周子ウサミミ美優さんの順番で行く予定です。
何てことは無い。今回の騒動の理由は三船さんが酒の席で漏らした自分への好意が原因だった。それを聞き届けた25歳児が既成事実作っちゃいなよなんて煽るものだから三船さんは何時もより多くお酒を飲み潰れたらしい。周子ちゃんとナナさんはその作戦を楓さんから聞き、自分が身を任せるかどうかを確認したかったとか何とか。激流に身を任せて同化してたら痴態をがっつり見られていた訳だ。
「やばかったぁ…」
ベランダの影を確認出来てなかったらニャンニャンしてたかもしれなかったし、多分人生で一番の危機に陥ってた可能性を考え震える。
そんな計画を立てた三人だが、現在は小言も言い終えて皆自室に帰っている。楓さんはナナさんの部屋に泊まることになっており、三船さんは俺の隣で寝てる。
「周子ちゃんの部屋で寝てくれたら良いのに…」
何故このままなのかと言うと、この人何しても起きないの。ちょっと強めに揺すっても胸が揺れるだけだし、大きく声を掛けても「にゃぁ…」なんて言われて、俺が悶絶するだけだし。勝手に運ぼうって思って持ち上げたら抱きついて離れないと来た。詰みである。諦めて布団に戻したら話してくれたけど、抱きつかれて感触を楽しんでる時の三人の顔は般若だったとだけ伝えておく。
このまま寝れる自信は正直言って無いので、以前貰った一ノ瀬印の5時間睡眠薬を飲んで強引に寝ることにする。飲まないと本当に寝れそうにないもん、隣でこんな美人が寝息を立ててるとかちょっと理性がギガドリルブレイクする。
水差しからコップに水を写し、薬を飲むと直ぐに眠気はやってきた。そのまま眠気に誘われて瞼を閉じると、意識も段々と薄れて行き
「意気地無し…」
薄れゆく意識の中で、そんな声が聞こえた気がした。
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で、楓さんに朝食を食べさせて送り届けた今
「悠人さん暇だよね?デートしよ?」
返事は聞かないけどねと、周子ちゃんに言われた。いやうん、暇と言われれば暇になるし。忙しいっちゃ忙しい。朝食に用意してある鮭の切り身を解しながら考える。現在は皆でテーブルを囲み、ご飯を食べている。そんな中、周子ちゃんが唐突に言い出してきた。
「いやほら、美優さんってでっかい敵が増えたからさ、ここで1つ周子ちゃんの魅力に気付いて貰おうかなって」
「抜け駆け禁止って言った矢先にこれですか周子ちゃん…」
「次はナナさんの番だから抜け駆けではないね!」
頼むから俺を交えて話を進めて貰いたい。三船さんは昨晩の記憶が無く、何故ここに居るのか分からないと言った顔をしながらも、箸を進めている。そんな彼女が手を挙げた
「私の出番は最後でしょうか?」
この人も良いのか悪いのか、346に染まって来ていると思う
「周子ちゃんが一番最初である必要無いじゃないですか!ナナが一番でも良いはずです!」
「私は新参者ですし、最後で不満はありませんが……」
「よーし、ならここはジャンケンできめようじゃないかー周子ちゃん強いよ?」
「ナナだって何を出せば良いのかわかる裏技がありますからね!」
そんな二人を三船さんは笑顔で見つめている。一方俺はおいてけぼりを食らっている。いや、デート自体はしても良いけどさ、俺の意見が一向に反映されないのが虚しい。
そんな事を考えているうちに、勝負は決まっていた
「ナナさんの謎の行動も、茄子さんに拝んだ私の前では無意味だったね!」
「ガチの神様に勝てる訳無いじゃないですか!ウサミン星の神様は邪神なんですよ…!」
それもうアカンやろ。なんて突っ込む間もなく、周子ちゃんとのデートが決まった
「じゃあデートらしく駅前の犬の銅像前に12時に集合ね!」
「あ、はい」
取り敢えず、今日の営業は休む事にしようと思う
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アイドルの仕事の時とはまた違った緊張に、心が高鳴る。
生まれて初めてのデート。少しだけ強引な形で誘ったそれは私の初体験だ。
(まっだかなーん)
時計を見ると、時刻は約束の30分前。どれだけ楽しみなんだよと少し笑い。まだ待ち続ける。
私が一人でここに来て、働かせてくれた悠人さん。アイドルになる時も、優しく送り出してくれた悠人さん。そんな彼が、私は好きで好きでたまらない。彼の事を考えるだけで幸せで、嬉しくて、顔が勝手に笑顔になってしまう。
(惚れた腫れたなんて、縁のない話だと思ってたのにねー)
昔の話、友達が誰々の何処が好き。誰々のここが好き。浮ついた気持ちで話すそれを、私はイマイチ分からなかった。好きになるって事が、愛おしいという気持ちが。
(そんな私が恋するとか、世も末なりー)
笑顔で考えながら、彼を待つ。と、同時にこういう時は男の人が先に来るものでは?と考える。もしかして私は余り想われて無いのだろうか…、なんて悲しい考えが浮かんだ時
「周子ちゃん」
愛しい彼の声がした。
「おっそーい。周子ちゃんより早く来るのが世間の常識よん?」
「いやうん、先に行って待ってるねって言ったの周子ちゃんで……」
「問答無用なりー」
そんなやり取りをして、彼の手を取り歩き出す。
触れた手のひらから伝わる体温が、私の胸を弾ませる。
「んーまぁいいか」
なんて、彼が言い出して、何かしたのかなと思ったら
「え、きゃっ」
繋いだ手が、恋人繋ぎに変化した。流石の私もこれには驚き、らしくない声を出して驚いてしまう。
「嫌だった?デートだし、一応それっぽく振舞おうかなって思うんだけど……」
嫌なわけ無いよん。貴方にされる、全てのことが、私の大切な思い出になるんです。
流石にこれは伝える事が出来ないが、赤らんだ顔でありがとうと伝える。その言葉で彼も笑顔になり、私達はゆっくりと歩き出す。
「どこいくかは…約束通り俺が決めたんだけど、いいんだよね?」
「そそ、今日は悠人さんにエスコートされたいと思います。だから、私を楽しませてね?」
ウインクしながら、舌を出してお茶目に笑う。
叶うなら、私を選んでください、悠人さん。
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デートプランと言われても、これまで女性とそう言う形で出掛けた事が皆無なため、どこに連れていけば良いのかわからず悩みまくった。しかも今回は三人とデートする事になっており、中身が被らないように配慮しないといけない。地味に辛い。恥を忍んで誰かに助言を求めようとも考えたが、今回は自身の力で解決する事にした。
その結果まず、周子ちゃんを連れてきたのがここ
「流石に混んでるねー。でも、平日だからこれでも空いてるのかなーん」
遊園地である。悩んで悩んで悩んだ末に、一周回って女の子らしく遊園地とかいいんじゃね?と思い至りやってきた。道中の電車中が予想以上に混んでおり、ずっと密着して移動するハメになったのだが、そこは割愛。
「フリーパス買ってきたし、今日は何時までも付き合いますよ、シンデレラ」
繋いだ手を話さずに、歩きながら話しかける
「シンデレラかー、お姫様の我侭を聞いてくれてありがとうねん、悠人さん」
お礼を言われてしまい、少しだけ申し訳なく思う。周子ちゃんは可愛いし、一緒にいて楽しい。そんな子とデートなんて嬉しいのだが
(この次にナナさんと三船さんも相手するのか……)
誰か一人だけの好意であったら、どれ程楽だった事か。
なんて考えていたら、拗ねたように頬を膨らませた周子ちゃんに頬をつねられた
「悠人さん、今日は、今だけは私だけを見て?今後悠人さんが誰を選んでも私は恨まないし、寧ろ祝福だって何だってする。でも、今この時だけは、私を、塩見周子だけを相手して。他の人の事は考えないで……。お願い」
悲しそうにそう告げる彼女に申し訳なくなり、頭を撫でる。周子ちゃん俺よりも大人だなぁ、こんなにも一途に想われて幸せだな…
「じゃあ、
少し恥ずかしいけど、呼び捨てで名前を呼ぶ。すると、周子は顔を綻ばせて
「うんっ、行こ、
俺の事を、笑顔で、嬉しそうに呼んできた
あーもう周子ルートでいいんじゃないかなこれ!