砂糖不足の作品になると思いますがよろしくお願いします
しかし、なるほど一人目と言う発想は無かった…
今回coなので次はpaかcuですかね
高垣楓
彼女はアイドルである。
活動当初はモデルとして名が売れており、現在ではモデル活動の他ドラマの主演、彼女の好きな温泉番組のレポーター、他にも司会を務めることも多々ある。
神楽悠人
飲食店経営。
そこそこ繁盛している居酒屋にて店主を務める。346プロダクションが近いことから多くのアイドルとの交流がある。
俺と彼女では月とスッポン。
だからこそ、高嶺の花を掴もうと、届かぬ月に憧れることは無意味。この心に浮いた気持ちは、捨て去らないといけない。
「神楽、最近なんかあったか?」
Pが焼き鳥片手に訪ねてくる。
何かあったかと聞かれるとあった。二回程起きた楓さんとの急接近が。
しかし素直に伝えるわけにはいかない。Pは楓さんのプロデューサーだ。友人の夢であるプロデューサーのアイドルだ。そんな、アイドルに良くない噂が経ってしまっては彼にも迷惑がかかる。
「なんもねーよ。少なくともお前が気にするようなモンはない」
少し突き放すように伝える。
そっか。と呟き彼は食事に戻る。
そして会話の無い時間が経過する。食事の音とテレビの音だけ。ニュースに飽きてしまいチャンネルを変えていく。
『こちらの温泉は、あの有名な武田信玄がお忍びて訪れていたと言う場所であり』
ーブツン
と、テレビを消してしまった。
何故だか慌ててしまう。彼女を見ると心が弾み、体温も心なしか高まった気がする。
「神楽はさ」
そっと、Pが話し出す。
「楓さんのことが、好きなのか…?」
何故、どうして、と様々な疑問が浮かぶ。
高垣楓は美しい。人を惹きつける魅力や、大人である中に存在する子供らしさが他人を更に引き寄せる。それに俺も惹かれた。
好きか、嫌いか。そのどちらかで聞かれたのであれば、好きと答える。likeかLoveかで聞かれたらLoveだ。
「好きか、嫌いかと聞かれたら好きだ。でもそれはlikeであって、Loveなんかじゃない」
でも、誤魔化すしかない。
本来こんな気持ちは抱いてはいけない物だ。
たまに考えることがある。何故楓さんを好きになったのか。何故普通の人を好きにならなかったのか。自問自答をしても答えは出ない、それこそ何時迄も…
「神楽、俺はさ。お前が誰かを好きになってくれて凄く嬉しい。大学の時なんて告白されても靡く事の無かったお前が、その気持ちを持ってくれたことを友人として素直に祝福したい。」
「待てって、俺は楓さんにLoveの気持ちは」
「神楽」
Pの言葉に俺は言葉を止められる、止めてしまう。
その目はとても真剣で、仕事終わりにここに訪れ愚痴を零し、笑あった友人の目とは違っていた。
「楓さんを好きでも、俺はいいと思う」
「……は?」
何を言ってるんだ。
彼女はアイドルだぞ?一般人の手の届かない所に存在する偶像だぞ?
誰かが言った。『アイドルは星と同じである。手が届くことの無い存在』だと。それを聞いて納得してしまった。だからこそ彼女達の踊りは、歌は眩しいのだ。
「お前も、そんな眩しさを近くで見たくてプロデューサーになったんだろ?だったらなんで俺を応援する!」
思わず声を荒げてしまう。
「確かに、楓さんはアイドルだ。星と同じだ。手の届かない存在だ。でも、それ以前に彼女は一人の女性なんだよ。親もいれば友人だっている、病気だって罹るし」
そこで区切り、一口酒を飲む。
「人を好きになる。」
「はっ。仮に楓さんが誰かを好きだとして、それは誰だ、俺か?それこそあり得ない。」
「誰かを好きになることはあるだろう。でも俺とは限らない。それこそお前が好かれてる可能性もあるわけだ」
「なら俺は楓さんを振るわけだ」
なんて言いながら彼は笑う。実際楓さんと一番長く過ごしているのはPである。近しい異性であるお前なんだ。
「羨ましい限りだ。あんな美人に好意を抱かれて見たいよ」
「……本気で言ってるのか?」
呆れたと言わんばかりにため息を付かれる。本気も何も俺は好かれるような人間ではない。こんな巫山戯た人間を好きになるならその人はきっと馬鹿だ。
「神楽、俺はその気持ちが間違いだとは思わない。お前が本気なら、俺は応援するよ」
ご馳走さん。と告げて彼は料金を置いて立ち去って行った。
一人残されて、考える。
どうしろってんだ、楓さんに気持ちをつたえたとしよう。断られたら?もう楓さんとは、彼女とは一緒にいれない。
心に穴が空いたような気持ちになる。考えただけでこれだ、やはり俺には間違った気持ちなんだ……。
晴れた天気とは裏腹に、俺の心は沈んでいた。
昨日Pが真面目な話をしてきたからであろうか。
何もやる気が起きない、何時もなら店の準備や家事などをするのだか、全く起きない。
申し訳ないが今日は店を休もう。落ち着く時間を作ろう。そう自分に言い聞かせて、重い足取りで臨時休業の札を出しに表に出る。
外は学生や社会人が忙しなく動いている。
何故かそれを見て申し訳ない気持ちになりながらも、札を出す。
ふと、足元に影が伸びた。誰か来たのだろうかと振り向くと
「神楽さん、おはようございます」
高垣楓
彼女がいた。
「え、楓さん……?」
「はい、楓です」
なぜ彼女がここにいる?何故話しかけてくる?
「早いですね、仕事ですか?」
話しかけて来たことに喜んでしまう。なんと単純なことか、忘れようとした気持ちがまた出て来てしまった。
「今日は完全オフの日です。」
ならば何故ここに?そんな事を尋ねる前に
「神楽さん、今日一日付き合ってくれませんか?」
そんな事を、彼女は震えながら聞いてきた。