居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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デレマス小説を書いている被る幸さんがお気に入り登録してくれてました!
この人の書く作品は私と違ってアニメ基準なので楽しく読ませていただいておりますん。
自身の作品とは違った全く違う作品なので、新鮮で面白いですね・・・・・・。

今回はタイトル通り番外編となります。
このお話の舞台はアニメ基準となっていますが、作者アニメまともに覚えてないので設定がばがばになるかもしれません。
それでも私は一向に構わんッ!という人はレッツエンジョイ


敢えて一度ここで番外編を挟んでいくスタイル

春、卒業の季節でもあり出会いの季節。個人的に一番好きな季節であり、暖かな陽気に誘われて思わず欠伸が出てしまう。その姿を同僚に見られてしまうが、片手を挙げるだけで適当に謝っておく。

 厳つい風貌に渋い声、そして自分よりも10㎝程高い背丈。羨ましい限りである。少し前にオーディションで採用した諸星きらりに比べると涙が出そうである。女の子よりも背が低いのは、かなり心に来る。

 

「そろそろ時間じゃねーの?ほら、なんだっけ、あの養成所に通ってる女の子」

 

「確かにいい時間ですね。それと、彼女の名前は島村卯月です」

 

「あぁ、その子だ。年取ると物忘れが激しくて叶わん」

 

「神楽さん、私と同い年なんですけど。それは私に対する当てつけですか?」

 

 にっこりと微笑む事務員。顔は笑っているが目が笑っていない。

 怖い怖いと両手を挙げて誤魔化す。ちなみに同期である千川と同い年なのだが、実はここに就職するまでお互いの名前は知らなかった。顔は知っていたので入社の飲み会で顔合わせした時は驚いた。

 それはさておき、武内君が件の女の子の所に向かったので、俺も仕事に向かうことにする。本日の俺の仕事はオーディションを勝ち残った少女達を一度集めて、宣材写真を撮ることである。下は11歳から上は19歳までで構成される今回のシンデレラプロジェクト、通称CP。元気に満ち溢れたパッション、可愛さを売りに出すキュート、冷静で大人びたクールなどなど多くの人材が集まった今回の仕事。全員が当然女性であるので、俺の胃にどでかい穴が開くほどストレスが貯まるんじゃないかとドキドキしている。最近は何とも男性に対する風当たりが強い気がする、武内君なんて学校帰りの女の子をスカウトしてたら不審者扱いされてお巡りさんとこんにちはしたとか。いや、まぁね、あの顔で張り付かれたら確かに通報されてもおかしくないけどね。

 なんて、少しどうでもいい事を考えながら撮影スタジオに社用車向かう。向かっている途中に携帯が震えていることに気が付く。誰からであろうかと確認してみたら、仕事に行っている楓さんからだった。

 

From:高垣楓

To:神楽悠人

件名:疲れました。

 本日の撮影も終わり、疲れました。歩くのもおっくうでこのまま横になりたいです。でも隣にいる瑞樹さんが寝るのを許してくれません。

 お酒が飲みたいです、迎えに来てください。

PS:二人きりでも武内さんと一緒でもいいですよ♪

 

「酒しか考えてないのかあの頭は・・・・・・」

 

 少しだけ痛む頭をさすりながら、千川も含めて飲みに行きましょうと返事をする。この25歳児、放置すると何歳だと尋ねたくなるレベルで臍を曲げるので扱いが結構めんどくさい。寒いギャグもぶちかますし、こんなのでも346の中で上位の売れっ子なのだから世の中は不思議である。

 

「あれだよなぁ、黙ってれば美人。って訳でもないんだけど、ギャグがなぁ・・・・・・」

 

 ある意味彼女からギャグを取り払ってしまうと、個性が無くなってしまうのかもしれない。でも、今はまだ身内だけに留まっているあのキャラだが、いつかファンの前でも晒すことになるかと思うと頭痛が加速する。どうしたものかと考えながら歩いていると人にぶつかってしまった。

 

「きゃっ」

 

 ぶつかって来た女性が体勢を崩して転びそうになる前に、腕を取り体を支える。

 

「すまん、考え事をしていた」

 

「こ、こちらこそすみませんっ!色々珍しくて余所見しながら歩いていたので・・・・・・」

 

 そんな事を言いながら謝る彼女に、疑問を覚える。346は大きな会社であるが社内の人にこんな子はいただろうか?青をベースとしたジャージに身を包み、長い髪は纏められておらずに真っすぐ地面に向かって垂れている。誰だこの子と疑問に思っていたら、その子の知り合いらしき二人の少女が走り寄ってきた。というか、その後ろから武内君も歩いてきている。

 

「君たちあれか、武内君が連れてくる予定だった3人か」

 

「その通りです、先輩。島村さん、渋谷さん、本田さん。あれほど勝手に動くなと言ったじゃないですか」

 

 溜息とともに首に手を当てる武内君にご愁傷さまと心の中で祈りを捧げて、申し訳なさそうに笑みを浮かべる三人に目を向ける。

 一人は確か、先ほど話をしていた島村卯月。笑顔に惹かれたと武内君が随分この子のことを推していた。確かに、会話の中で浮かぶ笑顔は多くの人を元気づけることができそうだ。

 二人目は、三人の中で一番元気であるショートカットの少女。声も大きく、パッションに満ち溢れている。気がする。でもなんかこの子メンタル弱そうである・・・・・・

 三人目がぶつかって来た女の子。見た目クールな少女であるがその眼はとてもやる気に満ち溢れていて、三人の中で一番頭角を現すのではないかと感じる。

 話を聞く限り、三人はまともに会話するのが今日が初めてらしいが、随分と仲が良さそうである。少し気が早いのかもしれないがユニットを組ませて見るのもありかと考えを巡らせる。

 

「先輩、そろそろ時間になりますので、撮影現場に向かいましょう」

 

「ん、あぁすまん。少しぼーっとしてたわ。よっし、じゃあ三人とも現場に行くぞ。先に宣材写真見てる仲間がお前等待ってるから」

 

 現場に着いて、彼女達はすぐさま受け入れられた。まぁ当然といえば当然の結果である。先に写真を撮っていたメンバーも残りの3人の事を待ち望んでいたのだ。待たせてしまって申し訳ない気持ちが少し、それ以上にこれからスタートを切る高揚感が胸に押し寄せる。

 

「やっと、始まりますね」

 

「あー、新田か。お前は混ざらなくていいのか?」

 

 少し離れた位置から、武内君が囲まれているのを微笑ましく見ていたら、その輪から離れて最年長である『新田美波』が話しかけてきた。その手には撮影用に持参したというラクロスのラケットが握られており。それに合わせてスポーツウェアとミニスカートを着ている。初めての撮影で緊張したのか、その顔を少し赤らんでおり、何故か(・・・)胸元のボタンは一つだけ開けられており、少しだけ谷間が見えている。成程、さっきから男性スタッフがちらちらと見ていたのはこれが理由ね。

 無言で自身の胸元を、彼女の服でいうボタンがある場所をトントンと叩く。その動きに首を傾げていたのだが、彼女の事を指さすと理解してくれたらしく。慌ててボタンを閉めていた。

 

「新田はあれだな、異性からの視線に疎いのかね」

 

「そ、それはそうかもしれませんが・・・・・・。見ました?」

 

 上目遣いで尋ねられた質問に、顔を顰めてしまう。素直に見たと言ってもいいのだが、そうしてしまうと印象が悪くなってしまう可能性がある。ここは俺の48ある特技の一つ『僕は、悪くないの精神』でスルーして武内君に声をかける。

 

「あー神楽おじさん!」

 

 武内君に声をかける前に赤城の無垢な一言で心が折れそうになる。いやまぁね、お前らの年に比べると一回り近く年離れてるけどさ・・・、初めて言われた時に訂正しなかった俺が悪かったかもしれないけどさ

 

「赤城さん、その、先輩の心にダメージが入るので、出来れば普通にプロデューサーと呼んであげてください・・・・・・」

 

「でもでも!プロデューサー二人もいてみりあ、頭が混乱しちゃうし、ちひろさんがおじさんって言っていいて!」

 

「千川ァ!!」

 

 この場にいない守銭奴、もとい事務員に呪詛を述べつつ、皆に挨拶する。

 

「あー、これで全員が揃った訳で。やっとこさCPが始動することになります・・・・・・。ダメだ、俺にはこういった真面目な話は似合わない。武内君にあとは任せた」

 

「先輩・・・・・・」

 

 少しだけ呆れたような目をしている武内君から逃れるようにそばを離れて、皆を見る。それぞれがやる気に、これから始まるアイドルとしての活動に気分が高揚しているのが分かる。

 すまん訂正、一人だけだるそうにしてるわ。

 

「双葉、お前せめて大事な話はまともに聞いておけよ・・・・・・」

 

 聞こえない声量で溢す愚痴が、虚しい。

 ただ、これからのことに夢見るのはプロデューサーである俺たちも同じである。特に俺は人一倍その傾向が強いかもしれない。

 

 

-----残された時間は2年。

 

 叶うのならば、命尽きる前に、彼女達が一番輝けるようにプロデュースしたい。そう胸に秘めて、そっとその場を後にした。




と、アニメ2話あたりを基準とした番外編でしたん。たぶんウサミンが無事に終わったら続くかも知れない。

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