居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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という訳で安倍菜々編開始となります。
ラブコメで言うとラブが1でコメが9ぐらいになると思います(目逸らし)


安倍菜々:家

泣き始めたベソナナさんを慰めながら、何があったのか詳しく聞いてみた。

何でも、仕事からヘトヘトとなって帰宅…帰星していたら。星に…いいや家で。家に近づくに連れて騒がしくなっていたらしい。微かにだが、空にオレンジ色の光が薄らと輝いていたそうな。嫌な予感がして疲れた体に鞭打つ様にして急いで家に戻ると。既に色々と手遅れな状態だったそうな。原因はタバコの不始末+配線のショート+放火のフルコンボ。俺はそっと目をそらした。

そんなので良く風呂敷に入るだけの荷物持ってきましたねと訪ねて見ると、ナナさんと親しいお隣さん(女性)がナナさんが留守だと気が付き、せめてと色々物を詰め込んでくれたらしい。何とも親切な方である。何を詰め込んでくれたのかと、許可を貰い風呂敷を開封する。アイロンや缶詰、他にはポケットティッシュ、俺はそっと風呂敷を閉じた。

 

「えっと、それで何でここに?女子寮とか事務所の仮眠室とか選択肢はあったんじゃ…」

 

「ナナはですね…、基本的必要最低限のお金しか持ち歩かないんですよ…。もちろんカードも「うん、なんかごめんなさい…」いえいえ…。続けますね、女子寮は部屋が埋まってるらしくて、泊めてもらおうにも外の人は基本お泊まりダメなんです。事務所は、時間が遅くて締まってて…」

 

「あ、はい」

 

「外泊しようにも、手持ちそんなに無いですし、下ろせませんし…」

 

なるほど、と思わず貰い泣きしながら頷く。

ウサミンが何をしたというのだ…。

 

「瑞樹ちゃんとかに電話して、頼みたかったんですけど、電池切れてて…、充電器も焼けましたし、高いですし…」

 

「いや、本当にもういいです。お腹痛くなってくるんで…」

 

だから俺の所来たのかと1人納得する。人として流石にこんな状態の人を受け入れない訳にも行かない。いいですよと言おうとした時に、ナナが被せて喋ってきた。

 

「お願いです神楽さん!ナナ何でもしますから、ここにいさせて下さい!」

 

「ん?今何でもするって言ったよね?」

 

こんな時でも、ウサミンを弄りたくなるのはもう性分何じゃないかと思う。

ゲス顔でそんな事を聞いた俺にウサミンは体を隠すようにしながら、怯えた声で聞いてきた。

 

「で、出来れば体を云々は止めて頂きたいのですが…」

 

「あ、熟れた果実には興味無いんで…」

 

「う、熟れて無いですし!ピチピチですよピチピチ!」

 

その返事に、少しだけ何時ものナナさんに戻ってきたかなと安心する。辛いことかも知れないけど、少しは別のことを考えた方が今はいいのかもしれない。

 

「条件としては…、そうですね…」

 

最後通告を待つ囚人の様に悟った目をしたナナさん。信用無いのかなと少し凹みながら告げる。

 

「何でもするって言うのでしたら、うちのお店でしっかり働いて、しっかり稼いで下さい」

 

「………え?いいんですか…?」

 

良いも悪いもこちらとしても雇う事は別に問題になる訳では無いし、寧ろこのままナナさん放置してたら危ない気がするし、素直に受け入れる事にした。

 

「…神様仏様神楽様?」

 

「そこまで言われるとむず痒いんですけど…。まぁともあれ、これからお願いしますねナナさん」

 

「ありがどうございまずー!!!」

 

わんわん泣き始めるナナを見て、実は本当に17歳なのかと考えてしまう。子供らしいなと少しだけ笑いながら、簡単に食べれるものを用意しておく

 

(ナナさん確か飲食店で働いてた事あるみたいだし、下手なことは起きないでしょ…)

 

そう考えながら、おにぎりを握る。味噌汁も用意して運びに行くと、ナナは泣き付かれたのか寝ていた。

 

「少し、無防備過ぎないかね…」

 

テーブルに突っ伏し寝るのは別に良いのだけど、お互いいい歳何だし少しは警戒心と言うものを持って欲しい。

今日はしょうがないかと割り切り、寝ているナナさんを起こさない様にしながら抱き抱え、自室のベッドに寝かせる。

となれば、自分の寝る場所が無くなるのだけど今日は居酒屋で寝ようと考え布団を取り出す

 

「…ナナさん?」

 

つもりだったんだけど、服の裾を掴まれて動けなくなってしまった。起こしちゃったかなと思い声をかける。

 

「ごめんなさい、ナナの我侭になるんですけど…、今夜だけでいいんです…傍に居てくれませんか…?」

 

と、上目遣いで懇願され、思わず可愛いなと思ってしまう。きっと、不安なんだろう。1日で色々失ってしまったのだ。悲しさと、寂しさがナナさんの心に充満してるのかもしれない。

押し入れから布団を出して、ベッドの横に敷く。

1度居酒屋に戻り、火の元を確認してから部屋に戻り、寝る準備を終わらせる。

電気を消して、布団に横になってから少しして、ナナさんが喋り出した。

 

「ナナの住んでた所、小さいですしボロボロでしたけど、そこまで悪い場所じゃなかったんです…。同じアパートの人はナナを見る度にお疲れ様って、何時も見てるよって声かけてくれて、疲れてるナナに料理とか差し入れしてくれて、優しくしてくれて…」

 

「いい人達ですね…」

 

「はい…。それに、思い出もいっぱいありました…。学生の頃のアルバムがありました、アイドルになる前に働いてた所から寄せ書きを貰いました、アイドルになって初めて貰ったお給料で買ったカメラもありました」

 

「はい…」

 

「でも、そんな思い出、全部無くなったんですね……」

 

頭から布団を被り、ナナさんは嗚咽を漏らす。流石になんて声を掛けていいかわからずに、こちらも黙ってしまう。

だけど、ナナさんが悲しくて泣くなんて似合わないよなと考えて声を出す。

 

「色々、大切な思い出もあったと思います。でも、ナナさんは生きてるんですから新しく思い出作りましょうよ。学生の頃のアルバムが見たいなら、学友に連絡して見せてもらいましょ、思い出もこれから新しいのを作って行きましょうよ。微力ですけど、俺も手伝いますよ。写真も撮りますし、何処かに行きたいなら好きなだけ連れてきます。だから、今は泣き止んで、ゆっくり眠って下さい。」

 

「神楽さん…」

 

「ナナさんはアイドル何ですから、泣き顔なんて似合いませんよ。ほら、いつも見たくウサミンパワー出して元気になって下さい」

 

それだけ告げて、俺は目を閉じる。少ししてから「ありがとうございます」と聞こえて来たが、寝たふりをして聞こえなかった事にした。

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

「という事があった」

 

「お前もしかして疫病神かなんかじゃねーの?」

 

失礼な事を言いやがるなお前。

明けて翌朝。ナナさんは少しだけ吹っ切れたのか、いつも通りのナナさんに戻ってくれた。今日は朝早くから仕事が入っているらしく、事務所には代わりに俺が説明する事に。

 

「疫病神じゃなくてもさ、それらしき神様に見守られてるんじゃねーの?」

 

「神様がブラックラビットだから…有り得る」

 

否定出来る要素無いしね、全焼させるのが好きなのかね中の人…。

 

「まぁ神楽の所にいるなら連絡も直ぐ出来るし、一人暮らししてる時よりも体調良くなるだろうし。問題無いね」

 

「神楽さんの料理食べてると、不思議と活力湧きますからねなんか危ない物入って無いですよね」

 

「黙れ千川お前の作るドリンクとは違うのだ」

 

「失礼な!使用してる物こそ口には出せませんが大丈夫ですよ!」

 

その発言が既にアウトなんだけど…。Pがっつり震えてるじゃねーか…

まぁPなら大丈夫かと思い無視する。

 

「ナナさん服とかどうするつもりなのーん?」

 

と、久しぶりに会った周子ちゃんが会話に混ざってくる。

今朝は昨晩と同じ服で出掛けて行ったが、仕方がない事だとは思う。でも流石に何日も同じ服というのは嫌だろう

 

「まぁ明日休みらしいし、俺が立替える予定で服とか色々買いに行こうかなとは思ってるけど」

 

「問題は下着とかー?」

 

「うん…流石にそこらへんは俺が一緒だと買いづらいだろうし、どうしたもんかなと…」

 

「だったらー」

 

ー周子ちゃんが付き添ってあげよー☆

 

明日は、絶対に騒がしくなると思った。




やったねナナさん住むとこ出来たよ!
ギャグ9割とか言っといて開幕ギャグ要素皆無何ですけどキニシナイ

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