魔法使いってなんですか?   作:次郎鉄拳

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前回の総括
礼司君は自分の親友にそっくりな遊佐鳴子に驚愕しました。


転校生って転校生なのかい?

「……すまない」

「いやぁ……そこまで僕に似た男がいるのならなんとなくわからなくは……ないかな?」

 

 

網在礼司、現在深く()()()()です。

いや、意味もなく土下座してるわけじゃないんだ。

原因――と言っては俺に非がないことになってしまうので発端と言い換えたい。

 

発端は目の前にいる俺の親友――に似た女性、()()()()()

俺の親友の名前は()()()()()。あのだってばよラーメン忍者と同じ名前だ。

名前だけならば予想できる漢字も相まって紛らわしいだけで済んだだろう。

だが、見た目姿までほぼ()()()。彼女から()()()()()()()()()()もかなりそっくりだった。

 

――もしかしたらナルトが前に『女性に一度でいいからなってみたいと思わないかい?』とか言っていたのが関係あるのかも。

 

そう考えた俺は、ただナルトがとち狂って女装してるのかと考え、ある行動を起こした。

それは……『彼女』の()()()()()こと。

ただ触れたわけじゃなく、()()()()()()()()()『今度は女装か? ナルトってば本当こういうことで俺を揶揄うの好きだよなぁもう!』といつもの調子で話しかけながら、だ。

 

うん、()()()()触れた瞬間に正真正銘の女性であることが発覚、俺はセクハラ野郎として岸田に小一時間制裁された。

 

そのあと、岸田はメイコからの指示に不満ながらも帰還。

今はそのメイコに連れられ、あまり図書室から離れていない場所で俺は土下座を決行している。

 

 

「しかし、驚いたよ。君の目を見る限り嘘は言ってない。どうやら僕と全く同じ見た目をした男がいるだなんて、その人とは友達なのかい?」

「幼馴染で……親友です」

「……ですってことは今でも仲がいいのか、ほかに同じだったところはあるかな?」

「見た目だけじゃなく話し方も……その、香水の匂いも」

 

 

ナルトはファッションに気を使うやつだった。

お坊ちゃんと言うのか、お金は割と潤沢に持っている方だったから、頻度は少なかったが一回の贅沢が本当に贅沢な奴。

割と悪戯好きで、ポーカーフェイスが本当にうまくて、よくわからないコネとかたくさん持っている奴。

それが俺から言える遊佐鳴斗(なると)と言う人物像だ。

 

 

「まさかこう言うところでまでそっくりなのか……いきなり胸を触ってくるのには驚いたけど、改めて聞くとやはり納得してしまうね」

「謝って済む問題ではないでしょう、なんでもします。できる限りで」

 

 

そう俺が言うと、メイコは急に笑みを浮かべる――あ、これナルトがいつも悪知恵働かせるときの顔だ。

 

 

「それじゃあ、前言撤回して取材をさせてもらおうかな?」

「うぐっ……」

「大丈夫さ、僕は良心的だからね、()()()()()()()()答えてくれ」

 

 

この後めちゃくちゃ俺のプロフィールについて取材された。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

――ほんとうならもう少し込み入ったことを聞きたいんだけどね、入学初日で聴くことでもないだろう? また後日そのことについて取材をさせてほしいと考えているよ。

 

そうメモ帳を揺らしながらメイコは去っていった。

話し方とか全く作ってない素の口調で、全くナルトと相違がなく、何度も()()()()()()()()()()()()()()が、その度に優しい反応してくれたメイコにはうだつが上がらない。

 

ついでと言ってはあれなのだが、メイコは図書室で借りることの出来るおすすめの歴史書を教えてくれた。

速めに借りて、この世界のことを知らなければならない。

メイコのことといい、岸田に初めて会ったときといい、ウノスケ=サンの説明と言い、カオルコ=サンのことといい、もう気軽に『ゲームの世界』だとは思えないのかもしれないのだから。

しかし、そんなことを考えていてもいまいち()()()()()()()のだから、どうしようもないのかも知れない。

 

そんなことをつらつらと考えていると、俺のほうへ一人の少年が歩いてくるのが視えた。

あの少年は確か……

 

 

「こんにちは」

「こんにちは、君がカオルコ=サンの使いで?」

「うん、数日ぶりだね」

 

 

そう、このいかにも()()()()()()()()()()()()()は、俺が岸田に会ったときに彼女と一緒にいたやつ。

岸田はコイツのことを『()()()()()()』と呼んでいた。

テンコウセイ……テン=コウセイ? それともテンコ=ウセイ? まさかの転校生?

いやいや、前者二つはともかく三つ目はない。

それなりに親しそうな相手のことを転校生としか呼ばないってなんか違う気がするし。

 

 

「そうかい、それじゃあ何を任せるのかわからないがよろしく」

「任せて、とはいっても案内するものはあんまりないんだけどね」

 

 

と、テンコウセイ君の先導で校内を移動し始める。

既に日はそれなりに沈みかけているのであまり長々とは案内せず、男子寮に行く途中にあるものの紹介だけに済ませるらしい。

 

しかし、テンコウセイ君はやたら人気がある。

女性にも結構なれているのか、行く先々で女子生徒に話しかけられている。

途中メアリーとかいう外人さんにパシられそうにもなっていたところを見ると、慕われているというよりかは()()()()()()()()()()って見れるところもあるんだけど……

 

俺? そんなんいうまでもないやろ。

ずっと! テンコウセイ君の後ろに隠れて! 息を殺してましたぁ!

テンコウセイ君に紹介された時だけ顔をだして、『どうも』って挨拶をしたんだけども。

エレンっていう元軍人さんからは……

 

――ふっ、鍛えがいがありそうなやつが入ってきたな。

 

とか、良い笑みで言われてしまった。

少しだけときめいてしまったのだが、違うそうじゃない。

俺ってそんな貧弱そうですかね?

なんか直後テンコウセイ君には『二人に気にいられたようだね』って言われたけどあんまりうれしくない。

てかメアリーさん途中からずっとこっち睨んでたけど。

あれで気に入られてるって思える君の感覚に困惑するよ……

 

そんなわけで現在男子寮前。

俺に与えられた部屋に着いたのだが、意外なことなのか何なのか、テンコウセイ君の部屋の()()()()()()だった。

 

 

「ここが君の部屋だよ」

「ああ、案内ありがとう」

 

 

よかった。と笑顔になるテンコウセイ君。

俺は彼に確かめなければならないことがあるのだから、ここで会話を終わらせたりはしない!

 

 

「俺は()()()()()()()()()に朝行けばいいのか?」

「そうみたいだね、教科書とかそういうのは全部もう部屋に在るはずだよ」

「わかった、後で確認してみる」

 

 

わかった。じゃないよオレェ!

なんで会話打ち切っちゃうの、もっと自然な流れをくみ取ろうよ!

もういい、ここでうだうだやっててもらちが明かない!

 

 

「あ、そうそう」

「……なんだ」

「困ったことがあったら兎ノ助さんに相談するといいよ。あのひと進路指導官だから結構生徒のことみてくれているしね」

 

 

あの兎って割と慕われてるんだ……

でもカオルコ=サンからの評価ってズンドコじゃなかったっけ?

もしかして、めちゃくちゃ優しくていい人なんだけどスケベ過ぎて評価下がってるって――ごちゃごちゃしててイミワカンナイ!

 

 

「あとはね、この【()()()()】ってツールで連絡とか取り合えるから、また困ったことがったら聴いてね」

「もあっと……? 【L()I()N()E()】じゃなく?」

「うん、もあっと」

 

 

何!? どこかで見たようなトーク画面とかそういうのがあるがLINEではないのか!?

というかこれ勝手に()()()()()()()とかされてない?

大丈夫? いつぞやのジョウメサンダーみたいに『深夜に訓練所へ来い、教育してやる』みたいなことされたりしない?

 

 

「多分知らない相手には登録されていても連絡しないとは思うから大丈夫だよ」

「……そうか……ところでだ」

「?」

 

 

おかしいんですよ一人だけ。

うん、このテンコウセイ君のもあっとらしき名前の部分。

()()()】って書いてあるんですよこれ。

えっもしかしてテンコウセイ君の名前が転校生ってマジだったの?

 

 

「この……なまえだが、もしかしてお前か?」

「そうだね、そういえば自己紹介してなかったか。僕の名前は【()()()()()()()】っていうんだ」

「えっと、じゃあテンコウセイはあだ名……? いや、だがここには間違いなく転校生って……」

 

 

もあっとはどうやら学生名簿などから名前を記載しているようで、そうするとテンコウセイことコロビキアマタ君の字面がまごうことなく【転校生】と書かれているのはどういうことなのだろう。

 

 

「えっとね……コロビキって漢字でこう書くんだ」

 

 

俺の疑問に答えるように、どこからかペンとメモ帳を取り出したコロビキアマタ君は自分の名前の漢字を書き始める。

苗字のコロビキ……彼が書いた文字は【()()】。

 

 

「それで、アマタっていう名前がこう書いてね……」

 

 

アマタ、その漢字表記は【()()】。

彼は俺がそれを見たのを確認し、苗字名前を続けてメモに書き記す。

コロビキアマタ、その文字面は【()()()()】。

そう、縮めてみると【()()()】だった。

 

 

「これが転校生って言われる理由だね。まぁここのみんなには『()()()()()()』とか言われてるから一概にそうじゃないんだけど……」

「……苦労、してるのか」

 

 

きっとこの名前だったらグリモアに来る前からもいじられていたんだろう。

『転校生どこから来たの? あっ転校してないかぁ!』とかいういじられ方をしていたに違いない。

そんな苦労を想像するとすごくなけてくる。

 

 

「あはは……もう慣れたからね、むしろ転校生って呼んでくれた方がしっくりくるよ」

「そうか……じゃあ、改めてよろしくたのむ……転校生」

「うん、よろしく礼司」

 

 

握手を交わし、互いに自分の部屋に入る。

俺の部屋にはアマタの言う通りで、教科書とかその他もろもろがあった。

明日は普通に授業があるが、必要なものだけは既に段ボールから出されているようだし、朝でもよさそうだ。

 

 

 

 

「……疲れたし、寝るかな」

 

 

デバイスに充電コードを差し込んで部屋の電気を消す。

今日だけでいろんなことがあったなと思い返しながら、目を閉じる。

 

――カオルコ=サンとかメイコから連絡が来ているかもしれないし、明日シッカリと、返信しないとな。

 





グリモワールパーソナル

・転木交生
通称転校生君。ゲーム本編主人公で、ギャルゲー主人公のごとく女たらしの伝統を引き継いでいる。
魔法使いとしての能力は【譲渡】。その『全世界全人類全ての合計よりも』保有する魔力量が多い代わりに自己消費を一切できない。しかし他人にその魔力を供給できるという厄介ながら恐ろしい体質が現在世界の希望といわれている。
一人でいる時間が寝るときくらいじゃないかとも言われている人物だったりする。
ちなみに当作のみの名前であるので、よそで転木君と呼ばないように注意。

・メアリー・ウィリアムズ
国連所属の元軍人。現在はグリモア学生。【精鋭部隊】という対魔物本格戦闘部隊らしきチームに所属している。
映画で出てくるアメリカ人をそのまま性別女性にしただけみたいな気性という認識で大体説明できる人物。
趣味も特技も銃ブッパというとんでもないトリガーハッピー、流石アメリカ軍人である。

・エレン・アメディック
メアリーと同じく元軍人。現在彼女と同じく精鋭部隊に所属。
魔物との戦いは軍としての厳しいほうを生き抜いたからか、グリモア学生たちに対する印象はあまりよくないとか。
グリモアによって守られていることで平和ボケしている生徒たちの性根を叩きなおすために日々スパルタに訓練しているそうだ。

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