ご注文はうさぎですか? 下宿人は男の娘!?   作:ミツフミ

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この小説は昔投稿していた、“ご注文は下宿人ですか?”のリメイクです。
その為、「あれ? これ、前にも見たな」ってシーンもちょいちょい出ますが、ご了承下さい。

またリメイクにあたり、前に書いたものを削除させて頂きました。
前の小説で、お気に入り登録をして頂いたみなさま、また、読んでくださったみなさま、大変申し訳ございませんでした。

心機一転、新しい気持ちで書いていきますので、この小説を読んで少しでも楽しんで頂けたら幸いです。


また、プロローグの間はご注文はうさぎですか?とは全く関係ないオリジナルの話が続きます。
それでもよろしいと言う方はこのまま読み続けて下さい。
苦手だと言う方は第1章から読み始めるかブラウザバックをお願いします。


前置き長くなりましたが、1話をどうぞ





プロローグ 中学生編
始まり


 2月の最後の週。

 

 春の訪れには少し早く、まだまだ寒いこの時期は、卒業式が近い事もあって、送る側である学校はどこもその準備に忙しい。

 

 そして、送られる側の3年生にとっては、残り少なくなった学校生活を噛み締めるように、毎日を過ごしている時期である。

 

 

 そんなこの時期は卒業してしまう3年生に、または卒業する3年生が、想い人に自身の気持ちを伝える時期でもある。

 つまり言い方を変えたら告白シーズンだ。

 

 

 

 

 

ーー第1話 始まりーー

 

 

 

 巡ヶ丘学院中学校。

 市内にある中学校の中では大きくもなく、小さくもないこの学校は僕が2年と11ヶ月、通って来た中学校だ。

 

 

 そんな校舎から少し離れた体育館の裏に僕は今、憂鬱な気持ちを抱えたまま向かっている。

 

 時刻は放課後から少したった頃で、見上げた空は今の僕の気持ちを写したかのようにドンヨリとしていた。

 

 

 そもそも何故僕が体育館裏に向かっているのか、なんでこんなに憂鬱なのか。

 

 それは今日の朝に僕の下駄箱の中に入っていた差出人不明の一通の手紙が全ての原因だ。

 

 

 僕は歩きながら、憂鬱の原因であるその手紙を制服のポケットから取り出して広げてみる。

 

 そこには、“大事な話がありますので今日の放課後、体育館裏に来てください”と、武骨ながらも丁寧に書くように努力した形跡の残る文字が並んであった。

 

 

 

「はぁ……。」

 

 

 その手紙をポケットにしまって、今日何度目か分からないため息が口から零れた。

 

 

ーーーー

 

 体育館裏に辿り着くと、そこには僕と同い年の坊主頭の男の子が1人いた。

 

 彼の事は知っていた。

 とは言っても、彼が“唐木(からき) 八雲(やくも)”と言う名前で、今年引退した野球部のエースで、ピッチャーをやっていた。という位しか知らないのだが。

 

 

 引退したとは言っても唐木君の身体は3年間毎日野球部で鍛えていたのでがっしりしていて、肌は日に焼けて黒い。

 

 身長も175cmと、160cmもない僕よりも10cm以上も高くて、厳つい顔とあいまってとても中学3年生には見えず、野球をしている時はさぞ相手に圧迫感とか、威圧感を与えていたのだと容易に想像出来た。

 

 だけど今、その圧迫感や威圧感は何処へやら、彼は挙動不審にそわそわしていて、明らかに怪しい人になっていた。

 

 

 

 近付いて行くと、僕の足音に反応して唐木君が振り返る。

 

 その顔は特に日に焼けていて分かり難いが赤くなっていた。

 

 

「……! 来てくれたんですね、トウカさん!」

 

 

 僕を見つけた唐木君は嬉しそうにそう言ったが、その声は緊張しているのか必要以上に大きくて、上擦っていた。

 

 その声の大きさに思わず耳を塞ぎたくなったけど、流石に彼の目の前でそれをするのは失礼だと思ったので、やめておいた。

 

 ただ少し渋い顔をしてしまったのは仕方がないと思う。

 

 

 

「えっと、これを書いて僕の下駄箱に入れたのは、君?」

 

 僕がポケットから下駄箱に入っていた手紙を唐木君に見せると、彼は元気良く「はい!」と答える。

 

 

「それで、用件は何?」

 

「!」

 

 

 僕がそう言うと、彼の大きな身体がピクリと跳ねる。

 

「えっと、あの、自分、野球の推薦で、4月から県外の○○高校に行く事になりまして、」

 

 

 たどたどしい喋り方で、彼の口から出たその高校は野球が強い事で有名な所で、毎年甲子園にも行っている所だ。

 

 そこから推薦を貰えるなんて、彼の実力が本物だと言うのが分かる。

 

 

 ただ、それをいきなり話す理由は分からない。

 

 と、普通の人なら思うだろうが、僕は彼の話し方や態度に嫌な既視感を感じて、既に芽生えていた不安が大きくなるのを感じた。

 

 

 

「それで、巡ヶ丘学院高校に行くトウカさんとは4月から離れ離れになってしまうので、その前にトウカさんに自分のこの気持ちを伝えたくて、今日呼び出させて頂きました。」

 

 

 話していく内に緊張からか、段々と声を大きくしていく唐木君。

 

 その顔もヒートアップしていっているのか、段々と赤くなっていた。

 

 そんな彼の様子を見て、僕は逆にどんどん冷静になっていき、心の中には、

 

(“また”か……。)

 

 と、諦めに似た感情が不安の変わりに広がっていくのを感じた。

 

 

 既に似たような状況を何度も経験している僕は、なんとなくこの後の展開は察しが付いていたから。

 

 というか、朝に手紙を手に取った時点でなんとなく察していた。

 

 ただ、疑念が確信に変わっただけ。

 

 だから、

 

 

「トウカさん、好きです。俺と付き合って下s「ムリ」 !!」

 

 

 案の定言ってきた告白の言葉を、言い終わる前に冷酷とも言える程冷静に拒否する。

 

 

「……えっ?」

 

「聞こえなかったの? “ムリ”って言ったの」

 

 

 唖然とした表情で聞き返してきた唐木君を再び拒否すると、唐木君の顔がサーっと赤から青に変わる。

 

 その変わり様はまるで信号機のようだった。

 

 

 

「な、なんでですか!? 自分の何がいけなかったんですか!? 教えて下さい。俺、直します。トウカさんの為に!」

 

 

 2度もばっさりと拒否されたのに、なおも挫けないその心意気は立派なものだが、残念ながら今回の場合にとってはその心意気は煩わしく感じた。

 

 

 僕は苛立っている自分を落ち着かせる為に、一度ため息をついてから話し始めた。

 

 

「いや、直す直さないの問題じゃなくてさ、」

 

 今回の場合は、そんな表面上の問題じゃない。

 もっと根本的で性別的な問題だ。

 

 

 そう、今回の問題は、

 

「男同士で付き合うわけないじゃん」

 

 僕も唐木君も男という事だ。

 

 

 

 相変わらず青い顔をしている唐木君をその場に残し、僕はきび返して校舎の方に戻る。

 

ーーーー

 

 

 校舎に戻って、階段を上がっている途中で僕はため息を1つついて、

 

「“また”か、いいかげんにしてよ。」

 

 と、呟く。

 

 

 

 これで5度目だ。

 

 

 今月、同性の男の子告白されたのは……。

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。
1話終了です。

主人公のトウカ君、モテモテですね。(主に男子から)


以降から人物紹介です。

上白 冬華(かみしろ とうか)
巡ヶ丘市という、木組みの街ではない市にある巡ヶ丘学院中学校という名の中学校に通う中学3年生の男の子。
この話の主人公でもある。
身長は158cm(リゼと千夜の間位)
名前の由来は上白糖。

髪は黒で少し長いショートヘア。
体型はスレンダー。でも見た目に反して力持ちで、運動神経も良い。
性格は温厚だが、今回みたいに男子から告白される時等は結構辛辣になる。

趣味は料理で特技は家事。
部活は料理部の部長を務めている。
家族構成は父、母、姉と、同じ街だが離れて暮らしている祖母と、その祖母が飼っている太郎丸という名の犬がいる。

また、家族ではないが、隣の家に同い年の幼馴染がいる。


特徴
女性と間違われる位女顏であり、月に2.3回は男子から告白されている。(勿論全て断っている)

両親は共に同じ職場で働いていて、仕事の関係上、なかなか家に帰れず、3つ年上の姉とよく泊まりに来る幼馴染は家事が全く出来ない為、トウカが全て行っている。




唐木 八雲(からき やくも)
トウカに告白して来た元野球部エース。
イケメンで女子に人気。
本人の名誉の為言っておくが、彼はそっち(BL)の気質は全くない。


ちなみに名前の由来となる食べ物は特にないが、“唐”と“木”と“八”で、“糖”という漢字が出来る事からこの名前にした。


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最後まで読んで頂きありがとうございました。
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