“上白 冬華は女の子みたいだ。”
それは冬華と関わったほとんどの人が彼に持つ印象だ。
“かっこいい”というよりは“きれい”や“かわいい”という言葉が似合う容姿。
男性にしては高音で透き通る声。
料理は勿論、お菓子もかなりのレベルで作れるその料理スキル。
等々あるが、それらの特徴は女性寄りである。
ゆえに冬華は女の子みたいだ。
そんな彼は自身では嫌がって否定しているのだが、昔からモテていた。
冬華が中学に上がってからは毎月と言っていい程誰かから告白されていたし、3年の、卒業を控えた頃には毎週のように彼の元には恋文が届いていた。
『中学時代、一番モテていたのは誰か』
という質問を彼と同じ学校に通っていた彼の同級生に聞けば、皆真っ先に口を揃えて冬華の名を挙げるだろう。
それぐらい冬華はモテていたのだ。
彼と同じ男性から。
そんな冬華が現在、女の子の、しかもかわいいウエイトレスの格好をしたらどうなるのか。
答えは火を見るより明らかだった。
少し長い黒髪、長い睫毛に大きな瞳、色白の肌に桜色の唇。158cmの華奢な身体、そんなトウカの身体つきは、男子よりも女子のようだった。
それは血縁的なものもあって、彼の姉、上白 一姫は高校の時、彼女のファンクラブがあった程だった。
「すまないトウカ君、この家には君に合うサイズの男物の服はないんだ。」
申し訳なさそうに僕にそう告げるタカヒロさん。
そんな彼の前で僕は全身水浸しで立っていた。
。
色々言いたい事はあるけど、まずは、なんで僕が水浸しになっているか、それを話す所から始めようかな。
……あれは今から数時間前の事だった。
ーーーー
「いらっしゃいませ~♪」
ラビットハウスの店内に、ある1人の店員の明るい声が響く。
その店員は緑色の制服を着て、張ち切れんばかりの明るい笑顔と俊敏な動きで次々と来店してくるお客さんを捌いていく、
僕の姿があった。
リゼ達にドナドナされてからしばらく経った頃、僕は色々と壊れていた。
ユキside
“トー君は女の子みたいだ。”
それはトー君と関わったほとんどの人がトー君に持つ印象。
“かっこいい”というよりは“きれい”や“かわいい”という言葉が似合う容姿。
男の子にしては高音で透き通るきれいな声。
料理は勿論、お菓子もかなりのレベルで作れるその料理スキル。
まぁ他にも色々あるけど、そのほとんどが女の子みたいな特徴のものばかり。
だからトー君は女の子みたいだ。
そんなトー君は、自分では嫌がって否定しているけど、昔からモテていた。
トー君が中学に上がってからは毎月と言っていい程に誰かから告白されていたし、3年の、卒業を控えた頃には毎週のようにトー君の元にはラブレターが届いていた。
“中学時代、一番モテていたのは誰か”
なんて質問を同じ中学校に通っていた同級生のみんなに聞けば、全員が真っ先に口を揃えてトー君の名を挙げるだろう。
それぐらいトー君はモテていた。
そんなただでさえ女の子みたいなトー君が、女の子の、しかもかわいいウエイトレスの格好をしたらどうなるのか。
そんなの分かり切っていたはずなのに、その時の私は浮かれてそんな簡単な事にも気付けなかった。
「いらっしゃいませ~♪」
ラビットハウスの店内に、ある1人の店員の明るい声が響く。
その店員は緑色の制服を着て、張ち切れんばかりの明るい笑顔と俊敏な動きで次々と来店してくるお客さんを捌いていく、
僕の姿があった。
リゼ達にドナドナされてから1時間位経った頃、僕は色々と壊れていた。
ーーーー
僕が
って“珍しく”、なんて言ったら
……そう、ある程度は、ね。
「店員さん、注文良いですか?」
「頼んだ料理まだ~?」
「お会計お願いします。」
「」
「」
「」
「」
だけど今のラビットハウスの状況は、ある程度なんて言葉、鼻で笑っちゃう位にたくさんのお客さんが押し寄せていて、とてもじゃないけど
ふう、ようやく客足が少し穏やかになってきた。
そんな時、
カランカラーン
と来客の鈴が鳴る。
シャロside
「ちょっと千夜、そんなに急かさないでよ!」
「ふふふ、だって早く行きたいんだもの。」
とある喫茶店に走って向かう私たち。
その喫茶店で昨日実家がパン屋の女の子が開催したパン作りにクラスメイトのトウカから誘われて参加した私は、そこで偶然にも今前を走っている幼馴染の千夜に会った。
聞くところによると千夜も私と同じくクラスメイトからパン作りに誘われていて、出会った縁でその喫茶店のマスターのお孫さんのチノちゃん、パン作りを開催したココア、トウカの幼馴染であるユキと知り合った。
……そして、クラスメイトのトウカや私の憧れの人でもある天々座先輩とも前よりも親密になれた気がする。
そんな個性的な5人が働く喫茶店に私たちは向かっている。
状況的に千夜に手を引かれて走っているけれど、
「もう、だめ……。しゃ、シャロちゃん、おねがい、ひっぱって……。」
……案の定、体力のない幼馴染はすぐに動けなくなって、早々に立場は逆転した。
――――
「ここね。」
幼馴染を引っ張って数10分後、私と千夜はラビットハウスの扉の前に立っていた。
そこでふと、隣に立つ千夜が思い立ってようにつぶやく。
「そういえば私、このお店にお客さんとして来るの、初めてだわ。」
私はカフェインを飲むと酔ってしまう体質だから、喫茶店にはあまり行かないけど千夜はそんな体質はないから、何回か行ったことがあるのかと思っていた。
「へぇ、意外ね。って事は昨日が初めてだったんだ。」
だから
「えぇ、昨日はパンを習いに来たし、その前は敵城視察として来たから。」
……ん?
扉を開けるとそこには、
「いらっしゃいませ~♪」
パタン
扉を閉める。
「でも、今のは……」
そう言いながらそっと扉を開けると、
「うぅぅ///」
お店の隅の方で真っ赤な顔をして自分の身体を抱くようにしてうずくまる、トウカの姿があった。
チノside
ラビットハウスには2つの顔があります。
1つは日中の喫茶店としての顔。
私や冬華さん達が働いている時間帯です。
そしてもう1つが夜、お父さんがやっているバーとしての顔。
そこではコーヒーがメインの日中と違ってお酒がメインとなります。
ラビットハウスはその2つの顔を持っていて、主な収入源はバータイムの方です。
だから私達が働いている間はあまり収入の事とか考えなくて良いと前にお父さんが言ってくれた事がありましたが、たまに働いている間中ずっとお客さんが来ない時もあるので、隠れ家的な静かな店を目指しているおじいちゃんには悪いですが私としてはある程度はお客さんが来てくれた方が安心します。
そう、ある程度は……。
「店員さん、注文良いですか?」
「お会計お願いします」
珍しく繁盛している店内。
「注文を伺います。――ティータイムメニューのベーカリーセットですね、かしこまりました♪
お会計は合計で1,200円です。――はい、丁度ですね。ありがとうございました♪」
そしてそれをほぼ1人でさばいていくトウカさん。
そんな彼の今の服装は、ラビットハウスの制服から何故かうちにあったメイド服です。
……誰か、この状況を説明してください。
――第25話 おもいで4――
「いらっしゃいませ♪」
カランカランと来客を告げるベルの音と共にラビットハウスの店内にトウカさんの明るい声が響く。
その声はいつもより少しだけ高い声で、今トウカさんが着ている格好や、ふとした仕草と相まって私でも女の人と間違えてしまう時があります。
ユキさんいわく、数か月前まで通っていた中学校では多い時には毎週告白されていたらしいトウカさん。
そんなトウカさんの笑顔を向けられたお客さんは2人とも顔が真っ赤になって、1人は恥かしそうにチラチラと、もう1人はボーっとした顔でじっとトウカさんを見つめます。
「お客様、ご注文はなんでしょうか♪」
トウカさんが満面の笑みで来店してきた2人組の若い男性客を席に案内して注文を聞くと、2人は顔を赤くして、
「えっ! えーとおれはブルーマウンテンで。」「じゃ、じゃあおれもそれで。」
どもりながら注文をしてきた。
そして注文をした後も2人は僕の方を赤い顔で見る。
……うん、ちょっと待とうか。
別に接客態度を変えた覚えはない。
いつもと違うのは今着ている服装のみ。
……なのになんで、
……ものすごくゾワゾワする。
「はい、ブルーマウンテンをお2つですね、かしこまりました♪」
「店員さん、注文良いですか〜?」
「はーい!では少々お待ちください。」
別のお客さんに呼ばれたので、目の前にいるお客さんにぺこりとお辞儀をして、そのテーブルから離れます。
気のせいか離れたテーブルから熱っぽい視線を感じますが、今はお仕事中なので少々心苦しいですか気にしない事にします。
今日はユキ
〜〜
……その頃の僕は色々と感覚がマヒしていつもよりハイテンションで接客をしていた。
後でみんなに聞いたら、その時の僕は声もいつもより高い声で、仕草も普段では考えらない程女の子っぽかったらしい。
メイド服も着ていた事もあって、まぁとてもじゃないけどクラスメイトには見せられない姿だった。
カランカラーン
来客を告げるベルの音。
多分その時、店内にはハプニング好きの神様か妖精でもいたのだろう。
「いらっしゃいま……!」
振り返って固まる僕。
浮かべた笑顔も固まる。
なぜなら振り返った視線の先には、
「……。」
「……。」
気まずい沈黙が僕らの間に流れる。
それは
「2人とも今日は遊びに来てくれてありがとう。」
ホールにはシャロと千夜。
2人とも遊びにきていた。
クラスメイトだった。
ーーーー
シャロが来てから目が覚めた。
僕は何をしていたんだろう。
ふと視線を下に下げる。
そこにはラビットハウスの緑色の制服を着た僕が映っていた。
「////」
さっきまでなんでもなかったのに、正気に戻った今、この格好がものすごく恥ずかしい。
急いで隅の方に隠れる
「2人とも今日は来てくれてありがとう」
そんな僕に変わってココアちゃんが2人の前に水の入ったグラスを置く。
書いてた話を間違えて消してしまった時、ものすごく鬱になりますね……