魔法使いってなんですか?   作:次郎鉄拳

5 / 13
前回までの御話
会長との面談の後、礼司君は魔法を発動させてしまいました。


クエストってボッチじゃダメですか?

教育的指導から数日。

グリモアの校則で校内での魔法使用が禁止されていることを事細かにありがたく丁寧にお説教してくださった皆さんのおかげで、俺は色々、ようやく必要な知識を色々得ることができた。

幸いあの時起動した俺の魔法は、風を周囲に起こす程度の規模も小さいもので、メイコにも怪我はなかったのだが、あきれられて『気を付けろ』とやんわり注意をされたものだ。

 

まぁそんなこんなで訓練所でのメアリーさんやエレンさんからのしごきもあって、魔法の使い方に慣れたものである。

うそです、なんとなくでしかわかりません。

ただそのなんとなくを知れたことは大きな前進らしく、生徒会長からは『クエストの受注を可能にはしたが、最初のほうは誰かと一緒に行くこと』というお言葉もいただいた。

 

そんなわけでクエストの受注の為に相手を探しているんだが……

 

 

「逃げられてるんだよなぁ……」

 

 

メイコに教えてもらったのだが、どうやら俺はめっちゃくちゃ怖がられているらしい。

あれかな、俺の緊張っぷりが威圧感として伝わってるのかなヤバイ泣きそう。

と言うかそれが理由で今クエスト一緒に受ける相手がいないのもつらい。

メイコには『僕と転校生君以外の友人を作ることも君には必要だからね』とか言われて断られたし。

いやわかるんだけどさ、紹介くらいはしてほしかった。

 

俺のコミュニケーションスキルだと結局仲良くなるのも不可能ですよどうしたらいいんですかねこいつぁ!

 

――こういう時こそ、生徒会長に頼ればいいんじゃね?

 

 

 

***

 

 

 

「……それで、クエストを一緒に受注してくれる人を探しに来たってことか」

「私としても予想外でしたわ……まさかクエスト受注の最難題がこれとは……」

「……情けない話だが、どうにかできないか」

 

 

生徒会室に向かって真っ先に武田会長に『生徒会に入る気になってくれたか』勧誘を受けたがサクッとやり過ごした俺。

カオルコ=サンの目が何やら深淵の深き闇を湛えているのだけどあれは気のせいだって信じてる。

あれカオルコ=サン邪神様呼べそうだから。寧ろあの人がキリノマモノってやつで良くねって思うから。

 

まぁそんな恐怖に蓋をしつつ、事のあらましをいつも通り口下手に伝えたところ、武田会長は苦笑し、カオルコ=サンは頭を抱えた。

友人が少ないというよりも作る機会に恵まれないというか、どうにも噂が先行しているらしく。

『出会い頭にセクハラを働くとんでもないやつ』と言う噂も流れてたらしく、メイコに連れられてたんこぶ生やした岸田が謝りにきたこともあるくらいには、噂の広まりがやばいらしい。

……これに関しては一部原因があれだから否定できないんだけどさ。

 

 

「ううむ、弱ったな、アタシはクエストを受けられるほど暇があるわけじゃあなくてな……」

「……無理に送らなくてもいいのだが」

「それはできない。お前が返してくれた話には時間がかかってでも返事を返していくのが筋だからな」

 

 

会長さんってホント律儀。

いや、すごいのよこの人、全校生徒一人一人にもあっとで対話を試みてるんだぜ?

俺も面談の翌日から送られてきたけど……日々追われて暇がないのに必ず一日一通は送ってくるからホント律儀なの。かっこいいわぁ……

 

 

「私もしばらくは業務が立て込んでいますので……」

「うむむ……南はどうだろうか、転木の入学日に共にクエストへ出ただけあるが」

「……南さんも現在岸田さん、神凪さんと共にクエスト遂行中、クエスト内容が討伐以外にもあるため帰還まで数日を要します」

「……網在、役に立てなくて済まない」

 

 

俺★惨敗!

いや、泣くよ。泣いていいよね俺。

だって暗に『お前クエスト行くなや』って言ってるようなもんじゃん。

でもさ、二人とも今忙しい中わざわざ考えてくれたんだよね、ありがたいよね。ありがとう。

 

 

「気にするな……期待はしていなかった」

「網在さんっ!」

「……書類を中断させてまで話を聴かせて済まない」

「っ!?」

「失礼する」

 

 

あっぶねぇぇ!!

あのままだったらほんとに『お前等ふたりに最初から期待してなかったけど藁にもすがるような気持ちで相談しましたぁん!』とかいう解釈されても仕方ねぇよおい!

カオルコ=サン睨んでたじゃん! 睨むどころか殺意ビンビンじゃん! 死にたくねぇよぉ!

……まぁ、そんなわけだし、今日はおとなしく寝よう。

魔法の使い方を知ってからは寝る前にイメトレをやると相場が決まってるんだ。

 

 

 

***

 

 

 

翌日。規則正しい時間に起きてデバイスを起動すると、カオルコ=サンからもあっとでメッセージが届いたことに気付く。

 

『網在さんのクエスト同行者の件ですが、こちらのほうで当たってみたところ、一名ほど同行を申し出てくださった方がいます。指定クエストを下記に記しますので、受注する場合は9:00までにお願いしますね』

 

……カオルコ=サン……(キュン

俺がクエストを受けられないことをそこまで親身になって……

これはクエストを受けるしかありませんね。シミュレーションはバッチリなので、カオルコ=サンが指定したクエストを何事もなく受注。

――直後、デバイスに受注確認の報が届く。

読んでみると……出発は今日。

……今日!?

 

 

「ヤッバイまずいまずい急げってばよぉぉ!」

 

 

着替えてデバイスに書いてある必要なものを鞄に詰め込み、急いで寮を出る。

カオルコ=サンの連絡的に恐らくクエスト同行者は既に待ち合わせ場所である校門にいるのだろう、急がねば!

 

 

 

――そこにいたのはニンジャだった。

 

 

「……アナタが網在センパイッスか、自分、服部梓ッス。クエストに同行する者ッス」

「……よろしく頼む」

「それじゃあ張り切っていきましょーか、大丈夫ッス。クエスト初受注の先輩でも軽くこなせる程度のもんッスから……なんであの人大きなカバンしょってるんすか……」

 

 

緑髪のマフラーを巻いたニンジャ……いや、NINJAスタイルのハットリちゃんの先導で道を歩いて往く。

なんだろ、NINJAでも魔法使いになれるんだね、マホーNINJAってどこぞの口癖が『Easyだな』のKKY君じゃないかな。

あと鞄については必要なものを詰め込んだらこうなった。

食料がどんだけ必要なのかわかんなくて数日分詰め込んだらパンパンでした。

 

 

「今回の討伐対象は学園から程離れていない場所で確認された【ウルフ】ッスね。特徴は名前の通り狼に酷似していること。狼っぽいだけあってかみつきには注意ッス」

「生まれたて、と言うやつか?」

「その通りッス、霧も全然集まってないッスから危険度も低いということで、センパイの実践経験を積ませるために適任だったッスよ」

 

 

――霧の魔物とは、【霧】が集合したところから生まれ墜ちる、謎だらけの存在。

生物っぽい見た目とか特徴を持っているが、その身体を構成しているのは【霧】であるため、叩き潰しても霧に還るだけ。

……どこぞの神喰らい世界で戦っている神の名前もったバケモンと同じ様な特徴じゃねーっすか。

しかも魔法使いの魔法も神機とほとんど変わらん仕組みで成り立ってるし、こりゃあ本格的に世界がマッハしてるんですよねぇ……

 

まぁ、そんな霧の魔物を倒し、霧を祓うことが魔法使いの仕事で、その中でも学生に回ってくるのは平和も平和な危険性がかなり低い難易度Easyなものばかり。

軍隊とかそういうやつらがもっとヤバイのを日常的に倒してるんだとか。

だからここで戦ってても自慢げになるんじゃねぇというのはメアリーさんのお言葉、スパルタンでした。

 

 

「つまり、は……君は監督役ということか?」

「ハットリちゃんでも梓でもあずにゃんでもお好きに呼んでほしいッス。まぁそういうことっすね、基本的に戦闘はセンパイだけにしてもらうッスよ」

「……わかった、アズアズ」

「今日最初に会ったときから思ってたッスけど、センパイって結構ヤの付く職種っぽい顔しといて愉快な人物ッスねぇ……」

 

 

お? これは怖いイメージ払拭? 一歩前進ktkr?

と言うか俺の顔そんなに怖いのね……?

 

 

 

***

 

 

 

クエスト終了!

いやぁやばかった、何がやばいって具体的にはウルフが徒党を組んで襲ってきたこと。

それに一番デカイウルフのなんか親玉そうなのが数体湧いてきたことだよ。

 

アズアズがめっちゃ同様してたからこれは予想外だったんだろうね。

『ここは自分が受けるんでセンパイは離れて!』って言ってくれるほど良い子だったし、優しい子なんだよね。

でもアズアズもやっぱ年頃の女の子だよ、小さい背中を見た時『守ってあげたい』って思ったもん。

会って数時間だけど、色々話しかけてくれた子を見捨てて逃げるほど人間として腐ってないし、俺の魔法が『俺のイメージ通りのモノなら』絶対に戦えるって確信もあったし、思わず前に出ちゃった。

 

アズアズ見てるとニンジャしたくなってきたから、気分はさっきまで名前も出てたのもあって魔法ニンジャな手裏剣戦隊。

イメージできる俺の記憶に頼って戦ったけど、気付けば敵は全部なくなってて、どうやら無事クエストも終了ってことで武田会長に報告も無事終わったしめでたしめでたし。

 

アズアズからは『センパイって結構無茶するんスね』って言われたけど特に無茶した覚えもないんだよねぇ……

まぁそれはともかく、今度彼女が所属している天文部に見学においでって誘われました。

やったね、友達を増やすチャンスだよ!

 

いやぁ、人間本能というか直感で動くと恐怖感って無くなるものなんだね、それを思い知った気がしたよ。

でも、次回以降の戦いで恐怖感が無くなるとは限らないし、今から恐怖感に対する耐性を付ける特訓でもしなきゃなぁ……

 





グリモワールパーソナル

・南智花
ゲーム本編のプロローグで主人公こと転校生君を案内したりしていた子。
テレビCMとかだと開幕から雪景色の中血流してくたばりかけているという事案が発生している恐ろしさ。
誰とでも仲良くできるのが特徴で、料理はダークマターの製造と呼ばれているとか。

・服部梓
後輩キャラで忍者で意味深な言動をするので夢とか希望とかを諸兄に見せてくれる人物。
こちらの作品では――

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。