居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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ふざけてしまった後悔はしていない。
多分続く。


番外:神崎蘭子との買い物

「新たなる魔の衣を求め、旅に出るとしようか!(そろそろ新しい服が欲しくなりましたねー)」

 

事務所で珍しく、暇を持て余していた蘭子がそんなことを呟いた。

すごく疑問なのだが、蘭子が着ている服は市販で売っているのだろうか。いや、売っていなければ蘭子が着ている服は自作かオーダーメイドのどちらかになる。流石にオーダーメイドは無いと思う、かと言って自作…

 

「我が友よ!悠久の時を我と過ごそうでは無いか!(プロデューサー!今度の休みに私と買い物行きませんか!)」

 

今度の休み…。蘭子は休みでも俺は仕事である。

 

「蘭子、済まないがその日は仕事があってだな。他の誰かと行ってもらえないか」

 

「なんと言う事だ…。しかし、我が同胞たちも聖戦にて活躍しておる…(ガーンです…。でも、他の人たちもレッスンで忙しくて…)」

 

確かに最近は皆忙しくなっている。休みの日が一致することは稀になっているのだろう。

 

「はーい、ロコモコを頼んだ馬鹿に出前でーす」

 

「それを作れるあたり流石だと俺は思う。」

 

「頼まれたら作るわ。蘭子ちゃんはオムライスだっけ」

 

「ククッ、黄色で満たされし命の結晶!(オムライスです!)」

 

「はいはい、オムライスお待たせ。ケチャップ渡すから好きに使ってくれ」

 

料理を運んでくれた神楽に対してお礼を述べると同時に、少しだけ驚く。

 

「神楽、熊本弁分かるんだな」

 

「ん?あぁ、慣れた」

 

「慣れか、慣れたなら仕方が無いな」

 

実際に俺も慣れたから理解出来る。じゃなかったらプロデューサーとして仕事できないし。

しかしこれはある意味チャンスなのかもしれない。

 

「神楽、もしよければなんだけど蘭子の買い物に付き合ってもらえないか?」

 

「どして?買い物位ならお前が付き合えばいいじゃん」

 

「ごもっともである。が、仕事で埋まってるんだよ…」

 

「もしかして、346ってブラック?」

 

「否定したいところだけどなんとも。まぁ俺が望んで仕事してるだけなんだけどな。で、行ってくれるか?」

 

少し悩んで、男と買い物に行って何かあったらどうするのか聞かれたがそこは問題ない。

 

「間違いを起こすわけないだろ?それに、その点は解決策がある」

 

デスクの引き出しから封筒を取り出し渡す。

渡された封筒を開き、動きを止めた神楽にもう一度お願いする。

 

「それなら、行けるだろ?(ばら撒かれたくないなら行け)」

 

「待て、この年でこれはキツイぞ…」

 

「なーに、この頃からそこまで変わってないだろ。今でも大丈夫だろ」

 

「ちなみにだ、これを撮影したのは?」

 

「ちひろさん」

 

「よし滅する。まぁいいや、この格好をした時から恥は捨てた」

 

無駄に漢前である。

蘭子の事をよろしく頼み、料金を払う。

服装は…蘭子ちゃんに合わせる感じで…、コスプレでいいや。

なんて不安な言葉が聞こえたが気にしない。

 

「蘭子ー、神楽が付き添ってくれるらしいから。休日楽しんでこい」

 

「……」

 

「蘭子?」

 

反応がなく、不思議に思いそちらを見ると。

オムライスにブリュンヒルデが降臨していた。無駄にうまかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むう、刻限が迫ってきておる(約束の時間になっちゃいます…)」

 

私、神崎蘭子は待ち合わせをしています。

今日は久しぶりの休みの日なので、新しい服が欲しくなり買い物に来ました!

一人だと不安と言われて、神楽さんが着いて来てくれるそうなんですけど…

 

(こないなー…)

 

見慣れた姿は何処にもありません。

少しさみしくもなり、待ち続けても来ない。日傘をくるくると手で回しながら考える。

 

(神楽さんかー)

 

一回り近く年齢が離れた、居酒屋の店主さん。事務所にもよく出前出来たりするし、暇だからと訪れたりする。そんな中で私もたまに会話する。なんと言うか近所のお兄ちゃんみたいな人

 

「お兄ちゃんかー…」

 

「お待たせしました…!」

 

ふと、とても綺麗な女性の声が聞こえた。

透き通る様で耳に残り、人を惹きつける様な声。その声がした方を見ると日傘を差した美しい女性がいた。

 

「わぁ…綺麗…」

 

思わず言ってしまう。本当に綺麗…

後ろで纏めてなお長い黒い髪。日に晒したことの無い様な透き通る肌。身長も高く、凄くスタイルが良い。

 

「ありがとう、蘭子ちゃん。少し遅れてしまったわね、行きましょう」

 

「え、え!?」

 

手を取られて歩いていく。

 

「ご、ごめんなさい!人違いしてませんか!」

 

私にはこんな美人な知り合いはいないもん。手を振りほどき誤解を解こうとしたが、向こうは何故ついて来ないのかと不思議そうな顔をしていた。

手を顎に当てて考えている。その一挙一動までもが美しい

やがて彼女は納得いったように手を叩くと、咳払いをした

 

「んっ、あーあー。これでわかる?俺だよ」

 

すると先ほど迄とは違う男の人の声が……

 

「かかかか神楽さん!?」

 

「おーやっぱ初見で判断出来るわけなかったか」

 

初見殺しも良いとこです!というか女装?どうして?

 

「あぁ、男の人と二人で出掛けてるのを見られたらスキャンダルになるだろ?だからその対策」

 

「いやでも、胸もありますし!」

 

私よりも有るのはなんで……

 

「晶葉ちゃんが作ったパッド入れてるからな」

 

「髪の毛は…」

 

「一ノ瀬印。」

 

私の事務所凄すぎるよ…

また咳払いをすると、先ほどのような綺麗な声に戻った。

 

「では、押して参りましょうか」

 

その姿はとても私の目に焼き付いて、離れない。

どうしたらあんなに綺麗になれるんだろ…

私もあんな風になりたい…

 

「神楽さん、何かコツみたいなの有るんですか?」

 

「コツ?特に何もして無いかな?化粧とか嫌いだし」

 

神崎蘭子14歳。心が折れそうです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに女装したわ。

大学時代にミスコンに女装して出てみようぜ!みたいなふざけたノリで参加したのが間違いだった。まさかの一位に輝いてしまい、謎の女性として有名になってしまったことがある。企画した千川とPには一週間飯をおごらせた。

そんな過去があり、現在女装して蘭子ちゃんの買い物に付き合っている。

服装は、何故か月曜日だけに繋がる場所の大和さんの服装である。日傘を差しているので周りからは余り注目されないはずなのに視線がバンバン飛んでくる。

 

「なんか目立ってますね。」

 

「であるな。我が魔眼に魅入られしものたちが多くいるようだ(そうですね…。何かおかしなところあるのかな?)」

 

口調も変装したことで女性らしく振舞っているが何処か可笑しいのだろう。それでこんなに視線を浴びているに違いない。

 

 

 

 

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名無し:アキバに大和さんと蘭子ちゃんがいる。

 

名無し:蘭子ちゃんは分かるけど大和さんっだれよ

 

名無し:ぐぐれ

 

名無し:うわマジだ。大和さんと蘭子ちゃん確認

 

名無し:ぐぐった。何?ゲームキャラのコスプレ?

 

名無し:なんかコスプレのレベル越えてる、リアル大和さん

 

名無し:リアル大和とかアキバに収まらんだろwww

 

名無し:超弩級な方がいたらビビるわ。艦娘の方!

 

名無し:コスプレしてる奴がいたと聞いてアキバ行って見たwww大和さんがいた。何を言ってるかわかんねー状態だった。

 

名無し:お前ら蘭子ちゃんにも触れてやれよ…

 

名無し:やみのま!

 

名無し:やみのま!

 

名無し:やみのま!

 

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何処かの掲示板では話題になっていた。

 

 




おふざけ☆

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