とある投影の魔術使い〈エミヤシロウ〉   作:機巧

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……夏だ、カルデアに夏が来た。


もう言うことはあるまい。


果てなき荒野 Endless wilderness

衛宮士郎は気がつくと果てなき荒野に立っていた。

 

風が頬に当たる。何もないところだというのに、どこかこれがすべてであるような気がする場所だった。

 

見上げるとそこには回るものが少し雲に隠れていた。

それがなんだかは、よくわからなかった。少し霞んでいたからだ。

 

その雲の流れてくるほうを辿ると、朝焼けが見えた。

雲が流れ続け、朝焼けの荒野が広がる。ここは少しだけ霞んでいた。

 

冷たいものが当たった気がして振り向いた。

そこに回るものはすでになかった。

 

そこにはーー

 

 

 

 

 

 

I am the bone of my sword.

体は剣で出来ている。

 

Steel is my body, and fire is my blood.

血潮は鉄で、心は硝子。

 

I have created over a thousand blades.

幾たびの戦場を越えて不敗。

 

Unaware of begining.

たった一度の敗走もなく、

 

Nor aware of the end.

たった一度の勝利もなし。

 

Stood pain with inconsitent weapons.

遺子はまた独り

 

My hands will never hold anything.

剣の丘で細氷を砕く

 

――――yet,

けれど、

 

my flame never ends.

この生涯はいまだ果てず

 

My whole body was

偽りの体は、

 

still

それでも

 

“unlimited blade works”

剣で出来ていた

 

 

 

 

ーー星ひとつ存在しない明かりすら無き闇夜。

そして、無限の剣が突き立つ永久凍土の雪原が広がっていた。

 

 

 

どこからか、詠唱が、聞こえた。

 

 

だがその声も、その風景も、徐々に遠ざかっていく。

霞んでいく。

 

 

最後に見えたのは、黄金色のーーーー

 

 

 

 

 

◼︎◼︎

 

 

 

 

 

「なっ、人間の魔術師の攻撃が何故……当たっても無効化されるはずっ!」

 

「ああ、これが普通の攻撃で当たったのが普通の武器だったらそうだろうな」

 

納得いかない、という表情の神裂に衛宮士郎は答える。

 

確かに天使に普通の攻撃は効かない。何故なら天使という存在は人間の上位の存在であるからだ。

そのことは魔術の世界ではセフィラの木の理論によって厳密に定められているからだ。

上位の存在には並大抵のことでは、ホコリすらつけられない。

それこそ、神様の奇跡すら打ち消す右手でも無ければ……。

しかしそれを持つ上条当麻の動きでは、右手を持っていても当てられない。

故に、神裂が残ったのだ。神の子の性質を持つ聖人ならば、足止めくらいならばできるだろうから。

しかし、衛宮士郎はダメージを与えた。

それに神裂は驚きを隠せなかったのだ。

 

その問いに、衛宮士郎はーー

ーー普通の武器であったのなら、と。

 

 

その言葉に神裂はこう考えた。

 

「そういえば貴方のあの剣は、魔剣や聖剣と呼ばれる類のものでした。……ですが、そんなものが数本……」

 

そう。

聖剣や魔剣と呼ばれる類の剣は、見つからない。

ほとんどが伝説上のものであり、また歴史も積み重ねられている。

故に、持っているものは隠してずっと保管してあるし、もし新しく発掘されたとしても科学サイドの博物館行きだ。

そもそもない、という聖剣さえある。

 

故に、聖剣などは持っていてもあんな風に多くは持てないものなのだ。

個人で所有する量など1本、あっても3本がせいぜい。

しかし、先ほどの青い光は(・・・・・・・・)幾筋であったか(・・・・・・・)

 

神裂は天使の攻撃をかわしつつ、疑問を衛宮士郎にぶつける。

 

 

「なぜ、そんなに聖剣などを持っているのですっ⁈」

 

 

その答えは衛宮士郎にとって決まっていた。

 

投影しました〜〜なんて言ったらどっかの女狐や、どっかの☆さんに睨まれることになるからだ。

無限に聖剣とか作れると知られたらなあ……。

 

ここで断っておくが、士郎の元の目標はこの世界を無事に生き抜くことだ。上条の仲間になっていれば死ぬ確率が減ると思っているだけで、自殺願望などない。元はと言えば、転生してなんの力も持っていなかったんだからそうしようという結論だったはずなのだが、なぜこんなことになっているのか。

まあ、世界の人命がかかっているのだから仕方ないとは思うが。

 

話を戻すが、いろんなところに目をつけられたくないのだから、答える言葉はこれだけしかない。

 

 

「俺が作ったからな」

 

「……っ⁈」

 

 

神裂は息を飲む。天使に攻撃を加えられるような剣を現代の魔術師が作れるだなんて、思いもよらない。

作れたとするならば、……。と考えたところで、この少年はとんでもない聖骸布を所持していたことを思い出す。

そういう家系ならば、持っていてもおかしくは無いだろう、と。

 

 

 

 

「まさか、貴方はーー魔剣鍛治師であるのですか?」

 

 

「あ〜〜、うん、そんなもんだ。自分の使う魔術はあんまりいいたく無いんだがな」

 

 

 

 

いい方向で神裂が勘違いをしてくれた。それを肯定しつつも、そう付け加えていう士郎。

魔術の世界では他人の魔術を詮索するのはご法度だ。

それを言っとけば、心根の優しい神裂は後ろめたさを感じてあまり言いふらさないだろう。

 

……すこし心は痛むが嘘は言ってない、嘘は。

 

衛宮士郎はもともと鍛治師のようなものだし。

 

 

 

 

 

と、その時、神裂を援護するように合間を見て放たれていた剣群が、すこし弾かれた。そしてそのうちの1つが、神裂の方へ向かっていった。神裂は聖人と言われるだけあって、とっさに逃れたが、天使の攻撃を受け、日本刀が遥か彼方へ弾かれてしまった。

 

「くっ、しまった!」

 

神裂は歯を噛む。

天使とは聖人である神裂にとってもかなり格上の存在。

そんな相手に得物なしで挑むのはいささか分が悪すぎる。

 

続く天使の追撃を余裕を持って回避する。

 

大きく天使の体勢が崩れるが、天使はすぐに神裂に攻撃を加えてくる。

このままでは、天使をこの場に止めておけない、と神裂が思った瞬間、

 

 

「おい、神裂っ!」

 

 

その声とともに海の彼方に吹っ飛んでいった愛剣が、士郎から投げ渡された。




読んでくださりありがとうございます。
出来れば感想等をお願いします。



ちょっとした補足

固有結界〉あの風景、なんなんですかね?
聖剣と魔剣〉士郎は今のところなのある名剣は作っていません。
神裂の剣〉おーい、アンパン◯ーン、新しい◯よ?

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