今、俺は自分の部屋で包丁を持って、自殺しようと思う。いきなりそんなことを言われてびっくりするだろう。だが、俺はもう、限界だった。
――『比企谷君、もう部活来なくていいわ』
それが雪ノ下からの最後の通告だった。もう、俺達は戻れない。なら、俺はどうするか。あの居場所を追い出された俺は何が出来る?
修学旅行での嘘告白により俺へのイジメが始まった。もう、耐えられない。遺書は書いた。そして警察にも遺書を送った。せめての足掻きだ。あと俺がやることは包丁を首に刺して死ぬだけ。
そう思い、包丁を自分の首に当てる。金属が異様に冷たい。ああ、これから死ぬんだ。
ごめんな、小町こんな兄で…
今まで悪かったな、雪ノ下、由比ヶ浜…
そして、俺は包丁を少し首から離してから勢いよく、振りかぶった。
――はずだった。
「ぐえっ!」
当たったのは俺の手だった。いつの間にか包丁はなくなっていた。あれ、俺もしかして包丁にも嫌われてるの?
「危なかった危なかった〜」
声の方を振り向くと、そこには包丁を持って床から『浮いていた』ポニーテールの少女がいた。
***
さて、私の名前は柊桜。どれも一文字だけっていうね。いきなりだが私には他人とは違う力を持っている。物を出したり、動かしたり、傍は人を作ったりすることだって出来る。―人を作ったりってのは深い意味はないからね?―さらには飛ぶことも出来る。え?チート?うん分かってるよそれぐらい。オマケにその異能の力のせいでやることがない。成績トップ。運動もトップ。容姿どうでも良い。それで暇つぶしにどこかの家の中に入って私の姿を見せなくしてたら、目が死んでる男子高校生がいきなり包丁を持って自殺をしようとする。この時私はなぜ彼を助けたのか分からなかった。けど、彼は助けなきゃって思った。そう思ってたら勝手に体が動いて包丁を彼の手から私の手に移動させて、彼の自殺を止めた。私は安堵しながら姿を現した。
「危なかった危なかった〜」
***
俺は今有り得ないものを見ている。人が、宙に浮いている。八幡これでもう頭が混乱したぜ!?
ふえぇ…怖いよぉ……
うん、キモイ。てかマジで人が飛んでいる。だが、これを考えると、自殺を止めたのはこの子のようだ。
「……なんで止めた」
自分でもびっくりする程低い声が出た。だが少女はそれをものともせず話してきた。
「なんでか分かんないけどなんか止めなきゃって思ったの。私はあなたを助けたいの」
俺を、助けたい?
「はっ、そんなの嘘に決まっているだろ。俺はもう信じない」
「……酷いね」
ああ、そうだ。これでいい。もう関わってこないで――
「あなたが信じた人達って酷いね。結局はあなたに任せたのに裏切った。その嘘告白をしなかったらそのグループは壊れたのに、酷いね」
……は?今なんて言ったこいつ?嘘告白?俺には修学旅行の件しか思い付かない。
「……文化祭でもその実行委員長は最低だね。自分のことを棚に上げるなんて」
「ちょっと待て!?なんでお前がそれを知っている!?」
「私はね、生まれつき異能の力があるの。だからあなたの記憶を見たの」
「………は?」
もう俺の頭はオーバーヒートしそうだ。もう追い付けれない。
「そして、あなたへのイジメが始まった。周りは無視して、彼女達はそんなことを知らず、あなたを傷付けた」
もうやめてくれ。そんなこと聞きたくない。
「けどね……」
だが俺は彼女が次に言う言葉に救われた。
「私はあなたの側にいるよ。ずっと」
そう言って彼女は、俺を抱きしめた。
懐かしい温もりに、俺は涙を流しながら、意識がなくなった。
***
「私はあなたの側にいるよ」
そう言って彼を抱きしめる。
……私なにやってるのぉぉぉぉ!!!???
ひとまず落ち着こう!!
スーハースーハー
……ふぅ。どうやら彼は泣き疲れて寝たみたいだね。彼の寝顔を見ると大人びている顔が幼く見えた。
「あなたは耐えた。もう、我慢しなくていいからね」
私はどうやら彼を気に入ってるみたいだ。なら、私は私の力を使って、彼を支えよう。あれ?もしかして彼と一緒に暮らすことになる?
そう思ってると顔が熱くなる。
あ〜れれー?おっかしいぞぉ〜?
……もしかして、私、彼に一目惚れしちゃったの?
ワォ、なにこれ珍百…何でもないですごめんなさい。
けど、多分これは恋なんだと思う。彼を守りたい。彼とずっと一緒にいたい。そう思ってしまう。なら私はそれに従おう。けど、まだこの気持ちを言うには時間が足りない。少しずつ彼と一緒にいて、心を開かせたい。
ならまずすることは今彼を取り巻く環境は駄目。彼の両親は放任主義だから希望するのは無理。それに妹さんにも迷惑がかかる。そこで私はふと思い付く。
――彼を死んだことにして私の家で一緒に暮らす。
幸い、私は一人暮らし。なら、それにしよう。
私は彼の服を少し上げ、お腹を出させる。よく見ると所々傷がある。
……彼を傷付けた人は許さない。
はっ!今はそんなこと考えちゃ駄目。
私は力を使って彼が痛みを感じないようにして、一瞬躊躇ったが彼の腹に包丁を刺した。包丁を抜いて、床に血を出させる。ある程度出させたら傷を治した。そして次に彼の体を作ろう。そして自ら刺したかのように見せる。よし、これで完璧!
私はまだ眠っている彼を起こさないように、私の家へ移動した。今は夜、彼をベッドに寝かせてる。けど少し不安だから彼が眠っているベッドに私も入る。
「おやすみ、八幡……」