居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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逆に考えるんだ。平均が三千文字くらいでもいいさと


第5話

 

 

 

 

 

「ほいこれタオルな、脱いだ服は洗濯機に突っ込んでここのボタン押せば後は勝手に動いてくれるから」

 

 どうしてこうなった

 

「え?いやいやこれがびっくり。すぐ終わるんだよ。この洗濯機二代目なんだけどさ」

 

 落ち着け私、状況を整理しよう

 

「中古でもいいかなーって探してみたらなんと自分で作ったって人がいてさ」

 

 加蓮と二人で買い物に出かけた帰り道に雨が降り出して、私達は雨宿りするためにお店の前で立ち止まってた

 

「池さんって言うんだけどな。いや本名じゃないよ?面白そうだから頼んでみたのよ、洗濯機。おまけで洗剤もついてきたな・・・・・・」

 

 そんでお兄さんにお店に入れられて、タオルを貸してもらったし温かい飲み物だってくれた

 

「いやーもうね、どうなってんのってくらい直ぐ洗濯終わっちゃうのね・・・・・・。おまけでついてきた洗剤なんかどんな汚れでも落ちるし・・・・・・」

 

 そこまではいい、整理できてるぞ私。だが問題は今だ

 

「だから乾燥くらいならほんとすぐ終わるよ。風呂から上がればもう乾いてるって」

 

 何故私達は脱衣所に連れてこられてるのだろうか。しかも出口にお兄さんが立ってるから逃げようにも逃げれない

 

「うわぁ・・・・・・、自作の洗濯機ってだけでも不安なのにそのスピードで終わるって聞いちゃうと尚更不安になってくるよ・・・・・・」

 

 違うんだ加蓮、不安に思う所はそこじゃないんだ!

 声を大にして叫びたい。叫びたいけどなんか私が空気読めない子みたいな感じになりそうでいやだ・・・・・・

 

「まぁここで話してても時間の無駄になるだけだし。ほれ、ちゃちゃっと入ってこい」

 

 そう言うとお兄さんは脱衣所から出ていった。それと同時に私は加蓮に迫る

 

「加蓮、逃げよう」

 

「え?私もう脱いじゃってるんだけど・・・・・・」

 

「はえーよ!少しは考えろよ!見ず知らずの人の家で、しかも男の人の家でお風呂に入るとかおかしいだろ!」

 

「まぁ確かにおかしいよねー。奈緒も早く脱いじゃいなよ」

 

「あぁもうだめだコイツ早くなんとかしないと!」

 

 心配すればするほど無駄になっていくよコンチクショウ!

 こうなったらノゾキを防ぐために加蓮だけお風呂に入れては私は脱衣所で待機しておくか?いやむしろいっそ無理やりにでも連れ出して・・・・・・

 

「なーお」

 

「・・・・・・なにふぃふぇんの」

 

 ぐにゅーと頬を抓まれ伸ばされる

 

「心配してくれるのは嬉しいけど、大丈夫だよ」

 

「ふぁいひょうぶって・・・・・・」

 

「あのお兄さんはそんなことするような人じゃないよ。ちゃんと目を見て話してくれてたし。疚しい事を考えてるんだったら視線が泳いでたりするはずだよ?」

 

 確かにそうかもしれない、でもこんなに優しくされたら何かがあるってのがアニメだとお決まりの展開だし・・・・・・

 

「それに、いざとなったらアプリのブザー鳴らせば安心だって」

 

 そう言いながら加蓮は下着に手をかける。年齢に対して少し背伸びし過ぎじゃないかと思う黒の下着。でも不思議と加蓮の白い肌に似合っている

 落ち着け私、加蓮を観察してどうする

 頭を振って煩悩?を退散させる。こうなったら私が犠牲になってでも加蓮だけは助けよう

 

「なーおー、早く早くー」

 

「だぁーもうわかったよ!直ぐいくから!」

 

 そう決意しながら私も服を脱ぎ始めるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人を脱衣所に放置してから再びタバコを銜える

 向こうには何か下心でもあるのではないかと勘ぐられてしまっているようだがさすがにそんなゲスな真似はしない

 懐から携帯を取り出し電話帳からPの番号を呼び出す。少しのコール音の後にPが出た

 

『はいもしもし』

 

「おーすPか、デート中にすまんな」

 

『神楽か、デート中じゃないけどどうかしたか?』

 

『ひどいよプロデューサー!私達のことをこんなにしたのに!』

 

『プロデューサーにとって私は対象外だったんですね・・・・・・』

 

『デートじゃなかったんだね・・・・・・。弄ばれたんだ私達・・・・・・』

 

『やめろお前ら周囲の視線が痛いから。誤解を招くような発言はやめてください』

 

「・・・・・・死ねばいいのに」

 

『ごめん神楽割と冗談に聞こえない。社会的に死にそうなんだぞこっちは!』

 

 ハーレム野郎に慈悲はない。死すべし

 

「まぁお前がマッポに捕まろうと別にいいけどさ」

 

『よくないよくな・・・・・・ごめんちょっと凛に代わるわ』

 

 何故渋凛?

 

『もしもしバニラさん、私私』

 

「渋凛か。なんでPから電話代わったの?」

 

『さっきの冗談発言を婦警さんが聞いてたみたいで』

 

「・・・・・・あっ(察し」

 

『卯月と未央が誤解を解くために一緒にいて、私は電話を押し付けられたってわけ』

 

「Pか・・・・・・、良い奴だったよ・・・・・・」

 

『まぁさっさと切りたいから本題早く喋ってよ』

 

「お前って俺に対して態度冷めすぎじゃね・・・・・・?まぁいいや、お前んとこのプロダクションに神谷奈緒と北条加蓮って子いるっしょ?」

 

『いるけど・・・・・・奈緒と加蓮がどうかしたの?』

 

「今二人して風呂に入ってるから迎えにきてもらおうかなって」

 

『了解ちょっと待って、伝えるから。プロデューサー!奈緒と加蓮がバニラさんに貞操の危機だって!』

 

「・・・・・・what?」

 

『ちゃんと伝えたよ。あ、プロデューサー戻ってきたから代わるね』

 

 え、どういうことなの

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「・・・・・・チガウヨ?」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「雨に濡れて寒そうだったからお風呂貸してあげただよダヨ?」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「・・・・・・・・・・・・ffdy」

 

『40秒待ってろ』

 

 そう一言だけ呟いて通話は切れた

 新しいタバコに火をつけ口に運ぶ

 

「落ち着け、落ち着け。慌てるような時間じゃない。40秒で来るって言ったけどそんな直ぐこれるわけがない」

 

 だよねー、40秒ってのは冗談でいったんだよねー。出かけてるのにそんな直ぐこれるわけないよねー

 

「あっはっはっはっは。俺を驚かそうなんて10年早いわぁ!」

 

「その割にはタバコ逆さまですよ?」

 

 ここにいるはずのない声が聞こえる。ギギギと錆びたボルトを回すようにゆっくりと振り向く

 

「・・・・・・島村さん?」

 

「?島村卯月ですよ?」

 

 何故か店内に島村さんがいた・・・・・・え?

 

「何故ここに?」

 

「プロデューサーがここに走っていったから着いてきたんですけど」

 

「え?」

 

「え?」

 

 つまり何か?アイツはプロダクション内にいたって事か?てことはだ

 

「言ったはずだ」

 

 どしんと

 

「40秒」

 

 どしんと、一歩踏み出すたびに震えが大きくなる

 

「40秒で向かうと」

 

 振り向いてはいけない。心が、体が警報を鳴らす

 

「さぁ」

 

「バニラさん、短い間だったけどあなたの事は忘れないよ・・・・・・」

 

「・・・・・・(これって私のせいだよね?)」

 

「裁きの時間だ」

 

 いやここは一つ小粋なジョークを言って場を和ませるんだ!冴えてるぞ俺!

 

「裁き、つまりぎるてぃだな!P、ゲームしようぜ!」

 

 

 

 

 

 ――出来心だったんです。ただちょっとした悪ふざけがこんな事になるなんて

 

 

 

 後に渋谷凛は語る。人で遊ぶのも程ほどにしておこうと

 

 

 

 

「お風呂ありがとうございましたー」

 

「・・・・・・ありがと」

 

「それにしても凄いですねあの洗濯機、本当に乾いてるとは思いませんでした・・・・・・みんな何してんの?」

 

 




もうちょっとだけ続くんじゃよ

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