

「神楽さん、蘭子のいる場所分かる?」

 

「残念だけど、俺熊本弁必修してなかったからわからん」

 

「必修科目なの、熊本弁って・・・・・・」

 

 大学で専攻する奴だっていたし、覚えておいて損は無いんじゃないかな。新田はどうなのかと見てみると、少し考えるようにして、思いついたように言い出した

 

 

 

 

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 聖なる泉とはよく言ったものかも知れない。神崎がいた場所は事務所内にある噴水のある庭園であった。黄昏時とは日が沈む直前の事を指し、天使の歌声は千川の声であった。申し訳ないけど千川は天使よりも悪魔だと俺は思う。武内君には差し入れするドリンク、何故か俺には有料なのだ

 

「運命に導かれ、この世界に降り立った・・・。我が名は神崎蘭子、選ばれし偶像として、終焉の幕が上がる!」

 

 楽しそうに告げる神崎の言葉に、俺は後に小日向に翻訳を頼むことを決めた。フィーリングで少しは理解できる所もあるけど、ほとんどが不明である。三人も理解できずに撮影しているが、そんな時にチャイムが鳴り響く。確かこのチャイムは寮の門限が近いことを知らせる合図である。寮生である神崎はそれを聞いて立ち上がり、帰路についた。

 

「あと残ってるのは多田と双葉か、双葉を探し出すのは諸星に任せて多田の動画を頼む」

 

 そう告げて三人は部屋に戻っていく。俺もぼちぼち戻るかと思い、立ち去ろうとしたところ、噴水近くに黒い日傘が置いてあるのが見えた。こんな装飾が施されている日傘を使うのは、この事務所では神崎だけであろう。ようは忘れ物である。日傘を手に取り、神崎の後を追う。少し走った所で神崎の姿が見えた

 

「神崎っ」

 

 声をかけると、少し驚いた様子で彼女は振り向く。

 

「神の盟友・・・?何故この場に?(神楽さん?どうしてここに?)」

 

 今のは少しは分かったぞ、何で俺がここにいるのかって事だろう。取り合えず神崎に近づき、持っていた日傘を手渡す

 

「我が剣、もしや忘却の彼方に・・・・・・(私の日傘、もしかして置き忘れてましたか?)」

 

「あーうん、忘れ物。お前毎日持ち歩いてるし、無かったら困るんじゃないかって」

 

 神崎のトレードマークと言ってもいい日傘が無いと、困るのだろうと後を追ったのだが、間違いではなかった様子。手渡された日傘を大事そうに抱きしめて、お礼を言ってきた

 

「感謝を・・・、この礼は何れ、我が魔力を解き放つことで伝えよう(ありがとうございますっ、何時か、お礼しますねっ)」

 

 笑顔で告げられた感謝を、少し恥ずかしくなりながら受け取り別れた。

 

 

 

 

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 神崎に日傘を渡し終え、部屋に戻る。この後は今日撮影された動画を確認して、仕事は終わりである

 

「で、この騒ぎは何さ」

 

 終わるはずなのになぜか部屋の前が騒がしい。先に帰宅した神崎と、ラブライカの二人と双葉以外の面々が集まっている。何事かと言動以外は常識的な諸星に事情を訪ねると、双葉による立てこもりが起こったらしい。双葉の行動に少しだけ眩暈がして、目頭を抑える。面倒ごとを持ち込むな・・・・・・。人込みを掻き分けて扉の前に立つ

 

「ふーたーばー、お前何してくれてんの?」

 

『げ、なぜここに神楽さんが・・・・・・』

 

「何故も何も仕事だぼけ。良いからさっさと鍵開けて入れさせろ」

 

『い、嫌だ!杏は働かないためにも、ここを開けるわけにはいかないんだ!』

 

 閉じこもっていても働かせる事には変わりないのだが、こうして問答する時間も惜しいため、所持している鍵で開ける

 

「何故開くし!」

 

「お前普通に考えれば戸締りすんのが俺達なんだから、鍵持ってて当たり前だろ」

 

「盲点だった・・・・・・」

 

 この子少しおつむがあれなのかと心配になったが、解放された部屋に押し入り双葉を諸星に投げつける。これで落ち着くだろう。

 

 

 

 双葉の撮影も終わり、皆が帰ったのを見計らって武内君と撮影された動画を確認する。それぞれの特徴が無事に映っているのを確認して、動画を閉じる

 

「これで、あとは公開して終わりですね」

 

「編集も終わったし、俺達もぼちぼち終わるか」

 

 武内君と他愛ない会話をしながら帰り支度をする。たまには飲みに行くのもいいかなと考え、武内君を誘おうとしたところで、千川が入って来た

 

「プロデューサー、部長がお呼びです」

 

 何ともタイミングの悪いことで。時刻を見れば、そろそろ22時を指すころである。

 

「あー、俺が部長の所に行くよ。武内君は先に上がっていいよ、千川を送ってやれ」

 

「よろしいのですか・・・?」

 

「良いって良いって、たまには先輩に任せなさい。千川も今日は早めに帰れ帰れ」

 

 ちらりと目配せしてみると、意図を読み取ってくれたのか彼女も帰る支度をして、武内君を連れだしてくれた。

 

「部長の所に行くとしますかね」

 

 なんの用事だろうかと、部長の所に向かう。その話を聞いて、別に今日じゃなくても良かったのではないかと思ったのは秘密だ

 

 

 

 

 




アニメ蘭子の可愛さったらもうね!

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