この前“うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。”という“なろう系コミック”を買いました。
いやー、ヒロインの幼女が可愛いですね♪
笑顔も良いけど泣き顔も可愛い(おまわりさん、私です)とてもほほえまな作品でした。
それではちょっと今回長いですが、“初めて酔った日の事憶えてる?自分の家でキャンプファイヤーしようとしたわよね”編スタートです。
トウカside
バターを加えて混ぜ合せた生地を耐熱皿に乗せた円形の型の中に流し込む。
ヘラも使ってボウル内に残った生地も全て型に入れたら、使い慣れて来たオーブンの中へ耐熱皿ごと入れて、タイマーで焼く時間をセットしてスタートボタンを押す。
庫内で回り始めたそれを確認した僕は、振り向いた先にある時計で今の時間を確認した。
「ふぅ、なんとか時間までに終わった〜。」
事前に予想していた通りの時間に終わってホッと一息ついた僕は、テーブルや流し台を軽く片付けて厨房を後にした。
シャロside
ピッピピ、ピッピピ、ピッピピ、ピッ
朝、いつも通り規則的な音で鳴り始めた目覚まし時計を止め、のそりと立ち上がった私は眠い目を擦りながらいつも通りに部屋のカーテンを開け……ようとしたけど、掴んだそのカーテンの柄が昨日までと違う事に気付く。
「……? 千夜がまた勝手に変えたのかしら。」
でもそれは幼馴染の仕業だと思って、特に気にすることもなく再び掴んだカーテンを開けた。
「……え?」
それと同時に私の口からそんな音が漏れた。
だって目の前の、窓の向こう側には私が見た事もない、まるでお金持ちの家の庭みたいな景色が広がっていて、振り返って見た部屋の中はうすい紫を基調とした見覚えのない部屋。
「ここ、どこ……?」
目を覚ますと、私は知らない部屋にいた。
――――
「とりあえず外に出てみよう。」
突然の事で最初は慌てたけど、次第に落ち着いてきた私は、状況把握の為に部屋から出る事にした。
部屋にあるドアノブを回して廊下に出る。
ターン!
「っ!?」
その瞬間、遠くの方で何かが炸裂するような音が聞こえて思わず身体がビクリとなる。
「今の、音って……。」
聞こえた音は聞き覚えがある音。
とは言っても、それを耳にするのは刑事ドラマみたいなフィクションの世界の中だけで、普通に日常生活を送る上ではまず聞くはずのない音。
銃声だった。
「っ!」
音のした方に走り出す。
この先に何があるのか分からない。もしかしたら危険があって逃げた方が良かったのかもしれない。
そんな事、頭ではわかっていたけど、何故か私は音のした方に向かって足を動かしていた。
暫く走っていると、ある1つの建物に辿り着いて、私はその建物の扉を思いっきり開ける。
「!」
……中には腹這いの状態でライフルを構え、遠く離れた的に向かって狙いを定めている
――第22話 おもいで1――
トウカside
厨房を後にした僕はある建物の中で1人の男性と向かい合って立っていた。
僕らから離れた場所にはターゲットマーカーのついた幾つもの
すぐ近くのテーブルには黒光りする銃。
僕は今、天々座家の射撃場にいる。
「さて、トウカさん。今日は射撃訓練を行いましょう。」
「はいっ!」
目の前の赤紫色の髪の長身の男性、
お寝坊さんのユキは知らないけど、僕はこの家に来た1週間目から毎日彼から射撃や格闘術、他にも幾つか色んな事を教わっていた。
その日に何を習うかは佐倉さん次第。
だけどその頻度は僕の習得に応じてある程度比例している。
例えばこの街に来てから教わり始めた射撃は、僕自身の習得率が低いため訓練する頻度は多い。
2日に1回……とまではいかないけど、それに近い頻度で教えてもらっている。
逆に格闘術、特に護身術については、中1の頃から家に道場がある
その
ん? “無力化って何をするのか。”だって?
そんなのもちろん、靴底のかかと部分に体重を乗っけて思いっきり相手の
……後ろで佐倉さんが「トウカさん、なんか黒いオーラ出てますよ。」って呟いてるけど気のせいです。
気のせいったら気のせいです。
そんなこんなの間に点検の為に一度バラした銃を組み立てた僕は、
狙いは離れた所に立ててある人型の
「スーッ、ハァーッ。」
その的に向かって銃口を合わせた僕は、深呼吸した後にスコープで狙いを定めて静かにトリガーの引き金を引いた。
――――
バーン
そんな銃声とは違う大きな音が射撃場に響いたのは、射撃を始めて10分した頃で、的の頭部に10連続で弾を当てた時の事だった。
バっと顔を上げると開かれた扉と、その中心に立つ金色の髪の女の子が。
「お、おはようシャロ。よく眠れた?」
突然の事だったから戸惑いながらその女の子、シャロに挨拶する。
するとシャロは僕の方に向かって歩いてきて、
「トウカ、ここどこなの!?」
若干困惑交じりの戸惑った声で僕に疑問をぶつけてきた。
その質問にキョトンとして「ここはリゼの家だよ。」と正直に答える。
その数秒後にシャロの大きな声が射撃場に響き渡った。
ーーーー
シャロside
「ゴメンね、まさかそんなに驚くなんて思ってなくてさ。」
「う、うん。こっちこそゴメン/// 大きな声、出しちゃって。」
(うぅ、恥ずかしい///)
落ち着いた頃、さっき叫んでしまった事を思い出して恥ずかしさから赤くなる私。
叫んでしまったのは目が覚めたら憧れの人の家にいてビックリしたから。
そんな私をフォローしながらトウカが説明してくれた。
トウカ曰く、昨日私は天々座先輩が淹れてくれたコーヒーを飲んで酔って眠ってしまったみたい。
それを聞いて私は「またか……」と呟く。
私はコーヒーを飲むと酔ってしまう体質みたいで酔っている間はものすごくハイテンションになるらしい。
自覚がないのは酔っている間の記憶は目覚めた時、覚えてないからだ。
そんな酔って眠ってしまった私を天々座先輩が呼んだ車でこの家まで運んだらしい。
そしてそれを天々座先輩にお願いをしたのは千夜だった。
……まぁ、なんとなくそうかと思ったけど。
大方、目覚めた私を驚かせる為にやったのだろう。
イタズラっ子な幼馴染のイタズラにいつも被害にあっているおかげで、簡単にそう予想出来るのにその通りになってしまった自分がちょっと悔しい。
「トウカさん、この方が桐間さんですか?」
「っ!」
悔しがっていると突然すぐ後ろで男性の声がした。
慌てて振り返ると、執事の格好をした赤紫色の髪の男性が優しげな笑みを浮かべ、私の後ろに立っていた。
「えっ、いつの間に!?」
突然気配もなく現れたその男性にビックリする私。
そんな私にその男性は優しげな笑みを浮かべたままクルリと振り返って、この部屋の壁に向かって歩いていくと、
「かげ、うすい……」
どんよりとしたオーラを纏いしゃがみ込んでしまった。
ーーーー
「初めまして、桐間さん。私は親方様、リゼお嬢様のお父上の執事をしている
僭越ながらトウカさんの射撃を教えています。」
復活した男性、佐倉さんはそう言って私におじきをした後ニコリと微笑む。
その動きは洗練されていて、佐倉さんの整ってる顔と相まって彼の背後にキラキラとした眩しい光が見える。
きっとその笑顔にやられる女の子も多いだろう。
そんな人がまさかさっきまでショボーンと効果音が付く位に落ち込んで、歳下のトウカに散々フォローされていた。なんて言っても信じれる人は少ないと思う。
だからそんな様子を見てしまった私はどうしようもない気持ちになった。
「そういえばトウカって射撃やってたのね。」
佐倉さんが仕事があるからと部屋を出て行った後、周りを見渡した私はそう呟く。
さっきは慌ててたから気付かなかったけど、ここは射撃場だった。
「うん。射撃にもパルクールとかも習ってるよ。」
「パルクール?」
聞きなれない単語を聞き返すと、トウカは「あー」と呟いた後、ケータイを取り出して操作し、1つの動画を私に見せる。
そこには噴水を飛び越えたり、道路の端から端をバク転で横切ったり、家と家の屋根やビルとビルの間をまるで忍者みたいに駆け抜けている人達の映像が映っていた。
「すごい! トウカもこんな事出来るの!?」
動画を見終わった私は興奮してトウカに聞く。
「まだ習い始めだから出来ないんだ。」
と苦笑いで答えるトウカ。
「けど、絶対に出来るようになる。」
だけどその後すぐにそう宣言した彼の瞳は強く輝いていた。
ーーーー
その後、銃を片付けたトウカに連れられて射撃場を出た私は、トウカから1つのお願いをされてある部屋に案内される。
「スー、スー」
そこは天々座先輩が眠っている部屋だった。
私はトウカから先輩を起こしてきて欲しいとお願いされたのだ。
「はわわわわ///」
先輩の寝顔はいつもの凛とした雰囲気はなくて、あどけない表情だった。
そんないつもと違う先輩の寝顔に顔が暑くなる。
ずっと見ていたい気持ちもあるけど、その気持ちをなんとか堪えて、私は視線を先輩の隣に移動させる。
そこには先輩の隣、同じベットで眠るユキの姿があった。
おかしい。
なんで先輩とユキが一緒に寝ているの?
まさか2人は……。
「……///」
一緒の布団で眠る。
そしてその先の事を想像してより赤みを増す私の頬。
そんな私の疑問は、気配を感じて起き出した先輩によって解決する。
なんでもここは、先輩の部屋でもなくユキの部屋でもなく、実はトウカの部屋だったという事。
そして2人は毎晩おしゃべりをする為にこの部屋に遊びに来るらしい。
大抵はユキが1番最初に寝てしまい先輩とトウカが残るのだけど、先輩が最後まで起きている事はまだなく、それを聞いて私はトウカの睡眠時間が心配になった。
だって今日私が目を覚ました時間ですら結構早かったのに、その時点で既にトウカは目覚めて射撃練習をしていたから。
しかもトウカは私が見た限りで学校で眠る事はない。
一体トウカって睡眠時間大丈夫なのだろうか?
ーーーー
「そんな事があったのね」
先輩の家で朝食をご馳走になって家に戻った私はその足で幼馴染が働くお店に向かい、今日の事を話した。
いろんな事があり過ぎてパンクしそうだったけど、千夜に話したら少し気持ちが落ち着けた。
そんな私に千夜は微笑んで「実はこの後、またラビットハウスに遊びに行くからシャロちゃんも一緒に行きましょう」と言ってくる。
この時はまだ知らなかった。
まさか、千夜に連れられて行ったラビットハウスであんな事が起こるなんて……。
久々登場、人物紹介のコーナー〜!
温和な性格で誰にでも敬語口調&さん付け。
だが存在感が薄い。
そしてその事を気にしていて、それを指摘されるとショボーンとなる。
並み居る理座の部下の中で射撃の腕はトップクラスの腕前で、特に長距離射撃は1番上手い。
ただし影が薄い為、それを知っている部下はほとんどいない。
射撃の腕だけでなく家事もこなし、メイド達では対処できない位に忙しい時はさりげなく手伝う。
ただし影が薄い為に彼が手伝った事を気付いて貰えなかったりする。
名前の由来は“桜餅”。
桜→さくら→佐倉
餅→もち→
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