冬華「…………。」
……冬華さん?
冬華「……スピー、スピー」Zzz
……あらら、まだ寝てますね。でも冬華さん、もう起きる時間ですよ。そろそろ起きて下さーい。
ゆさゆさ
冬華「……ん? ……おはよう、ござい、ます……。」
さて、冬華も起きた所で4話をどうぞ!
冬華の朝はとても早い。
夏、日が長くなれば朝日と一緒に目が覚めて、冬、日が短くなれば朝日が昇るより前に目を覚ます。
なかなか家に帰れない両親の代わりに、家の家事の全てを行っている冬華は、365日、体調の悪い日以外欠かす事なく、誰よりも早く起きて家事に勤しんでおり、そんな冬華の姿はまるで主婦のようである。
今日も朝日より前に目を覚ました冬華は、身体にかかる抵抗感を感じ、自分の左右の腕を見る。
「……。」
そこには姉の一姫と幼馴染みの由紀が自分の両腕にそれぞれ抱きついて幸せそうに眠っていた。
どうやら今日冬華の朝一番の仕事は、この2人を起こさずに自分の腕から引き離す作業のようだ。
ーーーー
「……ふぅ、漸く抜けた。」
格闘する事数分間、なんとか2人を起こさずに自分の両腕から剥がした冬華は、幸せそうに眠る2人の寝顔を見る。
「幸せそうに寝てるな。……よし、今日1日頑張ろう♪」
しばらく2人を見た後、気合いを入れた冬華は静かに自分の部屋を後にした。
ーーーー
1階に降りた冬華は脱衣所の洗面台で顔を洗い、タオルで拭く。
拭き終わった冬華は、鏡に写った自身の姿を見た。
少し長い黒髪と長い睫毛に大きな瞳、色白の肌に桜色の唇、158cmの華奢な身体、そんな冬華の身体つきは、男子よりも女子のようだった。
「ハァ……。」
そんな自分の姿を見て、憂鬱そうにため息を吐く。
冬華は自分の姿が嫌いなのだ。
男子に告白される女の子みたいな自分の姿が……。
その後、冬華は脱衣所から出て行って居間へと向かった。
ーー第4話 おはようーー
「えっと、昨日がハンバーグだったから、今日はどうしようかな……。」
居間に到着した冬華はテレビを点けた後、冷蔵庫や棚を開けて今日の朝食のメニューを考え始める。
家によっては朝食が
ちなみにだが、高校生である一姫がお昼に食べるお弁当のメニューは、既に冬華の中では決まっていた。
「おとといは魚屋さん来て、お刺身とかフライとかしたから魚はダメだし、今日の夕食はカレー作ってるからご飯は残しておきたいし……。うーん……。……ん?」
先程何気なしに点けたテレビに冬華は視線を向けた。
そこには、フレンチトーストの特集がされていたから。
それを見た冬華の口角が上がる。
どうやら、朝食のメニューを何にするか決めたようだ。
早速冬華は朝食とお昼に一姫が食べるお弁当の準備に取り掛かった。
ーーーー
「おはよー、トウカ」
朝のテレビ番組が、○×クイズをする頃、一姫が起きて来て、眠そうに弟である冬華に挨拶する。
「おはよう、姉さ……ん?」
冬華も挨拶を返そうと一姫に声をかけるが、その言葉は一姫を見た瞬間止まった。
何故なら、今の一姫の服装は、寝起きという事もあって、着ている襟付きのパジャマはだらしなく、上から2つ目までのボタンが開いていて、それにより片方に寄った襟元から、一姫の健康的な白い肌が少しだけ顔を覗かせ、一姫の女性らしい体つきと相まって見る人が見れば妖艶さを感じずにはいられない姿になっていたからだ。
この格好は冬華の慌てる姿を見るために、一姫がわざと着崩したもので、眠そうにしているのも一姫の演技であり、内心は刹那の後に訪れる冬華の慌てた反応を今か今かと楽しみに待ち構えていた。
しかし、肝心の冬華の反応は、
「もう、姉さん。パジャマはちゃんと着なきゃ、風邪ひいちゃうでしょ。」
と、まるで幼い子供に言い聞かせる母のようで、料理する手を一旦止めた冬華は、手を洗ってから一姫の元に行き、ただ淡々と一姫の着崩れた服を直していった。
もちろんそんな態度、冬華の慌てる反応を見ようとわざと着崩していた一姫からしてみれば、少しも面白くなく、服を直し終わった冬華に「トウカのバカ」と恨めしそうに言うと、居間のテーブルに行き、体育座りの格好で点いてるテレビを見始める。
(え、えー……。)
後に残ったのは、訳も分からず呆然と立ち尽くした冬華の姿だけだった。
ーーーー
「トー君、おはよー」
一姫が起きてから数10分後、由紀も降りてきて、冬華に挨拶する。
「おはよう、ユキ」
冬華も挨拶を返す。
すると、由紀がトコトコと冬華のいるカウンターテーブルにやってきて、
「ねぇトー君、かずねえが機嫌悪そうだけどどうしたの?」
と、一姫に聞こえない位小さな声で冬華に質問してきた。
顔を上げた冬華の視線の先には、今尚不機嫌そうにしている一姫の姿が映る。
由紀に聞かれたが、冬華自身何で一姫が機嫌を悪くしているか分からず、
「あー、分かんない。着崩した服を直したら機嫌悪くなった」
と、さっき起こった事を素直に答えると、
「それはトー君が悪い。」
と、由紀にばっさり切られた。
その後居間でテレビを見ている一姫の元に行く由紀の後ろで、冬華は訳も分からず?マークを頭から飛ばしていた。
「おはよー、かずねえ」
「おはよう、ユキ」
由紀と一姫は互いに挨拶をして、由紀は一姫の隣に座る。
「もう、冬華ってば少し位慌てても良いじゃない」
一姫は冬華に聞こえない位の声で文句を言う。
その膨らんだ頬は怒っているからか、少し赤くなっていた。
「まぁ、トー君だからねぇ。仕方ないよ」
年頃の同級生の幼馴染みが、実の姉だが、こんなに美人の女の子から迫られても何も反応しないという事に呆れながら、由紀は一姫の言葉に返答した。
「…………ハァ」
そして隣にいる一姫にバレないようにそっとため息を吐いた。
ーーーー
「……よし、出来た。姉さん、ユキ、朝食出来たよ」
それから再び10分後、お弁当と共に朝食が完成し、冬華は2人を呼んだ。
……が、やって来たのは由紀だけ。
一姫はテレビの前から動こうとしなかった。
「ねえさーん。」
「…………」
冬華が呼びかけるも一姫はそれを無視する。
「ねえさん。」
「…………」
冬華は一姫の後ろに行き、もう一度声をかけたが、一姫からは反応はなかった。
「……。」
「……。」
「……。」
居間に静寂が包む。
テレビを見ている一姫も、後ろで立っている冬華も、その2人を見守る由紀も誰も話そうとはしなかった。
「はぁ。」
しばらく無言の駆け引きが行われた後、まず声を出したのは冬華だった。
冬華が折れたのは2つの理由から来ていて、
1つ目の理由は、例え今は時間に余裕があるとしても、いつまでもこうしていれば学校に遅れてしまうという、学生らしい理由。
そして2つ目の理由は、せっかく作った出来立ての朝食が冷めてしまっては美味しさが減ってしまうという、主婦らしい理由からだった。
ため息を吐いた冬華は一姫のすぐ側に膝を付けると、
一姫を後ろから優しく抱きしめ、左手で一姫の頭を撫で始めた。
「んっ」
一姫の口から短い吐息が漏れ、その頬に少し赤みが灯る。
後ろから抱きしめて、頭を撫でる。
これは一姫の機嫌を直す1番の方法だ。
しばらく冬華は何も言わず、一姫を抱きしめ、撫で続けた。
それをした時間は5分となかったが、
「……姉さん、朝ご飯食べよっか。」
「うん♪」
しばらくした後に聞いた冬華の提案に一姫は上機嫌に答え、一姫を含めた3人で朝食をとった。
……朝食の後、「私もやって」とせがんできた由紀にも一姫と同じように抱きしめて、頭を撫でたのは言うまでもない。
4話終了です。
今回、上白家の朝の風景を書きました。
がっこうぐらしの方では由紀はお寝坊さんという設定で、それもこの小説でも流用しているのですが、それをこっちでやると話が進まなかったので、今日はたまたま早く起きた、という事にしました。
以下余談話
朝食は、フレンチトースト、コーヒー、ヨーグルトサラダ、ワカメとコーンとレタスのサラダといったメニューでした。
上白家にはコーヒーを挽く道具等があり、プチ喫茶店みたいな事もできたりします。
ちなみにコーヒー豆の種類はキリマンジャロです。
……と、そこら辺の説明を本文で入れたかったのですが、文がおかしくなりそうだったので、ここに記述します。
ーーーー
以降、人物紹介……と、行きたい所ですが、今回は新キャラいないので人物紹介はなしですね。
……え? 前回登場した春樹(一姫と冬華の父親)の電話の相手がまだ?
彼の人物紹介はございません♪
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