赤原礼装。
とある聖人の聖骸布を加工したもので聖骸布自体はエミヤが某シスター(濃い味好き。詳しくは月姫でも)から譲り受けたものだ。
Fate時空でのその効能は、「外界からの守り」。
外敵ではなく、外界。
そこが色々と重要になってくるのだが、今はどうでもいい。
衛宮士郎は、英霊エミヤの体に合うように加工される前とは言え、その聖骸布を手に巻いていた。
それが、自分を御使堕しから守ってしまったということのほうが重要であるのだから。
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Fate本編では、(最高峰の魔術師とはいえ)キャスターの魔術にまんまと引っかかってしまうほど魔術抵抗力の低い主人公衛宮士郎を英霊として遜色ない域まで魔術抵抗力を押し上げた道具でもあるその聖骸布は、カレン=オルテンシアの友人から受け取ったもので、と長い説明になってしまうから省くが。
ちなみに御使堕しというのは、『とある魔術の禁書目録』第4巻で起きた世界的規模の事件のことで、ようは、「天使の魂を天界から人間界に落とす」術式のことである。魔術的な根本に揺らぎを与えるようなことが起きるということは、各生物の位階を示すセフィロトの樹を思い浮かべて貰えば容易に想像がつくであろう。
ようは大企業があるとしよう。その社長が破産して、社員全員リストラされる。関係各社も東京株式市場もダメージを食らう。
これの社長を天使、関係各社を魔術や他の天使と考えて貰えばわかると思う。
そしてこの影響は、魔術の根幹に関することだけに関わらない。リストラされた社員を思い浮かべて見れば、今の人類の置かれている状況がわかる。
「社長の破産」によって「社員がリストラされる」ように、「天使が落ちる」ことによって「人間の魂と体が入れ替わっている」のだ。
椅子取りゲームのように、天使の魂により、もともとその体にいてはじき出されてたその魂がべつの人間の体に入り、またその人間の魂が……ということである。
ようは、御使堕しによる精神と肉体の入れ替わりは、いわば天使が降りてきた副産物である。
それによる影響が世界に波紋として広がっているのだ。直接の対人からの干渉ではなく、余波による世界からの干渉。
故に外界からの守りが機能したと考えるのが自然であるだろう。
ええ。
こんな考えは唯の逃げですよ。
うん。
主人公勢には聖人がいるからね。敵認定されたらほとんどの人は勝てるわけないではないか。
そんな考えで衛宮士郎は、はぁと溜息をついた。
取り敢えず、ここで過ごして隠れていようか、とも思うが隠れているところをミーシャや土御門とかに見つかった時の言い訳が立たない。
それに衛宮士郎の目的は上条当麻との接触だ。隠れていたら二度と接触の機会はないと言っていい。だって上条さんが学園都市から出てくるのっていつも事件の時で物騒であるためだ。オルソラのとき然り第3次世界大戦の時の然り。
うん。今しか接触のチャンスはないな。
よし、もう自分のことを魔術師と言ってしまおうと、衛宮士郎は思った。いや衛宮士郎自身は魔術師ではないのだけど。
でも、それで通しておけば、聖骸布を持っていた理由も一応は説明つくし、排除対象から外れるかもしれないと言うことで、これはいい案もしれない。
いや、それはーー実演しろと呼ばれるもしれないしな……そん時はやばいな……。
本当にどうしよう、と思った。
思考がループしている衛宮士郎だったが、本人はパニクっているので仕方がない。
何とは無しに近くにあった木刀(一応護身用、火野さん対策に持ってきていた)を手に持ち、衛宮士郎は、
「
と、唱えてみた。
するとーー、木刀の構造やら何やらが見えるではないか。
衛宮士郎は驚いた。
転生して少しした後、自らの名が衛宮士郎だと知った衛宮士郎は(言いにくいな)色々と呪文を確かめてみたが、何の効能もなかった。それが今になって何故?
少し考えた後、衛宮士郎は、こう考えた。
御使堕し〈エンゼルフォール〉が発動してエミヤ少年の魔術回路がオンオフできるように開いたのではないか、と。
それの膨大な魔力が魔術回路を押し開けたのかもしれない。
他にも魔術基盤のこととかはわからないことだらけだ。
しかし、どうやらやるしかないらしい。
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適当に衛宮士郎はぶらついて浜辺に来ていた。
風に浴びて考えをまとめるためだ。
あの後、衛宮士郎は色々と投影を試してみた。
最初は木刀、次は包丁、とやっていき、最終的には、宝具投影してやるかー、というテンションになり衛宮士郎といえば干将莫耶だよなーっという感じでやってみたら……出来てしまった。憑依経験付きで。
うーむ、どうやら作中で衛宮士郎が見た宝具なんかはだいたい使えるみたいだ……と衛宮士郎少年は気付く。反動が怖いものの、そのような予兆すらなく、投影実験は済んでしまった。
まだまだ投影の強度が足りないみたいだったが。
そんなことを考えていると、重たい衝撃が体の側面に走った。
なんとかよろめく体勢を整えて、バランスを保つ。どうやら誰かとぶつかったようだ。
おそらく衝撃の反動手間倒れたであろう人物に声をかける。
「すまない。注意力散漫だった、大丈夫か……」
そこで、言葉が止まった。いや、言葉を紡げなくなった、というのが適切か。というのも、その倒れた人物こそ、
「大丈夫……怪我はないかも……あっ、とうまを見失っちゃったんだよ!」
とある魔術の禁書目録における正ヒロイン?のインデックスであった。
「……どうかしたのか」
しばし衛宮士郎の頭はその機能を停止するも、ここで助けないとかいう選択肢は日本人としてあり得なく、話しかける。
ついでに言うと、ここで話しかけないのは不自然である、と言う理由も大きい。
少しして起き上がり砂を払った後、辺りを見渡して、一番近くにいた衛宮士郎に話し掛ける。
「とうまがどっちにいったかわからない?」
「すまん。そもそも誰だかわからない……だが、浜辺にはいなそうだし、そこのアイスクリーム屋の角を曲がったんじゃないか?」
そうして、当麻という名前を知るはずがない衛宮士郎はそう答えるしかなく、初の邂逅はこれで終わる、はずだった。
その少し後……。
「ねぇねぇ、お兄さんお兄さん、とうまがね、お前なんてインデックスじゃねーとか言ってくるんだよ。本当に失礼しちゃう」
「ああ、それはひどいな」
「でしょ、でしょ? 頭にがぶりとかぶりついて行った方がいいかもなんだよ!」
衛宮士郎は、インデックスの、話し相手にされていた……。
出会いは単純らしい。上条当麻逃げる。インデックス追いかける。衛宮士郎とインデックスぶつかる。インデックス上条当麻見失う。インデックス、「って、アイス? アイスがあるんだよ! 」ということで、奢らせれる。
「いやーー、だめ。やめたほうがいいんじゃないかなぁ。男として、禿げるのは可哀想だし」
「とうまなんて、はげちゃったほうがいいんだよ。はげちゃえはげちゃえはげちゃえ」
むしり取ろうとする動作をするインデックス。それを見て、インデックスたんを連想する衛宮士郎だった。
「お兄さんてさぁ、名前なんていうの?」
ふとインデックスがそんなことを聞いてくる。
「衛宮士郎だ。宜しく」
「じゃあしろー、愚痴聞いてくれてありがとね。アイス、ねぇ、本当にいいの? とうまみたいに実は財布落としてましたとかない?」
「ああ、大丈夫だ。ぶつかったのはこっちのせいだし、財布もここにあるしな」
インデックスは上条当麻を探しに立ち去ろうとする。それを見て、衛宮士郎はどういたしましてと言って手を振った。
じゃあね、と言いかけるインデックスだったが、すぐにピューと戻ってきた。
そして、こう言った。
「ね、ねえ、しろー、その布、どこで手に入れたんだよ?」
インデックスはすごく焦った様子で。とても興奮した様子で。そのように問い掛けてきた。
衛宮士郎は正直に答えるわけにもいかず、(というか自分でも知っていない)取りあえずごまかすことにした。
「なんか家が代々伝えたものでとか言ってたかな。でもなんでそんなこと聞くんだ?」
必殺、質問を質問で返してごまかす!
どうにかばれていませんように。
とゆうか投影品の偽物なんだから、本物と勘違いされないよねー、大丈夫だよねー、とあてにならない願望に希望を託す衛宮士郎。
こんなことなら布をおいてくればよかった。
「なんでって、それ、私が正しければ間違いなく聖骸布、なんだよ?」
……やっぱりそうきましたか。
……主人公は、インデックスのアイスを断ることができたはずです。
というか初対面ならそれが普通ですよねー(意味深)
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